<オニヘイvsスピリアさん>

 1.
 4月8日
 その日、巨大詐欺グループのボスであり、奴隷商人でもあるオニヘイは朝から不機嫌だった。
 オニヘイがコトネを迷宮に放り込んでから一ヶ月。未だにコトネは元気一杯で迷宮に挑み続けており、最近は、戦士としての才能を開花して、メキメキと実力レベルを上げつつもあるためだ。

 「面白くねー!!><」
 「ボスー」

 もっと早く捕まえて、犯して、性奴隷にしてコトネも彼女の商売も全て奪い獲ってやりたいのに、計画は一向に思い通りにはならない。
 それどころか、焦ったばかりに、表の顔を潰されて、今は町の隅っこの小さな仮事務所暮らし。

 「大体こんな狭い所、俺の生活レベルに合ってねえんだよ!!(;゚Д゚)」
 「仕方ありませんよ、とにかく今は、ほとぼりが冷めるまでひたすらガマンです」
 「クッ!」

 しかもそれだけではない。
 今のオニヘイの、もう一つの、大きな悩み。
 それは、コトネがパーティの仲間である、賢者、フォルテと急激に仲が良くなっていること。

 「なんでキスするかなー? コトネちゃんのファーストキスは俺が狙っていたんだぜ?(;´Д`)」

 …本当にあの賢者は。
 一国の内親王と言う身分でありながら、それを隠そうともせずに迷宮に挑み続けていると言うだけでもリスクなのに、コトネのファーストキスまで……
 と言うか身分を隠していないのは、天然な性格故なのだろうか…

 「くそっ!」

 あの賢者、今度町で会ったらそのまま拉致ってくれる…。思わず、物騒なことを考えてしまう。

 「ボス、本日の新商品が到着しましたよ」
 「ん!? お、おお。新しい女か。今度はどんなのだ?」
 「ギルドニュースによれば、なんでもハイウェイマンズギルドのならず者たちが、2週間もかけて漸く墜としたと言う、エルフの若奥様です」

 …ああ、あの噂の。

 その女の名前はオニヘイも知っていた。
 いや、ワイズナーに参加している冒険者たちの中でもエルフ自体が少ない上に、さらに人妻ともなるともっと少ない。
 そう言う意味では希少価値の極めて高い"商品"であるだけに、密かに狙ってもいたのだが…

 「でもお前、その、堕とすまでの調教2週間って何の冗談だ?」
 「それがどうやら、まんざら嘘でもないようで…」
 「ふん…ま、とにかく会ってみるか」

 とりあえず営業用の伊達眼鏡をかけて、スーツのネクタイを締め直すと、物影からこっそりと覗いてみる。噂の若奥様は、どこかぼんやりとした風に周囲を見回しており、逃がさないように監視をしつつお茶を出す部下たちも、微妙に気を使っているように見える。

 「ふうん。あの人が…意外と可愛い顔つきしてんだな」
 「ですね。なんでも冒険者随一の癒し系と言う話です」
 「って癒されるなよっ! …けど」

 むらむらしてきた。
 確かに可愛い。
 ウソか本当かは知らないが、2週間も調教されて身も心も疲れ果てている…はずなのに、妙にぽやぽやしているその姿は、ぶっちゃけ、「墜ちた」、と言う風には見えない。

 「だはははは、気にいったぞスピリアちゃん! では早速、いつものように売飛ばす前に味見をさせてもらうとするか!」
 「ボス、またですかー!?」
 「五月蝿い! これはボス特権だ! いいからお前はベッドの用意しておけ、すぐに行くからな!」

 がしっと小突き、部下にベッドメイクを指示すると、眼鏡をかけ直して待たせているスピリアの方へと向かう。
 既に、色々な意味でやる気満々である。
 そんなボスを、部下は少し呆れ顔で。だがそれでも素直に従う。

 「ですけれどボス、気をつけて下さいよ? 噂が本当なら…」
 「この俺を、誰だと思っていやがる。いいからさっさとしろ!」
 「りょ、了解です!」

 全く、何が二週間も調教しましただ。
 最後に生き残ったならず者は四人?
 そんな都市伝説にビビるオニヘイさまではないわっ!



 2.
 「初めまして奥様」

 にこっと営業スマイルを見せつつ、オニヘイはスピリアに話しかける。
 この組織の場合、手に入れた奴隷をオークションを開いて売ると言うことはしていない。組織が個人情報を握っている顧客名簿に登録してある者に対して売るか、組織の経営している店で働かせるか、場合によっては直接部下にしてしまうか…
 さっと目を走らせつつ、目の前のエルフの若奥様と言う、世にも珍しい"商品"の鑑定を行なう。
 こう見えても、この男は【賢者】であり、鑑定はお手の物だ。

 「(うむ…見た目は申し分なし…性格も良さそうだし、俺様好みの乳のライン…うむグッド! 後は…、やはりあっちの具合だな)」
 「あのう…?」

 スピリアは、じろじろと見つめられて少しうろたえているが、オニヘイは全く意に介さずに鑑定を続けている。この場の主は自分であり、この女も"商品"に過ぎない。それが態度に溢れ出ている。

 「奥様、ようこそ当協会へ。我々は貴女を歓迎しますよ」

 腹の中で黒い算段をしながら、顔と言葉使いはあくまで営業用を貫き会話を続ける。そうする内に、次第に打ち解けてきた風でもあった。勿論これがこの男の手段であり、こうして、身も心も堕ちた女を安心、そして油断させることが目的なのであるが。

 「――――そう言うわけで奥様。
 奥様の売却先としましては当協会の顧客の他に、会員制の人妻専門の奴隷サークル、それに町の高級レストランでのウェイトレスへの就職口等、実に多岐に渡るわけでございますが、我々としましては、できる限り奥様のご希望にそった就職口をご用意させていただくつもりでおります」

 言葉遣いは柔らかいが、基本的に売り飛ばすと言う前提で話をしている。
 堕ちた女をモノとしてしか見ていない。

 「私は…やはり売られてしまうのですね…」
 「ご安心ください。売られる、と申しましても当協会の場合、管理も設備もしっかりとしたところにしか売りませんので。
 例えば娼館に勤めることになった場合、衣食住完備。給料も月々支払われます。年に2回の昇給と健康診断もございますし、奥様の働き次第ではよりランクが上の娼婦を目指すこともできます。
 我々はあくまで自由契約がモットーですので、強制…と言うことはございません。こちら、これまで当協会から"出荷"された"商品"たちから届きました、喜びのコメントです。
 どうです? 皆さん、女としての本当の幸せを得たと言う風でございましょう?」

 それらのレポートや映像媒体は、組織が宣伝に使用しているモノであり、これまでの売った女たちのその後が鮮明に記録されていた。
 …無論、全ての女がこうであるわけではないのだが…そこは勿論隠す。

 「所で奥様。どこへ売却するにせよ、一度奥様の具合を確かめないといけませんね」
 「え? え?」

 すっとスピリアを立たせると、オニヘイはするすると着衣を脱がしていく。

 「あの!? な、何を!?」
 「さあさあ、こちらへどうぞどうぞ」

 いつの間にか全裸に剥かれてしまっているスピリア。
 マシンガンのような営業トークを繰り広げつつ、完全にペースを握ったオニヘイは、そのままスピリアの肩や尻を撫で回しながら、ふらふらと奥の部屋に連れ込んでしまった。

 「ああ、そんな…いけませんわ」
 「いえいえ、大丈夫ですよ奥様。もうこんなにぬるぬるに濡らしているくせに何を言っているのですか?」

 だははははと心の中で笑いながら、嘘を並べ、スピリアを追い込み、そのままベッドの上に投げ出すと、一気に覆いかぶさっていく。

 「人妻かー、久しぶりだぜ」
 「ひいいいいいいっ!」

 そうして最早欲望を隠そうともせずに、その白い裸体にのしかかった!

 「な、何をなさるのですか!?」
 「だはははは、人妻! 人妻!」

 ベッドの上に投げ出された肢体を後ろから抱きしめると、エルフにしては大きめの胸をむにむにと揉みだす。吸い付くような手触りが素晴らしい。

 「おお、さすが人妻の乳の手触りは素晴らしい!」
 「な、何を…ああー!」
 「うははははははははは! 大丈夫だスピリアちゃん、安心して全てを任せろ。俺は優しいならず者だからな!」

 豊満な乳房をこってりと揉み解してやりながら、すでにぐちょぐちょの秘所に手を伸ばす。

 「はあ…うんっ…」

 スピリアは、なんとか流されまいとして送られてくる快楽に耐えているが、乳房がオニヘイの両手で中央に寄せられるようにしてこねだされると、きつい感触に思わず声をあげてしまう。

 「む。なかなか頑張るな。ならこう言うのはどうかな?」

 オニヘイはスピリアの堅くなった乳首を、きゅっと摘み上げた。

 「んうぅぅっ!」

 びくりと腰がはねた。その衝撃で、内腿から蜜がとろりと流れてくる。

 「うわははははは、まだまだ行くぞ!」

 閉じられた内腿の間に強引に手を差し込み、その奥をぐねぐねと動かした。

 「ああうっ!」
 「おお、凄い! いきなりどろどろだぞスピリアちゃん」
 「あっ、あああっ…」

 スピリアは嫌々と首を振るが、オニヘイの指がクリトリスに かすっただけで、甲高い声が出てしまう。

 「はうう…」
 「ふふん、すっかり準備OKのようだな? それでは、いただきます!」

 蜜で溢れるスピリアの中へ、オニヘイはずっぷりぬるりと挿入してやる。

 「ああああーっ!」

 スピリアは挿入の刺激だけで全身をビクンと大きく撥ねさせ、腰を揺らめかせてしまう。

 「あっ…あああ…そんなぁ…だめっ、だめです…っ」
 「だはははは、こんなにぐいぐいと締め付けて何を言っている!」
 「あっ、ち、ちが…」
 「何が違う? とうっ!」

 オニヘイは容赦なくスピリアの中に自らのモノを繰り出すと、刺激によって性感に火のついたスピリアも喘ぎ声をあげて、自ら腰が動き出してしまう。

 「あっ、あっ、ああっ!」
 「む、急に締め付けが変ったな。スピリアちゃん、素晴らしいぞ! 100点満点だ! それでは発射GO!」

 突然締め付けの良くなったスピリアに気持ち良くなってきたオニヘイは、一回出して落ち着こうと素早く腰を動かし出した。

 「んんあぅ! ああ…あ ああっ…!」
 「発射―!」
 「あ、ああ…」
 「ふー、すっきりまろやか。グッドだったぞスピリアちゃん。
 この調子ならきっと良い奴隷になれるんじゃねえの? それじゃ早速売却さ―」

 どぱぱぱっ! と、オニヘイは元気良くスピリアの中に放出すると、満足したとばかりに一息つく。
 ところが立ち去ろうとしたその時、突然後ろから腰を抱きすくめられた。

 「おいおいスピリアちゃん、もう良いって…おおっ!?」
 「ん…フウッ・・・ふう…」

 今の情事ですっかり火のついてしまったスピリアは、なんと自らオニヘイの上にまたがると、そのまま自分の中へと導いていく。

 「ふん、さすが人妻。 一発だけでは満足出来ないと言うか!? 愛い奴愛い奴」

 スピリアの反応に気をよくしたオニヘイもすっかりその気になってしまうと、がしがしと突き上げはじめる。

 「うはははは…む!?」

 だが絶好調で動き続けていたにも関わらず、なにやら突然、微妙な違和感を感じ始めた。

 「な、なんだ? 急に締め付けが…む…むむ…むむむっ!?」

 どぱぱっ!

 「おおおおっ!?」

 なんとオニヘイは今度はたったの1分で発射してしまった!

 「バカなっ! ありえん!」

 持続力にも耐久力にも自信があるこの自分が・・・信じられないのだが、これが大変気持ちいい。

 「んはあっ、んはっ、んはあっ、ああんっ、あんっ、ああんっ、」

 スピリアも完全に出来上がってしまい、オニヘイの上で自ら腰をがすがす動かしている。

 「おおおおっ!? す、凄い締め付けだ! 凄い圧迫感だ!
  うはっ、凄い、この人妻凄いよ! さすがエルフの若奥様!」

 具合の良さにすっかり満足したオニヘイは、下からスピリアの胸に手を伸ばすと、そのままうねうねこってり揉み解す。



 「あっ、あっ、あっ!」
 「ぬおおおっ!」

 またもどぱーっと出してしまった。いつもの倍以上のペースで放出してしまっている。

 「ぬううう…なんと言う良さ。これがこれが噂の人妻…。
  だ、だが負けんっ! この程度で負けーん!」

 実を言うと、あまりの具合の良さにちょっぴし負けそうになってきたのだが、ここで負けては並のならず者と同じになってしまうと言うプライドがオニヘイを奮い立たせる。
 だから俺は負けぬ! と気合を入れ直すと、今度は四つんばいにして背後からがしがしと付き始める。
 たふたふと前後に揺れる乳房。茶金の髪が激しく波打つたびに、ぎゅうっと強く締め付けられるのを感じて、全て持っていかれそうになる。だが、ボスとしてのプライドが己を支え続けた。

 「うりゃー! GOGOGO!!」
 「うっ、うっ、うんっ! んっ! んうううっん!」
 「だははははは! 思う存分イってしまえい!!」

 ぬるぬると、極上の絡みつきで包まれる膣中に、どぱぱぱぱぱっと熱く、煮えたぎるような白濁液をぶちまけると、熟れた人妻の肉体はその全てを飲み込みながら、絶頂へと追い込んで行く。 何度も、何度も。何度も。

 「ひっ、ひいっ、はあっ! あっあっあああああああん!!」
 「ふう、これで…」
 「んふう…もっとぉ…」
 「な!?!?Σ(゚Д゚;)」

 既に情事が開始されてから数時間が経過すると言うのに、未だに果てる様子の無い人妻に、さしものオニヘイも焦りだした。

 「こ、この人妻っ!」

 …と言うかいつの間にかペースを握られているような…
 正直、自分は他人よりも智謀でも、精力でも、ついでに滅多に奮う事は無いのだが腕力にも自信がある。
 人を従えて大きな組織も運営している自分が…自分が…いつの間にかペースを握られているだなんて…

 「ありえんっ!!( ゚Д゚)クワッ!」

 だが、そこはやはりボス。
 こうなったら意地でも自分の力でこの人妻を屈服させてくれると、またも気合を入れなおして向き合う。

 「うっ…お、お、お、おりゃー!!」
 「ああああああああああっ!」
 「ウりゃりゃりゃりゃりゃらやりゃ!」
 「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」
 「とりゃー!」
 「あああああーっ!!」


 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・





 3.
 「…ボス?」

 …しばらく経って。
 いつまで経っても部屋から出てこないボスを不審に思った側近の男が、そっと外から呼びかけるのだが反応が無い。

 「ボス…まさか!?」

 やはりあの都市伝説は本当だったのだろうか? 慌てて部屋に飛び込んだ男の目の前の光景は衝撃的だった。

 「くっ…くっ、ど、どうよスピリアちゃん…、いい加減参ったって言っちまえよ…!」
 「あふん…んぅああ…ああ…も、もっと…もっとくださぁい…」
 「ぬううう、うは…うははは!」

 …情事が開始されて、既に丸1日以上が経過すると言うのに、………まだやっていた。
 しかしボスも、それにここに来る前に長期間の調教を受けていたスピリアも、もう限界のようである。

 「ボス! もうそれぐらいにしておきませんとお身体がっ」
 「何勘違いしてやがる。まだ俺のバト(ry

 そう言いながら、オニヘイはさらに腰の動きを激しくしてスピリアを突き上げるのだが、それも長くはもたない。

 「あっ、ああー!」
 「うおおおおおおっ! も、もう締め付けるなー!」
 「あっ、ああ、あっあ、あーっ!」
 「だは…はははは…………」

 気力を振り絞り最後の一突きを繰り出すオニヘイ。
 だが、尚求めてくるスピリアの貪欲すぎる締め付けについに耐え切れなくなり、また話かけられたことで集中が途切れてしまい、とうとう崩れ落ちてしまう。

 「お…おう!? く…」
 「ボス!? ボス!?」

 スピリアから離れ、ベッドの上に大の字に身体を投げ出すオニヘイ。

 「は…むっ…んん・・・」

 しかしスピリアは躊躇なく圧し掛かると、オニヘイの一物を口に含んだ。

 「お…も、もお、いいっつうの…」

 はむはむとくわえ込み、艶かしく動く舌。吸い込まれるように喉奥に滑りこんで行き、口腔で縦横無尽に愛撫する。

 「ぼ、ボス!? ボスが危ない!」
 「ああン…だめぇ…」

 側近の男は慌ててスピリアを抱え上げ、ボスから引き離す。
 名残惜しそうにオニヘイのモノに腕を伸ばすスピリアだが、これ以上はボスが危ないと判断した側近の男は、慌てて部下たちを呼び出すと、なんとか別の部屋に運び、そのまま睡眠の魔法をかけて眠らせる。
 オニヘイとスピリア。二人の性豪の初対決は…こうして、ボスの敗北に終わった…。


 「ふう…。ボスが負けるとは…やはり、噂は本当だったと言う事だろうか…………やれやれ……」



 4.
 「ねえねえフォルテ、聞いた? おっちゃん入院したんだって!」
 「まあ…一体何が…」

 それから数日後、無事に帰還してきたコトネたちは、オニヘイが入院したと聞いて驚いている。
 お見舞いに行こうかとも思ったのが、入院の理由があまりにもバカバカしくて、さすがの部下たちもそれをコトネたちに話す気にもなれない上に、ボスから止められているので、コトネとオニヘイ、見事に二人の間で板ばさみである。

 「えー!? なんでお見舞い行っちゃいけないの!? だって心配じゃない!」
 「オニヘイさんは相当に具合が悪いのかもしれませんね…」
 「め、面会謝絶になっちゃうぐらい悪いの!? ねえ、おっちゃん一体どうしたのー!?」

 部下たちが何も話さない、いや、話せないためどんどん少女たちの中でオニヘイが重病人に仕立て上げられていく上に、既にコトネは泣き出しそうになっていて、それをフォルテがよしよしと優しく慰めている所だ。

 「フォルテー…おっちゃん死んじゃったらどうしよう!?」
 「だ、大丈夫ですよコトネさん。あのオニヘイさんがそんな…」
 「あ、あのー…いや、ボスは別にそう言うわけじゃあ…」
 「じゃあなんで会いに行っちゃいけないのー!?」
 「あうううう…」

 …言えない。

 …言えるわけがない。

 性奴隷として売り飛ばそうとした女を味見して、ヤリすぎてダウンしたなんて、そんな恥ずかしいこと言えるわけがない。
 しかもその女はあの後すぐに回復して売られていったのに、ボスは未だに回復しないで寝込んでいるなんて絶対言えない。

 「どうしようフォルテー! 私心配だよーっ!!」
 「しっかりして下さいコトネさん。こう言うときこそ、あなたがちゃんとしていませんと…」
 「う、うん…」

 …ああ
 本当にバカなんだなあ、この娘は…(つД`)

 …などと言う事は口が裂けても言えない、オニヘイの部下であった。


 「うーん…うーん…とんでもねえ女だ…くそ…俺が…この俺が…足腰立たなくなるなんて・・・・」
 「ボス…」
 「そりゃあ、俺だってちょっとやりすぎたけどよ…淫乱すぎる人妻は何も生みやせん。火は森を一日で灰にする。水と風は百年かけて森を育てるんじゃ…。わしらは水と風の方が ええ」
 「ボス…何を言っているのかわかりません…」
 「うむむむむ…やっぱ、俺はコトネちゃんの方がいい。人妻はもおいい。おい、コトネちゃんはまだ捕まらないのか!?」

 ――まだやる気なのか、この人は…
 やれやれ。
 そう思いつつ、側近の男は、今頃は町で大騒ぎしているであろうコトネたちに、ほんの少しだけ考えを巡らせる。

 …その後、売られていったスピリアは、『買い主の衰弱』という奇怪に見舞われることになるのだが、その頃オニヘイは既にクルルミクを引き払っており、同時にこの一件が半ばトラウマと化していたため、その事実を彼本人が知ることは無かったと言う。

 ただ、報告を受けた側近の男は「…やはりか」と、一言呟いたのであった。