平穏という、新しい時代の―――




















WIZENER-DS



〜 Preparation in the future. 〜





Introduction

 クルルミク王国────。
 代々、王ではなく第一王子が君主として最高執政権を持つ特殊な王制を持ち、巨大な龍神(ドラゴンルーラー)によって守護されし竜騎士の国。


 数年前。
 
「ワイズマン」と名乗る邪な魔道士が、継承の儀を執り行うべき「龍神の迷宮」の最下層を不法に占拠した。
 また、それに従属するかのように。
 法を犯した不心得者がこぞって逃げ込み、各層で蹂躙の限りを欲した「ならず者」の群れ――
「ハイウェイマンズ・ギルド」が興る。

 この二つを討たんと、幾人もの腕の立つ冒険者が迷宮の闇に挑み、当時、この国の第一王女だったった
「セニティ王女」を始めとする、数多くの犠牲の果てに、件の魔道士と、ギルドのボスは討ち取られ、一応の解決が得られた現実は人々の記憶に、まだ新しい。
 その後、王国精鋭である騎士に露払いされた「龍神の迷宮」を抜け、儀式を終えられた
「ハウリ王子」が新・執政者として地位に着き、この一件とグラッセンとの戦争で疲弊した国力を回復させたことも、後の国に紡がれる正史となるはずである。

 ただ。それは今――なるべく『かつて』と前置きが置かれる。

 今の時代の「平穏」を飾る言葉でしかないと、誇示する王国の意図であるとも言え。
 或いはまた。
 戦時の犠牲の上に成り立つ忌まわしき件を、このクルルミクで生きる多くの人々自らが、意図的に記憶から薄らせる為に………とも言えた。


 ……だが。


 ある『噂』が流行り始めたのも、また……そんな時代(ころ)だった。
 いったい、誰が……そして何が発端だったのかは、皆目解ってはいない。
 いつの間にか。
 その『噂』だけが実しやかに――クルルミク王国の「城下」に広まっていた。


 
討たれ、死んだはずの『魔道士・ワイズマン』が。
 亡霊となって迷宮内を彷徨いつつ……
『地下11階層』への入り口を探している――と。


 あの当時。
 理由・目的不明のまま、数年にもわたり迷宮を占拠した魔道士・『ワイズマン』。
 過去と成り果てた今は、それを詳しく知る者は少なく。
 その本人が討たれてもなお、現実を受け入れることが出来ずに亡霊と成り果てているなら、その真意を語れるものはいない。
 まして『地下11階層』などという史実にもありもしない内容が、信憑性を更に狂わせていた。

 王国側が根も葉もない「亡霊騒ぎ」の『噂』と調査・説明を放った分、疑念が更なる『噂』を呼ぶ。
 誰かは
『地下11階層は、魔道士が溜め込んだ財宝を隠し場所だ』と囁き――またある者は『魔道士が復活する為に、かつての魔術の英知を封じた場所ではないか?』と恐れ慄いた。
 果てには
『龍神の秘密――当初のワイズマンの目的は、その場所にあったのでは…』と論じ合う賢人たちも出る始末。
 そしてそれは、当然のごとく。
 押さえられぬ欲望が形を成す歪んだ富と名声のために――或いは、依頼で迷宮を探ろうとする冒険者達(C)が、城下の表面には見えないまま密かに群がるように興る。
 それらは、『龍神の迷宮』に今だ数多く残る『ハイウェイマンズ・ギルド』が成した――今では封鎖されていたはずの経路から、不法に侵入を繰り出すことに拍車をかける。

 また、抗するように。

 状況を知った王国側の一部の者は、執政者となった王子が試練を終えてまだ数年という間もなく――先行きしばらくは、ただ護るべき『聖地』となる場所とはいえ、それを土足で踏み荒らされることを杞憂する故に。
 秘密裏のまま騎士達(L)に命じ、各階層を警護するための特命騎士団を組織して、その監視を始めたのだった。


 いまだ人知れず――地下に澱むように蠢き遺っていた、『亡霊』の存在を知らずに……

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 この物語は。
 クルルミク王国に訪れた、『平穏』という短命の陽射しの中で僅かにできた影のように。
 史実として遺ることも、語られるコトも――記憶にすら、とどめられるコトのない、歴史の布石となる物語である―――。








WIZENER-DS(Dawn Story)


サブタイトル

〜 英知への布石 (Preparation in the future.) 〜








(Coming Soon……)





 初めまして。
 或いはお久しぶりです。別HPで管理人を行っている Arie と申します。

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

 あの企画が終わって……もとい、募集が開始された頃から、ほぼ一年になりますね。毎晩、更新を楽しみにして結果にドキドキしていた頃が、懐かしくもあり、ついこの間のような感じもします。私もまだあの興奮が忘れられない一人だということが、なんだか誇らしくあったりもします。
 最近でも、まだ×2 投稿作品が続く人気のようで、そんな感覚にあやかりたいと思いつつ、今回の作品を投稿させていただきました。
 以前から考えていたIF的物語なんですが、元ネタは「ウィザードリィ4」より――発想は未討伐だった魔物「イッケ」「ブックロウ」「プッシーD」だったりします。その他にも、「ワイズナー」には未解決だったネタがあったりするので、妄想が膨らみっぱなしです(笑)。
 HPのサーバーの容量があふれて、ただいま自サイトを引越しの最中ですが、この物語を今年中に綴りたいと考えておりますので、またお目にかかることがあればよろしくお願いいたします。

 「MH'sE」の管理人 Arie でした〜