悪夢−−セニティ王女の場合−− byMORIGUMA クルルミクの竜神の迷宮も、いよいよ最終局面に向かっていた。 いまだ、迷宮の謎はベールに包まれ、 女冒険者たちは、ワイズマンの足跡を探して、 迷宮を徘徊している。 PTが減ったせいだろうか、 最近、暇な時間が増えてきた。 『そういえば、こんな時間は、あまり無かったわ・・・』 賢者エディネィシスは、いや、そう名乗っている『彼女』は、 自分の本来の姿を、無意識に思い返していた。 長い激烈な魔法の修行や、 クルルミク王家での最高級のあらゆる教育、帝王学、馬術、交際法にいたるまで、 人の数倍のスピードと、努力を努力とも思わぬ才能で、 身につけてきた。 『彼女』の横で、それをボーっと見ている幼い顔立ちのハウリ、 『ねえさま、ねえさま』 愛くるしい顔立ちの、愛玩犬のような弟。 『あなたは、目をキラキラさせて、 じーっと分かりもしない私の授業を見ていたわね。』 可愛らしく、胸の締め付けられるような無垢で、 そして愚かしいほど愚直で、哀れな子。 『あの子に、激烈な王家の責務は勤まらない。』 父ビルゴ王子の、額や顔に刻まれた、 無数の血管やシワとなって浮き上がる、苦悩の刻印。 そして、男子が世襲するという王家の無意味な掟。 『自分が負って立たなければ、クルルミク王家は滅びてしまう。』 なまじ、歴史に残るほどの魔術師の才能を持つだけに、 他の者が愚かに見えてしかたがなく、 彼らを哀れむことはあっても、理解できず、許すことが出来ない。 『彼女』の自負の心は、その小さな肉体をはるかに超えて、 膨らみすぎてしまった。 それが、女性特有の激しすぎる思い込みであり、やり切れなさであると、 理解するには、『彼女」はあまりにも若く、未熟なのである。 ふっと、気が緩んでいたんだろう、 すぐそばに気配が立つ。 だが、これは・・・・?。 戦士の持つ、強烈な闘気ではなく、 魔術師の持つ、冷たい火花のような魔力の波動でもなく、 神官の、静謐で包み込む波のような力でもない、 盗賊の持つ、油断のならぬ空間を探りまわす探査の感覚でもない、 ましてや竜騎士の、炎のような力と熱の気配でもない。 だれだ、これは・・・・・?。 いや、まさか・・・?!。 たった一人、それに該当する記憶が浮かんだ。 冷たい汗が、彼女の首筋を走った。 思わず顔を上げた。 まるで、自分が小さな虫になったような、 強烈な錯覚が引き起こされた。 「ひ・・・・・・っ!」 相手の圧倒的な『気』が引き起こす、感覚の混乱。 エディネィシスのか細い悲鳴が聞こえた。 「あら〜〜、おひさしぶりですうぅ。お元気でしたか、エディネィシスさん。」 にこやか、ほのぼの、フレンドリィ、 酒場のぎすぎすした空気が、 とたんに、腰砕けを起こして雪崩をうつ。 「しゅ、しゅ、シュピ、スピリア殿・・・??!!」 ようやくのことで、肺の中の空気を搾り出すエディネィシス。 竜神の迷宮で、行方不明になったはずの、 エルフの賢者、スピリア=クロフォードだった。 運勢数値のあまりの悪さから(なんと1)、 単なるお荷物と見ていたエディネィシスの予想を、最悪の形でくつがえし、 迷宮深層部8階で、14日におよぶ肉弾戦を戦い抜き、 骨と皮と化したならず者は、数千とも噂された。 その結果、危うくハイウェイマンギルドを、 経済的崩壊に追い込みかねないほどのダメージを与えた、 恐怖のエルフの若奥様なのである。 あの時、『彼女』も大変な目に合っている。 ギルドボに、半ば脅しで泣きつかれ、 公式の王女財産だけでは足りなくなり、 長年ためこんでいた隠し財産でも足りず、 奴隷商人に、人気の冒険者を優先的に差し出す条件で、 借金までギルドにつぎ込まざる得なくなった。 『なっ、なっ、なんでこいつがまたああっ?!』 自分の地位も気品も思わず投げ捨て、心の中で怒声をあげる『彼女』。 あの時破産していたら、マジに計画の全貌がばれてしまう所だったのだ。 だがしかし、混乱と恐怖で気を惑わせたエディネィシスは、 ニコニコしいているスピリアの後ろからかけられた声に、 飛び上がりそうになった。 「どうしたい、天下の大賢者さまが、変な口調になってるぜ。」 ニヤニヤ笑う、凶悪な美貌、 あふれるような白金の髪、 紫のギラギラする下着に、赤皮のジャケットという、 最下層のバーでも見かけない、最低の破廉恥な服装。 『どんな手段を使っても、絶対に捕えて二度と再び世に出られないようにしなさいっ!』 自分がギルドボの伝達係に絶叫した相手が、 『史上最悪のそれ』がいた。 「は、ハデス殿、生きておられたか・・・。」 混乱し切っていたエディネィシスは、 思わず言ってはならぬ言葉を漏らしたが、本人は気づかない。 ギルドにつかまった女冒険者が、殺されることだけは無いのだ。 エディネィシスが、ハデスの死を願っていたと言うことになってしまう。 だが、スピリア嬢はニコニコほわわんといつもと変わらず、 ハデスもニヤニヤして、何の意図も読ませない。 「何をしておられる、グランディスどのが待っておられるぞぃ。」 ビンと立った白ひげに、少年のような赤い頬、 深いしわもあるのだが、みなぎる絶倫の気が、 そんなものをかき消してしまう。 『白銀の狼』と呼ばれた、最年長にして現役最強クラス(レベル48!)の、 傭兵だった。 「今日こそは、ワイズマンを切り捨てみじん切りにしてくれるわっ!。」 何とか大賢者の権威と貫禄を思い出し、 わずかに眉をひそめて、エディネィシスがたしなめる。 「お年(ボケ)ですか?、あそこは殿方は入れません。絶命するだけです。」 だが、『白銀の狼』はカンラカンラと大笑い。 「何の、この年になって、何をいまさら命を惜しみましょうぞ。 もう、地上でスピリア殿の心配をして寿命を削るのは、真っ平ごめんですじゃ。」 大見得を切って、目をぎらつかせる。 この男、いい年こいて、 スピリアにぞっこん惚れて惚れて惚れ抜いてしまっている。 彼女も憎からず思っているのか、 「あらん、恥ずかしいですわん。」 そういいながら、豊かな胸に剥げ頭を抱きしめて、 老人をのぼせ上がらせてしまう。 まさか、この男、最下層に突撃をかける気か?!。 そんなことをされたら、 最深部のペテンがモロばれになってしまうではないか。 しかも、スピリアとハデスの異常な気は、なにごとだ!?。 凄まじいレベルがビリビリ肌に感じてくる。 この3人+だれかに、万が一成功されてしまったら・・・。 「これな〜んだ?」 ハデスがばっと広げたそれ、 竜神の迷宮に詳しい『彼女』は、パニックに陥った。 ベールで隠していなければ、絶対に不審がられるほど。 それは、竜神の迷宮の完璧な地図だった。 万が一の恐怖が、現実と化した。 『ハデスを絶対に捕えろ』と、『彼女』は命令した。 ハデスは、賢者たちと酒場で騒ぎながら、 王国内部に本当の敵がいることを、皆に推測させた。 おびただしいモンスターの存在を怪しみ、 淫馬魔獣の存在から、 禁断の生命創造が最下層以外で行われていることを予測し、 ワイズマン以外の高位の魔道師の存在を察知していた。 『そんな強力な魔道師は、ワイズマンを封じ込めたぐらいのレベルでなきゃな』 ハデスの漏らした一言は、意外にも『彼女』の耳にまで届き、 『彼女』は冷や汗を流した。 そして、長くギルドランカートップに立ち続けた上に、 ギルドのならず者たちに非常に人気があり、 ファンクラブを作るばか者まで出るありさま。 もともと愚連隊のアネゴのような性格で、 凶暴で身勝手なくせに、やたら情が熱く、気に入れば善悪こだわらない。 ギルド員のくせに、ハデスに気に入られ、 可愛がられてる者までいるという。 ギルド内部の情報が、筒抜けになっている可能性があった。 というか、完全に下僕化した連中、何でもバラスだろう。 『彼女』は耐えられなくなった。 どこかで、ギルド側から、真相がばれてしまったら・・・?。 ギルドの全力をあげた対策が、功を奏したのか、 ハデスの名前は、酒場のPT名簿から消えていた。 だが、いまや悪夢は蘇り、 完璧な地図を持った悪魔は、ニヤニヤ笑いながら、 それを見せびらかしていた。 「えっへへへ、アタシのペットが、いろいろ持ってきてくれてねぇ。」 「これはすごいですね、あなたたちならば、出来るかも・・・。 私があなた方の元に来る日も、遠くないかもしれません。」 エディネィシスは、そう言わざる得なくなった。 それは、彼女が動かねばならない事を意味する。 無人の野を進むがごとく、 ハデスたちのPTは迷宮を突き進んだ。 先頭に立つのは、たまたま偶然スピリアを助けだしたという、 大柄の女戦士グランディス=ウォルフォード。 豪奢な金髪に、青いたれ目のファニーフェイス美人。 目元の泣きぼくろがチャームポイント。 彼女を助けた縁で、昨日登録されたばかりの魔法戦士である。 傷のある巨大な長剣をふるうと、 2撃目を放つ必要が無いほどの破壊力を持ち、 その傷を見たドラゴンは、なぜか怖気をふるって逃げ散った。 運命数1のスピリアアンラッキーは、相変わらずかもしれないが、 他のメンバーの能力が高すぎるため、 罠に引っかかる様子すらない。 そして、ならず者たちは、 「ひっ、ひっ、ひいいいいっ!」 「いっ、いやだああっ、もういやだああああっ!」 「立たなくてごめんなさい、萎えててごめんなさい、生きててごめんなさいいいっ!」 いやもう、スピリアの笑顔を見た瞬間、 腰を抜かして逃げだすやつが続出。 あの“ギルド恐怖の14日間”とまで言われた、脅威の肉弾戦で、 彼女一人に粉も出ないほど絞りつくされたギルド員は、 悪夢にうなされる者、そのまま帰らぬ人となる者、 トラウマでオカマに走る者と、悲惨な結末を数多く残し、 その恐怖は、ギルド中に伝染してしまっている。 「あらあらあら、皆さんどうしたんでしょうねえ・・・あんなに最初は喜んでましたのにぃ」 「そういうこと言えるのは、アンタだけだ・・・」 脱力しながらつぶやくハデス。 はって逃げるギルド員たちのお尻を見ながら、 とっても残念そうなスピリアさんでした。 その頃、ヒミツのギルドボの部屋。 「ヒネモスはまだ戻ってこんのか!、ゴルゴダスやマリポーサの脱獄はまだか!!。」 絶叫するギルドボに、首を振る連絡員。 「ま、魔女狩りのイッケはどこだ?」 ハデスのPTは賢者二人に魔法戦士と、魔法の比重が大きい。 魔力封じの7Fならば、足止めぐらいはできるかもしれない。 しかし、非常に言いにくそうな顔の部下その1。 「そ、それがすでに遭遇しちゃったそうで・・・、」 「ギャハハハハ!」 ハデスは、大笑いしながら拳で死霊を殴り飛ばし、 イッケの霊体を、ハイヒールのカカトでぐりぐり踏み付けている。 (アンタほんとに賢者か?。) そういえば、イッケは前にも、ハデスPTにあっさりヤられている。 おかげで剣の仮面を奪いとったPTはもうやりたい放題。 「F・R・G・Gは何をしている!」 別の連絡員が、無言で、一枚の紙切れを渡した。 「・・・『旅に出ます、探さないで下さい。F・R・G・G』・・・ぐうあああああっ!」 「退避ーっ、退避ーっ、ボスが切れたぞおおっ!」 「どうでもいいが、どこが用心棒なんだ、あれ・・・」 パニックにおちいっているギルド中枢部に、 こっそり覗き見をしていたエディネィシスは、ため息をついた。 9Fにあっさり到達したPTの前に、 巨大な竜の姿が立ちはだかった。 「・・・・・古竜(エンシェントドラゴン)レッド・ブラグマディズと、 古竜ブラック・グラウデスの歯型のついた剣か・・・」 グランディスの持つ、背丈ほどもある傷のある大剣を見て、 竜はぼそりとつぶやいた。 大剣の二つの傷は、 どちらもドラゴン、それも最強レベルの古竜の牙の痕だったのである。 4人の手の甲に、パッと竜紋を描くと、 『さっさといけ』と言わんばかりにあごをしゃくった。 「あらん、残念ねえ。」 『古竜殺し』グランディス=ウォルフォードは、 さも残念そうにため息をついた。 「ちょっ・・・何をしている?!、なぜそいつらと戦わない?!。」 闇の奥から、激怒した女性の声が聞こえたが、 竜は、さも軽蔑したような目を向けると、 フンとそっぽを向いた。 「いつまでも隠れてるんじゃねえよ、エディちゃん、 いや、もういいだろ、セニティ嬢ちゃん。」 ハデスは、ニヤニヤ笑いを浮かべたまま、 闇の方を向いた。 黒いベールをまとった、賢者エディネィシスが、 ゆらりと姿隠しの魔法を解いて、現れた。 ぎりぎりと、白い歯を噛み、 PTの面々をにらみつける。 「下賎な者たち、何ゆえに戻ってきた!」 ハデスは、形のいい胸をぶりんと突き出して、胸を張る。 「ようやっと出てきやがったな、このまま突っ込まれたら、 『最下層の男性絶滅の呪い』がペテンとばれっからな。 さあて、『馬鹿』娘におしおきだよっ!。」 『白銀の狼』が心底あきれたように、 「ここまで『馬鹿』王女とは思わなかったわい、 ワシら民に向かって、竜をけしかけるとは・・・ビルゴ王子もさぞお嘆きじゃろう。」 グランディスがぼそりと、 「『馬鹿』につける薬はないわよ。」 ニコニコしながら、スピリア、 「あらあら皆さん、そんなに『本当の事』を言っていいんですの?。 どんな『お馬鹿さん』でも、面と向かって言うのはどうかと思いますけどぉ。」 いかにも気の毒そうな口調で、小首をかしげる若奥様。 いや、スピリアが一番容赦ないって・・・。 真っ赤に激怒するエディネィシス、いやセニティ王女。 「ば、ば、馬鹿?、私に向かって何たる口を叩くか!」 杖がうなり、暴風のようなエネルギーの矢が、数限りなくPTへ襲いかかった。 「我が下僕、ヴァーイヴよ、不可視の盾を」 スピリアの持つヴァーイヴの杖から、半球状の見えない障壁が現れ、 エネルギーの矢で無数の火花を散らした。 「私も14日間、遊んでいたわけではありませんのよ。」 ドラゴンでも打ち落とす力をあっさりとはじかれ、 セニティは目を見開いた。 快楽地獄の極地の中、悶え狂うスピリアは、 体中の穴と言う穴に、ヴァーイヴの杖を突っ込まれた。 何度もその振動に絶頂を迎えた彼女は、 ヴァーイヴの中に封じられた強力な『魔』と、交流を果たした。 『甘い蜜と、甘美な快楽の代償、確かに受け取りました。 これより私め、スピリア=クロフォード様の下僕となりましょう』 その本質に触れたスピリアは、完全にヴァーイヴという魔の杖を理解し、 従属させていた。 「おのれ・・・ならば食らえ、『竜の呪い』!」 『竜の呪い』それは、受けた者に、 人間以外のあらゆる存在を滅ぼす『竜の灰』をまとわせる。 装備や衣類はもとより、触れるものすべてが灰になるそれは、 一切の飲食ですら、ほとんどすべて口にできなくなる。 ハデスは攻撃型の賢者、あとの二人も戦士とすれば、 スピリアの防御さえ消し去れば、 全員まとめて魔力の嵐で殺してしまえる。 そして呪力は魔力と違い、通常の魔力障壁では防ぐことは不可能。 ヴァーイヴが急に曲がったかと思うと、 瞬時にスピリアの手を脱した。 「はうっ!」 黒い波動が、スピリアの周辺に発生し、 無数の火花を散らせた。 スピリアの身につけていた物全てが、 瞬時に灰と化して散った。 真っ白い肌が、闇の中に青白くさらされた。 「あ〜あ、やっちまった」 かまえていたハデスが、急に準備していた術を解き、 あきれたような声を上げた。 その奇妙な声に、不審を抱いたセニティは、 不気味な笑い声を聞いた。 「ふふ、うふ、うふ、うふふふふふふふふふ、ほほほほ、 きゃはははははははは、きゃははははは、」 狂気の笑い声を上げながら、スピリアの白い裸身が消えた。 「なにっ?!」 がっしとつかまれるセニティの杖。 それは瞬時に灰となって消えた。 いや、それどころか彼女の衣類から、あらゆる魔法の装備や防具が、 竜の灰に破壊され、さらさらと消え落ちた。 強力な魔力の波動が、周囲の空間を揺らしていることに、 ようやくセニティは気づいた。 「そっ、そんなっ、短距離テレポートなんてっ!!」 テレポートの魔法は存在するが、 通常は、長い呪文の詠唱と、転移位置の魔方陣の確保により、 厳密にきめられた位置同士の移動が大半であり、 こんな瞬時に行うテレポートなど、セニティでも不可能だった。 「ふふふふ、きれいな肌ねえ・・・すべすべで、赤ちゃんみたい・・・」 ぞくりとするような、妖しい声。 これがあの、ほわほわニコニコの、お日様のようなスピリアだろうか?。 赤い舌をぺろりと伸ばし、 白桃のような頬を、ぞろりと舐めた。 「ひいっ!」 ぞっとして振り返った彼女は、腰が抜けそうになった。 翠の目の真ん中に、縦に鋭く割れた、金色の虹彩が現れていた。 逃れようともがく体が、軽々と引き寄せられ、 バラのつぼみのような唇が、同じぐらいきれいなそれを求め、 ヒルのように吸い付いた。 「んうっ、ううっ!、んんんっ、んーっ!」 必死で噛みちぎろうするが、舌を強く吸われ、 甘くくらくらするような動きで、絡めとられ、 喉がむせかねないほど、奥までぬるぬると、肉の蠢きが入り込む。 喉が、口が、体の中までのぞかれそうなほど、 探られ、まさぐられていく。 息が止まり、身体が何度も震え、目の前に星が飛び散った。 ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、 喉から、口内から、 何かが吸い出され、飲み干される。 手が震え、足が冷えていく。 気が遠くなり、立っていられなくなった。 「うっふふふ・・・あなたの魔力おいしいわあ」 ぞっとするような艶を帯びた声、 セニティは、身体にみなぎっていた魔力のほとんどが消えていた。 「こ、これは・・・」 混乱するセニティ、 「うっふふふ、心臓の周りに発生する魔力回路、 ぜえ〜んぶいただいちゃいました。」 心臓は、生命の象徴であり、魔力の源でもある。 魔力の才能とは、この源の量であり、 その力を操るため、魔力の回路を体内に組み上げていく能力にある。 東洋では『胸中の三花』とも呼ばれ、 これを刈り取られると、魔力は使えなくなってしまうのだった。 といっても、回路もまたエネルギーであるため、 数日すれば回復してくるが、それまで彼女は、 何の力も無い一人の娘に過ぎなかった。 ハデスが彼女の顔を覗き込むように、しゃがんだ。 つま先だけで身体を支え、足を大きく開いて、 美麗な肉体がセニティにのしかかる。 「あの地獄で、何があったか、わかるかい?。 分からないよな、分かるわけも無いよな。 だから・・・、教えてやるよ。」 その笑い顔に、細く白い目がひかった。 そこには、一片の温かみも、優しさも無かった。 悪魔が笑えば、こういう顔になるのだろうか・・・。 ハデスが、左手の人差し指をつかみ、右手の人差し指を天に向ける。 暗い闇の中に、人とも獣ともつかぬ呪文が響いた。 『目覚めろ、獣、目覚めろ、反理のことわり』 光る指が、スピリアの陰核に触れ、激しい火花が散った。 「んっ、んんっ、んはああああああああああああっ!」 指が離れると、それを追うように黒い肉が盛り上がり、 血脈が流れ、猛然と膨らんだ。 ヌジュルッヌジュルッ、ヌジュルッ それは、30センチを超えてもまだ伸び、 そして、無数の血管に取り巻かれ、膨れ上がった。 「ひ・・・っ!」 目の前に伸び上がるそれは、 人間の一部とは思えぬほど、グロテスクで、巨大で、生々しかった。 「んはああんっ、すごくっ、出たがってるぅ。」 スピリアが、自分に生えたそれを撫で回し、 生臭い透明な液が飛び散り、エロティックに身をくねらせた。 その巨大でグロテスクなそれは、無数の何かが入っているかのように、 びくびくと脈打ち、肌の下を何かが蠢いているようにみえた。 「くっくっくっくっ、たまんねえよなあ。 14日も男たちの精をすすりにすすり、中に出しまくられて、 たまりにたまった精力が体中から集まってきてるんだ。」 いきなり、銛の切っ先のようなそれを、 セニティの優美な唇に突っ込んだ。 「んふうっ!?」 あごが、外れそうに広がり、 反射的に噛もうとして、硬質ゴムのような強靭さに、 文字通り歯が立たない。 それどころか、押し込むそれに歯がへし折れそうになる。 「んひいっ!、んうううっ!、ううっ!、んゆうぁううっ!」 唇に血がにじむ、 喉が突かれ、強引にレイプされ、 舌が巻き込まれ、ちぎれそうになる。 あふれ出た生臭い粘液、 口に、鼻に、広がる異臭、味、 『何っ、なんなのこれえっ!、いやあっ、やめてええっ!』 息がつまり、力が抜ける。 咳き込み、あえぎ、身体が酸素を求めてのたうった。 グリュウッ 喉が、裂けるかと思うほど、 押し広げられた。 ドビュッドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、 尿道を塊が突き上げ、粘液と化して先端を押し広げ、 女体の中にめがけて解き放った。 「んっはあああああああああああっ!!」 のけぞるスピリアの裸体、 白くほっそりした腰がそり返り、 異形の黒いペニスが、王女の喉深く押し込み、 その喉を、食道をレイプし、生臭く黄色い精液をほとばしらせた。 プルプルと震える美しい膨らみ、 勃起し切った乳首が、激しく揺れた。 灼熱した放出の感覚、 あえぎ、まといつく女体の、喉の感覚、 わななく抜けるように白い裸身、 ほとばしるたびに、その金髪と、汗ばんだ肌が、 震え、痙攣し、よじれあった。 「はあっ、ひゃあっ、しゅごいれすぅ〜、たまりませんわぁん」 ろれつの回らない口で、 唾液が、唇から流れる。 女性では感じることの無いエクスタシー、 オスのもつ、爆発的な快楽に、恍惚となるスピリア。 ようやく引き抜かれながら、 口いっぱいにさらに射精が繰り返し、 何度も、えずき、吐き、むせた。 混乱し切ったセニティは、自分が何をされたのかすら、 理解できてなかった。 ただ、おぞましい汚辱の感覚が、 鼻に、口に、喉に、顔中に染み込んでいく。 「彼女はなあ、14日間あの地下で男の精を吸いすぎて、 体中に充満しちゃってるんだな、これが。 おかげで、暴走する男の精が、身体を魔物に変えそうになってる。 だから、その精液、精子、すべてアンタの身体で、 徹底的に出させてもらうぜ、生でな。」 エルフは、人間と混血可能と言われる。 しかし、スピリアはきわめて特性の強いタイプであり、 よほど合致する因子を持つ相手でないと、100%妊娠は不可能。 だが、彼女の肉体組織そのものは、 異性の精の持つエネルギーを貪り、感じ取るという、 きわめて稀有な能力を持っていた。 開放的な性格と同様に、 肉体組織も他者のエネルギーを、きわめて受け入れやすいのだ。 だが、喉に、直腸に、粘膜に、肌という肌にあふれるように注がれ、 容量オーバーになった精液は、 彼女の体液を犯し、生体組織そのものを、人間のオスの遺伝子で陵辱され、 肉体組織や、遺伝子、精神にまで変異や異常を引き起こし、 魔力や力も暴走を始めていた。 それを、ハデスが一点に集め、形を成したのがこの異形のペニス。 「あの服の下には、十数枚の護符と魔方陣を張って、 彼女の肉体変異を抑えてたんだぜ、もう止まらないからな。」 ぐいと、彼女の腰を抱えると、 本能的な恐怖で逃れようとするそれは、 ばたばたと動いた。 真っ白い尻肉、必死に蠢く白い腿、 ぷくりと膨らんだ、やわらかそうな恥丘。 にやっと笑うその顔は、『夜叉』と呼ばれる魔物に似ていた。 「ひいっ、いやっ、いやっ、離してっ!」 黒々とした異形のペニスは、馬鹿でかい亀頭を、 膨らみのスリットへ、一片のためらいも無く、突き刺した。 「ひぎいいいいいいいっ!!」 ブチブチブチッ、ミチッ、ミチッ、ゴリゴリゴリッ やわらかい膜が、容赦なく引き裂かれ、 肉が裂け、気の狂うような苦痛と音が、のめりこんだ。 ゴリッ、ゴリッ、ゴリゴリッ、グリッ、ゴリュゴリュゴリュ、 「ひいいいっ!、ひっ!、あああっ!、痛いっ!、痛いイッ!」 血があふれ、痛みが脳髄を焼き焦がした。 悲鳴を上げる唇が、銀糸を引く。 淫肉が無理やりに広げられ、 赤い雫にまみれた凶器が、初めての痙攣に脈打つ。 筋ばった肉茎が、猛然とくねり、 狭い肉洞を無理やり女に変えていく。 「あははは、あはははは、ああんっ、しまるうんっ!」 激しい笑い声、歓喜の叫び、 細い腰がムチのようにしなり、 凶暴な動きが突撃をかける。 ピンクの初々しい肉は早くも赤く腫れ、 強引に広げられ、犯される苦痛は、すさまじい嵐となって、 セニティの肉体を突き開く。 非常識なサイズのそれが、凶器の硬度と暴力でたたきこむ。 杭がハンマーで打ち込まれるように、 斧がマキを叩き割るように、 「おうっ!、あああっ!、うあぁあぁっ!、ひぎいっ!」 細い腕が尻を抱え上げ、お腹にめり込ませ、 幾箇所も裂けた胎内が、新たに血の雫をほとばしらせ、 白い腹部を激しく膨らませ、突き刺し、えぐりこみ、 半分しか入らぬそれを、何度も何度も何度も、 のけぞり、痙攣し、泡を吹くまで、突き刺し、突き上げ、えぐりこんだ。 「うはああっ、すごく締まって・・・ああっでるっ!」 ドビュルッドビュルッドビュルッ、 黄色い塊が、えぐられていく子宮口に叩きつけられた。 飛び散り、くねり動き、中にまみれる。 「いやああっ、出てる、出てるうっ!、やめてっ、止めなさいいっ、 私はっ、私はあっ、セニティ・・うあああっ!」 「まあだ、ボケたことぬかしてるか、このガキゃ。」 ギュウッと、乳首が血がにじむほどつままれ、引っ張られ、 細い悲鳴が上がる。 「お腹がっ、お腹が苦しいっ・・・」 激しく放出するそれは、人間一人のそれとは、桁が違う。 「くふふふ、無理もねー、 スピリアの身体に注ぎ込まれた何百人もの男の、生の精だ。 一度に10人分ぐらいは出るだろさ。 処女開通で、いきなり妊娠ぐらいしちまうかもなあ。」 青ざめるセニティに、 膣からなだれこむ精液で、子宮があふれる。 「それも、最低のならず者のヌプヌプ、でろんでろんのザーメンだぜ、 大抵の女なら、一発で妊娠しちまうような濃ゆ〜いヤツだ、キシシシ。」 ほとんどゼリー状に近い、ドロドロの粘液、 その感触が、いきなり増大したように感じた。 「いっ、いやああっ、抜いて、抜いてええっ!、 気持ちが悪いいっ!!、お腹がいやああっ!」 だが、バックから押しかぶさるスピリアは、 半眼の目に淫乱な笑みを浮かべ、舌をくねらせて、 腰を、さらに激しくふるった。 「うあああっ!、いや、いや、いやあああっ!、痛い痛い痛い痛いいいっ!」 泣き叫ぶセニティに、うっとりと細い耳を震わせ、 ボッコリと膨らんだ腹部を、 濡れ光る凶暴なペニスで、さらに、突き刺し、ねじくりこむ。 金髪を振り乱し、逃れようとあがく、 がっちりと掴まれた腰は、微動だにせず、 激しい律動に、揺さぶられ、突きこねられる。 「お腹があっ、やっ、破れるっ!、ひぐっ!、痛いっ!、痛いいっ!」 涙を流し、腹部がぼこっと膨らみ、 グジュルグジュルと、引きずり出される動きが、 内臓ごと裏返されるように感じた。 ゴリゴリ、ズリズリ、 凶悪なでっぱりが、中を刻みつけ、こすりぬく。 引き抜かれる寸前、 ドグヂュッ 鈍い音を立てて、一気に突き通される。 お腹が膨らみ、息が止まり、 「あががぁぁぁぁ!!」 地獄に落ちるような衝撃に、打ちのめされる。 白目をむき、痙攣する。 だが、止まる事など一瞬も無い。 ゴリゴリ、ズリズリと引き抜かれ、 グギュルルッ! 苦痛と絶叫の痙攣が、膣を絞り上げ、 それがスピリアの快楽をさらに高ぶらせる。 ドブグッ、ドブグッ、ドブグッ、 「ひ、ひきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 突然、沸き立つような、暴悪な射精、 塊に近い、からみつくような精子の塊が、 膣の底に、にえたぎるように噴き上げる。 ボクッ、ボクッ、ボクッ、 短く突き上げながら、膨大な射精を、濃厚な精液を、 痙攣し続けるセニティに、胎内射精を繰り返す。 グギュッ 「くひいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」 凶暴なそれは、さらに一段奥に、 無理やり破壊し、こじ広げ、突入してきた。 狭くきついはずの子宮口すら、 強引にねじ広げ、引き裂き、強姦した。 「うあ・・あ・・・ああ・・・」 うつろに目をさまよわせ、うめく、ただうめくだけしかできない。 肉のこわばりが、悪意の塊が、 しっかりとそこに、ありえない場所にはまり込み、 ドクン、ドクン、と脈打っていた。 起こっている事態に意識が粉々にされていく。 破壊と暴力の象徴が、 彼女の中のもっとも聖なるはずの場所を、 犯していた、征服していた、穢していた。 広がりきった尻が、悪夢の苦痛に痙攣し続ける。 「い、いや・・・いや・・・」 赤子のように首をふりはじめたセニティに、 それが、赤く勃起し切ったそれが、 動いた、跳ねた、ねじ込まれた。 ボギュッ、ボギュッ、ボギュッ、 淫肉の暴虐な侵攻、胎内の破壊と蹂躙、 口が痴呆のように開き、 蠢く苦痛に、 声も出せず、乳房を血にまみれさせ、 地をはいずる、 動く、めり込む、はまり込んで突き刺す、 青ざめた裸身が、のけぞり、のたうち、 ヒザが震え、足先が屈曲をくりかえし、 律動は、一瞬も止まらず、 暴行される胎内の苦痛、悲鳴、嗚咽に、 全身を痙攣させ続けた。 エルフのにこやかな笑みと、淫靡なため息が、腰を引き絞らせた。 ドビュルルルルウウウウウウウッ ボクッ、ボクッ、ボクッ、 塊に近いそれが、子宮の内側にぶち当たり、 身体が、内側から、もっとも聖なるはずの場所から、 汚れ、ただれ、けがれていく。 無数の破片となり、さらに無数の愚劣な男の精子となって、 ウジョウジョと泳ぎだし、跳ね狂い、粘膜にもぐりこんでくる。 「いやあっ、いやああっ、もう出さないでえええっ、中はいやあああっ!!」 絹のしとねが、柔らかな抱擁が、 夢見た優しい夫とのおだやかな夜が、 粉々にされ、踏みしだかれ、汚物に汚されていく。 苦痛と恐怖と屈辱に彩られていく。 ドブリュッ、ドブリュッ、ドブリュッドブリュッドブリュッ、 悲鳴をあざ笑うように、立て続けに、さらに加速し、 蠢く粘塊が、子宮に満ちて、あふれて、 蠢き、のたうち、孕ますためにもぐりこんでいく。 ボッコリと膨らむそれから、 亀頭が無理やりに引かれ、暴れ、音を立てて抜けた。 ブリュリュリュリュリュリュリュリュ はちきれそうに膨らみ切った子宮から、 逆流する精液が、膣を荒れまくり、陰唇を震わせて噴出する。 「うあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 高貴な唇が、獣の悲鳴を上げた。 汚辱の噴出が、身体の力と言う力を踏み砕き、 背中一面に脂汗を流させ、 滑らかな背筋を伝い落ちた。 だが、また深く、それが押し込まれ、膣底がえぐられ、 身体が無邪気に、しかし妖しく笑うスピリアに向かい合う。 「さあて、ワシの出番だの。」 服を脱ぎ捨て、ふんどし一丁になっていた『白銀の狼』は、 黒光りするねじくれた木の根のようなそれを、 脱力しきったセニティの尻に、突っ込んだ。 「ひぎいいいっ!、痛いいいっ!、痛いいっ、裂けるっ、裂けるうううっ!」 その叫びを、マーチのリズムのように、 セニティのアナルへ突入させ、激しく出血するそれを、 ズンズンと突きまくる。 同時にスピリアの腰も動きを再開し、 同時に数倍化した苦痛は、脳天まで突き抜けんばかりに、 律動を繰り返す。 「ひたいいっ、ひいっ!、ひい、痛いいいっ!、ひたいいっ!、」 泣き叫ぶセニティの、言葉にならぬ悲鳴が、 闇に響き、獣たちを興奮させ、魔物たちを引き寄せていく。 だが、どの魔物も恐れをなして、近づこうとしない。 力なく暴れようとする手足も、 苦痛の突き上げにのけぞり、残酷な突入にくじかれ、 涙をぼろぼろ流しながら、がくがくとゆすり動かされる。 「アンタもやるかい?」 正気を失いかけたようなセニティに、 唇をすすり、舌を引きずり出しながら、 ハデスがささやく、悪魔そのものの笑いで。 「『二刀流のグランディス』の意味、教えたげるわ。」 豪奢な金髪の美女は、にまあっと笑うと、 細い指を開いた。 「うぎいっ、ひいっ、ひいっ、やあっ、もうっ、もう・・」 立ったまま、3人から輪姦されていくセニティに、 グランディスは、両手の指を開いた。 「ううぁあぁぁあぁぁぁぁぁっ!、なっ、なにいっ!、ひぎいっ!」 突入を繰り返す男根の根元から、2本の指を突き入れた。 突然、痛みを思い出した魚のように、 激しく跳ねる肢体。 目が、正気を失い、白目を向く。 突き上げる暴力の両側で、 女の指先が進入、男根をしごきつつ、内側を嬲りだした。 「うおおっ、こりゃあいいわいっ!」 「あがああっ、ああっ、わっ私ッ、私イッ!!!、」 「ああ〜ん、いっちゃう、いっちゃう、とまんあいけどいっちゃうううっ!」 真っ黒い汚辱が、背筋を突き抜けんばかりに走り、 狂うような苦痛と刺激が、止まることなく射精し続けた。 「んううっ、んんっ!、んはあっ!」 狂う直前で、ハデスの口が彼女の理性を引きずり起こし、 舌技が、狂気をそらして現実に立ち返らせる。 そして、とどめの残忍な言葉を放った。 「あたしたちが、知らないと思ってるのかい?。 王家の女は、何を胎にほとこしてるのか。」 ヒキッ! 今度こそ、身体が泥に変わった気がした。 『なっ、なぜそれをっ?!』 戦場に出る王家の女が、 たしなみとして身にほどこされる、避妊の障壁。 卵巣に張られたそれは、卵子と精子の結合を完全に阻止する。 強烈な魔力を帯びた右手が、 セニティの腹にのびた。 「やっ、やめてぅ、あっ、まってっ!、ひぎいぃ!、 お願いっ、やめてえっ!、何でもするっ、あっ、あぐっ!、 何でも、言うこときくか・・ああっ、らあっ、 王家の秘密もっ、竜神の盟約もうっ、止めてっ、おねがいい!」 「自分のためなら、国でも売るか、王女よ。」 『白銀の狼』が冷たく言い放った。 情け無さそうに、腰を震わせ、王女の流麗な腰の奥へ、濃い種をぶちまける。 『下がれ、無能の障壁、砕けよ、無様な魔法、征服の下に這え』 ぼこぼこと蠢く腹に、光を帯びた手がするりと、 何のためらいも無く滑り降りた。 「いいいいやあああああああああああああああああああああああっ!」 絶叫する王女の胎に、立て続けに射精の噴出が続いた。 最後の砦が砕け散り、身体が逆さづりにされて、広げられたような気がした。 「ついでに大サービスだ、多妊の魔法ってのは、お前でもしらねえだろう。」 その意味をセニティが理解する前に、 身体が、思い知った。 卵巣が、熱を帯びる、 知らぬはずのそれが、明らかに存在を主張する。 そして、動いた、蠢いた。 青い目が、恐怖で見開かれる。 ホウセンカが開くように、中に育てられたおびただしい卵子が、 弾けとんだ。 ゾワァアアッ、ゾアッ、ゾワッ、ゾワッ、 背筋が、腰が、身体が、悪寒と恐怖に強姦された。 まるで、目で見るように、それが分からされる。 無理やり目を開かされたように、それが感じる。 「やめて・・・」 涙が、止まらない。 「やめて・・・・」 髪が乱れに乱れる。 「やめてぇえぇぇぇぇぇ」 ゾグンッ、ゾグンッ、ゾグンッゾグンッ、 胎内で音がした、感じた、 卵子が結合する音。 自分が孕むことを宣言される音、 見知らぬ、もっとも汚らしい男たちの種が、孕まされる。 第47代クルルミク王家第一王女、セニティの胎の中に。 数百人のならず者たちの精子が、なおも執拗に射精され、 そして、次々と精子は先を争って、飛び散る卵子を求め、駆け巡っていく。 『いや、いや、いや、何で、何で、何で私が、 わ、た、し、が・・・・・・・・・・・・・・』 壊れた、無表情なセニティの胎の中で、 いくつもの妊娠反応が、激しく瞬き、卵巣に次々と着装していく。 「んはああんっ、気持ちいいですわあっ、」 「年寄りには、最高の冥土の土産じゃわいっ!」 ドクンッ、ドクンッドクンッ、ドクンッ、 ドビュドビュドビュッ、 ビュクッ、ビュクッ、ビュクッ、 ドクッドクッ、ドクッ、ドクッ、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「・・・・・ハッ!?」 暗闇の中、 柔らかなシーツと、絹の感触、 ほのかに漂う香の香り、 彼女の、もっとも馴染み深い感覚。 全身の、どろどろに感じる脂汗以外は。 「ゆ・・・夢・・・?」 なんて、邪悪で非道な・・・理不尽な・・・ なぜ、私が、あんな夢を見なければ・・・ かすかに、風がカーテンを揺らした。 新月のかすかな光、しかし、それだけで十分だった。 「ヒ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」 かすかに、かすかに声が上がる。 闇の中に、白々と盛り上がる、異形の膨らみ。 自分の腹の位置に、それこそ、身動きも取れぬほど巨大な。 腰が痺れたように痛み、 悲鳴を喉に押し込めて、恐怖に見開いた目が、 それを夢ではないか、一片でも現実でない証拠が無いか、必死に探した。 だが、それが震えた。 「う・・・・うっ!」 声が、漏れる。 鋭敏な歩哨が動く気配がする。 シーツを噛み、それ以上の声を必死に押し込めた。 これを見られることは、死にも勝る苦痛だった。 誰かがここに来れば、舌を噛む。 だが、現実の苦痛も、とてつもない物に変わった。 涙が流れる、歯が砕けるほど噛む、 絶望と恐怖が、お腹の奥で蠢き、 苦痛と嫌悪が、吐き気と脂汗と全身を震わす悪寒となった。 闇の中で、たった一人で、 声すら、助けすら呼べず、 悶え狂い、無言の絶叫を放ち、絶望と憎悪にすべてを呪った。 『消えて、悪夢なら消えてええっ!、いやあっ、痛いっ、痛いいいっ!、死んでしまうううっ!』 汗がシーツに染み渡り、 苦痛が髪を逆立て、 何度もベッドをきしませ、えびぞった。 ブシュッ、ブシュウウッ、 悪夢そのものの、 黒い毛にまみれた凶悪な目をした赤子が、 激しい痛みと、恐怖と、絶望を引きつれ、 彼女の股間から次々と現れた。 失神した彼女は、 そのわずかな救いの後に、 ベッドに無数に刻まれた現実を知ることになる。 「ふう、お前たちご苦労さん。」 王宮の王女の塔の屋根で、 ハデスは身を起こした。 周りには数十匹の魔物が、ゆらゆらと揺らめき、 嬉しそうに目を細める。 淫馬魔獣と呼ばれる、淫魔の変種の魔物たちは、 ハデスに多くの恩義があり、低い知能ながらも、 彼女の呼びかけに、喜んで集まった。 王女の塔にほどこされた、厳重な結界や、強力な防御の魔法も、 ハデスの魔力と、数十匹の強力な淫魔の魔力をあわせた力には、 苦も無く破壊されつくしていた。 安心し切って眠っていた上に、 おびただしい淫魔の力にねじ伏せられ、ハデスに干渉されて、 稀代の魔術師セニティといえども、 淫馬魔獣の強力な生殖能力からは、逃れられようが無かったのである。 王女の胎に、たっぷりと己たちの種を仕込んだ魔獣たちは、 満足そうにしていた。 珍しく暗い顔で、ハデスは小さなペンダントを見つめた。 尖った、白い象牙のようなそれは、人の犬歯に似ていた。 −−それが、彼女がここにいる理由なのだろう。 心配そうな犬の目をした魔獣たちに、 寂しげに笑いかけると、 『飛行』の呪文を唱え、闇夜に飛び立った。 次の日クォーPTが、 ワイズナー最初の迷宮突破PTとして、名をあらわした。 困惑し、精神に不調をきたしたセニティ王女は、 油断と慢心を引き起こし、 無謀な行動から、 破滅へと転がり落ちていくことになる。 FIN