――プロローグ:「性質の悪い二人組」――


【16:00―クルルミク城下町への街道にて】

 ただ、土煙だけが遠方から近づいてくる。

声    :
あああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああ!!!!!!


 否、そんな叫び声と共に土煙がその街道に近づいてきていた。
 その土煙はその街道に入ると止まり、その土煙の中から二つの人影が見えてくる。

 次第にその土煙が晴れてくるとその二人の姿が露になってくる。
 一人は東方系の「着物」を着た女性。もう一人は黒衣の青年であった。
 女性の名前
アーリア・サンダースと言う。ショートカットヘアの金髪、碧眼、身長165cm
 ちょっとはある18歳くらいの所謂美人(に入るだろうか?)。着ている衣服は東方系の「着物」と呼ばれる物だが
 裾が極端に短い所謂ミニになっている。
 その腰には二本の剣と背中にもう一本彼女の身長よりやや短めな長剣を挿している。

 男性の名前
セイル・ビッグブリッジと言った。後ろで束ねたやや長い黒髪、黒目、身長170cm
 はあるだろうか、少し童顔で大体17歳くらいに見えるそんな青年だ。
 その青年は厚手の黒い生地で出来た長袖長ズボンの洋服を着込んでいるためか、その容姿は一見聖職者に見える。
 が、その手には十字架や聖書などではなく、紋様の刻まれた白い布に巻かれた彼の身長より頭二つ分くらい短い
 長さの剣のようなものを携えている。

セイル  :「ごほっごほっ・・・凄い土煙だな・・・」
アーリア :「走ってるときは全部後ろだからね〜〜いきなり止まるとこうなるんだよ。」

 アーリアは土煙が消えるのを確認してから、その街道の向こうに見える市街地を見る。

アーリア :「やーっとここまでついたね。後一息だよ。セイル。」
セイル  :「マジカヨ・・・」
アーリア :「うん、マジだよ。」
セイル  :「違うって。マジで五日連続で「神速」マラソンで着いたって事に関してだ!」
アーリア :"ゲート"から遠いからね〜〜でも、セイルはただ捕まってただけじゃない。」
セイル  :「そう。だからマジでついたのかよって言ってるんじゃないか。」
アーリア :「ふふん。このわたしだから出来ること、だよ。」
セイル  :
(この化け物め)
アーリア :「ん?なんか急に何か切りたくなったな。」
セイル  :「待て!何を感じ取ったのか知らんが――」

  アーリアは鞘から剣を抜くとセイルににじり寄って行く。

セイル  :「待て、話せば分かる!そうだろう!」
アーリア :
「ワカンナイヨ♪」
セイル  :
じゃねえよ。待てって。おい。」

  その剣が振り下ろされる。
  セイルは必死に逃げ、それを避けると一目散にクルルミク城下町に駆けていく。

アーリア :「あんなに元気あるじゃないか・・・全く。」

  アーリアは疲れた足をとんとんとたたく。

アーリア :「流石にきつかったな。町に入ったら、まず宿屋の確保だな。」

  アーリアは、ゆっくりとセイルの後をついていくことにした。



【18:00―宿屋にて】

アーリア :「なんとか宿屋チェックインできたね〜〜戦争中だってのに混んでるんだもんな〜〜」
セイル  :「戦争中だからだろ。つーか、なんで宿帳に(偽名)まで書いてるんだよ。」

 この辺りの言語がからっきし駄目なセイルはアーリアに頼んで宿帳への記入を任せたところ、
 アーリアが記入していたセイルやアーリアの名前に何故か()があったことに疑問に思ったセイルが
 問い詰めると宿帳に
セイル・ビッグブリッジ(偽名)まで書き込んでいた事を告白したのだ。

アーリア :「あれでフルネームでしょ!」
セイル  :違う!
アーリア :「そうなの?」
セイル  :「そうだ・・・ってお前そんなキャラだったっけ?」
アーリア :「さあ?」
セイル  :「(姫のマジボケより酷いぞ――やたらと好戦的だし)まあいいか。偽名は偽名なんだしな。」
アーリア :「そうそう。隠すほうが野暮って物だよ。」
セイル  :「(偽名なら寧ろ隠す物だろ)それで目標(ターゲット)は?」
アーリア :「宿屋の女将さんの話によると、待機中はほとんど酒場に集まってるっていう話だよ。
       他に娯楽施設が無いからね〜〜」
セイル  :「酒場ね・・・まああの人は好きだったからね〜〜」
アーリア :「そうなの?」
セイル  :「そうだよ(ホント興味無いことには無知だな)。喉越しがさらっとした甘いお酒がいいって言ってたな。」
アーリア :「後は、王立図書館・・・図書館といっても龍神に関する伝承とか王家に関する伝承やそういった物が置いてある、
       そういうところに入り浸る人もいるっていう話。」
セイル  :「図書館、ね・・・行っても俺は文字読めねーしな――」
アーリア :「読めても読まないくせに。」
セイル  :「・・・・・・(妙な突っ込みが入るな)とりあえず酒場かな?」
アーリア :「そうだね〜〜大きな酒場が一つあって、あとは点々と小さな酒場があるみたい。
       貴族御用達の会員制のもあるみたいだよ。」
セイル  :「ほう・・・」
アーリア :「行ってみたいよね。貴族御用達。」
セイル  :「まあ、興味はあるかな?」
アーリア :「強い人もいるんだよね?」
セイル  :「いるだろうね(居なかったら大変だ)」
アーリア :「楽しみだな〜〜」
セイル  :行くなよ。
アーリア :
「え〜〜〜〜」
セイル  :「ツテが無いだろうが。門前払いがオチだ。」
アーリア :「なら、門番を破れば――」
セイル  :
「却下!」
アーリア :
「え〜〜〜〜」
セイル  :「そんな事より足りない物をここでそろえるのが先だ。」
アーリア :「終わったら行ってもいいの?」
セイル  :「駄目!」
アーリア :
「ぶ〜〜〜〜」
セイル  :「ふくれても駄目なものは駄目(荷物の点検をしている)」
アーリア :「う〜〜〜〜〜〜ぶつぶつぶつ(文句を言いながらセイルに倣って荷物を点検している)」



【18:00―酒場『ドワーフの酒蔵亭』にて】

 女冒険者達でにぎわっている店内。
 賢者のフォルテもまたその一人であった。

フォルテ :「あの・・・龍神の迷宮に向かうためのメンバーを集めたいのですが・・・」
ぺズ   :「ん?ああ。こういうのは初めてかい?まあなんだ、適当に声を掛けていけばいいんじゃないか?
       こういうのは早い者勝ちだ。ほら、もうあそこで決まったのがいるぞ。」

 と亭主の視線の方を見ると、大きなエルフの娘を中心にして手をしっかりと組んでいるのが
 ―否、抱きつきあっているのが見えた。
 しきりに
「可愛い、可愛いよぉ!!」とか言っているのは何なのだろうか?

フォルテ :「分かりました。では・・・」

 まだフリーな者―テーブルでシングルで座っている者が目に入ってきた。
 そこでフォルテはその人物に声をかける。

フォルテ :「もし?貴女も龍神の迷宮へ?」
神官戦士 :「ん?如何にも。」

 声をかけたのはそれが普段着なのか比較的軽装な女性だった。
 金髪で蒼い目をした長身の女性。全体的にバランスの取れたその体型に思わす見惚れてしまうほど。
 華奢で儚げに見えるが、不思議と歴戦の戦士を思わせる独特な雰囲気が印象的であった。

フォルテ :「まだパーティは組んでないですよね?」
神官戦士 :「そうです。」
フォルテ :「わたしはフォルテ・フォルテシモ・アンダンテと申します。」
       こういったことには経験不足ですが、是非お力をお貸しいただけないでしょうか?
セレニウス:「了解しました。わたしは騎士―神官戦士のセレニウス
       貴女(あなた)が望まれるのなら何処へなりとお供します。」

 セレニウスは跪くとフォルテの手の甲に接吻をする。
 その動作に板がついていて思わずフォルテは頬を赤らめてしまう。

フォルテ :「(凄く慣れていらっしゃる方ですね・・・)あと二名までしたっけ・・・」
セレニウス:「あの辺りにいる方も、まだ組んでいないと思いますが――」
フォルテ :「そうですか。では・・・」

 フォルテはセレニウスに言われた側のテーブルに向かう。
 セレニウスはそんなフォルテの後ろについて歩く。

フォルテ :「もし?貴女も龍神の迷宮に挑まれる方ですか?」

 声をかけたのは、ショートカットで動きやすそうな服装の女性だった。
 ちょうどその時、彼女はフォークに大きく絡めとったパスタの塊を頬張っていたところであった。
 彼女は口に入ってるパスタを水で流し込み、

軽戦士  :「そうだが?ふむ・・・その後ろにいるのもあんたのメンバーなのかい?」
フォルテ :「はい。わたしはフォルテ・フォルテシモ・アンダンテと申します。賢者をしております。
       こちらは――」
セレニウス:騎士セレニウスです。」
軽戦士  :「なるほど(騎士様にお嬢様っぽい賢者様・・・
       強そうには見えないけどあたしの嫌いな我の強そうなタイプじゃなさそうね)」
フォルテ :「よろしければ一緒に――」
セルビナ :「いいよ。あんたらとは馬も合いそうだしな。あたしはセルビナっていうんだ。
       見てのとおり軽戦士さ。よろしく。」
フォルテ :「良かったぁ〜〜」

 フォルテは安堵の息を漏らす。

セレニウス:「後一人ですね。」
セルビナ :「しっかし、何で4人なのかねぇ。大体小隊だと6人がセオリーってもんだろ?」
セレニウス:「迷宮の広さの問題じゃないでしょうか?多いと動きが取り辛いとか・・・」
セルビナ :「なるほど。ありそうだね。そういうの。」
フォルテ :「あちらの方に声をかけてみますね。」
セルビナ :「あっちよりこっちのが良くないかい?(セレニウスの持っている酒を見て)あんたの持ってるの、おいしいかい?」
フォルテ :「あ。ちょっとお待ちください。」

 そう言うとフォルテはとてとてとあちらの方に行ってしまった。

セレニウス:「飲みますか?(と酒瓶をセルビナに見せる。)」
セルビナ :「ああ(セレニウスはセルビナの持つグラスに酒を注ぐ)」
セレニウス:「甘いのがいけるなら――」
セルビナ :(舐めるように味わうようにして)「確かに甘いな・・・あたしはこうピリってくるのが好きだなぁ・・・」
セレニウス:「ふむ・・・ありましたっけ?」

フォルテ :「あの?龍神の迷宮に行かれる方ですか?」
賢者(リムカ):「(突然声をかけられてビクっとする)え、あ、はい。そうですよ。」
フォルテ :「よろしければ私たちと――」
賢者   :「待った。」
フォルテ :「はい?何でしょうか?」
賢者   :「今どういう構成なんだい?」
フォルテ :「わたしが賢者でして、神官戦士と軽戦士の方ですが・・・」
賢者   :悪いけどパスね。バランスよくないと、ね。わたしもこう見えても賢者だからさ。」
フォルテ :「わたしと同じ・・・・そうでしたか。すみません。」
賢者   :「いやいや、迷宮であったらよろしくね〜〜♪」

 肩を落としてセレニウスとセルビナの元に戻ってきたフォルテ。

フォルテ :「駄目でした。あの方も賢者らしくて・・・」
セレニウス:「バランスの問題、ですか。」
フォルテ :「はい。では・・・」
セルビナ :「あいつなんかどうだい?」

 と指を指した先に、やたらと武器を磨いている少女?が目に入った。
 その武器―彼女が手にする武器は珍しい物ばかりで―を見る目は非常に熱心なもので、非常に生き生きとしている。

セルビナ :「さっきからああやって念入りに武器を眺めたりしてるんだ。強そうじゃないか?」
セレニウス:「強いかは分からないですけど、暇そうなのは確かかと―」
フォルテ :「そうですね。では…」

フォルテ :「もし。わたしはフォルテ・フォルテシモ・アンダンテと申します。あなたは?」
コトネ  :コトネです。フォルテ・フォルテシモ・アンダンテさんも龍神の迷宮へ?」
フォルテ :「はい。よろしければわたし達と一緒に行きませんか?」
コトネ  :「まだ決まってないし・・・いいよ。」
フォルテ :「ありがとうございます。ではあちらに――(とフォルテに手を振るセルビナとセレニウス)」
コトネ  :「あ、はい、はい。」

 コトネは眺めていた武器をしまうと、フォルテの後について歩き出した。

フォルテ :「これで4人ですね。では改めて自己紹介しましょうか?」

 と言うフォルテの意見に他の三人も頷いて了承する。

セレニウス:騎士セレニウスです。よろしく頼みます。」
セルビナ :軽戦士セルビナだ。」
コトネ  :武器屋の・・・軽戦士のコトネです。」
フォルテ :賢者フォルテ・フォルテシモ・アンダンテと申します。フォルテと呼んで下さい。」

 こうして一つのパーティが完成したのだった。



【18:30―宿屋から少し離れたところで】

 所持品の確認と必要になるであろう物のある程度の確認を終えたセイルは
 アーリアが物の整理に夢中になってる隙に宿を出る。
 既に日は落ち西の空が赤く染まっている。辛うじてその夕焼けの赤が届く場所に
 セイルは腰をかけると持っていた袋からがさごそと何かを探している。

セイル  :「ここでいいかな――(袋から水晶玉を取り出す)」
水晶玉  :声
「( ̄ー+ ̄)と輝く」
セイル  :「うおっ!(ドキっとして跳ね上がる)」
水晶玉  :声「おはようございます」
セイル  :「そ、そっちは朝なのか?(心臓がバクバクいっている)」
水晶玉  :声「あ、え?あーー夜でしたーー」(やたらと間延びした声で)
セイル  :「まあそれはどうでもいいか。アーリアがオカシイみたいなんだが、どうしてだか分かるか?」
水晶玉  :声「アーリアさん?誰でしたっけ?」
セイル  :
「・・・アーリア(偽名)」
水晶玉  :声「ああ、アーリア(偽名)さんですか。はい、はい。どうオカシイんですか?」
セイル  :「・・・(俺だけが異常なのか?それともからかわれてるのか――)
水晶玉  :声「あのーー」
セイル  :"ゲート"を抜けた後、ボーっとしてると思ったらやたらと好戦的で、さ。」
水晶玉  :声「なるほど、それは、そのー、あれですよ」
セイル  :「あれ?」
水晶玉  :声「ゲートの膨大な魔力に当てられて、ちょっとした興奮状態になってるのですよ」
セイル  :興奮状態?」
水晶玉  :声トランス状態とでもいいましょうか?」
セイル  :「はあ(よく分からんが)、治せるのか?いや、すぐ治るのか?」
水晶玉  :声「時間が解決してくれるかと」
セイル  :「あの乗りだと――」
水晶玉  :声「だと?」
セイル  :
「死人出るぞ。大量にな。」
水晶玉  :声「だ、大丈夫なんですか?」
セイル  :「知らん。賢者とも言われる貴女に分からぬ物が俺になど分かるはずが無いだろう?」
水晶玉  :声「俺?(セイルも興奮状態であることに気付く)」
セイル  :「どうかしたのか?」
水晶玉  :声「気を付けてください(トーンが変わって)」
セイル  :「何を?」
水晶玉  :声「よからぬ事が起きねばいいですけど」
セイル  :「は、はあ?(言いたい事が分からないセイルだが声のトーンが変わった事に気付いた)」
水晶玉  :声「情報を集めておいてください」
セイル  :「情報、ですか?」
水晶玉  :声「はい。出来る限りのこの国の情報を。実情の把握に努めてください」
セイル  :「わ、分かりました。(セイルはゴクリと唾を飲み込んだ。)」

 薄暗い部屋の中に、その女性―水晶玉の声の主はいた。
 その女性は幼い印象を受けるその顔立ち、その体型。
 一際目を引くのはその白い髪、透き通るような白い肌、そして何物をも見通すが如く赤き眼。
 街中で出会ったのなら必ず誰しもが振り返ってみてしまうであろう。
 その部屋は様々な書籍が乱雑に置かれ、様々な薬瓶も適当に転がされている。
 不用意に入ったのなら確実に何かに足で蹴ってしまう事になるであろう、そんな部屋だった。
 その女性は手にしていた水晶玉から手を離す。

声の主  :「「俺」か・・・色々と彼にも影響出てるとなると・・・大丈夫かな?クルルミク(髪を弄りつつ)」
声の主  :皇女にも話しておきますか――」

 その白い女性は薄暗く薬臭い部屋を出ていってしまう。



【20:00―酒場『ドワーフの酒蔵亭』にて】

 『ドワーフの酒蔵亭』。
 威厳のあるどことなく古風な木彫りの看板にそう書かれているこの城下町で一番繁盛しているという酒場
 の前に立つ一組の男女がいた。アーリアとセイルである。

アーリア :「まずはここね。」
セイル  :「そうだな。一番活気があるっていう感じだしな。」

 ぶらっと歩いただけでここでの活気は他の酒場に比べて段違いであった。
 活気だけではなくその酒場の大きさもかなりの物だ。

 二人は扉に手をかけ酒場に入る。
 既に暗くなっている屋外の冷気とは対照的にむあっとした熱気が顔を撫でる。
 鼻を刺激する料理や酒の臭いなどが混じったなんとも言えない空気に空腹でもないのに
 無性に食欲を誘う。

 屋内に入ると、その瞬間、店内全員の視線がこちらに向かれている。
 着物姿の女性、黒衣の青年に。

アーリア ;「結構よさそうなところね。」
セイル  :「そうだな。」

 店内はあの「おふれ」のためであろうか比較的女性が多い。
 あの「おふれ」とは、
クルルミク王国の現君主ビルゴ王子により出された勅令。
 隣国のグラッセンとの戦が終結するまでワイズマンに懸賞金をかけ、
 腕に覚えのある女冒険者たちを集める「おふれ」の事だ。

アーリア :「華やかね〜〜むさ苦しいのが一杯の黒騎士団とは大違い。」
セイル  :「おっさんに言いつけるぞ・・・」
アーリア :「本当の事じゃない。」

 ぐるっと見渡したところで真っ直ぐにカウンターに―亭主の方に向かった。

アーリア :「邪魔するよ。」
セイル  :(何も言わずにアーリアのうしろについてくる)
ぺズ(亭主):「今日は28人が討伐隊に新規登録して、新しく7つのパーティが組まれたようだ。
       他には特に目新しい情報は無いな。
       戦況も今日は落ち着いているようだ。
       ――それで、あんたらも今回の「おふれ」で集まった冒険者かい?」
アーリア :「いやいや、こちらは私用で、ね。」
セイル  :(黙ったまま)
ぺズ   :「ふむ。お客さん。なかなかの腕前に見えるがね。」
アーリア :「そう?なかなかいい目してるじゃな〜〜い。」
セイル  :(嬉しいのかな?)
ぺズ   :「こう見えても
五十年はここでやっているからな。それなりに目は肥えているのさ。」
アーリア :(こう見えても、だって。
五十歳以上に見えるじゃない
セイル  :(そう言うな、
そういう種族だからな)

 と二人はそのドワーフハーフのゆったりとした髭をじーっと見る。

ぺズ   :「ではお客さん。ご注文は何を?冷やかしは困るぜ」
アーリア :「注文じゃなくて悪いけどさ(一枚の絵―似顔絵―を見せて)このネーちゃんしらないかい?」

 あまり上手では無いがそれなりに特徴は捉えて書いてある絵を見せる。

セイル  :(お前の手書きか?)
アーリア :(そうよ。でも特徴は書けてるでしょう?)
セイル  :(・・・まあな。誰でもかけるのか?)
アーリア :(気になってる人なら書けるよ。あんたもね)
セイル  :「オレも?(思わず声を上げる)」

 
――アーリアの特徴描ける人間って、
    彼女のリストに乗った人って事かよ――

 思わず身震いをするセイル。

ぺズ   :「ん?(その絵を見て)こいつが何かしたんですかい?」
アーリア :「依頼を受けて探してるだけさ。知らないかい?名前はセレニアっつうんだけど。」
ぺズ   :「セレニア?セレ・・・セレ・・・セレニウスだったらいるぜ。
       あそこの端っこの席の娘っこがそういう名前だった。」
アーリア :「セレニウスだって?」
セイル  :「セレニウスっていや、セレニアの――」
アーリア :「ビンゴかも。情報あんがと(と
この辺りでは見慣れない銀貨を10枚ほど置いていく)」
ぺズ   :「ほう?珍しいね、これは…(銀貨をまじまじと見つめる亭主)ご注文の方は?」
アーリア :「すまないね(アーリアはにっと歯を見せて笑って)、ちょっと暴れるよ。」
ぺズ   :「お、お客さん、店内では――」
セイル  :(憐れだな。被害が少ない事を祈ろう)

 アーリア達はセレニウスのいる席までやってくる。

アーリア :「なるほど、特徴はそのままセレニアだな。」
セレニウス:「はい?(酒瓶を手にアーリアがこちらを見ていることに気付く)」
アーリア :「すまないが、わたしを覚えてないか?」
セレニウス:「(まじまじとアーリアを見つめる)どなたでしょう?」
アーリア :「そうか・・・忘れてるって本当なんだな・・・あの糞騎士め――」
セレニウス:糞騎士?それってわたしの事ですか?(目を細めるセレニウス)」
アーリア :「いや、違う。こっちの話だ。ところであんたセレニアって名前に心当たりは無いか?」
セレニウス:セレニア?誰なんですか?それは?」
アーリア :「ふむ・・・ちょっと失礼」

 アーリアは突然剣を鞘から引き出すと、セレニア=セレニウスの首筋にぴたっと当てる。

セレニウス:「わ、わたしがいったい何を――」
フォルテ :「ちょ・・・何をするんですか。わたし達のメンバーに!」
セルビナ :(思わず得物に手をかける)
コトネ  :「(アーリアの剣をじーっと見て)
わぉ♪
アーリア :「ふむ・・・(セレニアにしちゃ反応が薄いな――)」

 セレニアの首に当てていた剣を鞘に戻すと、今度は頭に手を当て撫でながら彼女の顔を真剣な眼差しで凝視した。

セレニウス:「な、何を――」
アーリア :「避けてね♪(ニコっと笑う)」
セレニウス:「え…」

 刹那、セレニアの身体は吹き飛ばされて腰掛けていた椅子諸共壁にダンと叩き付けられた。

セレニウス:
「かはっ」

 店内が静まり返る。客や店員全員がこちらを見ている。

アーリア :「…神速からの体当たりも交わせないのか…」
セイル  :「アーリア。やりすぎだ。」

 セイルはセレニアに手を貸すと彼女はその手を取って立ち上がった。

セレニウス:「どうも。でも、一体何なんです?」
アーリア :「(セレニウスの返答には応えず)つまんないや。かえる。

 アーリアは踵を返すと出口へ向かった。

セイル  :「お、おい、アーリア。」

 セイルもまたアーリアの後について酒場から出て行ってしまった。



【20:20―酒場『ドワーフの酒蔵亭』前】

 アーリア達は摘み出される前に店内から出る。
 アーリアは夜空を見上げている。

セイル  :「セレニアは?」
アーリア :「あれは・・・セレニアじゃない。」
セイル  :「何だって?」
アーリア :セレニアだった時の記憶を失ったんじゃなくて・・・無いんだ。本当に」
セイル  :「どういうことだよ。さっぱり意味が・・・
アーリア :「多分だけど、記憶がどこかに消し飛んでるのさ。あの姫と同じように
       ――いや、あいつより性質が悪い。」

 そう。前例はあった。
 あったのだが、それをどうやって克服したのかはセイルは知らなかった。

セイル  :「それが本当なら、そいつは厄介だな――俺達はどうすればいい?」
アーリア :「どうもこうもないな。我々が干渉したところで何もかわるまい。」
       変わるかも知れないけど、どちらにせよ短期間には無理じゃないかな?」
セイル  :「そういうものなのか?」
アーリア :「恐らくそういうもの。それに、神槍も無いしな〜〜一気に興ざめだよ。」
セイル  :「神槍に関しては、あのおっさん―フィスの旦那が言ってたじゃないか。」
アーリア :「実際にこの目で確かめないと信じない性質なのさ!」
セイル  :「で、どうするんだ?このまま帰るかい?」
アーリア :「定刻にならないと"ゲート"はどちらにしろ開かない。それまで暇つぶししないとね。
セイル  :「そうだな。でも暇つぶしに内政干渉するなよ。」
アーリア :「いくらわたしでもそれはしないってば!(Aはパタパタと手を振る。)
      
ドラゴンには興味あるけどね♪
セイル  :「おい…」
アーリア :「何よ。」
セイル  :
「ドラゴン・・・倒すなよ。」
アーリア :「セイルはやりたくないの?」
セイル  :「お前と一緒にするな。それにドラゴン倒したらここに居られなくなる。」

 竜を龍神として崇めている国。守護神として竜騎士同様に国民から絶対の信頼を得ている存在。
 そんな"存在"を手にかけるとなるとこの国全体を相手にすると言ってもいい。

アーリア :「別にいいけどな〜〜皆やっちゃえば――」
セイル  :「おい・・・(誰だよ、こいつ連れて行けって言った奴…)」
アーリア :「本気にした?」
セイル  :「した」
アーリア :「冗談だってば。」
セイル  :「聞こえないって!」
アーリア :「ふふ。でもちょっとだけなら――」
セイル  :「ダメだ!」
アーリア :"ファランクス"竜以来ずっとやってないんだよぉ。」
セイル  :「関係無い。宿屋に戻るぞ。」
アーリア :
「ストレスで死んじゃうよ!」
セイル  :「殺そうとしたって死なないくせに・・・」
アーリア :
「ぶぅ〜〜〜〜」
セイル  :「宿屋に戻るぞ。」
アーリア :
じゃあ、セイル。相手にしてよ!
セイル  :「ダメだ。ここでやったら巻き添えで市街地が吹っ飛ぶ。」
アーリア :
「ぶ〜〜〜〜〜」
セイル  :「宿屋に戻るぞ」
アーリア :
「ぶ〜〜〜〜〜(セイルに引き摺られていくアーリア)」

 酒場から宿屋までずるずるずるずるとアーリアが引き摺られていくのだった。







:欄外:

ワイズナー03/01より
フォルテパーティの結成


※お詫び
まずお詫びを。
実際のキャラの口調や性格と異なる表記をしているかもしれないので
それについて最初にお詫び申し上げます。


※時間経過
時間の表記をしていますが、無論適当です。
朝:ダンジョン入る。
昼:ダンジョンでの出来事&セイルがいろいろ動く。
夜:パーティ結成完了&明日の予定立て。
というイメージです。

※陵辱及び陵辱表現、エロ表現について
織月本人がそう言った物に熟達はしていないので極力端折っています。
そう言った読み物を期待していた方に関しては期待を裏切って申し訳ないと思います。
一応全年齢対象で心がけています。ですが、うちの書く物にしては少しダークサイド入ってるかも?

※街道にて
で本当はいきなりならず者とのトラブル。
を予定しましたが、比較的スマートなあのように。

※神速
アーリアのやたらと多用する足の早くなる術。歩法。
彼女が言うには故郷やその近辺でも「神速の使い手」は少ないらしいです。
瞬間移動と違い、その移動の間にも「生身の身体」が存在するため軌道を気をつけないと
自ら串刺しになるとか。
それが一番の使い手の少ない理由であるのかも。
普通はヒット&ウェイを行うために使用されるが、筋肉の疲労も激しいために普通は連続使用はしない

※セイル・長髪
髭はそっているようだが髪を切ってないだけ。不潔(ぇ

※可愛い
絶対あの
エルフ・リーゼはラフィ二ア嬢達に絡んでると思います。ええ。

※フィスの旦那:不確定名 うほっ、いい(略
糞騎士、馬鹿騎士と呼ばれまくるフィスの旦那。
果たして彼の出番は・・・こうご期待?

※"ファランクス"竜
アーリアの故郷に住むドラゴンの名前。何かを守っているらしいよくあるドラゴン(よくは居ないか)
攻撃は連続的で凄まじい・・・・・・らしい。
"彼"を倒した事あるのは、アーリア(偽名)、フィス(セレニウスSS参照)、皇女くらいなものか。


【登場人物】
レポートメインキャラクター
・アーリア・サンダース(偽名) ― Aria Thunders(fictitious name)

不確定名 :着物を着た女
経験レベル:Unknown(Measuring the impossible)
名声レベル:Unknown
才能レベル:Unknown(Very High)
性格   :Neutral(near Chaos)
性別   :Female
職業   :現在・皇国居候。臨時"皇国黒騎士団"剣術指南役。
職業(ワイズナ―):軽戦士
呼称   :剣聖候補。死神。
所持武器 :ロングソード。
形見の魔法の剣。
得意技  :神速攻撃。
音速の刃、衝撃波Etc。
行動  :龍神の迷宮内担当
備考   :165〜168cmくらい(フルパワー時は若干背が高くなるとかなんとか詳細は不明)。
18歳くらいの美人という部類に入る女性。ショート―第一部では長髪だが第三部では短髪に(謎)―の金髪で碧眼。
そして東方風の着物(親しい者からの東方からのお土産らしい)を着用(セイル曰く「間違った着こなし」)。
その腰には左右合わせて二本の剣(所謂長剣)、そして背中には大きな剣(両手剣よりはやや小さめ)を背負っている。
基本的に頭はいい方なのか(古)五カ国語に精通している。
その性格及びその能力の高さ故に処女ではある。サドっ気あり。
武器格闘全般の技に優れている人を見ると勝負したくて溜まらなくなるという性癖がある。
賢者曰く「現在暴走中」なためか、やたらと好戦的。だが、元々人を殺す事になんの躊躇いも無い。
※身分を証明する書状にも(偽名)と書かれている。本名では無いのでアーリア人とは一切関係ありません。


・セイル・ビッグブリッジ(偽名) ― Sail Big-bridge(fictitious name)

不確定名 :剣を持った聖職者
経験レベル:Unknown(Very High)
名声レベル:Unknown
才能レベル:Unknown(Usually?)
性格   :Law or Chaos(not Neutral)
性別   :Male
職業   :現在・皇国居候
職業(ワイズナ―):魔法戦士
呼称   :魔剣使い
所持武器 :東方風の鍔無し鞘無しの直刀
得意技  :ナイフで鉛筆削り(ぉ
行動  :クルルミク城下町担当
備考   :身長170cm。15〜17歳ほどの青年。黒髪―長髪(願掛け)で後ろでリボンで束ねている―に黒い目、
そして黒い聖職者の服―厚手の生地の黒い洋服を着用
(見るものが見れば学ラン)。
その手には十字架では無く布が巻かれた棒-剣(東方風の鍔無し直刀)を携える。
馬鹿ではないが、母国語(日本語)しか話せないし理解出来ない。
本名は思いっきり日本語名。
セイル自体は意識してないが、"この剣"によって殺された"生贄"の数は数え切れないほどである。
決して、通販のエージェントではない。母子家庭の苦労人。
皇国内では「皇国黒騎士団」には入っておらず、身分は「皇女護衛」と認識されている。
アーリアに狙われている。
※アーリア同様・身分を証明する書状にも(偽名)と何故か書かれている。勿論セレニウス本人(セレニアの弟)では無いです。


:更にプロフィール補足:

※皇国"黒騎士団":本文及びアーリア・プロフィールより
ワイズナーに登録されている「アリス」嬢の黒騎士団とは一切関係がありません。偶然同名の全く異なる物です。
現皇帝によって元々「皇国近衛騎士団」だったものが「黒い鎧カッコイイじゃない」という理由で「黒騎士団」になってしまったもの。
所謂ダークサイドな魔法や技術を扱うわけでも無く、よくある魔王軍―よくは無いが―というわけでも無いです。
皇国"黒騎士団"の実力のほどはアーリア曰く「わたしが一個小隊殲滅するのには少々梃子摺るわね」らしい。
さっぱり分からない。

※キャラ絵
ガンバって描いてみた。我ながら下手だと――困った物です。






文責:織月

to 03/02 next page

return