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媚香調教02・白竜と春姫



 答えるように開いた扉から現れたのはあの男ではなく少女。
 ディアーナと同様に捕らえられていた仲間のハルヒだった。

 思いがけず現れたハルヒに、快楽に惚けていたディアーナの顔色が一気に青ざめていく。
 開いた扉から吹く冷えた風のおかげか、或いは体にまとわりつく煙が晴れたおかげか。
 或いは、そこに現れたのがハルヒだったからなのか。

 昏睡を極めていた理性がたちどころに正気に戻り、体の疼きも嘘のように吹き飛んでいた。
 彼女は短く悲鳴を上げると両手でその晒された肢体を覆い隠し、子供のように体を丸めて震えた。
(……見られた…あんな姿を……)

 ディアーナを勇者と崇め,慕っている少女の前に晒してしまった痴態。
 本来ならば無事の再会を喜ぶべきが、今のディアーナにはそれが浮かばない。
 顔が羞恥に震え、耳は心中の火を表すかのように赤く染まっている。目からは、涙がこぼれた。
 ディアーナはただひたすらに自らの中の淫乱を恥じ、後悔と絶望に押し黙るだけだった。
 その沈黙を破るようにハルヒが再び声をかける。

「ディアーナさん、どうしたの? どこか痛いの?」

 頭上からかけられたディアーナの身を案じる声に、侮辱や軽蔑の色は混ざっていない。
 彼女の性質は無垢である。無垢であるが故に明るく、無垢であるが故に知識もない。
 ひょっとしたら、自分がやっていた事を理解していないのではないか,という考えが浮かんだ。
 そっと顔を上げ、ハルヒの表情を窺うと心底心配といった様子でこちらを覗き込んでいる。
「ディアーナさん!? 大丈夫? 痛いの?」
「……私は、大丈夫です。あなたも無事だったのですね……」

 ディアーナは安堵の息をこぼすと、ハルヒの呼びかけに返事をした。
 自己嫌悪の中ディアーナは彼女の無知を利用し、先ほどまでの痴態を自らの記憶からも葬り去る事を選んだ。
 自分が置かれた立場を思い出し、こぼれた涙を拭うとその顔はすでに白竜将のそれに戻っていた。

 仲間が救出に来てくれた。まずは、足の枷を外し逃走を図るべきである。
 即断したディアーナは周囲を確認するが、鍵などのそれらしい物はない。
 ここまで逃げて来たハルヒが何か好材料を持っていないか、と考えを巡らせた時。
 ディアーナの太ももに何かが這った。

「…ひっ!」
「あー、やっぱりだあ」

 ハルヒは無邪気な声をあげ、ディアーナの腿に垂れる愛液を拭うと指先についた光る液体をまじまじと眺めた。
 ディアーナはうわずった声を吐く。
「…ハ、ハルヒさん。なにを……」
「ダメだよ、ディアーナさん。勇者様の許しももらわずにオナニーしちゃ」 

 ハルヒは子供同士が悪事を批難するような明るい口調で、確かにそういった。
 葬り去ったはずの己の痴態がディアーナの脳裏に甦る。
 その言葉にディアーナはひどく狼狽し、顔からはふたたび白竜将の顔つきが消え失せていた。

「ハルヒ、ディアーナの調子はどうだ?」

 後ろから聞こえた声に振り返ると、いつの間にかあの男が扉の前に立っている。 
 ふてぶてしく扉に体を預けたまま問う男に、ハルヒはかつてディアーナにそうしたように、嬉しそうに抱きついた。

「あのね! あのね、勇者様! ディアーナさんたらいけないんだよ。勇者様の許しがないのにオナニーしてたの!」
「……ハ…ルヒ…さ…」
「ほー、それはそれは。白竜将様の自慰。是非見たかったなあ」

 男はしたり顔でニヤニヤとディアーナを見下ろしている。
 おそらくはディアーナがそのような行為に耽っているのもこの男の思惑通りなのだろう。
 ディアーナはまんまと術中にハマっていた自分への苛立ちで臓腑が焦げる思いだった。
 しかし、この異常なハルヒの言動。男の毒牙にかかった彼女の異変に対する憤りがさらにそれを上回る。
「下郎ッ! 彼女に……ハルヒさんになにをしたッッ!」

 怒号一閃。その声はまるで竜の嘶きのように部屋の空気を振るわせて響き渡る。
 男は肩をすくませてハルヒの影に隠れると辺りの空気と同じようにその身を震え上がらせた。

 ハルヒは何かを察したように両者の間に割って入ると、にこやかに微笑んだ。
 彼女は、無垢である。いつもはあっけらかんとした笑顔を浮かべて周囲をなごませる愛嬌を持っているのだが、
 同じような笑顔に見えてその目には生気がない。見ていながら見ていない。まるでそんな目だった。

「ディアーナさん」
「……ハルヒ…さん」
「なんで勇者様をいじめるの? 勇者様は私たちを幸せにしてくれるんだよ」
「…勇者、様?」

「そう、勇者様。勇者様ってスゴいのよ、ディアーナさん。
 勇者様はみんなを幸せにしてくれるの。あたしの体も、もう全部勇者様の物なんだよ」
「……何、を…言って…」

 ディアーナの声が震えている。
 可憐に微笑んでいた少女の顔つきがいつしか淫美に染まった女の顔に変わっていた。
 だが、ハルヒはそんなディアーナにかまわず独白を続ける。

「このおっぱいも勇者様に揉んでもらう為の物で、ここも勇者様の精液を出していただく為の場所なの。
 勇者様にご奉仕してお口が精液でいっぱいになると他の事なんてどうでも良くなるくらい満たされるの。
 幸せになれるんだよ。勇者様にいじってもらえるだけで。もうなにもかも。全部どうでも良くなるくらい幸せ……」
「……なにを…されたの?…」

 ディアーナの問いに応えず、ハルヒはうつむいた。
 少し間を置いて、ハルヒが何度か声を出そうとするが涙が混じり声にならない。
 四度目でようやく聞き取れる声が出た。

「……最初はね、スゴい痛かったし、あの人の事大嫌いだったんだ……信じて。
 でもね、一日中アレを突っ込まれて、体がどんどんエッチな事をする為の体に作り替えられて。
 体が言う事聞かないの。もう勇者様のアレの事しか考えられないの。
 ……ディアーナさんが悪いんだよ.早く…助けて…くれなかったから……」

 ハルヒはそう言い終わると顔を上げ、かつて陽の下で見せたように、再び小さな花の様に笑った。
 なのに、ディアーナの目にはその瞳から涙がこぼれたように見えた。
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