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宵の口、
ハウリ王子は、突然に響いた異音、
何かが粉となって崩れるような音ともに、目が覚めた
「………?」 | ![]() |
《王子》の部屋の床には、灰まみれの、全裸の女が身体を丸めて這いつくばっている
現れたのは、セニティによって転送された、ラシャだった
ここは・・・まさか、ハウリ王子の私室?
「あれ?キミは…… 確か姉上の従者騎士だった、ラシャだね。 久しぶりだなあ。もう何年も会わなかったけど、 姉上の密命か何かで遠くに行ってたのかしら?」 |
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ラシャには、少しの違和感があった
常識的に考えて、"己の部屋に突如裸の女が現れた"
そんな《王子》にとってはとんでもない異変であるにも関わらず、
まるで世間話をするかの様に軽い口調で《王子》はラシャに話し掛けてきたのだ
その時、ラシャの頭の中に、何かが閃いた
ラシャは、一瞬だけ逡巡し、
そして────
《王子》に"全て"を話す事に決めた
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長い話が終わった
《王子》はほとんど相槌も打たずに、ただ黙って聞きいっていた
そしてしばしの沈黙があった
ラシャは《王子》の前で片膝をつく格好で灰溜りの上で畏まり、
王子の次なる言葉を待ち続けていた
すると、
「早く、言ってくれれば良かったのに」 | ![]() |
《王子》は、にこやかな笑みを浮かべ、
その手をラシャに触れようと延ばしてきた
しかし《王子》は何言かを唱えながらラシャの頭上にその手の平を乗せ、
呪文を詠唱し始めた
やがてその手の平から淡い燐光が発せられたと思うと、
ラシャの全身の表面を、シナプスの様に駆け巡った
と、《王子》は、突如、ラシャに抱きついてきた!
不意を打たれ、されるがままに慌てたラシャだったが、
抱きついてきた王子の、衣服が灰になる様子がない
「ほら、もう平気だよ」 | ![]() |
「国主継承者にのみ口伝される、《龍の灰》の秘術、 姉上が独力で物にしていたとは、驚いたなあ。流石姉上だなー。 でも、解呪の方法も当然あるんだ。 昔父上に習ったんだよ。忘れてなくて、良かったあー」 |
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驚き呆けているラシャを尻目に、《王子》はその肩をポンポンと叩くと、
ベッドから毛布を引っ張り、ラシャにかけてやった
「さてラシャ。教えてくれてありがとう。 真相がそういうことだと判った以上、このままにはしておけない。 でも、本当の事は、とても皆には言えないよ。わかるよね?」 |
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「どうするのが一番良いかなぁ… 国民や冒険者達にショックを与えず、他国に付け入らせず、なおかつ姉上の名誉も最低限守れる方法… うーん……」 |
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ラシャは思った
国民の誰もが、ラシャも、セニティでさえも凡庸と思っていたこの王子は、
もしや・・・
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翌朝、現国主ビルゴ王子の名の元に、
ワイズマン討伐よりも優先されると言う新たなふれが発表され、
国民と《冒険者》達を驚かせた・・・
† 使命 †
< 『龍神の迷宮』最下層にて捕らえられたセニティ王女を救出せよ >