背徳の賢者・Another


「なんなりと、御主人様……」
 さながら少女は娼婦のように、男達にかしずき、その精液まみれの肢体をくねらせながら肉棒を貪っていく。幾人もの汚らしいモノを平然とくわえこみ、それによって生気すら回復させているように見える。
 汚される事を厭わない、まるでそれを食事のように受け入れる姿は、犠牲者としてのソレではなく、捕食者としてのソレとすら思えた。
 本来、あるべき姿を逆転させている男女の姿。
 カマキリの雌が性交の果てに雄の首を刎ね、その死体を食するかのように。少女は虎視眈々とこの状況が、オセロみたいにひっくり変える瞬間を待ち望んでいるようだった。
 だが……そうして股を従順に開いている少女を前に、男達は凌辱者としてのプライドをいたくくすぐられていた。女性を泣かせ、嫌がらせてこその凌辱であるのだから。
 世間にはさまざまな手段でもって他人を貶め、嫌がらせ、羞恥の果てに沈み込ませる事によって愉悦を得るタイプの人間がいる。特に貴族に多く、彼らはそうする事によって自身の優位性を心の中で保ち、日々を平穏に暮らす為の手段とするのだ。
 得てして嗜虐心の強い、そういった人間は他人を堕とす為にさまざまな事を考え。持ち前の財産によって魔術師や賢者といった人間達と契約をした。そして依頼を受けた魔術師や賢者は、貴族の望むモノを作り上げたと言われている。
 そうして作り上げられた魔術師達の知識はいつしか流れ、それは影に住む人々にとっての技術として定着した。

 男達は一本の薬と注射を準備し、シャノアールの前に立つ。やや透き通る深い青をしたサファイアのような液体、それは一部の貴族が考えた悪魔の遺産であった。
 どこかなまめかしい視線を男達に投げつけ、精液を全身にまとわりつかせながらもどこか余裕を保っていた少女。だがそんな少女は薬を見た瞬間、小さく息を飲み込む。
「さっすが賢者様だ。これがどんなモノかってのは、よくお知りになられてるようで」
 男の一人は明らかに愉悦と優越感の両方を持ち、少女を見下ろしてはニヤリと歪んだ笑みを見せる。同時に幾人かの男達は、シャノアールの手足を押さえつけていく。
「やっ、やめろ……ッ。そ、れだけは……やめないかっ!!」
 そう必死に暴れてみようとするが、少女の体躯が男達複数を跳ね返すような出来事が起きるはずもなく。仰向けになってあっさりとその身体は押さえつけられてしまう。
 そこで注射器に薬を装填した男はかがみ込んで、精液にまみれている淫猥な膣口へと針の先端をあてがう。
「何を子供みたいに泣きじゃくってるのやら、針の痛みなんてたいした事無いだろ」
 シャノアールはサファイア色した液体の中身に怯えているが、あえて男はそれを理解しつつも的はずれな返答をしてみせる。
 ジタバタと少女が暴れている間にも注射器の針は性器に突き刺さり、その液体は一気に血液に混ざり込んでは全身に駆け巡っていく。
「あ……あぁ……やめ、やめろ……ッ。お前ら……っ、やめ……ろぉ……ッ!」
 どこかぶっきらぼうな口調でありながらも、悲痛な女性めいた叫び。そうやって、その嫌がる態度そのものこそが凌辱者達の求めていた物であった。
「もう終わりだぜ、おじょーちゃん。怖かったのか、そんなに必死になって泣きじゃくったりしてよぉ?」
 注射器の中身はすっかりとシャノアールの身体へと注入され、少女は怯えたように唇をブルブルと震わせ始める。
「こんなの、されたら……っ、わ、わたしが……」

 ノーブル・サファイア
 それは貴族達が、主に姦淫の罪を犯した妻。あるいは粗相を働いたメイドなどに対して使ったとされる、悪魔めいた拷問具の一つであった。
 特に姦淫の罪の重さに対し、人ならざる相手の子を孕ませてしまう。異形の物を産まされるなんて事が、どれだけ苦痛なのかは想像するにたやすい。
 当時の魔術師と賢者の研究により、妊娠から出産までのサイクルを極端に早めるという事に成功した奇跡の産物でもあった。
 だがその秘術を完成させた魔術師はあえてその薬に名前を冠する事はせず、出来上がった液体の色をそのまま名付けた。
 現在では製法そのものを知る人は少なく、また素材が高価な為に薬そのものが出回っている数も少ない。
 同時に、かなりの特殊性癖を持つ人でないと使わない事から、そう大きく出回るような類の薬では無かった。

 外見的には大きな変化が起きるはずもなく、また媚薬と違って身体が極端にうずいたりするという事も無い。身体的な変貌が無いままに、ただ子宮だけが凌辱者達の望む様式に書き換えられていくという恐怖。
 自覚が無いのに、化け物の器にされてしまうという少し先の未来。
 その薬の目的と内容、そして末路すらも知っており、この薬によって化け物の子供を産まされた女の姿を見た事があった。そういう知識があればこそ、逆に薬による恐怖は一層色を濃くしていく。
「さてと、旦那を連れてきてやったぞ」
 男達の群れを割って、一つの大きなカゴがその姿を現す。木で作られたカゴの中ではピンク色の肌をした四足歩行の生物が、獰猛にうなり声をあげていた。
「な、そ……れは……ッ」
 人間には身近であり、食用にもされている。しかしその反面、独特な容姿は醜さの象徴とされ、一部の人間には嫌悪の対象ともされている存在。
「紹介しようか。こいつはギルドボさんが飼い慣らしている『ジェラルディン』って名前のヤツでな。幾人もの女を泣かせてきた、テクニシャンだ」
 ジェラルディンはそこで興奮したように、木のカゴをガツガツと打ち鳴らす。股間に固く反り返っているモノは凶悪もトゲをいくつも生やし、禍々しいまでの精気をまとわりつかせては性欲を主張する。
「な、にが……ジェラルディ……ンだ、この醜い……ブタ風情に、大層な名前なんてつけて……趣味が……」
「悪い。だろ? 確かにネーミングだけ見ればギルドボさんの感性は疑うが、だが女を嬲るおもちゃとしては、悪くない」
 いつもは饒舌に回るはずの舌が、どこかでわずか残っていたはずの余裕が、今や完全にシャノアールからは感じられない。
 どれだけ男達に犯されようが、輪姦されようが、人と人との営みである以上は耐える事も対処する事も出来た。人の精は他人を繋ぐ魔力の濃縮されたモノでもあり、貪欲な魔術はそれらを糧にするなど容易な事であったから。
 だがしかし、そういった法則から抜け出した凌辱を受けて、自身がどうなるかというのはシャノアール自身に想像が付かない。
「やめろ……っ、やめっ、そんなことされ……たら……ッ」
 どうなるのか?
 普段ならば好奇心が先に立つ物事である、異種交配という出来事。だがその実験結果を自ら示すというのには耐えられない。
「孕むだけだ。そうだ、他の冒険者と同じラインに立つだけだ、気にする事も無いんじゃないのか?」
「く……ぅ」
 他者と自分が同じ枠で、同じ定規で測られる事。特に魔術師や賢者はその飛び抜けた知識から、カテゴライズされる事を忌み嫌う。長く生き、世の理に通じ、精液を浴びる事にこなれていても。
 この現状は受け入れられる代物ではなかった。
「何か誓いの言葉でもあるか? 旦那との初めての契りだぞ」
 ジェラルディンのとげとげしい肉棒が少女の股間に当てられ、見るもおぞましい凌辱のスイッチが入れられようとしている。
「やっ、やめてく……」
「俗な言葉だな」
 男はそう吐き捨てると、ジェラルディンの尻を勢い良く叩く。その瞬間、ぬれそぼり精液の臭気に満ちていた花弁に、おおいなる楔が突き立てられる。
「あぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ、あがががああああああっ、あぎいいいいいいっ、あぐっ、あが…………ががが……ッ!」
 どれほどこなれた娼婦であろうと、そのサイズが馬のモノを飲み込めるぐらいに拡張された娘であろうと、ジェラルディンの一撃に悲鳴を上げない女は存在しない。
 それほどまでに改造された肉槍が繰り出す刺激は強く、また激しい痛みの渦は女性の持っている尊厳を一気に奪い取る。
 ブタに犯されるという事による、自らの矮小さを感じさせる行為。
「良かったな、こんなに大勢の連中に見守られる結婚式なんてそうそう出来る代物じゃないぜ」
 にじゃっ……ぐじゅっ、ぐじゅじゅっ……ぶじゅるっ……
「あ……ぐうぅぅぅっ、あぎっ、あ……かはぁ……ぅ……」
 普通の人間による輪姦ではとてもではないが届く事の無い、異形な凌辱。人知を超える肉槍が与える屈辱は、自らを悪だと理解した上で平然の無情な行為を行えるシャノアールにすら大きすぎた。
 幼い肢体に対して大きすぎる肉槍のトゲトゲは、からみついてくる膣肉をより大きく巻き込んで派手にまくらせる。喜びや愉悦といった性欲につきまとう快楽など感じられるはずもなく、口元からは苦悶の言葉とよだれがただこぼれるばかり。
 ブンブンとこの現状を否定するかのように頭を振り、少女は蹂躙される。
「あまりに感じすぎちまってロクに声も出ないよだな、ハハハッ!」
 男達の笑い声がそこで不意に大きくなり、少女は陰惨なる宴のまっただなかで激しく犯されていく。
 ジェラルディンは大きく猛り、男達の期待に応えるべく激しい吐息をまき散らしては大きく身体をうならせる。
 即座にその肉槍は、蠢いては射精を開始した。
「かっ、はぐっ!? やっ、な、出て……出てるぅ…………ひぎいっ、あぎっ、あぐががぎぎぎいいいいッ!!」
 その射精は勢い良く、今まで十二分に犯され汚され尽くしていた少女の膣を埋めていた精液を、一気に押し流していった。
 ビュルビュルと弾けるようにして溢れ出す精液は膣口からゴボゴボと汚らしい音を立てては、こぼれていく。
「おーおー、出る出る。なんか精液温泉でも湧き出してるってぐらいに、すげぇ事になってるんじゃねーのか」
 のんきな言葉を投げかけながら、男達の前で凌辱の証は弾けては溢れ、流れ、とめどなく幼げな四肢を蹂躙する。
 その毒素はジンワリと子宮を食い尽くさんと暴れ狂い、弾ける熱量に少女はただ口をパクパクと魚のように動かすしか出来ない。
「かは……ひぃ……」
 子宮の守りを精液の波により押し潰されつつある中で、シャノアールは自身を壊れないように保つのが精一杯だった。この痛みと絶望、すべてに抗い、あの恐怖の薬すらもねじふせられればと。
 自分でもそれが無理そうであると理解していながら、それでも。
 少女には耐える以外の選択肢は無く、ただ迫り来る白く濁った闇に耐え、身体にのしかかっては暴れるビンク色の悪魔が死ぬようにと。
 わずかに呪詛めいた悪態を、口元からこぼしつつ。
 そんなささやかな願いも望みも形にならないまま、少女の肢体は必要以上に弄ばれるしかなくて……。


「あぉ……おぁぁ…………ぅ」
 口元から精液混じりのよだれをこぼし、妻とされた少女はだらしなく四肢を床に投げ出していた。
 大きくなった腹を押さえ、ブルリと身体が大きく震える。
「背徳の賢者ってのも悪くなかったが、今日からは『腹ボテの賢者』って名前もいいんじゃねーのか?」
「ああ、まったくな。その方が可愛くていいんじゃね?」
 凌辱者達の言葉は容赦なく石つぶてのように、シャノアールの心へと投げつけられては痛みを与えていく。だがそれに反論する気力は当然ながら残されて無く、腹の中でどんどんと育っていくブタの子供にただ、怯えていた。人間であるはずの自分が、事もあろうにブタなんかの相手をさせられた上で、その子供を作らされたという事実に。
 より大きな悪に、そういった自分を心酔させてくれるような、強いよりどころがある存在にかしずく。それは自分にとって悪くない矜持だと思っていたシャノアールが、よりによってブタを旦那にして子作りされてしまう。
 どう考えてみた所で、食用としてのブタにかしずくなんてできるはずもなく。
「いや……やめっ、こんな……のぉ……ッ、だめだ……うみた……うみたくな……んてな……い……ッ……」
 頭をわずかに左右に振りながら、必死に怯える。その姿だけは、見た目通りの小さな女の子と言うのに相応しい格好であった。そうやって必死にもがいている様子も、凌辱者達にとっては最高の眺めともいえる。
 やがて小刻みだった下腹部の震えが、不意に大きくブルリと一度だけ揺れる。
 訪れた破滅の瞬間に、黒猫はその自我を崩壊させてただの一言をつぶやいた。
 それはもう、人の言葉では……なくて。

「……お゛あ゛あ゛」