崩壊して行く澱みの塔……

それを遠くの丘から眺める影が二つ……

「『はぁっはっはっはっは〜〜〜〜♪』」

「……その辺で良かろう、アッシュ」

マイクを手に高笑いを続けていた少女に、

もう一人の女性が声をかける。

少女は苦笑いしてマイクを投げ捨てると、足で踏みつぶした。

「……ふぅ〜い、やれやれ、
とりあえず一段落ついたなァ。
よぉ、ムリ言って面倒かけて悪かったなァ、レス♪」

「……随分と派手な小細工を労したものだ」

「まァ、前にお前に言われた通り、『アッシュ卿』の名も
『このやり方』もそろそろ潮時だったからな」

「前回の訪問が良いきっかけとなったという訳か」

「ああ、ちょうどあの身体も寿命が近くて性能が落ちてたし、
たまたま良い素材のチャンピオンが居たからな。
彼女からちょっと細胞を拝借して新しいボディの元とした」

「転生プログラムの発動タイミングに合わせて受精卵を誕生させたと。
だが、『無限の寿命を持つと言われるアッシュ卿』を世間的に葬るには
もっと大がかりな『理由』が必要だったと言うことだな」

「イェ〜〜ス。
マーベラスメイガスの存在ごと消し去る必要があったからな。
お前さんに頼んで一役買って貰ったわけ♪」

「……くだらん茶番だ。巻き込まれて嬲られた女共には
たまったものでは無いな」

「悪いとは思ってたサ。だからオレ自ら参加者になって、
ちゃ〜〜んと同じメに遭ってやったワケ」

「……酔狂なことだな。
それにしても無様な負け方をしたものだ」

「まあ、普段はダミーボディからマイクを通してセリフを喋れたけどな、
オレ自身が試合に出る時にはあらかじめ
セリフをテープに吹き込まなくちゃいけなかったから、
事前に結果が明らかな特別試合で負けるしかなかったんよ」

「そして『アイリッシュ』のセリフも全て台本通りということか。
くだらん余興に尽力を惜しまないのは相変わらずだな」

「んでもなぁ、『アイリッシュ』のスペックがナメられるのはムカついてたんで、
ダミーボディに同じ性能をプログラムして再挑戦してみたんだが、
なんせ遠隔操作の稼働限界が2ターンも持たないもんでなぁ、
結局余計無様な結果をさらしちまったい」

「……で、これからお前はどうするつもりだ?
この大会の残した影響はお前の考えている以上に深いぞ。
妙な連中も裏で動いていた様だからな」

「まァ……当面は様子見だな。何かあったらそん時だ。
時間は無駄なほどたくさん有るんだからよ♪」

「………………」

「人のことより、オメーはどうよ?」

「何も変わらんよ。
嫌になるほどにな、何も変わらん……」

「………………」

「ではな。
またいずれ会おう。悠久の時の先で」

やがて、塔の崩壊が終焉を迎えた頃、

どちらからとも言わずに人影はその場から姿を消した。

「マーベラス・メイガス」は「アッシュ・ヴァイザー卿」と共に、「澱みの塔」ごとその姿を消した。

まもなく「澱みの街」もその役割を失い、ミレニアから消失する。

だが、そこから流れ出た、「マーベラス・メイガス」の記憶を持つ一部の者達がやがて、

魔道大国ユニカンにて闇の魔法祭典「サプリーム・ソーサレス」を生み出すこととなる……

「サプリームソーサレスZERO2」

END


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