媚香調教01・白竜調教


 ダンジョンの中にある一室。壁石に長年苔むした湿気を帯びた重い空気と臭気。
 その中にかすかに煙る、わずかな異臭が鼻につき女は目を覚ました。

 女はディアーナ。「白竜将」と讃えられた女竜騎士であったが、
 今はあえなくギルドに捕縛され、その名に恥じぬ白き肌を隠す物はわずかな肌着のみ。
 美しく長い両手足は鉄錠で拘束され、体を必死に揺り動かしても動くのは豊満な自身の乳房だけと言った有様だった。

「……くっ」

 その一室にはディアーナ以外に人気はない。もし逃げ出すのならば今が好機である事は言うまでもないのだが。
 頑丈に拘束された体は壁面から動く事を許さない。動けぬ体にまとわりつくように漂ってくるこの臭い。
 その臭いがディアーナの意識を柔らかく包み込み、まるで誰かに抱きしめられるような安心感と高揚感を沸き上がらせる。

(なんだ…この臭い……力が抜け…て……弛緩香…?…)

 その火照りを吹き飛ばすように、乱雑に部屋の扉が開く。
 中に入って来たのは腰が曲がり背は低く、いやらしい笑みを浮かべたギルドの男。

「ディアーナちゃん、気分はどうだい」
 至極愉快そうに、男はしゃがれた声で語りかけて来た。

「……言うまでもなく最低の気分です。今ならまだ目こぼしして上げられる範囲です。
 早々に私の拘束を解き、共に捕らえられた私の仲間を返しなさい」

 ディアーナはその返事に、怒りがこぼれんばかりに眼気溢れる目に空気を圧倒する声。白竜将が男を射抜いた。
 男は一瞬すくんだような顔つきになるがすぐに己の優位を確認するとふたたびニタリと微笑み返す。

「ディアーナちゃん、怖い顔してちゃ可愛いお顔が台無しだよ」
「……いいでしょう。好きになさい。
 ただし、私がここから生きて帰った時はあなたのその曲がった体を長槍の一突きで刺し直してさしあげましょう」
「ひゃっひゃっひゃ。そんな恐い事言ってちゃダメだろ」

 男は脅しに屈せず、恐れる物など何もないようにディアーナの前に立つと僅かな肌着をめくり、その肌を晒した。
 揺れながら現れた豊かな胸。一度跳ねて揺れる様が男の舌なめずりを誘う。
 男は羞恥にディアーナの顔が歪む様を嬉しそうに眺めると、さらに嬉しそうにディアーナの乳首を弾いた。
「ぁっ…」
 その声は紛れも無く「女」の声であった。男は愛らしいディアーナの嬌声に上機嫌と言った様子でさらに服を脱がしていく。
 一方、ディアーナは男の悪戯に敏感なまでに過剰な反応をしてしまった己の体に違和感を感じていた。
 自らの体の変化に戸惑う様はまるで初めての出来事に困惑する少女の表情のようで、
 と、男が何かをいいものでも見つけたような声で「ほぅ」と感嘆をあげた。
 男がゆっくりとディアーナの下着を脱がすとそこは音を立てて湿り、既に全て受入れる準備を整えていた。

「ディアーナさんよ、ひっひ。男日照りが長かったのかい?」
「ぶ、無礼な! こ、これはなに、かあぁあ!!?」

 男はディアーナが答え終わる前に膣に指を突き入れると、ディアーナはあまりの衝撃に身を浮かせた。
 その指はまるで全身をほじり返したように体中に快楽を走らせていく。
「うううあっあっ!」
 指でほじくり、返す度にディアーナは床に愛液をふりまいて理性などない獣のように女の声を上げる。
 先ほどまでの気品が吹き飛び、抵抗しようにも太ももは閉じる力も出ず、まるで売女のように足を大きく広げ喘ぐばかりだった。

「あっ! いいぃひぃ、や……な、なぜ……」
「ひでぇ乱れようだな。種明かしをしてやろうか。ほれ、コレよ」

 男は指を抜くと、奥に置いてあった置物をディアーナの前にかざす。
 そこからは先ほどから臭っていた謎の煙が漂ってディアーナを包んでいる。

「こいつはな、女の感じる快楽を何倍も底なしに上げてくれる。まあ便利な媚薬様ってところだな」
「…ひぃ…卑怯、者…あひぃ!」
「誰が卑怯だって? 俺はお前さんを白竜将から一人の女にこうやって戻してやってんだぞ!? ああ?」

 男は置物の被せを外し、煙の元をディアーナの鼻に突きつける。
 その臭いは頭を痺れさせ、腿から自然に愛液が滴り落ちるほど強烈な媚香。
「…あ……あぁ…」
 すぐさま男はディアーナの口を自らの口で塞ぐ。彼女にはもはやそれを振りほどく力はない。
 息苦しく鼻で呼吸すると余計にその臭いが流れ込み、全身に染み込んで体をより敏感に研ぎすましていくのが分かった。
 さらに男の舌が口の中を蹂躙し、それがまるで愛の口づけのように痺れディアーナの頭が惚けていく。
 男は陶酔するディアーナを叩き起こすように再び膣に指を差し入れるとメチャクチャにピストン運動をくり返した。

「アッ……くひぃ……いぃイ!…ヒィ!」
「おら! どうなんだよ!? 白竜将様よぉっ!」

 男の乱暴な責めにも関わらずディアーナの体をそれを全て受け止めるべく、
 愛液で滑りをよくして痛みを快楽に変えていく。いつもは受入れない、未体験の膨大な快感の洪水。
 本人の意思とは無関係に膣は男の指をさらに締め付け、より快楽を絞り出そうとする。ディアーナの限界が迫っていた。

「ひぃいっ…わ、分かり…ぃいいい分かりましたっ! だかっ…だからもうっ!」
「いいや。お前は分かってねえ、な!」
「…んあぁアアッッ! あっ…あ…」

 男が乱暴に指を引き抜くとディアーナは人生で初めての絶頂を迎えてしまう。
 まるで初めて一晩中、愛撫を受けた少女のようにグッタリと、大きく肩で息をしている。
 初めて味あわされた快楽の余韻を体が支配し、呆けた表情からはわずかな悦びの色が見える。
 だが男はそんなディアーナの様子など御構いなしに、彼女の股に自らの陰茎を突き立てると一気に貫いた。

「……っっっっっぁぁぁああ!!!」

 初めてではないとは言え、数年ぶりに男を受入れたディアーナの体。
 そこに初めて刻み込まれる尋常でない快楽。指だけで迎えてしまった絶頂。その間もなく受入れた男そのものに。
 ディアーナの意識が飛んだ。
 が、男が陰茎を突き入れる度にディアーナの意識が覚醒する。

 もがくように逃げようとするが男は容赦なく体をぶつけディアーナを責め立てる。
 あまりにも増幅された快楽についには白目を向き、ディアーナの口からはよだれと普段の彼女から想像できぬ声が吹き出した。
「はあああぁ、あ、ひ、い、ィい!」
 痙攣している肢体。男はかまう事無く突き続ける。
 ディアーナの体は硬直と弛緩を繰り返し,男のされるがままに膣を性処理の道具のように乱暴に扱われている。
 と、ほどなく男は達し、ディアーナの体に初めての精を注ぎ込んだ。
 だが反応はない。

「……ちとやりすぎちまったかな?」
「…は…あひ…あぁゃ…ひ…」
 もはやそこにはさきほど、男を睨み白竜将の声を発した女はいなかった。
 美しい髪は乱れに乱れ、眼光鋭い目は白目を向いて涙を流し、その声を発した口からは止めどなくよだれが垂れている。
 理性どころか意識が全て飛び、そこにいるのは品のない笑顔で快楽の余韻に浸るただの性奴隷だった。

「いやあ失敗失敗。またやっちまった。原料をそのまま嗅がせちまったがここまで壊れちまうたあ相性が良過ぎるんだな」
 男はディアーナの尋常ならざる様子にやや反省し、そのままディアーナを放置して意識の回復を待つことにした。

 ――翌日、さすがというべきか、先日の醜態は意識が飛んでしまった事でほとんど覚えていなかったおかげなのか、
 まるで先日の痴態が幻だったかのようにディアーナは元の高貴な振る舞いを取り戻していた。

「……ン……ふ……んん……」

 男は今度は壊れぬよう、まずは体を慣らすように体中をなで回し続けディアーナの官能をくすぐった。
 男の手で絶頂には達さぬよう、徐々に徐々に。調整されて体を官能に染めていく。

「…く、くだらな…い……こんな、ひっ……事を……あなたは……最低ぃ…の……に…人間です……」

 首筋をなぞるように舐め、乳首をこねながら乳房を揉み、果てはディアーナの肛門も男の玩具に成り下がった。
 男を罵っていたディアーナだったが、男の愛撫に比例して次第にその口数も減っていく。
 ディアーナは口を強く結び、男の責めに声を上げぬように必死に耐え続けた。
 結局その日、男は挿入もせずディアーナを解放し、部屋を去った。

(……助かった…)

 そう、ディアーナは解放された。そう本人は思っていた。
 だが、その時。異変はすでに起きてしまっていた。

 その日、男は最初にディアーナの全身をいじるため、一部拘束を解いてから弄んだ。
 無論、男が去るときには再び拘束したのだが以前とは違い、ディアーナの両手は自由を許されていた。

 だが、一度快楽でこじ開けられた肉体はもはや以前のディアーナの体ではない。
 思い知らされた絶頂を体は求め、半端な責めで火照らされた官能をさらにあの煙が焦がしていく。
 気がつけばその晩、絶好の逃亡の機会であったにもかかわらず、
 ディアーナは逃げる事も考えず、ひたすら男がその扉から出てくることを考え続けた。
 まるで恋い焦がれるように。

(……あの男が来たら…また私の体を……耐えて…みせる……どんな責め苦にも…どんな………責め………)

 まるで祈るように胸の前に手を置くと、右手が軽く乳房に当たった。
 一般的な女性の胸より大きく育ってしまったその胸は、騎士であるディアーナの半生には不要なものだったが、
 その時、初めてディアーナの意識の多くを占めた。自らの体への恐怖心、そして好奇心。
 ふくよかな胸に当たった手をずらすと、先ほどの愛撫で尖ってしまっていた乳首を曲げ弾く。

 槍を握る事しか知らぬ手のひらがもたらした快感に、ディアーナの口から一雫のよだれが垂れる。

「……ン…」
 心地よい刺激がディアーナの頭を痺れさせた。次いで、手が無意識に乳首をこするように動いた。

(…穢らわしい……あんな手で……私の体をこんな風に……)

 ディアーナの右手があの男にされたように乳房を揉みしだく。
 豊満な胸がゴム毬のように美しい指で変形させられて戻り、ディアーナは呼吸を荒げていく。
 しかし、足りない。いくら揉みしだいても男から味あわされた快楽には到底及ばない。
 片方の腕が、求めるようにディアーナの股間に置かれ、自らの性器の縁をなぞった。
 ディアーナは、焦りでゴクリと息を飲む。
(…わ、私は何をしている……こんな淫らな……私はこんな……)

 しかしその葛藤も言い訳じみた物だった。
 まるで左手は別の生き物のように、まるであの男の指のように。
 無遠慮にディアーナの膣に侵入すると中に溢れる蜜をかき出すように動き出した。

「ふあっあっあっああっ…あっあぁあああああ!」

 当初は羞恥で鈍い動きを見せていた指も緩やかに、次第に激しくディアーナの膣をほじくった。
 指が自らにもたらす激しい快楽に身が踊る。
 もはやわずかに残る理性は羞恥で頬を赤く染める程度の働きしかしていない。
 貪るようにディアーナの指は宿主の意思を無視してディアーナを責め続ける。

「ああっあぃ!」
(…やめ…私は白竜…しょ…)
「ひぃ! いひぃ! あぁはあ…」
(……やめない…と…ひ……ひぃ……っ…)
「ひっあひっいい! いい!」
(…きも、ちいい!……きもちい……でも……でもお!)
 ディアーナの指はあの男の真似をしてもその技巧には追いつかない。
 そういう話は女同士の酒の席で何度か耳にしている。
 だが所詮は耳年増で、いくら自分に気持ちがいい指の動きを知っていたとしても余りに拙く、
 ディアーナを絶頂に導くにはいたらない。

「……ん…へぁ……な、なれぇ……なれイケないのぉ……」

 ディアーナの舌が男の口づけを求めるように空に踊る。
 ディアーナの乳房は男にされたように指で歪められている。
 ディアーナの指が膣の中で暴れ回り、辺りに蜜をちらし続ける。
 ディアーナの膣は男のソレを迎え入れる為の蜜で溢れかえった。
 ディアーナの目に光はない。淫らに沈んだ目には涙が浮かび、男がやってくる扉を見続ける。

   どれほど時間が経ったか、身をいくらよじらせても求める絶頂にはなぜか辿り着けない。
 ディアーナはよだれを垂らし、言い訳しか出なかった口からはついに懇願が漏れた。

「…は……はやく……早く来てぇ…はやく…」

 その言葉に応じるかのように、カツンと外から音が響いた。
 靴の音。誰かの足音である。ディアーナの表情がにわかに晴れた。
 焦がれた相手の来訪に貪欲な指も激しさを増す。ようやく,解放される。ようやく――。

 錆びた重い鉄の音。扉が開くと暗闇だった部屋に光が射す。
 同時に少し冷たい風が吹き込み、ディアーナの火照った頭を冷やした。辺りの煙もその風で消し飛んでいく。

 覚めた顔で、ディアーナは我が目を疑った。
 入って来たのは男ではなく,少女。
 少女は聞き覚えのある、明るい声でディアーナの名を呼んだ。

 さきほどまで動いていた指が止まり、ディアーナの血の気が引いていく。
 目の前の光景を確認するように、
 ディアーナは少女の名を呼び返した。

「…ハルヒ……さん?」
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