『暗黒ひんにう同盟 玄室策謀編』 byウェイン姐さん



「…そういえば、どうやらならず者にはキミ自身よりその呪いのサルくんの方が人気らしいね?」

 シャーロウがニヤニヤと嗤いながら問い掛ける

「あら、それは誰の脳内設定かしら?」

 向かいに座っていたメラノーマは興味なさげに返す
 しかし、シャーロウはニヤニヤといやらしく笑みを浮かべたまま一枚の紙を差し出す

「…フフ、僕が調べたところ、ならず者18600人中 実に14300人がキミよりサルくんの方が欲しいと言っている」

 はたしてどうやって調べたのか不明だか、凄腕請負人の名は伊達ではないらしい

「見る目がないだけだわ、あのボンクラ共はどこをみてるのかしら」
「…じゃ、本人に聞いてみようか?」



 そして、とある玄室



「…で、なんであのサルくんがあんなに人気が高いんだい?」

 シャーロウはマイクがわりにナイフを突き出しならず者に尋ねる

「だって触手だぜ!触手!これがありゃ一人で二本挿しでも三穴責めでも触手尽しで嬲りまくりだぜ!まさに男の夢ってヤツよ!ひゃほう!」

 やたらとハイな感じにならず者が応える

「…なるほどねぇ」
「しかも小さくて羽も生えてるからのぞきにだって使えるんだぜ!」

 三穴責めとか言っておいて使い方は覗きか ならず者よ

「…それはすごいねぇ」
「おうよ!燃える漢のマストアイテムさ!!」

 ならず者は拳を突き出し力説する

「…フフ、ちなみに人形の中に入るってどんな感じなんだろうね?」
「ん?あー、なんつーかこう…きっと魂吸い出されるっつーか背骨ぶっこ抜いてまるごと移植っつーか…」
「…要領を得ないねぇ…」
「んなこといってもなぁ」
「…フフ、それなら…さ…」

 そこでシャーロウはどこからかダカルバジンを取り出し、ならず者に差し出す
 メラノーマがハッとして手元を見ると、吊るしてあったダカルバジンがない
 いつの間にかシャーロウが奪っていたようだ、高レベル盗賊の面目躍如だ

「…今、実際にやってみたらどうかな?」
「お、いいのか!?」
「…ああ、やってみるといいよ?」

 シャーロウはメラノーマに反論の暇を与えずさっさとダカルバジンを渡す
 そしてならず者がダカルバジンに手を触れた


 数瞬後ならず者の体がカクンと崩れ落ち、かわりにシャーロウの手にあったダカルバジンがジタバタと動きだす

「おう!このフィット感!これだよ、これ!すげぇ!今ならこの格好で歌って踊れるぜ!?」

 トリプルアクセルからムーンウォークを披露しながらならず者(というかダカルバジン)が歓喜の声を上げる
 しかし、そこでシャーロウが冷たく嗤う

「…フフ、確かこの状態で本体が死ねば…一生このままだったねぇ?」

 手元でナイフを弄びながらシャーロウが問い掛ける
 そこには死刑を宣告せんとする愉悦に満ち満ちたサディストの姿があった

「え、ちょっと何考え」
「…えい」

 シャーロウ容赦なくならず者(本体)の首を刎ねる

「なにをする きさまー」

 気の抜けた叫びと共にダカルバジン(inならず者)がくるくると回り、ぱたんと倒れた

「…おや、本当に魂が残るのか試そうと思ったんだけど…サルくんも動きを止めたようだねぇ、これは?」

 振り向き、メラノーマに尋ねる

「きっと慣れてない状態でいきなり接続を切ったから、思考回路が断線状態になってるんだわ」

 憮然としつつも質問に答える

「…もう治らないのかい?」
「無理ね、この状態からの回復はありえない…ずっと廃人状態のまま、意識のみで生きる事になるわ」

 それを聞いてシャーロウは軽く溜め息を吐く

「…それじゃ仕方がないねぇ、サルくんは元の持ち主に返すとしようか」

 そう言うとシャーロウは実に嬉しそうにダカルバジンを差し出した

「意識自体は残ってると言ったけど?」
「…でも、もう動かなくなったんだろう?、それにキミもサルくん無しじゃ心許無いだろう?呪い人形だし意識があるくらい別にいいじゃないか」

 しかしメラノーマはすまし顔でバッグの中に手を入れる

「ご心配なく、予備のダカルバジンは持ってますわ」

 そこには前のものと変わらぬダカルバジンがあった
 どうみてもバッグには入りそうもないが突っ込んではいけない

「…それは…用意がいいねぇ」
「あら、残念そうに聞こえるけれど?」
「…フフ、気のせいだよ…さて、面白かったしそろそろ帰るかな…」

 そう言いつつも残念そうな表情を隠そうともせず、あくびを噛み殺す
 そのまま出口に向かって歩いていく

「そうね、私もシェンナの夕食が恋しくなってきました」
「…それじゃ、また」
「二度と御免だわ」

 まさに即答、こちらも不快さを隠そうともせず吐き捨てる

「…おや奇遇だねぇ、僕もそう思ってたよ?」

 顔も合わせずいやらしく嗤うシャーロウ、そして不愉快ながらも意外と満更でもなさ気なメラノーマ
 そして二人は玄室から出ていった




ならず者A「…なぁ、あの二人って性奴でもねーのになんでここに居たんだ?」
ならず者B「俺に聞くなよ…」

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