――エピローグ『Re-incarnation』――


【05/01・06:00―『王家の聖櫃』死闘1・コトネPT】 飛ばす↓

「フォルテ、こっちであってると思う?」
「どうでしょうか…残念ですがわたしにも分かりません――」

 スライムプールによって全てのアイテムを失ったコトネ達は上の階への階段を探していた。
 本来、素っ裸であるはずなのだが、「女の子がお腹を冷やしちゃいけない」などとある男の計らい
―セレニウスにとっては不本意ではあるが―で防具や武器を抜かした同じデザインの普段着―
何故細部やサイズまであっているのか問い詰める前にその男は逃げた―を今は着ていた。

 本来であるならば間違うはずの無い道筋であったのだが、地図を無くしたことと
コトネの自慢の武器の喪失により、難儀していた。
 何度か誰もいない玄室に入ったり通路を抜けたりしていた。

 全て"ハズシ"ていたために次第に自身の無くなって来たコトネは、PTメンバーに救いを求める。

「地図が無い事にはわたしにも分かりません」
「同感だ…真っ先に地図は外に出すべきだったな」

 とセレニウスとセルビナ。

「また、扉ですね――」

 今までの物とは違う扉。
 厳かな竜のレリーフが描かれている。その竜は何処となくあの《龍神》に似ているような気がする。

「コトネ…どうします?」
「回り道してる時間は無いよ…」

 一刻も早く装備を取りに城下町まで降りなくてはならない。
 そうしなければ《使命》の完遂は無理であるのは誰の目にも明らかであった。

「分かりました…開けますよ」

 パーティの最前列にいるセレニウスが扉に手をかけると強く押した。
 しかし、びくとも動かなかった。

「…開きませんね――」

 そこでセレニウスは両手で更に全身全霊の力を持って扉を開けようとしたが、
それでも開かなかった。

「これ?本当に開くのでしょうか?」
「そうですね。押してだめなら引いてみては如何でしょう?」
「それもそうですね」

 フォルテの進言に従い、セレニウスは扉にある突起に手をかけ、渾身の力を込めて引っ張った。
 が、それでも開く気配が無い。

 間違ってもこれがスライド式の扉では無いことは床に円形状に出来た
扉の引きずったような跡が示している。

「…開かない扉…ダミーなのでしょうか?」
「そうかもな。元々試練のための迷宮だし、そう簡単にはいかないってこった――」
「他の道を探すのかぁ…」

 ふと、セレニウスの脳裏に竜のレリーフが頭に突っかかった。
 そして、自分には…資格が無いという事を思い出す。
 皆の手にはある"あの紋章"が、セレニウスには無かった。

 ふらふらとコトネはその扉に近付き、扉に軽いパンチを繰り出した。
 恐らくは八つ当たりでもするつもりであったのだろうが――

「待ちなさい!コトネ!
 その扉は――」
「えぇ?何?」

 静止の言葉も間に合わず、コトネはそのまま扉を殴ってしまう。
 コトネの手の平の"龍紋"が光り輝き、その手が触れただけでその扉は容易に動いてしまう。

 ギギギギギギッ!!

 大きな軋む音と共に竜のレリーフの施された大きな扉は開いた。
 その扉の中は、大きな広間となっていた。

「なっ…」
「ここは――」

 その広い玄室の中の様子に思わず絶句するコトネ達。

 その広間には数え切れないほど無数のならず者達がひしめきあい、
部屋の中央には、天井から吊り下げられた鎖に繋がれた、明かにならず者のものとは思えぬ、
白く細い手首が力無くうなだれているのが見える。

 ならず者達はその手首の主の付近に群がっているようだ。

「まさか、あれは――」

 早く装備を取りに戻りたいという気持ちが仇となってしまった。
 セニティ王女が監禁されていると思われるその部屋《王家の聖櫃》に
武装も無しで足を踏み入れてしまった。

 ギギギギギギィ!!

 コトネ達の背後の扉が突然閉る。
 コトネはすぐさま扉を開けようとするが、扉を閉めた者達であろう数人のならず者達が
彼女達の退路を塞ぐべく立ちはだかっていた。

「ふん、ここまで来やがったか。そろそろ逃げ時と言うことかな」

 その声はコトネ達の頭上から聞こえてきた。
 一人の男―このならず者達の中で明らかな異質で眼光の鋭い男が魔力によって宙に浮き、
こちらを見下ろしていた。

 その顔はコトネ達が酒場の手配書でもよく見た顔であった。

「あ〜〜〜もしかして、あの"ボス・ギルドボ"〜〜?」

 コトネは驚きのあまり、この場に似合わない素っ頓狂な声を出す。

「もしかして、じゃなくて"ボス・ギルドボ"様だ。
 あぁん?報告だとスライムプールにはまったって聞いたけどなぁ」

 その時の部下の報告は嬉々としていたのをよく覚えている。
 "ボス・ギルドボ"は目の前の女性達四人とも服を着ていることに疑問を覚えた。

「まぁ、いいか。武器も無くて薄着…裸も同然。
 鴨葱とはこいつらの事を指すんだろうねぇ。
 よしっ!せっかくの鴨葱だ。
 逃がさず捕らえて、少しでも財産を増やすとするか。
 野郎ども、逃がすんじゃねえぞ。
 長々と調教してるヒマは無えからな、遊ばずに急いで、
 逃げる気力が無くなる程度に、《いたずら》してやれい」

 うっしっしと下卑た笑みを浮かべる"ボス・ギルドボ"。
 "ボス・ギルドボ"のその言葉に王女を陵辱していた無数のならず者達が一斉にコトネ達の方を
振り向くと、血走った目で彼女達に襲い掛かってくる。

「俺様のギルドが力を得るたび、俺様はチカラを増す!」

 "ボス・ギルドボ"の手に魔力が収束していく。




「下がってください!!」

 セレニウスは自らの指先を噛み千切り、その血で左腕に文字を描き出す。

「algiz, algiz, algiz rune(アルジズ・ルーン)よ。我等に保護を!!!」

 力ある言葉に応じ、ボウっとセレニウスの前方にコトネ達を護るようにして
大きな薄い光の盾―可視化された高密度な障壁が現れた。

「セレニウス。それは――」
「思い出せた《保護》のルーンの力です。あいつの攻撃はわたしが受け止めます…
 その間にこのならず者達をどうにかしてください」

 セレニウスが龍神との死闘で倒れた際に得た力の一つ。
 夢の中で自分とおぼしき人物が使っていたルーン魔法。
 それがこの《保護》のルーン。元々軍経験者なら誰でも使えるルーン魔法だと、
"誰か"が言っていたような気がする。

 まずこの"ボス・ギルドボ"を護るようにしてたちはだかる大量のならず者達を
どうにかしない事にはその後方に控える"ボス・ギルドボ"に一切触れる事は出来ないし、
退却しようにもやはりこの"肉の壁"は邪魔になっていた。

「分かった。フォルテも攻撃に集中しろ」
「は、はい」
「わ、わたしがリーダーなんだけどな…」

 前日フォルテに窘められた事を気にして、小声で言うコトネ。

「コトネは死んでもフォルテを護れ。いいな」

 今の状態でまともな致命打となる攻撃を放てるのは賢者であるフォルテのみ。
 フォルテが倒れたら後はどうにもならない事を暗に示していた。

「分かったよ。わたし、頑張るよ」

 あのガントレットが無いコトネにはいつものような活躍は出来ない。
 セルビナにはそれが分かっていたため、敢えてフォルテの護りを任せた。

「teiwaz,teiwaz,teiwaz rune(ティワズ・ルーン)!我等に勝利を!!!」

 あの日思い出せたもう一つの力がこれだった。
 使用者に確実なる《勝利》を齎すという《勝利》のルーン。
 使用者の武器に宿せば、その切れ味は二倍、三倍にもなるという代物で、
それをセレニウスは自らの右手に刻み、その力を覚醒する言葉をセレニウスは解き放った。

 そのルーンの力を帯びた"右手"と言う武器で前方に群がるならず者達を蹴散らす。

「これでも致命打には為り得ないですか…」

 そう呟きを漏らしながらならず者達を睨みつけるセレニウス。
 その彼女の攻撃を受けて倒れたままの者もいるが、何事も無かったように立ち上がる者もいた。

「こんな事ならもう少し鍛錬しておくべきでしたか――
 !?、algiz rune、絶対なる壁を!!!」

 "ボス・ギルドボ"に収束していく力が見えたセレニウスは第二波の攻撃に備えたのだった。










「いい加減に!俺様に跪け!!!」
「くっ…algiz, algiz、我等を護れ。algiz rune!!!」

 "ボス・ギルドボ"の放った風を纏った魔力弾はセレニウスの《保護》のルーンの力で形成された
《光の盾》をも透過しそれがまともにセレニウスに直撃した。
 《勝利》のルーンを刻み素手での攻撃の能力を倍化させた右腕もまた限界に達し、
ところどころ血管は切れ血塗れになっている。

「うぐぅ…まだ…まだ倒れるわけには――」

 まともな武具も無いコトネ達であったがそれでも善戦していた。
 まるで"肉の壁"のようであったならず者達も半分まで減らせたのだから――

 そのならず者達も半分まで減ったところで、パーティの先頭で"ボス・ギルドボ"の魔法の直撃を受け、
ずっと耐えていたセレニウスが地に伏した。

「セレニウス!!」

 セルビナの叫びに応えなんとか立ち上がろうとしていたセレニウスの血塗れの右腕を
ならず者は捕え、引っ張った。
 既に痛みを通り越して感覚が麻痺していた右腕であったが、強引に引っ張られる事で
その痛みもぶり返してくる。

「くっ…離せ!!」

 力を失い体力的にも限界なセレニウスの蚊の泣くような声を飲み込んで、
"肉の壁"の中にセレニウスは埋まっていくようにその中に消えた。

 それからの崩壊は早かった。

 《保護》のルーンでギルドボの魔法力を軽減していた"壁"のセレニウスを失った事により
セルビナ、そして最後までフォルテを庇うようにして立っていたコトネの体力も尽き倒れてしまう。

「コトネさん!!」
「フォ…ルテ…逃げて――」

 包囲されて逃げられない事は知っていたが、コトネはフォルテには逃げて欲しかった。
 だがその願いも空しく、コトネ達に、フォルテにも"肉の壁"が迫ってきていた。







【05/01・06:00―『王家の聖櫃』にて】 飛ばす↓


「失せろ! 下郎!」

 普段のセレニウスであればその一喝だけでならず者達は逃げるのだが、
ほとんど全裸のようなぼろぼろになった衣服に動かす事も出来ないほど消耗しきった
その身体ではならず者達をひるませる事すら出来なかった。

 そのならず者達の中にオニヘイの姿を見つけると、セレニウスは吠えた。

「オニヘイ!貴様!性懲りも無くぅ――」

 オニヘイへのセレニウスの言葉は届いたのか届いてないのか、
 こちらをちらりと見たオニヘイは特に何かを言うわけでもなくコトネの方へ消えていった。

 その時の目はセレニウスへの憐れみとコトネを犯せる事への歓喜だったか――

「余所見なんてしてる余裕ねぇってよぉ」

 ならず者達は闘う力を失ったセレニウスの腕や手を拘束している。
 そんなセレニウスを見て下卑た笑みを浮かべ、彼女の身体に手を伸ばす。
 そして、申し訳程度胸や秘所を隠しているボロボロになった彼女の服に手をかけ、
一気に引き裂いた。

 セレニウスの形の良い白い乳房が揺れながら露わになる。
 セレニウスは思わず隠そうとするも腕が押さえつけられていて動かない。

「普通の女の反応だなぁ?"自称"女騎士様ぁ」
「わたしを…みんなを放せ…下郎が――」

 まだ反抗を止めないその口をならず者は自分の口で塞いだ。

「ん…んぁ…ん…んぐ…」

 突然のキスに動転し身を捩る。
 が、やはり振りほどくだけの力も残っていないセレニウスにとっては無駄な労力であった。
 口を塞がれたセレニウスの背後から別の男がセレニウスの乳房を揉み始める。

「ん…はぁ…」

 同時に唇を重ねている男はセレニウスの口腔内に舌を這わせようとする。
 必死にそれを舌で拒むが、息苦しさと気持ち悪さから侵入を許してしまう。

「ん…ふぅ――」

 胸への愛撫、そして口腔内を舌で犯されるセレニウス。
その抵抗らしい抵抗すら出来ない自らの力の無さとここまで容易に蹂躙されてしまう事への
不甲斐無さ、そして、触れられる度に広がるなんとも言えない痺れるような感覚に
正常な思考が麻痺して行く事に恐怖を覚える。

 それが数分間続き、ようやくならず者は唇を解放する。

「ぷはぁ…ハアハアハア――ぅん」

 セレニウスの敏感になっている胸への愛撫は止まらない。

「くぅ…わたしにこれ以上…ひゃう…
 その汚らわしい手で触れるな…ん…」
「感じてる癖に何強がってるんだ?こいつはぁ」
「これ以上辱めを…ん…受けるくらいなら――
 わたしはぁん…死を選ぶ…ぅん」

 自分の舌を噛み切るぐらいの力は残っている。
 が、そんなセレニウスの耳元で男は囁く。

「本気で言ってんのか?あぁ?
 お前が死んだら他の奴等がどうなるか…分かってないのか?」
「何…だと…ぅん」
「お前等自身がそれぞれ人質だって言ってんだよ
 そんな簡単な事も考えられないほど気持ちいいってか?」
「違う…ん」

 否定はしてみたものの、男の言う事は一理あった。
 互いに人質。そう、わたし達は互いに人質なのだ。

「理解したかな?でも、抵抗はしてくれよ?
 じゃないと面白みがねぇーからよぉ?」
「この外道が…ひゃぅ――」
 そう言ってからセレニウスの耳に息を吹きかける。

「感度良好のようだな。
 んじゃあ、そろそろ――」

 ならず者の手がセレニウスの恥部に伸びていく。

「やめ…てぇんん――」
「そこは後回しだ――」

 とセレニウスの秘裂に触れることなく、男の指は後ろの穴―尻の穴に触れた。

「んくぅ…何を――」
「オレは尻の方が好きなんだよ」
「オイオイいきなり尻かよ、後で前が良かったなんて言うなよ」
「言わねーって」

 そう言って、男の手はセレニウスの形のいい引き締まった尻を撫でまわし、
 その尻肉を鷲掴みにして捏ね繰り回す。

「やめ――ってぇええん!」

 指がセレニウスの尻の穴に差し込まれた。
 ぐりぐりと穿るように入っていく指にセレニウスは痛みを感じると共に、
未体験のその感覚に気持ちが悪くなってくる。

「ぅん…いたぃひぃ…」
「いい反応だ。たまんねーなぁ」

 男は指を引き抜くと、それをセレニウスの鼻先に持っていく。

「お前の尻の臭いだ…臭いだろう?」
「ぐぅ…この…下衆が――」

 男はセレニウスの両膝を抱え上げると、
 勃起した陰茎の切っ先をセレニウスの尻の穴に当てる。

「う…あ…そんなの入るわけ――」

 セレニウスが皆まで言う前に、男は腰を押し付け、抱え上げている両手の力を抜いていく。
それにより自然に彼女自身の体重の重さによって、尻の穴に男の陰茎が沈んでいく。

「う…ぐ…あぁぁぁ…」

 震えながら必死に痛みに堪えるセレニウスであるが、それが男の嗜虐心に火を付け、
一気に陰茎を突き入れた。

「うぅぅぅ…いた…いぃぃぃ――」

 直腸の締め付けは強く、挿入しただけで男はイキそうになる。
 無理矢理陰茎を挿入された尻の穴が僅かに裂け、血が滲み出ている。

「うぎぃ…ぁあああ――」
「うるせーなぁ」

 尻の穴を陵辱している男とは別の男がそう言いつつセレニウスの頭を掴むと、
いきりたった陰茎を彼女の鼻先に突きつける。
 そして、尻の痛みの余り、だらしなく涎を垂らしているその口に陰茎を無理矢理
捻じ込んだ。

「んぅんぐぅ――」
「喚いてもらった方が気分出るんだがね」

 セレニウスの口に入れた陰茎を彼女の頭を強引に動かして前後させる。
 尻を貫かれ、グロテスクな陰茎に口を侵されているセレニウスの目から拒絶の涙が自然と
零れてくる。口腔を犯すそれを必死に抵抗するセレニウスの押し出そうとする舌が男に快感を与え
陰茎を逆に刺激し、口の中で更に膨張する事となる。

「何言ってやがる、魔法を使われたらどうする」
「魔力尽きてるんじゃねぇのか?」

 と突き上げる。

「んんん…うふぅ…」

 突き上げるたびにセレニウスの口からはくぐもったうめき声が聞こえてくる。

「油断はするなって事だ」

 その油断で何度女冒険者に逃げられた事か、
そしてその度に"ボス・ギルドボ"の叱責が飛んだものだ。

 セレニウスのお尻を穿つ感覚が段々と激しい物となってくる。
始めは痛みと気持ち悪さだけであったが、陰茎が引かれる度に一緒に粘膜ごと
引き摺られるような感覚に頭がおかしくなってくる。

「うぅん…んぐぅ…はぁんあん――」

 セレニウスの痴態を見ているうちに待ちきれなくなったならず者の一人が、
彼女の左手を取る。

「てめぇの武器の代わりに俺の武器を握らせてやんよ!」

 とその手に自らの肉棒を握らせる。
 セレニウスは力が入れられないのか、軽く握るだけであった。

「しっかり握れって」

 と、男は自分の手で包み込むようにしてセレニウスの左手を握り、前後に扱き始める。
 セレニウスの革製の手袋がその男の陰茎にしっかりと絡みつきフィットする。

 セレニウスは自分の手に持たせている男を睨みつける。
 が、彼女の目は潤んでいて、上気して顔を紅潮させている様子は寧ろ艶やかで
男を更に興奮させた。

 すると、セレニウスの手の中で更にその陰茎は太く堅くなる。
 その様子を手で感じ取った彼女は目を白黒させていた。

 陰茎を締め付け全てを搾り取るように包み込むセレニウスの直腸の感触と
尻穴を突かれる屈辱的な行為に次第に飲み込まれようとしているこの女の
発するくぐもった嬌声に耳を傾け男は酔いしれる。
 次第に突き上げるたびに男の発する声も大きなものとなっていく。
 それに連れてセレニウスもまた呼吸も荒くなり上気して顔が赤くなっていく。

「んは…んんぅん…んひぃ――」
『だ、出すぞ!』

 ほぼ同時にセレニウスの尻を犯している男と手を犯している男は絶頂を迎える。

「ひゃへえぇ!!」

 ドクッ! ドクッ! ドクッ!

 容赦無くセレニウスのアナルと顔にならず者達の精液が注がれる。
 男はそこでようやく彼女の尻から陰茎を引き抜いた。
 セレニウスの避けた尻穴の血液の赤と精液の白が混じり、床に垂れ落ちる。

 セレニウスの手で扱いていた男も彼女の手を解放する。

「うぅ…こっちも出すぞ――」

 一層早く前後へのストロークを速めると、セレニウスの口を犯していた
陰茎からも白濁液が吐き出された。
 苦くて臭いそれを思わず吐き出しそうとしたが、ならず者が口から陰茎を
抜かず暫く余韻に浸ったままだったので飲むしか無かった。

「ふぅ――口も尻も開いたぞ」
「く…このような屈辱に――」
「何言ってやがる、"時間がねぇ"って言ってるだろうが」

 息も絶え絶えなセレニウスに休む間もなく、彼等が引き抜いてすぐ
再びセレニウスの尻と口に陰茎が捻じ込まれた。

「ん?前はバージンのままじゃねぇといけねぇのか?」
「オレはバージンよりもぬるってた方が好きなんでね。パスだ。
 そういうお前が貰っちまえば?」
「いいってぇんなら貰うぞ――」
「ん…ひぁああうん――(誰が、貴様等なぞに――)」

 その言葉を聞いてセレニウスの目が大きく見開く。
 本能的に"それは許してはいけない"、と恐れ震える。
 ならず者はセレニウスの金の陰毛に触れ、そして、秘裂のヒダに親指で左右に広げる。
彼女の"中"が丸見えとなり、男達の前に晒される。

「はん。綺麗なもんだ…ほとんど弄ってないと来たか――ひひひ」

 男はまじまじと観察する。
 尻穴を陵辱された所為か、セレニウスの花弁からは既に蜜が滲み出ていた。

 見られている。女性として恥かしい部分をねっとりと絡みつくような視線で見られている。
それだけで羞恥のあまりセレニウスの秘裂からいやらしい蜜が更に滲み出てくる。

 ならず者はそのヒダに指で触れると、軽くなぞるようにしてその蜜―愛液を掬い取る。
 軽くなぞられるだけで敏感な柔肌からぞくっとした感覚にセレニウスは身体を仰け反らす。

「なんだ、尻で大分感じていたようだな…この変態が――
 これなら前戯無しで十分いけるなぁ」
「けっ、雌豚相手に前戯なんていらんだろーが」
「そういやそうか。ひひひ」

 下卑た笑いを浮かべるならず者達。
 反論しようにも口を塞がれ、抵抗しようにも四肢を抑えられたセレニウスは
なんと無力なものか。

「そんじゃ、行くかい。騎士様!?」

 そう言って、セレニウスの秘裂に、その柔肌に凶悪でグロテスクな陰茎の先っぽを擦りつける。

「ん…んんぅん――」

 僅かに抵抗をするものの、四肢の自由を奪われたセレニウスはただ腰を捻るだけ。
 寧ろ、その行為はじれて男の陰茎を欲しているようにしか見えない。

「そんなに欲しいってか?この淫乱が――
 ならば、くれてやる!!!」

 その言葉と共に、男は腰を突き入れる。

 グッ ブチッ ブチィ

 肉の避けるような音。それと共に広がる痛み。
 必死にその異物を押し出そうと全身に力を入れるもの、それは意味をなさず、
更なる侵入を許してしまう。

「――――んんんん」

 声も無く目を見開き、セレニウスの蒼い瞳は大粒の涙が流れ落ちる。
 男は女の処女を奪った事による達成感に暫し酔いしれる。

 床が朱に染まっていく――

 身体さえ動けば、こんな下衆の輩にいいようにはされないのに――

 突かれる度に広がる痛みと共に、痺れるような快感が混じっていく。
 次第に広がっていく快感の波に流されそうになるセレニウスは、必死に堪えていた。
「ん…んふぅ…ふぅあぁ――(こんなのわたしの身体じゃない――)」

 敏感なところを弄られるたびに痺れるような感覚に襲われ、
その度に、秘裂から愛液がしとどと流れていく。

(こんなの違う…こんなの――)

 次第に目の焦点が定まらなくなってくるセレニウス。





 ――狂乱の、陵辱の宴はまだまだ始まったばかりであった。







【05/01・07:30―『王家の聖櫃』最後の抵抗】 飛ばす↓

「んむっ…」

 コトネ達が代わる代わる嬲られ続けて一時間は経っただろうか。
 セレニウスはならず者達の"責め"は処女開通以降は単調な物であることに気付いた。

「ん…うん…ふぅあ……」

 敏感なところを弄繰り回しその反応を見たり、卑猥な言葉を投げかけ羞恥心を煽る。
 最初のうちは秘所の痛みや羞恥のためそれらに翻弄されていたが、快感から断続的に飛びそうになる
意識を抑える事が出来れば―これが難しいが―我慢できない事も無い。
 それほど"調教"が作業化してきていると言う事なのだろうか。
 コトネとフォルテに人気があることが幸いしてかセレニウスに周辺の人数は彼女等に比べて
比較的少ないように見える。
 そのため、少しずつではあるが、集中する"時間"が出来ている。
 もっとも、こうやって冷静でいられるのは右腕の痛みによる物が多いわけであるが――

「おい。俺で何人目だ?」
「んなの知るか」
「っと、まだまだ締め付けてくるんじゃねぇか」

 時折思い出したようにセレニウスの乳房を揉み、敏感になった乳首を摘む。
 ビクッと震えるとそれに反応して男根への締め付けも強くなる。

「んぐぅ――んっん……」

 ここから脱出するためにはここにいる全員を動けなくする必要がある。
 なぜならば、全員が全員に対しての人質であるからだ。もし、一人でも漏らしたら、
その一人がどんな目にあうのか。想像するだけでも寒気がしてくる。
 そうなると一人一人に対してに有効な《勝利》のルーン程度の力では到底敵わない。

 そう。龍神と戦闘した際、負傷し朦朧とした意識の中で思い出したルーン魔法の中に《勝利》
《保護》以外に《捕縛》のルーンなるものがあったことを思い出す。
 あれをこの場全体、いや、少なくとも自分の周囲をどうにか出来れば活路は見出せるはず。

「うん、ふぅん、んぷ――」
「何で、こいつの口を塞いでやがるんだ?」
「動けない癖にまだ反抗的だからさ」

 そう言って陰茎を咥えこんでいるセレニウスの顎をくいっと上にあげる。
セレニウスの蒼い目は未だに"落ちていない"。
 油断したところで魔法を使われた場合元々のポテンシャルの違うならず者達には対抗出来ない。
 それ故に、常にセレニウスの口を塞ぐ必要があった。

 もっとも、同じように魔法を使える紫の賢者―フォルテは耐性が全く無いのか、
今ではかなり従順になっている。
 口が自由になっていてもならず者達に言われるがままに男達の男根を舐め、尻や秘部を突かれる度に
気持ちよさそうによがり狂っている。

(どうか間に合って――)

 その賢者の嬌声が"聖櫃"内の閉鎖された空間故に一際響き渡り、セルビナやコトネ、
そしてセレニウス達を犯しているいる者達の競争心に火をつけていた。
 彼女達にも賢者同様に自分達の言いなりにする事への――

「喘ぎ声聞きながらのがやってる感じっていうか――」
「んん」

 そういいながら腰を突き入れるならず者。

「てめぇの趣味とか都合に合わせてたら痛い目見るってぇの」
「んぐ…はぁ…(今に……痛い目を、見せてやる――)

  セレニウスが意識を集中すると、右腕から流れ出している血液が僅かながら微動し始める。
自らの血に直接魔力を這わせ、自身の意志通りに身体の一部としてそれを自在に操る。
魔法修練の初期で自身の鍛錬を目的に行う初歩中の初歩であった。
 セレニウスからは仰向けにされていてそれらの全ての動きを見ることは出来ないが、
"魔力"の迸りを身体で感じる事が出来た。

(これならいけるかもしれない)

 そんな事をしているのを知らないならず者はセレニウスの陰核を弾く。
 身体中痙攣させ背を反らし目を大きく見開くセレニウス。
 意識の集中は中断され動いていた"血"は動かなくなる。

「ん…はぁ…(少しずつ…くっ)」
「大した淫乱だなぁ?こんなによがりやがって」

 セレニウスはそこに触れられる度に痙攣している。
 そんな彼女の秘裂からはぐっしょりと蜜が垂れてきている。

「んふぅ…(今に、見てなさい…)」








 セレニウスが細工を始めて十数分経った。

「ちっ…全く右手動かねーんだな」

 自慢のペニスを扱かせる為に握らせようとしていたならず者は舌打ちをする。
 握らせようとしたセレニウスの腕は腱が切れているのかダランとだらしなく
ぶらつくのみであった。

「ふん。動かせたってかわらねーって。
 こいつまだまだ反抗するつもりみてーだし、左手もこうやって握らせないとしごきゃしねぇ」

 とセレニウスの左手を使って扱くならず者が答える。

「ん?出血が酷いな…死なれたら商品にもならんだろうが。止血を――」
「止血?」
「こいつの右腕の傷から――」

 そこでならず者達の間に動揺が走る。
 ならず者達はその血の流れ出ている先に"何かが描かれている"のが見えたのだ。
 それもかなり大きな文字のようであった。

(気付かれた!?)

 後もう少しだったのに、口が解放された一瞬にルーン文字の持つ魔力を解放する言葉
《stodva》をただ一言言うだけで完成していた。
 それだけでこのフィールド全体に《捕縛》の効果が現れ、ならず者達は動けなくなるはずであった。
 ここまで来てこれは無い、とセレニウスはこの自身の悲運を呪った。

「お前、何をしていた?」

 気付いたならず者はセレニウスを睨みつけ、口を塞がれたままの彼女に問う。

「……」

 セレニウスはただならず者を睨み返しただけであった。

「何も言う気は無いってか…
 おめぇら、下の血文字に触れるなよ!」

 そう言われて始めて気付いたならず者達はセレニウスを下から貫いている者と
口腔を犯している者以外、彼女から離れる。

「ボス。こいつはどうしたらいい?」

 魔術的な物だと容易に判断できたため、"ボス・ギルドボ"に指示を仰ぐ。
 ふわふわ浮いてフォルテ達の陵辱、調教される様を見ていた"ボス・ギルドボ"が
セレニウスのところにやってきた。

「あぁん?
 何だこりゃあ、魔術文字じゃねぇか
 ルーン文字って言ったか?
 もしかして、おめぇらが描いたのか?」
「俺らは知識無いって知っているだろう?こいつが自分の血で描いたらしい」
「手も動かせないのにか?」

 右手はどう見ても動かせるような状態じゃない。左手もならず者によってずっと抑えられている。
その状態からどうやって床にこれだけ大きな文字を書き込めたのか?
 と素直に"ボス・ギルドボ"は疑問に思った。

「分からねー、が、こいつ以外にいないだろう?」
「器用な事をするもんだ――何をしようとしていたのかわからねぇが、水で流してやれ。
 そんな物は今は無いから…小便でいいだろう。
 この手合いは強力だが文字だけじゃあ発動しねぇし、呪文だけでも発動しねぇ」

 ルーン魔法は儀式魔法の一種。即席の魔法と異なり、発動手順は極めて古めかしい。が、その分
天候すら左右する強力な物が多いと言われる。
 それを見破った"ボス・ギルドボ"を流石と言うべきか、セレニウスは平静を装うつもりでは居たが、
下から再び突かれ始めた事により、その眼に僅かに絶望が宿る。

「図星ってか、くっくっくっ。
 おら、おめぇら。早くしろ。時間がねぇって言ってるだろうが」
「了解。ボス
 って事だ。再開と行こうか。このメギツネが」
「心配いらねーってのは分かったけど、こいつは消さなくていいのか?」

 床に描かれた血文字がならず者は気になってしょうがないようだ。

「消してもらうさ、こいつにな」

 セレニウスの秘所から男根を引き抜くと、秘裂に乱暴に指で弄りはじめる。

「ん…うん…んあ…」

 乱暴だが、的確にセレニウスの一番感じる場所を指で責め立てる。
 そこに触れるたびに身体は今まで以上に熱くなり、ビクビクっと反応するセレニウス。
 次第にその蒼い眼はトロンとした焦点の定まらなくなってくる。

(何か…出そう――ダメ、ダメ、出ちゃダメ…)

 何か出そうになるのを必死に堪えているセレニウス。
 その頃合を見てならず者はセレニウスの陰核を抓り上げた。

「んあ…んんんんんんんん!!!!」


 プシャーーーーーーーーーーー

 尿道から小便を漏らすように勢いよく液体が吹き出る。
 それによって血文字は彼女の出した液体と混じり、描き始めの固まっている血の部分は
消えなかったが新しく垂らした部分は呆気なく流れ、やがて血文字は形を失ってしまう。
 放心して力無く項垂れるセレニウスは焦点の定まらない目でその有様を見る。

(消えちゃった…消しちゃった…わたしの最後の力で描いたのに――)

 文字を書くことに"力"の大半を消費した事もあってセレニウスは彼等の責めに対し、
僅かな抵抗さえ示さなくなる。

「う…あぁ…」
「自分で消してりゃ世話ねーぜ。ギャハハハ!!!」
「とんだ淫乱だなぁ?」
「ん…んむむむ…(違う…こんなのわたしじゃない…)」

「さて、これで心置きなく再開出来るなぁ?」
「もう二度とこんな事出来ないようにしなくちゃなぁ」

(ごめんなさい。フォルテ、コトネ、セルビナ……)

 抵抗出来なくなったセレニウスは徹底的に陵辱されてしまった――






【05/01・18:00―『王家の聖櫃』死闘2・レイラPT】 飛ばす↓


 扉を開けると、大きな広間に出た。

《王家の聖櫃》。

 ここがそう呼ばれている場所だとレイラ達には理解した。


 しかし、その本来神聖であるべき場所には、
数え切れないほど無数のならず者達がひしめき合っていた。

 部屋の中では数人の女冒険者達が凌辱の憂き目を見ているようで、
 絹を裂くような悲鳴、くぐもった嗚咽などが男達の下卑た罵声に
掻き消されそうになりながらも聞こえてくる。



 更に、部屋の中央には、天井から吊り下げられた鎖に繋がれた、
 明かにならず者のものとは思えぬ、白く細い手首が力無くうなだれているのが見える。
 ならず者達はその手首の主の付近に群がっているようだ。

 まさか、あれは――

「……ここが、か。悪いが貴様らには死んでもらおう!!」

 眼帯の女性―レイラ―は、吐き捨てるようにならず者達に言った。

「おいおい、今日は千客万来だな」

「貴様がギルドボか。この瞬間どれだけ待ちわびたことか。……貴様
を! この手で! 殺す!!」

「やれやれ、今日一日嬲ってやれば《王女》の調教も完了したものを、仕方ねえ。
 仕上げは新たなアジトに着いてからだ。
 ずらかる準備と行くか。だがその前に────」

"ボス・ギルドボ"は 一行の姿を見て、醜く顔を歪め、嫌らしく舌なめずりをした。

「せっかくの鴨葱だ。逃がさず捕らえて、少しでも財産を増やすとするかな。
 野郎ども、逃がすんじゃねえぞ。この場で調教してるヒマは無えがな、
 逃げる気力が無くなる程度になら、ちと《いたずら》してやっていいぜ」

"ボス・ギルドボ"の言葉に無数のならず者達が一斉に一行の方を振り向くと、
血走った目で一行に襲い掛かってくる。

 
 いち早く風変わりな格好をした少女―15―はクリムゾンブラスターによる先制攻撃を行ったが
"ボス・ギルドボ"の放った魔力によって無効化されてしまった。

「何!?」

"ボス・ギルドボ"の指揮により、彼女達を囲うようにして四方八方からならず者達は襲い掛かる。

「俺様のギルドが力を得るたび、俺様はチカラを増す!」

 先制したのは"ボス・ギルドボ"の魔法による攻撃であった。
 瞬時に複数の炎の玉が現れ、レイラ達に降り注ぐ。

 避け切れずにレイラ達はその攻撃をまともに受けてしまう。
 が、余裕の笑みを浮かべた女性―カテリーナ―が形成した防御の術で
彼女達への直接的ダメージを軽減する。

 魔法による攻撃をしている間はならず者達は手を出せない。
 その合間を待ってましたとばかりに、力を溜め込んでいた15はならず者達を睨みつける。

「僕の! 怒りの炎は!! もっと熱い!!!
 忍法ゥ!!火遁!!!鳥翔乱舞ぅぅぅうう!!!!」

 風変わりな少女はそう叫ぶと物凄い勢いでならず者達に突撃していく。
 その無謀とも思える突撃であったが、次第に加速していく15の身体は
炎に包まれていく。
 燃え盛る"炎の鳥"となった15は一瞬のうちにならず者達を半分以上屠ると
レイラの元に戻ってきた。

 その少女は身体中の筋肉を酷使する術だったのであろうか、
 小さな身体では最早限界なのだろうか疲労も隠せず両肩で荒く息をしている。

「後は…任せなさい――」

 レイラ、カテリーナ、そして巨大な剣と風の魔法を操る小柄な少女―フィル―が
残ったならず者達の排除していく。

 15の放った"術"で一気に屠られた事もあって既に士気ががたがたになっていた
ならず者達の敗退は目に見えていた。

 "ボス・ギルドボ"の魔法による加勢はあるものの、彼女達に前ではそよ風の如し。
あっという間にならず者達は肉塊と化し、ボスとを隔てる壁は消えてしまった。

 慌てて結界を展開し、再び"ならず者の大群"を召喚しようとする"ボス・ギルドボ"の前に
レイラが切り込んでおり、一刀の元にその肩から胸にかけて切り裂いた。

「うぎゃあああ!馬鹿な、こ、こんな馬鹿な!」
「これで、終わり――」

 "ボス・ギルドボ"は血飛沫を上げ、倒れ伏した。
 荒い息で地に膝を突き、目を血走らせた形相で一行を睨みつける。

「くそ、くそくそ、終わらねぇぞ、終わらねぇ!」

 "ボス・ギルドボ"の気迫に押され、トドメの一撃の手を一瞬躊躇うレイラ。

「俺様が死なない限り、幾度でも、何度でもハイウェイマンズ・ギルドは再生する!
 知ってるか、この最下層への《転移》魔法は封じられてるがな、
 最下層からの《転移》は自由なのよ・・・」

 呪詛の様にそう呟くと、"ボス・ギルドボ"は転移魔法を唱えた。

「しまった!」

 レイラが"ボス・ギルドボ"に剣を突き刺したが時既に遅く、
 "ボス・ギルドボ"の姿は掻き消えてしまった。

 "ボス・ギルドボ"はどこかへテレポートしてしまった。
 それに合わせ、残ったならず者達もあわててわらわらと逃げ散った。




【05/01・18:10―『王家の聖櫃』救助・レイラPT】 飛ばす↓


 累々たるならず者達の屍の中、
 嬲られていた女冒険者達は解放された。

「大丈夫かい?」

 散々陵辱されていた彼女達にはレイラ達の言葉は聞こえていないようで、
強い反応は無かった。

「治療を――」

 言われるまでも無く仕事のように淡々とカテリーナは彼女―コトネ―達に
回復の呪文を唱えていく。
 が、先の戦闘で消耗しきったカテリーナには彼女達を癒す事は出来なかった。
 その様子を見ていたレイラはポンと軽くカテリーナの肩を叩いた。

「カテリーナは休んでてくれ」
「はい」

 レイラ達はならず者達が影に隠れていないかを警戒しつつ、広間の中央、
台座の上に、天井から鎖で吊るされ、オブジェの様に力無くうなだれている彫像のように
見える"人物"に近づいていく。

 それは、紛れも無い、王子の出した御触れにより救出せよと言われた人物、
変わり果てた姿となったセニティ王女その人であった。

 その全身は、まるでヨーグルトの湯船に漬かったがごとく白濁の液で塗りたくられ、
かつての王女として意志の強かったであろう瞳からは、ほとんどその意思の光が消えかけていた。

 だが、一行がその戒めを解き、抱き起こすと、
虚ろに、しかし思いのほかはっきりとした発音で、言葉を発した。

「私…助かった…の……?
 そう…《冒険者》に…助けられたのね……
 ……皮肉な話…ね……」

 とにかく、《王女》の状態はどうあれレイラ達は彼女を助け出す事に成功した。

 多くの冒険者が志半ばで迷宮で散っていく中、
 幾多の苦難、幾多の出会い、そして幾多の別れを乗り越えて、
 ついに、レイラ達は、ついに《使命》を果たした事になる。
 それを思うとレイラは自らの傷つけた右目が疼いて仕方が無かった。

「カリスト、リリス、フィーネ、リムネシア、そして、ハルヒ…わたしは――」

 かつての仲間達の名前。彼女達は今は何処に居るのだろうか?
 だが、感慨に耽っている場合ではない。《王女》を城に連れ帰らねば《使命》は完遂しない。
《使命》を果たす事が無念のうちに散った彼女達への"餞"の一つとなる。
 レイラ達は《王女》を助け起こすと、急ぎ帰還の途を目指そうとした。




【05/01・18:20―『王家の聖櫃』真相・レイラPT】 飛ばす↓


 その時、




「すみません、ほんの少しだけ、待っていただけませんか?」

 背後から、聞きなれない少年の声がしたのだった。
 レイラ達はその声に反応してそれぞれ武器に手をかけ、振り返る。

「姉上を救って頂き、ありがとうございました」

 そう言った人物は、あのハウリ《王子》であった。
 ――なぜ、こんなところに《王子》が、単身で?
 ふと、レイラ達の脳裏にそんな疑問が過る。

「ハ…ウリ……
 ハウリ…なの……?
 何故……どうして、あなたが、ここに……」

 レイラ達一行の疑問を、《王女》が代弁してくれた。
《王子》は《王女》に近づくと、その身が汚れるのも構わず、ぎゅっと《王女》を抱きしめた。

「可哀相な姉上…ラシャから話は全部聞いたよ。
 どうしてこんな…馬鹿な事を考えてしまったの…?」
「ごめ…なさ…ハウリ……
 わた…私は……」

 その言葉を聞いた《王子》の目を開いた。

「どうしたって、姉上は、国主になんてなれなかったのに」

 その声は何処と無く冷たく、そして、悲しいものに聞こえた。

「え……?」
「《龍神の試練》は、ただの形骸的な儀式ではないんだ。
 代々国主には王妃との間に必ず男の子が生まれ、第一王子のみが国主となる、
 そんなシステムが建国以来ずっと続けられてきた、それをただの偶然だと思うの?
 代々の国主継承者は、《龍神》との契約によって、その力をお貸し願い、そして分け与えられた男児を、
必ず授かるのさ。
 だからこそ、必ず「第一王子」が誕生するし、代々王子の力は超常なのだよ」

 口調も変わった《王子》は淡々と説明をはじめる。
 その《王子》の手には、輝くコインが一枚、握られていた。
 それを見た《王女》の、顔色が変わる。

「ディ…《Dコイン》……
 ま、まさか」
「本当に、哀れなセニティ。かわいそうな、哀れな姉上。
 ボクはもう、とっくに《龍神の試練》をこなしてしまっていたんだよ。
 ワイズマンが《龍神の迷宮》を占拠する、二年も前にね」
「う…ウソ……ウソよ…
 ありえないわ…まさか、そんな……
 父上から、お借りしたんでしょ?そう…でしょう?」
「信じたく無いなら、信じなくてもいいけど…
 姉上に信じてもらえないなんて、悲しいな…」

 と心底悲しそうな表情を見せる《王子》。
 《王子》は、一言二言呪文のようなものを唱えると、今度は手の平を開いて見せた。
 そこには、薄緑色に輝く、《龍紋》が、確かに存在していた。

「そ、そんな……何故……」
「姉上がラドランに留学に行ってる時だったかな?
《龍神の迷宮》って、どんなのかと思って、こっそり入ってみたの。
 ホントにたまたまだったんだよ?子供の好奇心って、怖いよね。
 そしたら、最後まで行けちゃって…
 どうやらボクは《龍神》の恩恵を、今までのどの王子よりも強く受けてしまっているようでね。
 戻って来て父上に話したら、凄く慌てた様子で、
『まだ誰にもその事は言うな、特にセニティには』って。
《龍紋》も魔法で隠すように言われたの」
「ち…父上…が……」
「多分父上も、姉上の感情と気性に、薄々気付いていたんじゃないかな?
その上で、ボクにそんな途方も無い才能があると知ったら、何かしてしまうんじゃないかって、
そう思ったんだと思う。
ボクもそれを察したから、それからずっと姉上を立てて、無能な王子を演じていたんだよ。
ああ、誤解しないでね、ボクが姉上を大好きだったのは事実だし、
そんな姉上に嫌われたくなかったからこそ、ボク自身の意思でそうしていたんだからね?」
「あ…あ……」
「でも、そんなボクの気遣いも、父上の気遣いも、全部無駄になってしまったのだね。
と言うより、逆効果だったのかな……。
まさかボクの無能に国を憂いて、こんな大掛かりな事をしでかしてしまうなんて…
ボクが余計な事をせず、全ての才を発揮してさえいたら、
姉上もこんな大それた野心は抱かなかったかもしれなかったのにね…」
「ぉ…ぉぉ……」

《王女》の瞳に宿されていた正気の光は、徐々に失われようとしていた。

「それについては謝ります。
 でも姉上、あなたはもう許されない大罪人になってしまった。
 どんなに庇おうとしても庇いきれない。
 国民も、誰も、絶対にあなたを許さないでしょう。
 ボクは次期国主として、あなたを断ずる義務がある。そうせねばならない。
 それは…わかるよね?」
「う…うふ……うふふ……」
「勿論、事を公には出来ない。そんなことをしたらそれこそこの国は滅んでしまうよ。
 だからあなたには、あくまで『被害者』となって頂く。
 ここであなたが五日間受けたこと、それのみを事実として公表させて貰います。
 そのせいで、気が触れてしまったと、そう言う名目で、生涯軟禁させて頂く。
 でも大丈夫、ボクが毎日会いに行くよ?だから寂しくは無いよ」
「あ…は……あは…あははは……
 あははははははは……」

《王女》の瞳からは最早正気の光が完全に失われ、
狂ったような哄笑が広間に響き渡った――
《王子》は悲しそうに何事か呪文を唱えると、《王女》の意識は途切れ、カクリと首が落ちた。

 そして、《王子》はレイラ達一行に向き合った。

「心配せずとも、あなた達の《使命》完遂の手柄を横取りしたりはしませんよ。
 そのかわり、今ここで行われた会話、全てを胸の内にしまって置く、
と約束して頂けませんか?
 して頂けないと、ボクは国主として、この国を守るために手段を選ばず、
あなた方の口を封じねばならなくなる…
 国の恩人に、そんなことはしたく無いのです」

 "覚悟"を秘めた《王子》の言葉に、一行は戦慄する。
――しかし、それで本当に解決するのであろうか?

「勿論、人の口に戸は立てられない。そんなことは判っています。
 この《事実》を知る者も、きっとあなた達だけでは無いのでしょうし、
ならず者達も完全には駆逐出来ない。
 それでも、事実認定されるよりは、噂話の類に収まってくれれば御の字です。
 王女の純潔がならず者達によって散らされたなどと言う、
それだけで充分国家にとってのスキャンダルなんですから。
 あなた方は何食わぬ顔で、このまま姉上を王城に連れて行き、
救国の勇者としての恩賞を受け取るだけでいい。
 国家を敵に回すよりは、よほど有益な取り引きだと思うのですが―――


 いかがでしょう?」

 15は反論したい事がたくさんあったのか今にも《王子》に組みかかろうと
戦慄いているのをレイラは目で制し、今は首を縦に振り、彼の要求に従う事にした。
 それを見ると、《王子》は元のにこやかな笑みに戻り、

「ありがとう、皆さん。
 ではまた後ほど、王城にてお会いしましょう」

 そう言って、《王子》は《転移》の魔法で姿を消した。




「とんだポーカーフェイスだったな――」

 レイラは《王子》が去った後ぼそっとそう呟いた。

「何故止めた!!
『全くだ。殴らなきゃ気が済まないぞ。俺は!』
 僕は…僕達はこんな茶番のために――」
「殴ったところで何も変わらない…いや、寧ろお前がどうにかなってたかも知れない。
 そう、わたしはアレを…アイツを恐れている。それを笑いたきゃ笑うがいいさ」

 とレイラはぶっきらぼうに答える。
 彼女とて彼等の狂言のために仲間を失っていた。
 15の憤慨も分かるが、それ以上に今ここで彼女をも失う事も嫌だったのだ。

「笑えるものか…」

 15は静かに握り拳を床に叩きつけた。

「この娘達はどうしましょう?」

 とフィル。
《王子》が去ってから残された先ほどまで陵辱されていた女性達を見る。

「竜騎士の連中が降ってきてるはずだ。
 彼等に任せよう――」
「しかし――」
「王女と共に"生き恥"を晒す事になる彼女達の事も考えるんだ。15!
 竜騎士達なら悪い事にはしないだろう…」
「レイラ――分かったよ。でも僕は――」
「今は我慢してくれ」

 レイラ達は気を失った《王女》のみを連れて帰還の途につくことにした。





【05/01・19:00―『王家の聖櫃』呪歌《ガルドル》】

 ――あれからどれだけの時間が経ったのだろうか?

 セレニウスはぼんやりとした頭で自身を見た。
 昨日まで男を知らない無垢なる身体であったのが、今やそれも見る影も無い。
 全身穴と言う穴を貫かれ、白濁液に塗れ、そして、動かない右腕。

「んぐっ…げほ…」

 吐き出されるのは白濁液。忌わしいならず者達の精液。

「出て行って…ください…わたしの中から…」

 儚い願い。既にどうしようもないほど蹂躙されたセレニウスの身体には
 隅々まで男達の精液に侵されている。
 体内に注がれ続け心無しか膨らんだお腹を横になったまま押すようにして、
動かす事の出来る左手で必死にならず者達の出した精液を外に出そうと試みるも
手やお腹にうまく力が入らず一向にそれを外に出す事が出来ない。

「ん……いやぁ…」

 突如そんな声が聞こえてくる。
 その声を聞いたセレニウスは左手で身体の上体を起こし、声の主の元へ向う。
 ところどころ男達の死体が転がっている。コトネ達を散々犯しまくった男達の哀れなる末路。
 それは、"死"だった。

 ズル ピチャ ズル ピチャ

 セレニウスはゆっくりとゆっくりと身体を引き摺ってゆく。
 そして、自分と似たような姿になって白濁の海に沈んでいる、
かわり果てた少女―コトネの姿を見止める。

「コト…ネ…」

 セレニウスがコトネの元に辿り付くと、
やや離れたところにセルビナの姿も見えた。

 セレニウスはコトネの腕を引っ張り、身体を引き摺り、セルビナのいるところまで移動する。
 二人の手が届くくらいまで移動したセレニウスはそこに座り、互いの手をつなげる。

「フォ…ルテ…
 護れなくて…ごめん…なさい――」

 セレニウスの口からは今ここに居ない女性に向けての謝罪の言葉、
 目からは大粒の涙が自然と零れてくる。

「ごめんなさい…皆…コトネ、セルビナ…
 弱くて…弱くて…」

 それ以上は言葉にならない。
 動かない右手を添え、左に人差し指に右腕から出血している自分の血を付け、
左手だけでコトネとセルビナの手の平に"ルーン文字"を描こうと試みる。

「…駄目…ですね…」

 震えて文字にならない。
 魔力が、集中力が充実している時なら宙に描いても文字となり、ルーン魔法として
為すことは出来るが、今の状態のでのセレニウスにはそれが出来そうにも無かった。

「……vidz allir(みんなと)♪Vidz skulum koma aftur(帰りましょう〜〜)♪」

 自然とセレニウスの口から古ノルド語の言葉が、詩が紡がれていく。
 故郷を募る想いを綴り、皆を癒し、穢れを浄化する魔力の秘めた唄…呪歌《ガルドル》。
 そのメロディは何処となく儚げで、何処となく悲しげで、何処となく懐かしさを思い起こす。

 三人の周りに小さな光の粉が舞い、幻想的に照らし出す。

 てらてらと耀く白い肌に纏わりつく白濁液すら、その光景の一部となって映える。

 先ほどまで唸っていたコトネとセルビナは安らいだ顔になっていく。

 少しずつ、その声は掠れ、少しずつ、声は溶け、

 そして、




 消えた――










【05/01・20:00―『王家の聖櫃』竜騎士の救助隊】


「三班、十階の制圧完了致しました」
「よし」
「二班。十階玄室の制圧完了致しました」
「ご苦労。二班三班は待機して次の命令を待て!」

 正午から制圧に入った竜騎士達は、騎竜と共であればこれだけの時間は要さなかったわけであるが、
ようやくこの最下層にある"王家の聖櫃"のあるフロアにたどり着いた。

「隊長。残りはここだけです」
「"王家の聖櫃"だな」
「はい。王族でもない我々が入ってもよろしいのでしょうか?」
「ハウリ王子直々のご命令だ。"聖櫃"への突撃許可は出ている」
「ハ、ハイ。」
「ギルドに人間は見つけ次第捕まえよ。
 抵抗するなら殺しても構わん。
 行けっ!!」

 本来、王家の人間以外の血で神聖な"聖櫃"内を汚す事は許されないのではあるが、
事が事だけに特例も出ていた。

「はっ!」

 部隊長に敬礼をする竜騎士達。
 ガチャガチャと音を立て、"聖櫃"の制圧に入った。




 "聖櫃"の制圧はあっという間に済んだ。
 既に《王女》を救助したレイラ達とすれ違った時に聞いた報告通り、
生き残ったギルドの人間はこの部屋から全て逃走しているようであった。

「生存者は?」

 そう言った部隊長の足元には無数のならず者達の死体。
 中央よりやや離れたところに、彼等に陵辱されたと思われる女冒険者達が
 寄り添うようにして倒れていた。

「三名のようです」
「三名か…」
「冒険者登録されているコトネとセルビナ。
 そして、セレニウスを確認」

 カンテラの明かりを彼女達に向ける。
 その三人は手を合わせて、そして、何処か安らいだ表情である事が印象的だ。
 三人は胸を上下させて呼吸しているのは確認出来た。

「ふむ…四人で組んでいるとなると…もう一人は?」
「登録名簿によりますと彼女達は第六パーティ所属。
フォルテなる者が居ません」
「そうか。遅かったと言うわけか――」

 既に制圧した階層にてフォルテなる人物が保護されたという報告は受けていない。
 となると制圧以前に何らかの逃げ出した、また連れ出されたのか、
 既に売り払われたと考えておかしくないだろう。

「フォルテという女冒険者の捜索も開始しろ、
 確認せねばならぬ事もある」

 ハウリ王子の言では、この玄室に居合わせた者達、つまり、レイラ達同様、彼女等は
《王女》やギルドについて何か詳しい事を知っている可能性があるとの事であった。
 そのためには居なくなったと言う冒険者も一度捕獲する必要があったのだ。

「しかし、可哀相にな――こんな目にあって、まだ責め苦を与えると言うのだからな」

 しかし、その責め苦を強いるのは我々竜騎士である事を思うと、
 何の因果かと呪いの言葉を吐きそうになった。





【05/02・08:00―クルルミク城下町『診療所』】

 コトネが目が覚めるとベッドに寝かされていた。

「ここは――」
「クルルミクの診療所です。コトネさん」
「わたし…助かったんだぁ――」

 意識を取り戻したコトネに向って魔法をかけている治療師は
ニコっと笑いながら治療を続ける。
 安心出来る笑顔だな、とぼんやり天井を眺めていたコトネははっと何かを思い出した。
 いつも一生懸命で、いつも儚げな紫の賢者の事を――

「ねぇ?フォルテは?フォルテは何処?
 何処なの?教えてよぅ…何処なの……」

 コトネは治療を続ける治療師に食って掛かる。
 無論治療師は知るわけも無く、彼女から目を背けただ無言であった。
 コトネは紫の賢者の《あの言葉》を、最後に聞いた忌わしき《あの言葉》を思い出し、項垂れた。

『…はい。私は哀れな奴隷でございます…。どうか…どうか、優しく扱ってください…』

「フォルテ…そんなの無いよ…そんなの嘘だよ…ねぇ…」

 コトネの声は部屋の中に空しく響いたのだった。








「ところで、セレニウスは何処なんだい?」

 同じように診療所に運ばれ、そしてコトネとは対称的に平静を取り戻しているセルビナ。
 彼女もまた、ギルドボとの戦闘で受けた傷を癒すためにこの診療所に運ばれている。
 傭兵ともなればああいう目に会う可能性を一番知っていただけに、
それほど大きなショックは感じられなかったのだ。
 そのため、コトネと違って精神的に安定していたため、
個室ではなく複数の女冒険者との相部屋であった。

「こっちには運ばれていないな」
「そうなのか?なら、いいけど――」

 あたしは妙な胸騒ぎがしていた。
 あの日の記憶。彼女はあたし達に向って何かをしていたような気がした。
 あまりに曖昧な記憶で正直それが幻かどうかと問われると自信は無かった。

「でも、良かったねぇ?
 処置が遅かったら、死んでいたかも知れないんだからね。」

 人の気も知らないで物騒な話をころっと言うものだ。
 だが、命の取り合いをしていたのだからその可能性も有り得たことを否定出来なかった。

「処置?誰かが治療をやってくれたって事かい?」
「みたいだよ?竜騎士様方かもねぇ?」

 竜騎士に助けられたのは、その日の十九時だったという事だったが、
 セルビナにはもっと長く時間が感じられた。
 二日後にも、三日後にも――

 診療所ではセルビナ達以外にも大勢の女冒険者達が運び込まれていた。
 皆竜騎士や身内によって保護された娘達だということだが、
 それ以上に見舞いに来たというパーティメンバーや関係者が多かった。
 その一人にアベルも居たわけだが、見舞いに来た彼にお腹が減ったとセルビナが言うと
何処かに行ったっきりであった。

「何処まで行ってるんだか――」

 自然に溜息が出てくる。
 今のこの場を賑わしてる話題はセニティ王女が救出されたという話であった。
 セニティ王女を救い出した女冒険者達が居たという事だが、
 それがセルビナを解放してくれた人達であったことを思い出す。

「………ん?」

 ボーっと他の女冒険者達を見ていると、衛兵達はセルビナの方に向ってきた。

「セルビナ殿、ですな?」
「あ、ああ。何の用だい?城の衛兵が」
「《王子》の命により、貴女には王城に出頭してもらいます。」

 と、衛兵は指令書を見せる。

「何?あたしらは何もやっちゃいないよ」

 何もやっちゃいない。寧ろ、何も出来なかった自身の無力さに怒りが込み上げてくる。

「確認したい事、があるそうです。
 嫌でしたら力づくでも、と――」
「分かった分かった。あたしは怪我人なんだ。優しくしてくれよ」

 力づくで来られたら怪我をしているセルビナには勝ち目が無い。
 別に負い目があるわけでも無く、彼等の用件に従う事にした。

「ご理解頂き感謝します」

 と衛兵は馬鹿正直に礼をする。
 セルビナはその男の後についていくことにした。

「姐さん?」

 とアベルの声。
 その手には見舞いの品だろうか、たくさんの果物が入ったバスケットがあった。

「アベル。ちょっと野暮用があってさ」
「野暮用なら俺が――」
「コトネも心配だから、そっちに行っててくれよ」

 セルビナは衛兵について診療所を出て行ってしまった。







【05/08・09:00―クルルミク郊外『隠れ集落』にて】

「――!!!」

 嫌な夢を見た。
 延々に繰り返される陵辱…セレニウスは寝台から飛び起き自身の身体を確認する。
 全身から噴出した汗が寝巻きにべったりと纏わりついて気持ちが悪い。

「うっ…」

 あの時の情景が艶かしく思い出し、こみ上げてくる。
 セレニウスは寝台から降りるとふらつきながら、入れ物を探す。
 適当な大きさの壷を見つけると、セレニウスはそれに向って吐いた。
 出てきたのは酸っぱい胃液…そしてどろっとした白い液体。

「う…う…うぅうう――――」

 セレニウスは声を押し殺して泣いていた。

 ――まだ"あそこ"に何か入っているような気がする。
 ――まだわたしのお尻に何かが入っているような気がする。

 そう思うと、再びこみ上げてきて、その壷に吐いた――




 そうして何分、いや、何時間経ったか。
 我に返ったセレニウスは周りを見渡した。
 ここは小さなテントの中で、そこに敷かれた大きな寝台にセレニウスは寝ていた。
下の地面が剥き出しになっていることからここがクルルミクの街中では無さそうだ。

 セレニウスはボソリと呟いた。

「助かったんですよね――」

 まだ実感がわかない。

「フォルテは…」

 あの時、確かにオニヘイが来ていたような気がした。
 フォルテはオニヘイのところか――
 そう思うと少しは安心した。

「あの男はコトネに…フォルテに弱いから――」

 あの男は"あの男なりの流儀"という物を弁えている。とは言え、彼が奴隷商人の一人である事に
は変わらず、今度会ったら必ず殴るべき対象である事には違いなかった。
 それでも、フォルテの事を思うと少しはあの男に感謝せねばと思い直した。




 突如、テントの垂れ幕が開いて一人の少年が顔を出す。
 寝台の上で上体を起こしたわたしを見ると、少年はわたしの方に駆け寄ってきた。

「セレニウスさん?目が覚めたのですね?」
「見ての通りです」

 そんなわたしを見て少年は驚いたような目でわたしを見ている。

「何をそんなに――」
「あれから――貴女がここに運ばれてから一週間は経っているんですよ」
「い、一週間も!?」

 それならあの時吐き出したあれは何だろうか?
 あの白い液体は――夢なのだろうか?

「お腹、減ってますよね?」
「え、ええ」

 言われてみると確かに減っていた。
そう言われて始めて気付くとは
「セレニウスさん?動けますか?」
「いや…まだ」

 身体の節々が変だった。そして右手は全く動かない。

「ではこちらに運んでくるので、待っててください」
「ありがとう……」

 少年はニコっと笑うと、テントから出て行った。





 テントから出て行った少年が一頻り何事かを騒いでいたと思ったら、少年ともう一人の足音が
このテントに近付いてくる。

「食事をお持ちしました。入りますよ」
「はい、どうぞ」

 少年はセレニウスの返事を聞くと食事と共に一人の男性を連れ込んできた。
その男は二メートル近い長身の筋肉隆々でいかにも男臭い…そんな男性であった。
 セレニウスはついその男性の股間を見てしまい、条件反射的に寝台の奥の方に身を沈める。

「ふむ、大体同じ反応だな――」
「わ、わたしをどうするつもりですか?」

 いつものセレニウスであれば毅然とした態度であるのだが、明らかに
その男性にも怯えた様子を見せていた。

「食事、ここに置いて行くよ…じゃあ」

 去ろうとする少年の手をセレニウスは取り、

「この男と一人にしないで――お願い」

 と懇願する。その目には涙が浮かんでいる。

「あんたはどうもしないさ。
 この俺が古い知人の娘に手を出すわけ無いだろうが――
 あんな奴等と一緒にしないで欲しいな」
「こっちに来ないでください――」

 といいながら少年の手を更に強く引っ張る。
 男性は溜息をついて――

「これでも昔は俺をよく慕ってくれたもんなんだがな…
とりあえず、伝言を済ましておくか。こいつを君に渡しておく」

 その男性は少年に何かを渡すと、少年はセレニウスにそれを手の平に押し付けた。

「何…これ…」
「別に男の俺に怯えたまままでいいが、それだけは受け取ってくれないか?」

 恐る恐る手の中のものを見ると石の欠片のような物があった。

「これは――」
「俺も詳しい事は知らないが、彼等からの言葉は伝えておく。
『それは強力な魔力を秘めたとある武器のレプリカの結晶。
 その"劣化品"を作る際、本物からコピーしてるから、切っ掛けにはなるだろう』って」
「武器…これが?それに切っ掛けって何?」

 それはまるでただの石ころにしか見えない。

「さあな?俺は知らない。それが何の結晶なのか、何に役に立つのか、なんて事はな。
でも、確かに伝言は伝えたぞ」

「何故、これを…わたしに――」
「それを持っていればいずれ答えが分かるんじゃないか?」

 セレニウスは少年の方を見ると、彼も理解していないのかキョトンとしている。

「まあ、とりあえず、そのスープくらい飲めよ
 せっかく、シャイン…そいつが作ったんだからな。あんたの為に」

 青年の持ってきた食事―スープを指差す男。
 役目は果たしたと言わんばかりにそれだけ言うと、
テントの出口に手をかけると男は出て行ってしまった。

「元気、出るよ」
「そう。ありがとう――」

 左手に皿を持ったところまでは良かったが、右手は動かない事に気付く。

「あ、セレニウスさんはまだ動かせないんでしたね」
「はい……」

 思わず俯いてしまう。

「僕が手伝うよ」

 と少年はスプーンと皿を持って、セレニウスの口にスープを運ぶ。

「あつっ――」

 弱りきったセレニウスには熱く思わずスプーンから口が離れてしまう。

「ふーふーしてあげる」

 とそれを見た少年はスプーンの上のスープにふーふーと息をかけてから
セレニウスの口に運んだ。

 セレニウスの口の中に広がるのは、何処となく懐かしさを思い起こし、素朴だが
しっかりとした味わい、風味。

「おいし――」

 久々に口にしたまともなスープにセレニウスは暫し感動を覚える。

「もう一口行くよ?」
「うん」

 少年はそういって再びふーふーと冷ましたのだった。







【05/08・18:00―クルルミク城下町―回帰】

 既に宵闇に沈もうとしている市街をセレニウスは歩いていた。
 セレニウスはセルビナの泊まっている宿屋に向っている。


 セルビナの泊まっている部屋の前まで来ると一呼吸置いてからノックをする。
 バタバタと慌てたように足音が近づいてくる。
 扉を開けるセルビナの前に立っていたのは全身包帯だらけの女性
―セレニウスであった。

「セレニウス?アンタ…今まで何処に――」
「姐さん。誰が――」

 アベルはセルビナに席を外すよう言われると、彼はそれに従い「酒場で何か買ってくる」
と言って出て行ってしまった。

「邪魔、しちゃいましたか」
「いや、こっちも心配してさ。
 診療所にも居ないっていう話しだったけど…」
「この通り、です」

 と右腕を吊っているセレニウス。

「相変わらず傷が絶えないねぇ」
「相変わらずです」

 セルビナはセレニウスの手に槍、そして彼女の物とは思えない皮袋を持っているのが見えた。

「ああ、これ?口止め料…みたいです。
 わたしは覚えていないんですけどね」

 と皮袋をぷらぷらさせながら苦笑する。
 どうやら彼女もまたあの日の《王家の聖櫃》内での出来事に関して、クルルミクの《王子》
から口止めをされたようだった。
 しかし、あらゆる不正を許さないと言った感じの彼女にしては珍しく妥協した事に
違和感を覚える。

「それで、何をしにここに来たんだい?」
「コトネに会って来ました…」
「そうかい、どうだった?」

「わたしの中の、浄化…いえ、祝福を与えたら、少しは元気になりましたよ」
「浄化?祝福?」

 ここ一週間でコトネも大分落ち着いてきたとは言え、彼女もまた女性であることには
変わりはなく、強がってはいても以前のような笑顔にはなっていなかった。
 セレニウスはそんなコトネに会い、"浄化"をした事で"ケガレ"を払ったのだ。

「はい。気持ちの問題ですけどね。セルビナにも、と思いまして。
 最後ですから」

 寂しそうに微笑むセレニウス。

「最後?それは――」

 セレニウスはすっとセルビナに抱き付くと、
セルビナの背中に手を回し、指でなぞる。

「ちょっ…くすぐったいじゃない」
「endurlifgun、endurlifgun、我等に"生"の祝福を――endurlifgun rune」

 セレニウスの手が暖かい光に包まれると、セルビナの全身まで光で包み込んだ。
 癒しの奔流に似た波動を感じながら、セルビナは目を瞑り、それに見を委ねた。
 彼女の使う《治癒》のルーンから感じられた波動よりもより暖かく、より力強さを感じ、
安心感を得られる。

「これは――」
「わたしの魂の、"復活"のルーンです。これで、忌わしき傷を癒す事が出来ます」
「忌わしき…傷?」
「心の傷、身体の傷を全て――」

 そう言われると、やはり重荷であったあの日の出来事がセルビナの中から
和らいでいくような気がしてきた。

 ――五分は経ったところでセレニウスはセルビナから離れた。

 その暖かな波動はセレニウスが離れると同時に消え、何故かは分からないが
セルビナは幾分気分も良いものとなっていた。

「これをコトネにも?」
「はい」

 とふわりと優しく微笑むセレニウス。

「さて、と。お二人の時間を邪魔しちゃ悪いですし、
 帰りますね」
「帰るって何処に――」
「一応、こうしてお金も手に入りましたし」

 とセレニウスは口止め料の入った革袋をポンと叩く。

「アズお婆様の元に帰ります」

 アズ婆さん。セレニウスが言うには彼女の傷を見てくれた元高位神官の妻だと言う。
 何度かそういう話を彼女の口から聞いた事がある。

「もう出発するって事なのかい?」
「はい。余り長居はしたくないので」

 セルビナにもその気持ちは分かる。
 アベルが居なかったらとっくにこの国を離れていただろう。

「フォルテは…どうするのさ?」

 あれだけ護ってきたフォルテをこの神官戦士が見捨てるとは思えないが、
しかし、帰ると言っているのも事実である。

「お婆様に顔を見せてから、あの男、オニヘイのところに行こうと思っています」
「オニヘイか――」

 オニヘイ。おそらくはフォルテの行方を知っているであろう男の名前。

「はい。では――」

 突如一陣の風が吹き荒れ、セルビナは目を瞑る。

「Bless(さようなら) Serbina」

 セレニウスはそんな言葉を残し、セルビナの前から文字通り"姿を消した"。






 クルルミクの城下町を見下ろせる小高い丘にセレニウスは立っていた。
 宵闇に包まれて行く町の明かりを見ながら感慨に耽る。

 四人で過ごした様々な思い出を深く噛み締める。
 いい事、悪い事。面白かった事、不快だった事。
 そして、護ると誓ったあの紫の賢者の事――

 どれもがいい思い出とは言うわけで無かったが、
弱かった自分自身をそこまで駆り立てたのは彼女達のお陰でもあったかもしれないと
思うと、目頭が熱くなった。

 セレニウスは腕吊りを解くと、包帯を全て外していく。
 そこにはあるべき物、あの傷痕は綺麗さっぱりと消えていた。

「"あの子"なら、"セレニウス"なら分かってくれますよね?
 まだ帰れないですが、絶対帰りますから――」

 セレニウスの手には自身の得意武器である槍が握られている。

「アズお婆様、トムお爺様…今そちらに参ります」

 セレニウスは疾風の如く、力強く街道を駆け抜けたのだった。










-F.I.N-

:欄外:

※お詫び
まずお詫びを。
実際のキャラの口調や性格と異なる表記をしているかもしれないので
それについて最初にお詫び申し上げます。


※エピローグその3
・セレニウス 王家の聖櫃での陵辱。
       救助
       そして――

ノーマルエンド
フォルテやコトネ、セルビナのEPより、なるべく在り得そうな形を取りましたが――
実際の用意していたエンドとは異なります。

こうなると一番の問題は、一体どれがIFか正なのか――でしょうけどね。

※レイラPT
彼女達がカオスパーティである事を忘れていないだろうか?
目的の物―セニティ王女―を持ったらすぐ帰還してしまうわけで、
そういう話にしております。
彼女達なりの配慮もあって、なのですが、その事については省略(何

※陵辱表現について
まあ、自分の稚拙な表現に頭を傾けています。

EP0と違う点はずばり…DPC様の絵を見て書いてみたというところでしょうか。
あの絵見ていると最初にアナルでこれから前って感じに見えたので
(割れ目を広げる手とか、汁や出血表現の無さといい)
そういえば、処女のまま調教とかそういうのもありましたっけ(何が

※呪歌《ガルドル》
ぶっちゃけ古ノルド語でもなんでもなく近いと言われるアイスランド語。
しかも文法何それ御免なさい(ぉ

※浄化
性格上完全なるロウではありますが、
実は神官戦士としては異端なセレニウス(本来は魔法戦士ですし)は浄化
を行う術が無い。よって呪歌や復活のルーンに浄化の意味もあるだろう、と
復活とは肉体・魂の浄化。

※クルルミク郊外
・少年
シャイン。少年の姿をしている人。
・男性
フィス卿。
・吐いた白い液体
ぶっちゃけ、薬ヽ(´ー`)ノ


オニヘイ

一言:自重(笑

アベル

実際に間に合っていたらならず者達の一人としてレイラ達に攻撃されていた可能性が…
という事で王子の真相暴露等に間に合わなかった事に。
いや、きっとどこかで聞いていた可能性もあるのか。
一言:頑張れ(何













【05/01・??:??―『王家の聖櫃』にて?―おまけ】

 身動き出来ないセレニウスに下卑た笑みを浮かべ
ならず者達はにじりよった。

「この・・・何をする・・・貴様等――」
「いつまでそう生意気な口が叩けるかな?」

 そう言ってならず者は手に持っている何かを見せる。
 セレニウスには暗くてよく見えなかった。

「これで食らいな!!」
「んぐ・・・」

 セレニウスの口に"それ"を無理矢理突っ込んだ。

「中○産の鰻の蒲焼だ」
「むが・・・ん〜〜〜」

 口の中に広がる脂のぎとぎと感。独特の臭味。
まるでゴムのような食感に思わず吐き出しそうになる。
 が、ならず者はセレニウスの口を抑え吐き出せないようにする。

「よく味わえって!」

 ゴックンと喉がなったのを確認してから手を放した。

「お前等・・・ただで済むと――」
「まだまだあるぜぇ?
 こいつはどうだい?」

 とその手には肉まんが握られていた。
 ならず者は蒲焼同様それをセレニウスの口に無理矢理捻じ込む。

「○国産のダンボール入りの肉まんだ!!」
「ん〜〜ん〜〜」

 セレニウスはぐったりとして抵抗を示さなくなった。

「なんだぁ?伸びちまいやがった・・・
 まだまだこれからだってのによぉ?」
「焼き魚、出来ましたぜ?」
「んじゃ、起こすかぁ」

 恐怖の宴は始まったばかりであった――







・なんとなく思いついたヽ(´ー`)ノ
・一応伏せとこう(´з`)y-〜
・別にセレニウスじゃなくても良かったんだ(゜▽゜)
適当にキャラ名変えて陵辱しよう(何


文責:織月

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