「………おや、予想以上だね?」 火柱を吹き上げる部屋を見てシャーロウは呟く…珍しく冷や汗をかいてたりしている。 少し前にとある武器屋で買ってみたバクダンという代物だが威力は想像の二回り程上回っていた。 火薬を鉄の器に封入し、点火させて爆発させるというシンプルな構造ではあるのだが…。 シャーロウとしては精々煙幕弾に毛が生えた程度だと思っていた。 「…いやはや、随分とムチャなモノをあっさり売り付ける娘だね…」 コレを売っていた少女を思い出し、苦笑。 どう見ても気軽に売れるレベルを超過している、というかシャーロウ自身少し脱出が遅れていれば黒焦げだ。 「…これは、残念ながら二発目はナシだね」 腕に緩く巻き付けた布を撫でながらひとりごちる。 四海封――この天女の羽衣を思わせる純白の長い布は、仙人が作り上げたと言われる収納用のマジックアイテムである。 一見すると何の変哲もない布だが、持ち主が望めば布の内に自在に物を出し入れする事が出来る上にそのモノの大きさは問わない。 なんでも四方の海すら飲み込むと言われている代物だとか。 聞いたところ空間歪曲場を応用しているらしいが詳しい事はわからない。 ただし欠点もあり、「一度に十二種の物しか入れる事が出来ない」というものだ。 同種の物、例えば同形のナイフなどは何本でも一つとして収納可能となっている。 ただ、それを差し引いてもその万能に近い収納性が気に入り、使い勝手という意味でも見た目でも夜色の外套と並んでシャーロウが愛用している道具だ。 (…ま、外套は壊れたけどね) 難なく着地して駆け出そうとする。 刹那。 鋭く右に跳ぶ。 直後に走る剣線。 「お、完全気配消してたんだけどな、すげー」 いつの間に近付いたのか、ふらりと男が立っていた。 さして残念そうでも無く持っていた刀を肩に担ぎ、気楽な口調な語りかける男。 薄い茶色の長髪を後頭部で結んだ、長身で若干線の細めの美形だ。 その右目の横から頬を通り、顎の近くまでに大きな刀傷があった。 「…おや、君は………」 何かを言いかけたシャーロウだが、ふと上を見上げる。 すると爆発のあった部屋から何かがこちらに降ってきた。 それは服のあちこちが焼け焦げ、全身に火傷を負ったヤブキであった。 「マービン! どけ!! ソイツぁオレが殺す!!」 「あ?」 男…マービンがヤブキに向き直った瞬間、シャーロウは森に駆け出す。 「…はっはっは、いちいち相手するのも面倒だしねぇ…ここらでオサラバさせてもらおうか」 そう言って樹々の間に消えてゆくシャーロウ。 当然、牽制にナイフを数本投げる事も忘れない。 「おぉっと」 「クソッ!」 涼しげにナイフを刀で弾くマービンと荒々しく切り払うヤブキ。 そうこうしている内に爆発の被害を免れたならず者達がヤブキ達に駆け寄ってくる。 だが、ヤブキは殺気立った視線だけで一同を制止し、大きく手を振るう。 「おいテメェら! こっちはいい! 向こうを追え! あのクソッタレな黒女を狩り出せ!!」 ならず者達はその言葉に追われる様に慌てて森へと入っていく。 ヤブキ自身も続いて森に入っていく。 と、そこでマービンを睨む。 「おいマービン! テメェもだ! 来い!」 怒鳴りつけるが当のマービンは露骨にイヤそうな顔。 「おいおい、オレまで山狩りかよ、んな面倒臭い事させんなっつの」 「ぃやかましい! テメェも傭兵だろうが! いいか! ちゃんと来ねぇなら報酬は無しだからな!」 言うだけ言って今度こそ森に入っていく。 「さいですか、雇われの身ってのも世知辛いねぇ」 頭を掻きながら誰にともなく呟き、マービンも森へと飛び込んだ。 そうしてシャーロウは罵声をBGMに森を走っていた。 追い掛けてくるならず者達とは一定の距離を保つ、近付かれ過ぎず、さりとて引き離し過ぎず。 たまに後方にナイフを放ちながら森を駆ける。 と、ニヤニヤしながら後ろを振り向いたシャーロウが不意にダッシュ。 そこに上の木から飛び下りながらマービンが斬り込んでくる、続けて刀を払うもののシャーロウは軽やかなステップで回避。 「だーから! こちとら不意打ちなんだから躱すなって!」 左手で髪をかき上げながら、さして悔しくもなさそうに叫ぶ。 いかにもやる気がなさそうな言い方であり、実際殺気もほとんどないのだが、その剣撃の冴えは本物であり、いかなシャーロウとはいえ気を抜けば一刀両断にされかねない鋭さであった。 「っらァ!!」 そこに間を置かずヤブキが猛追、渾身の一撃を打ち込む。 樹を盾にしようとしたシャーロウは更に大きく間合いを離す。 はたしてヤブキの放った一撃は剣の軌道上にあった大木をいともあっさりと斬り飛ばす。 「…やぁ、これは…怖いな」 倒れいく樹を尻目に軽口を叩くシャーロウ。 しかし、そのまま走り去ろうとするシャーロウの前方に激しい光が迸った。 瞬きする間もなくシャーロウの視界を膨大な雷光が埋める。 シャーロウに向かい放たれた雷は、しかしシャーロウの目前で二つに別れ、その横を通過して背後のならず者達に襲いかかった。 一気に十人程が雷光に飲まれ、断末魔の悲鳴をあげる暇も与えられる事なく絶命する。 「な、なんだオイ!」 「新手か!?」 シャーロウの近くにいたおかげで難を免れたヤブキとマービンだが、不意の雷撃に戸惑いをみせる。 「…うん、いいタイミングだ」 一人シャーロウはその機を逃さず二人に向かって無数のナイフを投擲、その数実に三十二本。 その全てが二人の急所を狙っていた。 「うぉ、ちょ待てよ!」 「こ…いつぁ!」 圧倒的な刃の奔流だったが、全身に裂傷を負いながら、それでもかろうじで二人はその刃雨をくぐり抜けた。 だが、そこにはシャーロウの姿はなく、はるか前方へと移動していた。 その横には、いつの間に現れたのか一人の少女が立っていた。 年の頃は10歳前後であろうか、ゴシックロリータ風の赤いドレスを纏った金髪の少女は右手を突き出した体勢のまま、こちらを鋭く睨み付けている。 右手は僅かに紫電を帯び、この少女が先程の雷撃の放ち手であるとわかった。 まるで西洋人形のような可憐な姿だが、否、それ故にその視線には有無をいわさぬ迫力があった。 「無思慮にお姉様に群がる汚らわしい有象無象…」 愛らしい唇から紡がれるのは容姿に似合わぬ、あるいはこれ以上なく似合う氷点下の冷たい声。 サファイアのような青い瞳に映るは侮蔑、嘲笑…そしてなにより深く激しい憎悪。 「億千万の絶死を以てしても贖えると思わない事ですわ…!」 突き出したままだった右手を真上に掲げる。 すると少女の周囲に無数の火球が浮かび上がる。 漂白されたかのごとく真っ白な火球は、触れただけで火葬が必要なくなる程にこんがりと灼いてくれそうだ。 その火球に照らされながらシャーロウは悠然と微笑む。 「…宴もそろそろ幕、だね?じゃあ…ショウタイムといこうかな?」 次の瞬間火球は弧を描き、猛然とならず者達へと飛ぶ。 炸裂した火球は、その一つ一つが先程の爆弾に匹敵する火力であった。 次々と火球が炸裂し、ならず者達は爆炎に飲まれていく。 少女は飛ばしたそばから即座に火球を生成し、また撃ち出す。 ものの十数秒で付近は少女とシャーロウの周囲を除き、焦土と化していた。 残ったのはシャーロウと少女、そして息も絶え絶えなヤブキとマービンだけである。 「大将、ヤバいぜ…コレ……退いたがいいと…思うんだが…」 片膝をつき、肩で息をしながらマービンはヤブキに囁く。 意識して声を潜めているわけではない。 先程の炎弾による絨毯爆撃、それから十数秒…そう、たった十数秒逃げ回るだけで二人はここまで疲労しているのだ。 「あ?ナニ言ってやがんだ! ここまで殺られといてイモひけってのか!?」 ヤブキとて疲労度でいえばマービンと大して変わらない。 だが、虚仮にされた怒りと部下を皆殺しにされた事がヤブキから撤退という選択肢を無くさせた。 「おいおい…クールにいこうぜ…大将…ありゃどう見たって…到達者級の術師だ」 「……それがどうした」 「あのな…あんだけの術を無音詠唱できる化物と片手間であの請負人なんざ…相手出来るわきゃねーだろ」 互いに会話している間に上がっていた息も落ち着いてきた。 それと共に頭も冷えてくる。 だが、逃げられるか? そこでシャーロウと目が合った。 「…別に? 逃げたいなら尻尾まいて逃げればいいんじゃないかな? 面倒だし僕は手を出さないよ?」 肩をすくめてシャーロウはクスクスと笑う。 あらかさまな挑発。 だが、いくらなんでもそこまでみえみえの挑発には乗る気はない。 「……ちっ! 退くぞ!」 忌々しげに吐き捨てるようにマービンに言う。 「いいのか?」 「テメェが言い出したんだろうが…実際無駄死にする気はねェ」 会話している二人を見て、少女がシャーロウを見上げる。 「……お姉様」 囁くような、おそらくシャーロウ以外の者の耳には届かないか細い声。 それを聞いてシャーロウは苦笑するように嘆息。 そして、「…ま、いいか」と呟き一つ頷く。 すると少女は片足を軽く上げ、トンと爪先で地面を叩く。 「ッ!!」 歴戦をくぐり抜けた者の勘か、渦巻くどす黒い殺気を感じたのか、あるいはその両方か。 ヤブキは咄嗟に身を大きく反らす。 それに合わせるようにヤブキの影から黒い錐が無数に突き上がる。 回避は完全には間に合わず、左腕は幾本もの錐に刺し貫かれ、ズタズタになった。 「ぐっっあああぁぁぁぁぁ!!」 いかなる作用か貫かれた左手は錐と同じく黒く染まり、腐臭を漂わせ始めていた。 マービンは術の範囲外にいたのか無事だったが、同じく林立する黒い剣山に阻まれ身動きが取れずにいた。 「っぐ! オイ! 請負…人!!」 激痛を堪えながらヤブキが呻くように声を絞りだす。 シャーロウはそれを楽しそうに見つめている。 「…ん、どぉしたのかな?」 「とぼけてんじゃ……ねェ! …手は…出さねぇんじゃ…」 「…やぁ、僕は何一つ出してないよ? 今のはリズが勝手にやらかしただけさ」 そう言って少女、リズの前に手を出す。 リズはその手を両手で愛しげに包み、頬を寄せる。 「だって……お姉様に手を出そうとするような有害な塵蟲なんて、全部全部死に絶えればいいんです」 内容こそ凶悪だが先程までの冷徹な印象はどこへいったのか、完全に恋する乙女の顔であり、蕩けるような甘い口調だった。 「…フフ、勝手にそんな事して…リズはいけない娘だね? 後でお仕置をしないと」 シャーロウはリズの頬を撫でながら甘く囁く。 「はい…慎んでお受けします、お姉様」 顔全体を桜色に染めてうっとりとするリズ。 と、二人だけの空間が出来上がっている内にマービンが抜刀。 「…っ! 大将!」 叫びと共に刀を振るうマービン。 その一撃は錐に侵されたヤブキの左腕を根元から断ち切った。 ようやく錐の呪詛から逃れたヤブキは、荒い息を吐きながらシャーロウを睨み付ける。 「借りは…絶対ぇ返す」 「…ん、面倒だし…今返してもらえるかな?」 その言葉にマービンが激しく動揺する。 「うわ! み、見逃すんじゃなかったのか!?」 焦るマービンを見て、あたかも獲物を見つけた猫のような表情のシャーロウ。 「…ま、別に見逃してもよかったけど…こっちから手ぇ出しちゃったし…ねぇ?」 「いやいや! 気にせず!」 疲労困憊のヤブキに代わり、必死に説得を続けるマービン。 当然だ、ここでバトルとなれば手負いのこちらに勝ち目などない。 「…ま、理由はいくつか…まずは一つ」 人差し指をピッと立てるシャーロウ。 「…君達、散々僕を追い回したよね?」 「一個目から私怨かよ! しかも魔術で待ち伏せって事はコレ計画的犯行だろ!?」 思わず突っ込むマービンだがシャーロウ無視して中指を立てる。 「…第二に村からさらった娘…殺したよね?」 「オレじゃねーし! そりゃユーリだろ多分!」 抗議するマービン、そこは事実だがシャーロウ笑顔で黙殺。 「身内の犯行ですもの…同罪ですわ」 汚物でも見るような目で吐き捨てるリズ。 更に薬指を立てるシャーロウ。 ニィッと凶悪な笑みを浮かべる。 「…第三に、弱ってはいつくばった敵にトドメを食らわすのってステキだと思わないかな?」 「お、鬼かアンタ! この外道!」 すでに涙目のマービン。 だがシャーロウ華麗にスルー。 「逃げ惑う敵にトドメをさすのも好きですよね、お姉様♪」 フォローだか追い討ちだかわからない事を嬉しそうに言うリズ。 笑顔で頷き、小指を立てる。 「…そして第四に、僕はね、嘘つきなのさ…約束を裏切られた顔を見るのが大好きなんだ……だぁから許してあげない」 そう言って唇をぺろりと舐めるシャーロウ。 外道と呼ぶに相応しい禍々しい嗤笑。 悪魔すら鼻白む邪悪な表情。 それはとてつもなく酷薄。 とてつもなく卑しく。 とてつもなく妖しく。 とてつもなく艶やかで。 とてつもなく陰湿。 とてつもなく蠱惑。 とてつもなく淫靡。 優雅に咲き誇る大輪の花ではない、甘い蜜で獲物を誘う食虫花。 わかっていても引き寄せられる魔性のモノ。 思わず抗議する事すら忘れて呆然とするマービン。 だが、そんなマービンを押し退けてヤブキが立ち上がる。 「ケッ! 要はその嘘つきをブッ殺せばいいんだよ!」 剣を構えるヤブキ。 それを見たマービンは頭を抱える。 「待てって大将!」 「待つかよ! どうせこのままいけばなぶり殺しだろうが!」 正論だ、さっきのシャーロウの言葉を考えても交渉で助かる余地は無い。 そう、真っ当な交渉ならば、だ。 マービンはシャーロウを見る、こちらの視線の意味に気付くとシャーロウは笑顔で頷く。 研究に行き詰まった賢者を唆す悪魔の様な笑みだ。 シャーロウは静かに人差し指で胸…心臓の位置をトン、と叩く。 「ま…悪りぃな、大将」 「あ?」 呟きの意味をヤブキが理解するより速く。 マービンの刀は正確にヤブキの心臓を貫いていた。 愕然とし、振り向こうとするヤブキ。 しかし、マービンはそれより速く刀を引き抜き、横一文字に首を斬り落とす。 まだ何が起きたのか理解出来ない顔のままヤブキの首が地面に落ちる。 あまりに唐突な裏切り…マービンは軽く刀を振り、血を落とす。 「オレぁ…故あれば裏切るのさ…」 少し寂しそうな声。 多少我の強いところもあったが、いい仲間だったのだ。 それがこんな別れになろうとは…。 「あら、お姉様…一人前に悲しんでるフリをしてる駄犬がいますわ」 嘲るようにリズがマービンを指差す。 「…フフ、いつもの事さ…裏切りはアレの十八番だからねぇ」 二人にこき下ろされマービンは、にへら と笑う。 「やー、一応礼儀っつーか…お約束?」 親しげに笑いかけながら近付いてくる。 が、シャーロウの肩に手を置こうとしたその時、リズの冷たい一瞥に動きを止める。 「何を這い寄って来ているのかしら? 駄犬」 「え? ダメ? 和解成立じゃないの?」 そんなマービンをリズは鼻で笑う。 「和解? おばかさん! 身の程知らずにもお姉様に吠えかかってきた駄犬!」 愉快そうに嗤いながらマービンを罵るリズ。 詰るその声すら天使のごとし、聞く者を恍惚とさせる代物だ。 「幾度もお姉様に挑み、幾度もブザマに逃げ帰る…そんな駄犬がお姉様に触る? おばかさん! そんな寝言は寝てても言わないでもらえるかしら!」 そう、マービンとシャーロウはこれが初対面ではない。 もう何度も敵として、また味方として相対した間柄である。 請負人と傭兵という立場上、敵となる事が多いが、その際も互いに遠慮する事なく命のやり取りを繰り広げるのだ。 しかし、今のところ全てマービンの負けであり、その都度命乞い、あるいは今回のように仲間を裏切り生き延びてきたのである。 「駄犬が近付くとそれだけで空気が汚染されるの…あと半歩でもこっちに来たら生きたまま煮沸消毒される気分を堪能させてあげるわ」 強烈な痛罵。 さすがにマービンも少々ヘコむ。 何度も浴びているが、このお嬢の一言は効く…何かに目覚めそうだ。 「うぅ…生き延びてラッキーなはずなのに心が痛ぇ」 「…ソレは僕みたいなか弱い娘に刃を向けた良心の呵責だね」 胸を押さえて蹲るマービンにいけしゃあしゃあと言ってのけるシャーロウ。 すでに反論する気力も残ってないのかツッコミもない。 「…じゃ、今回も見逃してあげるから、帰っていいよ?」 もはやマービンなど心底どうでもいいのだろう。 適当に手をひらひら振りながら背を向ける。 「ちょ、なげやりにもほどがねーか?」 「…ふむ、真剣に応対してもらいたいと?」 あごに手をやるシャーロウ。 「…ならば本気で僕に斬り掛かった慰謝料と破壊された外套の弁償金を請求させてもらおうかな?」 ニヤリと笑うシャーロウ。 「んなっ!」 「…クク、冗談だよ…だが………そうだね、このアジトにあった盗掘品、知らないかい?」 心底ホッとするマービン。 実は一昨日仲間内の賭けに負けて素寒貧なのだ。 そんな情報でよければいくらでも吐く。 「んー、そりゃもうねぇな」 「…『もう、ない』?」 「ああ、そうだ…ここにあった盗掘品の類いは…えーと………たしかクルルミクの盗賊ギルドに流したらしいぜ」 それを聞いてシャーロウはほう、と感心。 「…クルルミク…か、それは…いい情報をありがとう」 どう聞いても感謝の気持ちなど微塵も感じられない適当な謝辞。 もうマービンからも一々突っ込まない。 というかもはやそんな気力も残っていない。 「……じゃ、オレは行くわ…」 とぼとぼと歩きだすマービン。 もはや抜け殻のような生気の無さである。 シャーロウもリズも見向きもしない。 「…さて、後は…」 「帰りますの?」 シャーロウの手をぎゅっと握り、問い掛けるリズ。 首を傾げるその仕草は同性すらも魅了しそうな無垢なる笑顔。 その頭をわしゃわしゃと撫でながら、誰にともなくウインクするシャーロウ。 「…いや、ま…報告くらいは、ね」 |