砂になった女の子


フェリル:ぷはーっ! ここのフルーツジュースはいつも新鮮で生き返るなぁ。
ウィルカ:あはは。フェリルちゃん、なんか中年っぽいよ。
タン:うん。
フェリル:ぐさっ!?


フェリル:そういえば、ふと思ったことがあるんだけど。
タン:ん?
ウィルカ:どうしたの、フェリルちゃん。
フェリル:フリーデリケさんがさ、おバアちゃんって呼ばれてるのはさ、長い間生きてきたからだよね。
ウィルカ:ええ、そうみたいですね。
タン:ん。そうだね。

フェリル:でも、長い間生きてておバアちゃんならさ。
タン:あ、そっか。それならウィルカも、おバアちゃ―――






はい?


フェリルは、なんでもございません。
タン:……(降参ポーズ)
ウィルカ:うふふふふふ。


フェリル:こ、怖かった……
タン:怒らせ、ちゃったかな……
フリーデリケ
オンドゥルルラギッタンディスカァ!!
フェリル:わぁっ!
タン:フリーデリケ!
フリーデリケ:懺悔のお時間ディス! 二人とも胸に手を当ててよーく反省するのです!
フェリル:え? は、はい。
タン:う、うん。

フリーデリケ:考えてみるデス。例え長い間生きてても、人は人。女の子は女の子なんデェス! 友達からお婆ちゃん扱いされたら、あなた達はどう思いマスカ!?
フェリル:っ……
タン:う……

フェリル:(そういえば、ウィルカさん、ちょっと悲しそうだったかも……)
タン:(他人と違う、って視線、痛い、よね。タン、半分獣人だから、少しわかる……)

フェリル:わ、私……やっぱり謝ってきます!
タン:た、タンも!!

 駆け出していく二人。

フリーデリケ:うんうん。そうして素直に謝れる子だから、おバアちゃんは君たちが大好きディス。
ミラルド:(ボソッ)変態
フリーデリケぬぁんですって!?

 近くで飲んでいたミラルドとでっかいエルフが対峙する。

フリーデリケ:おのれ! 今日こそは積年の決着をつけるディスよ!?
ミラルド:嫌よ。今日はそんな気分じゃないしね。
フリーデリケ:ほほう、怖気づいたかこわっぱめ!?
ミラルド:こ……。ふん。それより、あなたはいいのかしら。
フリーデリケ:ム?
ミラルド:あなたは“おバアちゃん”でいいの? ってことよ。
フリーデリケ:………………

 本当に長い年月が過ぎて。
 その女の子は風化して、砂のように、どこかに消えてしまったから。
 心の中の、どこを探してもいないから。

ミラルド:思ったんだけど。あなたが女の子を好きな理由って、もしかして……
フリーデリケすとおおおおおおおっぴ!!

 びしゃーっ

 フリーデリケは手にしていたグラスの中身をミラルドにぶちまけた。

ミラルド:………………

 びしゃーっ

 ミラルドは手にしていたグラスの中身をフリーデリケにぶちまけた。

フリーデリケ:………………

 高まる緊張。あわやいつものように竜虎激突大決戦が始まるかと思いきや。

ミラルド:ふん。
フリーデリケ:ふん。

 二人はお互いにそっぽを向くと、自分の顔を拭い始めた。

フリーデリケ:今日は勘弁してやるディスよ!?
ミラルド:別にいいわよ、疲れるし。
フリーデリケ:付き合いに疲れた友人の声色!? どうしたの、今日は本当に大人しいね。
ミラルド:別に。ほら、あの子たち、ちゃんと謝ったみたいよ。

 向こうのテーブルを見れば、フェリルとタン、それにウィルカが、いつものように笑いあってる。
 それを見つめるフリーデリケ。

フリーデリケ:よかった。

 優しい笑顔。遠いものを見るまなざし。
 大事なものが壊れないでよかったと、安心するような――

ミラルド:(ボソッ)そんな泣きそうな顔してる相手に、怒る気になんてなれないわよ。
フリーデリケ:ん? 何か言ったディスカ?
ミラルド:別に。それより覚えておきなさい。私が怒らなかったのは、今日の貴女は私のことをあの名で呼ばない貴女だったから。それだけよ。

 そう言って席を立ち、去っていくミラルド。
 首をかしげるフリーデリケ。

フリーデリケ:あの名って……『からみてー』?
ミラルド:………
やっぱりぶっとばあああああす!!!

 踵を返して猛然とフリーデリケに飛びかかるミラルド。

フリーデリケ:ふふふ、やっぱりそうこなくっちゃねブホォッ!!?

 巨体が吹っ飛ぶ。いつもの光景。
 殴り合いながらも、何故かその大きなエルフは嬉しそうに笑っていた――




最初はウィルカ嬢のネタイラストにちょっとした会話をつけるだけのはずが、こんなことに。
わりとあちこち勝手な想像が入ってます。

おまけ:プランバーのなく頃に

うふふふふ
              (イラスト:無人さん)
フェリル:な、何も言ってないよ。
タン:う、うん。何も……。
ウィルカ:嘘だッ!!
フェリル:ひぃぃっ! その手に持った鉈は何!?
タン:………(降参を通り越して失神)


フェリル:……という夢を見て眠れなくなったから、一緒に寝ようって? よっぽど、あのときのウィルカさんが怖かったんだね、タンちゃん……ふわぁ(欠伸)
タン:…………(ガタガタガタ)