生まれた時から不幸な者、裕福な者、醜悪な者、愚鈍な者、聡明な者。生まれながらにして個々の素質は往々に違いがあり、またそれは年月を重ねるごとに明確な差として現れてくる。
 神の元に誰もが平等であるという言葉は当然ながら、欺瞞に満ちており、悲しいかな生きとしすべての存在は、個性という名の器によって不平等を強いられていた。
 だがしかし、地下迷宮におけるすえた臭いのする、光の届かない玄室。
 そこにおいてはすべての女性達が皆、平等になるという奇跡が行われている場所でもあった。ここには生まれも育ちも関係なく、この場所に来た者はすべからず『愛』を与えられていく。
 その愛がけっして女性達にとって望む物では無いにしても、悲しいぐらいにそれは等しく平等に与えられる。
 そこにはただ一人の例外も無く。

「んぐっ……んぐううぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」
 少女の口には特殊な道具で作られたボールギャグがくわえさせられ、所々に空けられた空気穴からはよだれがダラダラとこぼれている。必死に空気を吸い込もうとするが、その半分は自身のよだれにふさがれているという皮肉な状況を作り出していた。
 空気がしっかりと吸い込めない状況で少女は意識をもうろうとさせながら、その身体中を走り抜ける電撃めいた感覚に肢体をくねらせる。
「さーてと、タンちゃんはあとどのぐらい耐えられるかねー?」
 男達の一人がポンポンとタンと呼ばれた少女の頭を撫でては、ニッコリと笑う。
 そのタンの身体は、紐で椅子にしばりつけられては自由を完全に奪い取られていた。全身にベットリとからみついている白い液体は、玄室にたむろっている男達が幾度も幾度も吐き出した物だった。化粧のように顔全体に白い液体が塗りたくられては、両の瞳からこぼれた涙と混じって悲哀さを強くかもしだしている。
 少し視線を下に落とすと、当然のように凌辱の残滓が大きくからみついた性器が、その秘肉をはみだしながらうごめいていた。まるで貝のヒモみたいにビラビラとはみだした肉が悲しみを主張しながらも、抱え込みきれない精液を吐き出している。
「ぅぁ……ゥ、んぐぅ…………んぐぐっ、ん……むぅ……」
 そして、タンの股間の中央部分。秘肉の波をかきわけた先のやや下部にある、膣口には少し太めの器具が挿入されていた。
 とある貴族が考案し、それを酔狂な魔術師が作り上げたという、拷問用に使われる特殊な道具。周囲の魔素をかき集めては、それをエネルギーとして延々と振動を繰り返すという、非常にイヤらしい目的の為に作られた道具である。
 スイッチを入れれば半永久的に、道具そのものが破壊されない限りは動きを止める事が無いというモノの為、貴族は自らが疲労する事なく長時間の拷問をする事が可能だったという事だ。
 そして、その道具は同じようなモノがタンの尻穴……肛門にも挿入されていた。こちらも穴の入り口には凌辱されたであろう、精液の残滓が大量にこびりついては派手に汚れている。
 未だにその色だけは可愛らしい桜色をしているが、幾度も幾度も汚されたであろう性器は使い込まれた女性を想像するぐらいに肉がめくれあがっていた。
「ぁぅぅ…………ぅむぅ……」
 タンの愛くるしい印象を与えていた表情は、もはや虚ろなまでに無気力さを漂わせるようになり。 今もなお必死になって助けを求めているのだろうか、口元からは悲痛なまでのくぐもった言葉がこぼれ続けていた。
 乱れた髪が張り付いた頬や額は、涙のみでなく精液も混じった液体によってぐしゃぐしゃに汚れている。
「ぅぉぉ……ぉぁぁぁ……ぁ……」
 自由に声が出せないという状況を続けさせられている中、タンはそれでもわずかな力を絞り出すようにして首を左右に振る。男達に凌辱され続けるのは嫌だと、これ以上は性器も肛門もいじめないで欲しいと、言葉にならない言葉で訴え続けていた。
 だが、普通に言葉で泣き叫び訴えた所で辞めるような男達では無い以上、言葉にならないタンの意思を汲み取ろうと考える人がいるはずも無く。
 問答無用とばかりに拷問具で嬲られ続けるタンに、希望というモノはすでに見えなくなっていた。
「そろそろ三十分って所か、なかなか耐えるモノだな」
「いや、そろそろ限界なんじゃねーの? その証拠に、さっきからタンちゃんってば身体をブルブルと震わせちゃってるぜー」
 男達の指摘は、ほぼ的を射ていた。
 股間の部分から波紋のように流し込まれてくる凶悪な感覚に、今まで幾人もの女性達が陥落してきた。それを性的な耐性のついていなタンが今まで耐えていたという事が、奇跡のようなモノである。
 頬はだらしなくゆるみながら紅潮し、男達の前でさらされている股間はいまにも弾けてしまいそうな緊張感に襲われていた。
「う……ッ、うぐ……ッ。ぐぐぅ……んむっ、んぐむぅ…………んっ」
 男達の視線を感じていながらも、タン自身は男達の誰かをあえて見つめるというような事はしていなかった。むしろその視線は股間から沸き上がってくる、否定しきれない衝動を抑えようと揺れるばかり。
 腰がブルリと前後に震えて、内股のあたりをベタベタに汚している白濁液はやや水分を失って粘度を高めている。ヌチャリと音を立てては、床へとこぼれ玄室の中で淫靡な楽器と成り果てる。
 タンの秘洞の奥からは今もまた器具による刺激に反応しては、新しい密が分泌されてあふれだしてくる。あたかもごちそうを前にしてヨダレをこらえる事が出来ない子供のように、未知の快楽にタンの肢体は純粋に応えている。
 徐々に高まっていくリズム、それはオーケストラのように快楽のシンフォニーをタンの四肢に響かせていく。その楽曲も今や、クライマックスへと達しようとしていた。
「う……ッ、うむぅ……」
 男達に嬲られ、犯され続けている時には決して到達しなかった感覚。それはタンがとある魔術師によって引き出された、ただひとたびの奇跡めいたモノだった。
 小さく声を漏らし、身動きが自由に出来ないタンの身体がわずかに跳ねる。それと同時に、男達の精液によってわずかに膨らんでいた下腹部から音が響く。
「うぅッ、んむぅ……んっ、んんっ、んむ……ッ、んぐぐぅ……んっ、んんぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ」
 それが何の予兆であるのか、タンは自分の身体だけに理解しきっていた。内側から突き上げられる悪夢のような象徴は、その羞恥心を確実に粉々に打ち砕く弾丸として。
 せり上がる内気圧を押しとどめるには体力も気力も、あまりに消耗している。
 それを止める術など、今のタンには存在していない。
「んぐうううぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
 激しい水音が、玄室の中に響き渡った。
「ずいぶん頑張ったんだが、これが限界か……派手に匂うな」
 菊座へとねじ込まれていた道具は迸るタンの汚物に吹き飛ばされ、さらに大量のモノがまき散らされていく。さらに少し上にある花弁もわずかに開かれては、独特の臭気を漂わせて尿も放たれた。
「んぐぅ……ぅ……むぁ…………ぅ」
 意識が半分飛びながら、どこか惚けた感じに視線を漂わせてタンは口元から甘い吐息を漏らす。床には二種類の汚物が混じり合いながら、そのテリトリーを増やそうと面積を広げていく。
「……これ、誰が掃除すんだろーな。ったく」
 男の一人は軽く愚痴るが、別の男はそんなタンの様子に目を輝かせる。世の中汚物が好きでその処理もよろこんでやるという人間が、極少数ながら存在するらしい。
 そういった男達の好奇の瞳にさらされる中で、タンは自身の理性が音を立てて砕け散るのを自覚しつつ。

 最後に、いつか自分という存在を与えてくれた魔術師の顔を思い出していた。