ジャーシス(Zaeciss)・・・時のことわり・・・

            by MORIGUMA


「はあ、はあ、はあ、・・・」

雪深い山道を、細い影が必死に登っていく。
はうように、つんのめるように、
その姿は細く、痛々しかった。

バサバサッ
急にふいた風に、フードがあおられ、
目のさめるような金髪が露になる。

軽いウェーブと、豊かな質感の金髪。
青ざめた美貌と、大きなグレイの目。

まだ20そこそこの若い女性は、
豊かな胸を喘がせながら、
白いフード(山道で見つかりにくいように)をかぶりなおし、
再び登り出した。

足も手も、痛みすら感じなくなり始め、
心臓は今にも破れそうだ。
だが、
彼女は前へ進むことを止めようとしない。

..........................・・・・・・・・・・・・・・・・・

ギシッ、ギシッ、ギシッ、
縛り付けられたベッドがきしむ。
細い手足は縛られ、
あられもなく広げられた秘所へ、
繰り返し律動が突き上げる。
もう、涙も出ない灰色の目が、朦朧と開いたままだ。

細く締まった腰は、自在に持ち上げられ、
醜い肉欲の塊が、己の望むように、
陰唇を割り、膣をこねくる。

下腹の焼けるような苦痛は、鈍痛と化して、
未だに脳が焼けるような感覚を打ち込んでくる。

喘ぐ形の良い胸には、いくつものアザが散り、
乳首には噛みあとが痛々しくついている。

サプリムソーサレスの敗北から2日、
SEXの経験のなかったマルレーネに、
精も根も尽き果てるまでの陵辱が、
繰り返し、繰り返し、打ち込まれ続ける。

赤くはれ上がった秘所が、
ずるずるとめくれ、
節くれ立ったペニスが、執拗に奥までこすりつける。

「うっ・・・」
びゅぐっ、びゅぐっ、びゅぐっ、
何度目だろう、
おぞましい感触が、どろりとした悪寒を流し込み、
意識が焼かれるような熱が、子宮へと流れ込んでくる。
いっそ死にたかった。
だが、狡猾な方法で、彼女は死すら選べない。

「そろそろだろ」
「ち、結構まだ使えるぜ。」
「孕み薬が効いてるんだ、そろそろ出来てるはずだぜ。」
『孕み薬・・・?!』
マルレーネの意識が急速に浮上する、いや、戻りたくなかった。

無理やりに妊娠させる薬がある。
どうしても血族を絶やさない為の、
ひそかに伝えられるはずの秘薬。

意識がもどったことに、男たちも気づいた。
「けけけ、安心しな、腹ボテにするためじゃねえからナ。」

だが、使われているなら、もう妊娠しているはず。

震える彼女の前に、黒々とした棒が持ち出される。
こんどこそ、彼女は生きていることを呪った。
「が、ガラガランダの杖・・・!」
にやりと笑うと、男は生殖能力を破壊する棒を、
マルレーネの濡れた秘所へ突き入れた。
子を孕みかけた、無防備な子宮へ。

ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!!!!!

....................・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほう・・・ホウ・・・
すでに日がかげり、フクロウが夜の到来を告げる。
暗闇の山道を行くなど自殺行為だが、
それすら彼女にはなんでもない。
どうせ死は選べない、
本能に根ざす恐怖、それを魔法で巧妙に増幅させ、
舌をかむことも、身を投げることも、毒を飲むことすら出来ない。
『ならば、死なない、私は死なない!』

彼女が一段とけわしい坂を上ると、
フクロウが目をぎらつかせ、
ばさりと飛び降りた。

それは、黒いローブをまとった人になった。

「死を掛けて登る者、汝ここを知るか?」

狂気の笑い、憤怒の怒り、
左右に別の表情をつけた素焼きの面。
低い、底冷えする声。

「は・・・は・・・はい。」

「一歩を踏み出せば、汝は庇護されよう。
さすれど、一歩を踏み出せば、そこは人外の法の結界。
もはや戻ることかなわじ、いかにせん?。」

もう、マルレーネには何も無い。
静かに一歩を踏み出した彼女に、
仮面はふわりと厚いローブをかけた。

それはとても柔らかで暖かく、
ぬくもりが、心にまで染み込むようだった。
長く忘れていた涙が、一筋零れ落ちた。

仮面が、何かに気づいたように顔を上げた。
「おまえの追っ手が来たようだな。」
恐怖がマルレーネを金縛りにした。
「は、早く逃げてください、術士もいるのです!。」
偶然と機転、万分の一の幸運があればこそ逃げられた。
そいつらは猟犬のごとく執拗で、
悪魔のごとく狡猾で戦いなれしている。

「おまえは忘れている、ここは魔女の村だ・・・。」

まるで世間話のように、静かに仮面は杖を上げた。
いつの間にか、左右に一人づつ、
同じ仮面をつけた者が立って、杖を上げていた。

惨劇と血のにおいが、白い山肌を鮮やかに彩った。

・・・魔女の村・・・

数十の草葺の家が、寄り添うように立っている。
雪もなく、緑が茂り、
熟れた果実が、そこらじゅうに下がっていた。
ひどく暖かく、ありえない真冬の風景。

「おまえが新入りかい。」
歯が2本しか見えない老婆が、
以外にしっかりした足取りで出てきた。
「マルレーネ=ルミハンクスです。」
「アたしゃ『管理者』バーレイだよ。ほれ、服を全部脱ぎナ。」
とまどうマルレーネに、仮面の刺すような視線が向いた。
その視線だけで、意識が萎える。

しゅるっ
ほおを染めながら、全てを脱ぎ去ると、
ほとんどゆがみの無い美しい乳房が揺れた。
丸く見事な尻肉がぷるりと震える。
成熟した見事な裸身に、
チリ、チリ、
陰核と乳首に通された、金のピアスが軽い音を立てた。
「ひあああっ!」
バーレイが絶妙な力加減で、ピアスをつまんだ。
痛みではなく、快感がそこを刺す。
腰が萎え、陰唇がひくひくとあえぐ。
長い艶やかな腿に、ぬるんだ愛液がおびただしく流れた。
バーレイは、ひどく優しい微笑を浮かべていた。

村の中心に、一際大きな家があった。
入り口に、妖艶なまなざしと、淫らそうな厚めの唇の女性が座っていた。
妊娠しているのか、すでにかなり腹部にでていた。
何も言わず、ただだまって、
バーレイとマルレーネに頭を下げた。

中には、妙齢の女性や、とうの立ちかけたぐらいの女性が数人、
薄物をまとい、ぼんやりとしていた。
どれもかなりの美人だ。
そして、妊娠してる。

「彼女たちは、孕み女(はらみめ)。
子を産むのが仕事。
仮面をつけてるのが、守り女(まもりめ)。
村を守り、運営するのよ。
おまえさんにも、孕み女をやってもらうからね。
いかにも子を産めそうな腰つきだしねぇ、ケケケ」
「あ、ああ、あの・・・」
仮面がギラリとにらんだが、バーレイは制した。
「私、私・・・、ガルガランダの杖で・・・」
「へえ・・・」
醜悪な老婆の顔が、いやらしく笑った。

「長様は、そうは言ってないよ。」
「おさ様・・・?」

女たちの部屋のさらに奥、
石の壁がくりぬかれ、奥へ階段が続いていた。
乾いた、ひどく古い洞窟だ。
おびただしいすすが、天井を黒く汚している。

場違いな薄桃色のカーテンがたれ、
その奥に誰かが座っていた。
「ひ・・・・っ!」
死者の乾ききった肌、
骨の浮き出た顔、
落ち窪んだ眼窩、
結跏趺坐(けっかふざ)しているそれは、
ミイラだった。

その周りの空気がゆらめいている。
妖しい香料が、その部屋を循環していた。
おびただしい力が、そのミイラから出ているのが分かる。

『きた・・・かい・・・、孕み女・・・』
石が擦れ合うような声が、頭に響いた。

600年の昔、この地にたどりついた女がいた。

死ぬような辱めと、群がる男たちに嬲られつくした憎悪、
そして女として全てを破壊されつくした絶望。
『サプリーム・ソーサレス』
偶然にも、同じ境遇の女たちがここにたどりつき、
彼女と共にここを作り上げた。
女は、己のすべての力を振り絞り、ある目的に向けた。
死んだ後も、ミイラと化して村を、その目的を守り続けた。
村は雪にも覆われず、飢えた獣も来れない。
しかし、目的を外れようとすれば、
即座に外れた者は極寒の地に追い出され、
無数の虫や獣が襲いかかる。

「も、目的って・・・」
「強い子を残すことさ、魔力のね。」
いつか、この絶望と憎悪の全てを破壊できる強力な魔女。
ただ、それだけのために、この村は存在する。

マルレーネは、己がくるべくしてきた事を、
激しい悪寒と共に知らされていた。



チリン、チリン、チリン、
「はっ、はっ、あ・・・ああ〜っ!」
マルレーネの体に付けられた3つのピアスが、
軽やかな音を立てる。
豊満な乳房が、重たげに激しく揺れ動く。

犬のように四つんばいにされ、
後ろから野太いペニスが、刺し貫く。
汗に濡れた背中に、一筋の金髪が張り付き、
のけぞるたびに、ろうそくの火をはじいた。

農夫らしいたくましい男は、
目を血走らせ、絡み付いてくる極上の快感にただ夢中で突き入れる。
柔らかな尻肉、
それに指を食い込ませ、
濡れた秘肉が、己のものを飲み込んでいくさまを、
広げ、ねぶるように見た。
ひくつくアヌスに、指が当たり、思わずそれをこねくる。

「ひあああっ!」
ビリビリとした快感が、そこからも走る。
うめき、のけぞる桃色の肌、
幾重にも締め上げる快感を、亀頭が激しくこすった。
興奮が、ペニスを膨張させる。

開発され尽くした身体は、SEXの快感にたやすく服従し、
名も知れぬ相手に、夢中で奉仕し、尽くしていた。


「ガラガランダの効果を除く前に、しばらく稼いでもらうよ。」
嫌も応も無く、マルレーネは大きな村に連れてこられた。


白く細い指が、シーツを破れんばかりに掴んだ。
潤んだ目が宙をさまよい、
激しく揺れる体がしなやかにのけぞった。
桃色の火花が、背筋を走りぬけ、
がくりとくずおれた。

どびゅううっ、どびゅううっ、どびゅっ、どびゅっ、どびゅっ、

のけぞった男の、痙攣が激しく噴き上げる。
熱い体液が、膣にあふれる。

マルレーネは意識を閉じ、快感だけに身を任せる。
いまさら、何をためらうことも無い。
ゆっくりと身を起こすと、新たな男を口にくわえた。

マルレーネほどの美人は珍しいのか、
かなりの男が、繰り返し彼女を買っていった。

だが、男を受け入れ、悶えながら、
彼女の片隅に、カタカタと音を立てるそれがいう。
同じことじゃないのか、
あの男たちも、この村も、

だが、彼女が流す涙はすでに乾いていた。

新月が細く輝く夜、
眠れないまま、月を見ていると、
不思議な音がした。
カタン、カタン・・・
なんだろう、軽やかな音だった。
その音に呼ばれるように、彼女はあの洞窟へ上がった。

前と同じ、ミイラの姿があるだけだった。
カタン、カタン、・・・、音が続く。
意識が朦朧となり、目が閉じていく。
まぶたの裏に、薄ぼんやりとした明かりが点る。

少しとうのたった、美しい女が座っていた。
黒々とした髪と、黒曜石の瞳、
薄いベールを顔につけ、高い鼻を隠し、
一心にはたおりをしていた。

だが、その影は暗く深い闇と化し、
その中に無数の白いものが転がっている。

まだ若く白い肌をした女が、
全裸で身体を投げ出し、
おびただしい血を股間から流しながら、
焦点の無い目で、宙を見ていた。

褐色の肌の女性が、
壊れた人形のように脚を開き、
グサグサに裂けた秘所と
表情の無い顔を晒していた。

短い金髪の女性が、
ガラスのような目を涙で濡らし、
えぐりとられた乳房のあとを、無残に晒していた。

女、女、女、
そこに転がっているのは、
女だったものの残骸。
誰一人として、無事でいる者は無い。

カタン、カタン、カタン、
女たちの髪が、はたおりに続き、
黒髪の女が、それを織っていく。

「ひ・・・っ!」
凄惨な光景に、声も無く立ちすくんでいたマルレーネが、
それに気づいた。

すんなりとした手足、
愛らしい人形のような顔つき、
発展途上だが、美しい体つき、
その全てに獣の噛み跡とどす黒いアザをつけ、
頭髪をむしられ、血まみれの頭を晒している女性。
「ま、マーリヤ・・・!」
2年前にサプリムソーサレスに出て、
行方が分からなくなった妹弟子。

彼女の血まみれの頭からも、
一本の髪が伸び、はたに織られていく。

黒髪の女が、じっとマルレーネを見ていた。
マルレーネは悟った。
みな、あそこの、サプリム・ソーサレスの犠牲者なのだ。
『女たちの思いが・・・この村を作った・・・』
石がこすれるような声が、
再び頭の中に響いた。
『誰かが、終わらせねばならぬ・・・』
カタン、カタン、・・・
『この村が生んだ魔女か・・・、
あるいはそれを倒せる魔女か・・・』

カタン、カタタン、カタン、・・・
はたおりの音を背に、
マルレーネは幽鬼のごとき顔色で、洞窟を出た。

ふわり
あたたかなローブが、マルレーネにかけられた。
それはあのはたおりで織られたものと同じだった。
彼女を迎えた仮面が、そこにいた。

「私も・・・顔を焼かれ、女としての希望を全て潰された・・・」

マルレーネはその夜から、魔女となった。
いつか、この悲しみを終わらせることを、心から願って。


彼女の娘が、ジャージスと呼ばれる魔女を産み、
最後のサプリムに足跡を残すこととなる。

『この村が生んだ魔女か・・・、
あるいはそれを倒せる魔女か・・・』

FIN