《龍神の迷宮》近くの荒野、

一人の男が呼吸も荒く走り続けていた・・・

「はぁっ、はぁっ、畜生、俺の築き上げてきたギルドが……
はあ、くそっ、まあいい、一から作り直しだ、"こいつ"があれば、
部下どもは幾らでも量産できる…くく、今に見てろよクルルミクめ、
必ずこのギルドボに世界中が跪く日が、やってくるんだからな…!」

 

"ボス・ギルドボ"

いや、もはやボスではなくなったギルドボの手には、

《ワイズマン》の残した遺品の一つ、禁忌の魔術書が在った

 

「なるほど、それが貴様のギルド頭領たりえた秘密か」
「んなッ!?」

突如背後からかけられた声に、ギルドボは悲鳴を上げて振り向いた

そこには、見たことの無い、一人の女騎士が立っていた

いや、どこかで見た事が・・・?

「裸でなければ判らぬか?
一応貴様とは戦った仲なのだがな」
「ら…"裸身のくのいち"かテメェッ!?
なんでここに…」
「知れた事。事の真相を全て知る貴様を、
逃がすわけが無かろう?」
「ま…待てよ!俺ァ大怪我してんだよ…
動けねえ、満足に戦えねぇんだよ俺。
きっ、きっ、騎士だったのかお前、騎士なんだろ?
だったらよ、まさかお前、なあ、騎士がよ、動けない怪我人をまさかお前…」
「笑わせているつもりか?
貴様らが動けぬ女どもに一体何をしてきたか、
忘れるほど痴呆とは思えんな」
「ま、待て待て、待てよ、待てって!
…く、ち、ちくしょおおおおおお!!」

後ろを向いて逃げ出そうとしたギルドボを、ラシャの剣が一瞬にして斬って捨てた

かつて幾年にも渡りクルルミクを震え上がらせたハイウェイマンズ・ギルドの頭領の、

あまりにもあっけない、惨めな最期だった

「王子…
使命の通り、秘密を知るものは、全て私が────
どうか、安心してクルルミクの復興に精を傾けて下さいませ」

ラシャはそう呟き、風の様にその場を去っていった


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