【抜刀禁止 〜シャーリーン〜】  by MURASAMA BLADE!


 カランカラン…。

 『抜刀禁止』。
 太字でそう書かれた看板のかけられた扉が、カウベルの音と共に開かれる。
 「いらっしゃいませ!…あ、ネージュさん!こんにちは!」
 シャーリーンは棚の整理の手を止め、いつものように歯切れのよい挨拶をし――今しがた入ってきた侍祭服の女性が自分の知り合いだと気づいた。
 「こんにちは、シャーリーンさん。…その後、お身体の具合はいかがですか?」
 ネージュと呼ばれた女性は、やや幼さの残る顔にかかった髪を後ろへ払いながら、にこやかに挨拶した。髪を払うと同時に、侍祭服では隠し切れない豊満なバストがゆさゆさと揺れる。
 「…おかげさまで、身体の方はもう大丈夫です。ただ…」
 ネージュの問いに、シャーリーンはそう答えるが、大丈夫という割にはその表情は暗い。
 「どこか、悪いところでも…?」
 ネージュがそう尋ねたとほぼ同時に――


 「へへへ、見ろよこの剣。これは俺様がある洞窟で手に入れた業物でな…」

 シャランッ…。

 下卑た男の自慢げな声とともに、特有の金属音を響かせて剣が抜かれた。


 「イヤアアアアアアアアアッッ!!!」
 突然、シャーリーンは絶叫を上げ、頭を抱えて床にうずくまった。

 パリィン!

 持っていたポーションが床に落ち、小気味よい音を立てて割れる。
 「シャーリーンさん?!」
 ネージュは突然のことに驚きながらも、シャーリーンの背中をなでさすり、顔色を見る。
 シャーリーンの顔色は、死人のように真っ青になっていた。
 「おい、お前看板が読めないのかよ!」
 と、周囲にいた他の客たちが、剣を抜いた男に次々に詰め寄り、半ば強引に店から追い出す。
 ネージュはその様子を横目に見つつ、シャーリーンを店の奥へとつれていった。


 「はぁっ…はぁっ…」
 店の奥は住居になっている。その中の一室のベッドに寝かされ、シャーリーンは荒い息を吐いていた。
 「お水です。飲めますか?」
 ネージュの差し出した水を受け取って一息に飲み干し、シャーリーンはようやく息を落ち着けた。
 「んぐ、んぐ…っはぁ、はぁ…ありがとう、ございます…」
 苦しげな様子はなくなったものの、シャーリーンの顔色は青いままで、その表情もやはり暗い。
 「どうなさったんですの?何か、後遺症でもおありに…?」
 ネージュは心配になり尋ねるが、シャーリーンは首を振る様子もなくうつむいたままである。
 しばらくそうしていた後、シャーリーンは唐突に口を開いた。
 「後遺症といえば、後遺症かな…ネージュさん」
 突然呼びかけられて少し驚いた様子のネージュに、シャーリーンは続けた。

 「『ブラッディレイン』って、知ってる?」


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 ブラッディレイン。
 それは、クルルミクのとある町の夜を真紅に彩った戦士の二つ名。
 扇情的な真紅の水着で豊満な肉体をわずかに隠し、同じく真紅のマントを纏った、やはり真紅の仮面の美女。
 彼女は夜になると現れ、不埒な行いをするならず者を仕留める。武器らしき武器も持たぬ身でありながら、彼女に襲われたならず者は例外なく身体中から血を噴き出して絶命しており、その真紅の衣装と相まって『血の雨(ブラッディレイン)』と呼ばれ、その名はならず者どもに憎悪と畏怖を込めて呼ばれた。
 「龍神の迷宮」に近いことからならず者の姿が多く見かけられ、実際に治安の悪化を招いていたこの町に、彼女という存在は希望と期待を持って受け止められる。
 ならず者が血眼になって探す、闇夜の戦士。彼女の素顔は紅く輝く仮面で覆い隠され、その正体は誰も知らない。
 …そのはずだった。


 夜も更けた町の一角。人の近寄らぬ倉庫街。
 「追い詰めたぜ、ブラッディレイン!」
 ブラッディレインは、そう叫んだ盗賊頭の言葉通り、袋小路に追い込まれていた。
 三方を壁に囲まれ、前には大量のならず者。
 「……ふっ」
 そんな絶体絶命のピンチに、ブラッディレインは余裕の笑みを返した。
 「この程度で僕をどうにかできると思っているのかい?」
 軽い男言葉も、彼女のようにグラマラスな女性が使うとある種の色気を感じさせる。その余裕が癪にさわった盗賊頭は、毎度やられているにもかかわらず何も学んでいないのか、いつもどおりの頭の悪い命令を発した。
 「ええい!お前ら、やっちまえ!」
 頭の一声で、大量の盗賊どもがブラッディレインめがけて迫ってくる。
 多勢に無勢。
 そんな言葉を振り払うかのように、ブラッディレインは両手を鮮やかに振った。
 両手の指に嵌められた指輪が、光を反射して鈍く輝く。

 シャラン、シャランッ…!

 鞘鳴りのような特有の金属音が辺りに響いた。
 「ぐあっ?!」
 「ぎゃああああっ!」
 途端に、ある者は腕から、ある者は脚から、またある者は全身から血を噴き出しながら、次々に倒れていく。
 「誰が追い詰められたって?」
 ブラッディレインは腕を組んで微笑んだ。その拍子に、重量感のある胸がぶるんと揺れる。
 「くそっ!やれ!やっちまえ!」
 盗賊頭は馬鹿の一つ覚えのように同じ命令を出し、またならず者どもが群れを成してブラッディレインに迫る。
 ――否。
 「…先生!お願いしますぜ!」
 馬鹿の一つ覚えではなかった。その声で、盗賊頭の背後から、背の低いローブを着た男が現れる。
 「(…魔術師?)」
 ブラッディレインが男の存在を怪訝に思ったそのとき、


 「腐食…集雲…(ロッティン・クラウド)…!」

 ブジュ、ジュルッ…。

 男の言葉と共に、膿が飛び出したような、生理的嫌悪感を催す不快な音が聞こえた。


 「ひあああああっ?!」
 「うげえええええええっ!?!?」
 気味の悪い紫色の雲が辺りを包む。それを吸ったならず者どもは、苦しげに叫びながら泡を吹いて倒れていった。
 「(この雲…腐食魔法!?)」
 ブラッディレインは紫色の雲の正体に気づいた。
 腐食魔法。局所的に毒性の高い水分を生み出し、触れたものを無差別に腐らせる、文字通り腐った魔法である。派手に動いていたならず者どもは深くそれを吸い込んだのだろう。顔や肺、身体全てが腐り落ち、緩慢な死が待っているのみだ。仮面で鼻と口を覆っているおかげで彼女はその害を免れたが…
 「味方を巻き添えにしてまで魔法を使うとは…正気かい?」
 魔法の使い手が相手とあっては、余裕を見せていられる場合ではない。そう思い、ブラッディレインは硬い声で尋ねる。
 「てめえをとっ捕まえるためなら、何だってしてやらぁ。それによ…」
 今度は盗賊頭が余裕の表情で言った。


 「忘れてんじゃねえのか?腐るのは人間だけじゃねえんだぜ?」

 パキッ…カタ…ンッ。

 ブラッディレインの顔を覆っていた仮面が地面に落ち、乾いた音を立てて転がった。


 「……っ?!」
 突然の事に、動揺する。
 「(そうか…っ!腐食の魔法でっ…!)」
 ブラッディレインの仮面は魔法の品物ではない。彼女を腐食雲から護った代わりに、仮面が錆びて朽ち果てるのは自明の理であった。
 ブラッディレインは、素顔を見られまいと慌てて顔を手で覆い隠し――
 「…?!」
 ――気づいてしまった。

 彼女の両手に嵌められた指輪。
 その指輪から伸びているはずの感覚が、なくなっていた。
 「(糸が…!?)」

 糸。
 両手の指輪から伸びる、鉄をも切り裂く鋼糸こそが、ブラッディレインの武器だった。それは常人から見れば、確かに武器もなく人を切り裂く悪魔のごとき所業にも見えただろう。
 しかし、所詮鋼といえど金属に過ぎぬ。魔法の品物でもない限り、いずれは錆びて朽ち果てるのだ。

 「へっへっへっ。魔法がありゃあ何とかなるって読みは当たりだったみてえだな」
 盗賊頭の勝ち誇る声。
 「くっ…!」
 悔しがるブラッディレイン。
 しかし、他に武器を持たず、魔法も使えない彼女には、もはやこの場を切り抜けることは不可能だった。
 「…いやあああああっ!」
 そして、女の悲鳴が夜のしじまを切り裂いた。



 「んぐっ…んぶっ…」

 グチュッ、ニチュッ…シャラン……ニュポ、ジュポ…シャラン…。

 濁った音の合間に、ときおり鞘鳴りのような音が聞こえる。
 ブラッディレインは、ならず者どもに手足を縛られ、嬲り者にされていた。
 すでに幾人ものならず者に犯されており、真紅の衣装は見る影もなく剥ぎ取られ、その身体には何度も浴びせられた精液がこびりついている。
 彼女は跨がされた男に秘所を、後ろから豊かな乳房を揉みしだいている男にアナルを貫かれ、横から彼女の頭をつかんでいる男のペニスを咥えさせられていた。両手はそれぞれ、また別の男によってペニスをしごかされている。
 「ぅおっ…出るぞっ…!」

 ビクッ!ビュルルッ!……シャラン……ゴプッ、ドプッ…。

 「ぅぁっ…!」
 男の声と共に、子宮へ白濁液が注がれる。新たな精液を受け入れ、子宮が波打つようにうごめく。
 すでに限界以上の精液を注ぎ込まれ、彼女の子宮はパンパンに膨れ上がっていた。

 「こっちも、出るっ…!」

 ビュクッ!ビュッ!……シャラン……グルルルルッ…。

 「……っ!」
 休む間もなく、今度は直腸に精液を注がれる。熱い汚液に腸が反応し、蠕動運動を始める。こちらも度重なる射精を受け止め、男どもの突き上げで攪拌された精液と排泄物の混合液で既に一杯になっている。
 ほかの男たちも絶頂へ上り詰め、ブラッディレインの身体を白く染め上げる。
 「っぁ…っ…」
 すでに体力は限界だったが、彼女は必死に身体を支えた。倒れるわけには、いかなかった。
 「(今、倒れたらっ…!)」

 シャランッ…。

 「…!」
 首元からあの鞘鳴りのような音が聞こえ、彼女は身を硬くする。
 「俺からのプレゼントはどうよ?お前のと同じ糸をわざわざ用意したんだぜ」

 ズニュッ…!…シャラン…。

 「…っぁ!」
 射精した男に代わって彼女の下に潜り込んだ盗賊頭は、数時間にわたる陵辱によって広がってしまった彼女の秘所に、笑いながら自らの剛直を突き刺した。
 盗賊頭は、彼女の首に鋼糸を巻きつけ吊るした上で陵辱に及んだのだ。陵辱が終わるまでに彼女が力尽き倒れれば、その首を鋼糸が刎ねる。
 自分の武器(正確には違うものだが)を敵に使われた挙句、自分の命を弄ばれる。
 幾度も続く陵辱と鞘鳴りは、次第に彼女の心を蝕んでいった。
 「…ほらよっ、受け取りなっ…!」

 ビュルルルッ!ビルゥッ!…シャラン…。

 「…っ!…ぁ、ぅ…!」
 盗賊頭がその灼熱の子種を、ブラッディレインの中に吐き出す。ブラッディレインはびくびくと痙攣するかのように身体を震わせ――しかし、倒れなかった。
 「ふん、持ちこたえやがったか。まぁいい、命だけは助けてやらあw」
 盗賊頭はそれを見ても笑いを崩さなかった。


 「…っと、こんなもんでいいだろ」
 「…朝になったら、みんな驚きだぜ」
 彼女を街の『ある場所』に置き去りにし、去っていくならず者ども。



 そして朝。
 「キャアアアアアアアアアアッ?!?!」
 女の悲鳴によって、彼女は街の人々に発見された。


 「ま、まさか…」
 「なんということだ…」
 ブラッディレインは、街の中央にある噴水の支塔にくくりつけられていた。
 手足は鋼糸によって男を誘うようなポーズで結わえられ、秘所からは精液を、アナルからは排泄物をどろどろと垂れ流している。首は重力に従って傾き、焦点のないその瞳や固まってしまったかのようなその顔は、まるで人形のようであった。
 わざわざ取り付けられた真紅のマントや、足元に落ちているひび割れた仮面から、彼女がブラッディレインであることは一目瞭然だった。
 「…嘘、よね…嘘だといって…」
 街の人々の中から、一人の女性がふらふらとした足取りで歩み寄る。
 「嘘だと言ってちょうだい、シャーリーン…」
 生気のない彼女を抱きしめ、涙を流しながら、シャーリーンの母親は、彼女を抱きしめた。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 「…そうだったの…」
 シャーリーンの話を聞き終え、ネージュは深い息をひとつついた。
 その後シャーリーンはすぐに保護され、その話は中央にまで知れ渡るところとなった。結果、王城からの依頼を受けた冒険者たちがやってきて、街にやってきていたならず者どもの一派は壊滅させられた。今では「龍神の迷宮」に近いこともあって、迷宮へ向かう冒険者たちの拠点にもなっており、心無い冒険者によるトラブルはあるものの治安は格段に良くなった。ブラッディレインの戦いは、無駄ではなかったのだ。
 しかし、その代償としてシャーリーンが受けた傷は、あまりにも大きかった。街の治療所では治療に限界があるため、別の大きな街へ移されて治療を受けた。だが、身体の傷はすぐに癒えたものの心には大きな傷が残った。一日中雨戸を閉め切って灯りもつけず無音の暗闇に閉じこもり、わずかな音や光にも敏感に反応し、恐怖した。
 そんな彼女の心の治療を行ったのが、当時修行の一環として教会から治療所に来ていたネージュだった。彼女は優しく、時には母親以上の母性(と豊かな胸)をもって彼女を包み込み、徐々にその心を癒していったのだった。
 あれから数年、心の傷も癒えたかと思っていたが…。
 あの『抜刀禁止』の看板は、そういう意味だったのだ。自分の武器で逆に命を脅かされた彼女は、その武器によって生じるのと同じ鞘鳴りのような音で、陵辱の過去を思い出してしまうのだろう。
 精神的外傷(トラウマ)を癒せなかったことに、ネージュは後悔の念を抱いた。
 「ごめんなさい、シャーリーンさん。あなたの心の傷を、全て癒せなかったなんて…」
 「ううん、私をここまで治してくれたのはネージュさんだもの。感謝してるわ」
 ネージュの謝罪に、シャーリーンは首を横に振る。

 フニュッ…。

 「あっ…」
 シャーリーンはそのまま、ネージュの胸に頬を寄せた。驚いた声を上げるネージュの豊かな胸に、シャーリーンの小さな顔が半ばまで埋まる。
 「…こうしてると、ネージュさんに助けてもらったときみたいに安心する…」
 その言葉に、ネージュはゆっくりとシャーリーンの頭を撫でてやった。
 「ネージュさん…龍神の迷宮に行くって聞いたけど、本当?」
 その姿勢のまま、シャーリーンは尋ねる。
 「ええ…皆が戦っているのに、私だけ安全なところでのうのうとはしていられませんもの…」
 「(それに…私に呪いをかけた魔術師が、いるかも知れない…)」
 ネージュの胸に去来した、静かな復讐の念に、シャーリーンは気づかなかった。そのまま、ネージュに確認するかのように言う。
 「必ず…無事で帰ってきてね…みんな、ネージュさんの帰りを待ってるんだからね…」
 「…ええ」
 その言葉に、ネージュは力強くうなずいた。



 ――END.





【キャラクター設定】
・名前:ブラッディレイン(本名:シャーリーン)

・設定:人間の女性。女性。16歳。処女。クルルミク王国のとある町にて、ならず者に正義の鉄槌を下す女戦士。男のような口調で喋る謎の美女の正体は、町の薬屋で働く売り子の娘である。
    彼女の住む町はクルルミク王国の中でも「龍神の迷宮」に近いため、ならず者の姿を見かけることも多く、治安も悪い。ならず者による強盗や強姦・誘拐の被害も多く、そんな状況を見ていられなかったシャーリーンは、夜毎変装してならず者退治に乗り出すようになったのだ。
    「ブラッディレイン(血の雨)」とは、彼女が倒したならず者が傷口から雨のように血を噴き出すことから名づけられたもので、彼女が自らそう名乗ったものではない。最初はならず者たちによって呼ばれていたその名は、いつしか町の人々から希望と期待を込めて呼ばれるようになった。…シャーリーン本人としては、そんな残虐な二つ名は少々気恥ずかしいものがあるが。
    町の治安は良くなっているものの、一向に減らないならず者の元を叩くため、「龍神の迷宮」へと挑むシャーリーン。自分の町を少しでも守るため、彼女は人知れず戦い続ける。

・外見:変装時は顔全てを覆う赤い仮面に真紅のマント、その下も赤い水着と全身真っ赤。両手の指全てに鉄の指輪を嵌めており、この指輪から繰り出される鋼糸で敵を絡めとり、切り裂く。
    変装していないときは、どこにでもいそうな普通の町娘にしか見えない。
    プロポーションは平均をかなり上回っており、変装時はそのグラマーな肢体がより強調されている。逆に、普段は町娘の素朴な服装がそれを隠しており、一見人並みのプロポーションに見える。

・性格:ロウ

・職業:軽戦士

・設定レベル:
  経験レベル10
  名声レベル16
  才能レベル10

・運勢レベルとオプション:正義、人徳、犠牲、変装、露出、運勢レベル12

・ダンジョン方針:無難