『Festival of three days』
    The second day(Part2)
 
 
 
 暗闇の中、リネアは全身をまさぐられていた。胸を形が歪められるほど揉まれ、その頂をきつく捻られ、尻を撫でられ、淫核を抓られ、二つの穴を男の物で貫かれ、中に欲望をはき出された。
 目で相手の手の仕草が解れば次に来る刺激がある程度は予想できる。だが、目隠しされて暗闇に包まれたリネアにはそれもできない。予想の出来ない未知の刺激をただ一方的に与えられるだけ。それは恐怖心を煽る物だったが、同時に期待をしてしまう。最後には必ず、快楽が与えられるのだから。
 
 
 
 リネアに取って、性交は快楽であり、それ以上の物ではなかった。互いを愛してなければやらない、と言う倫理観も持っていない。スポーツのように、ゲームのように、ただ楽しむだけの為に性交を行う。性病は確かに怖いが、其れを除けば、ただそれだけの行いだった。
 
「おい、大丈夫か?」
 
 久し振りにかけられる優しい声と共に、猿轡を外される。唾液でベトベトになった布を舌で口からはき出すと、顎をつかまれ、上を向けさせられた。
 口づけをさせられるのだろう、と思っていると、やはり柔らかい感触が唇に触れた。そして口を舌で無理矢理あけさせられると、口内に液体を注ぎ込まれた。からからの喉が潤っていくのが心地良い。味からしてエール酒のようだった。
 
「ん、んく…ぷあ…」
 
 口で大きく息を吸う。冷えた空気が胸を大きく膨らませるほど肺の中に入っていく。鼻だけの呼吸での性交の息苦しさから解放された後の空気は、格別に美味しかった。
 目隠しが解かれる。窓から入ってくる光が眩しくて、光になれるまで、目を何度も閉じたりした。ようやく慣れた目で見えた物は、白濁液で穢れた自分の身体と、愉快そうに自分を見つめる九人の男。
 一人足りないと思っていると、部屋の扉が開く。バックスの部下の一人が、買い物袋一杯に食料を入れて部屋に入ってきた。
 扉が開いた際、一人の無関係な男が部屋の中に居たリネアと目が合ってしまった。その位置からはリネアを隠す障害物は無く、秘所や乳房などが隠すことなく晒されていただろう。男は申し訳なさそうにそそくさと逃げていったが、眼に姿を焼き付けたに違いない。女性にとっては限りなく恥ずかしい姿を見られたのだが、捕虜になったときはもっと大勢の見ず知らず男に無理矢理好き勝手見られているので、少しだけ恥ずかしいと思ったが、それだけだった。むしろ、ラッキーな男の幸運に少しだけ感心した。
 ちなみに買い出しに行かされた部下は、そのことで後で軽くバックスに殴られた。両者同意の上とはいえ、見る人が見れば強姦以外の何物でもないので、仲裁に入られたら面倒だったからだ。
 
「そろそろ飯を食うか。腹が減っただろ」
 
 部下を殴った右手をさすりながら、バックスは他の部下にリネアの拘束を解くように命じる。リネアは全ての拘束が解かれることに少しだけ驚いた。捕虜の時は、枷をされたまま食事をすることはままあることだったから、今回もそうされるとてっきり思っていたからである。
 長時間同じ姿勢で拘束されて強ばった筋肉を解していると、部下の一人がリネアにパンを差し出した。ロールパンに切り込みを入れ、中にサラダやハムなどを挟み込んだサンドイッチだった。そう言えば冒険者の中にパン屋の子がいると聞いたけど、その子が作ったのかな、と思いつつ手を伸ばすと、パンは下がっていった。何かと思い、差し出してくれたバックスの部下を見ていると、彼は床の上に皿にのせたパンを置いた。
 
「えっと…これって?」
 
「犬みたいに四つんばいで食うんだ。こっちに尻を向けてな」
 
「…やっぱり」
 
 予想通りだと思いつつ、ため息を一つ。そうしている合間に、皿に注がれたミルクも床に置かれた。
 仕方なく、リネアはバックス達に背を向けて座り、両手を床に突いた。だが腰は上がらず、ちらちらとしきりに許しを請うようにバックスを肩越しに見ている。
 
「どうしたんだ? まさか、今更恥ずかしい、とか言わないよな」
 
「…」
 
 リネアは押し黙り、俯いた。その顔は、男達に局部を見られた時よりも真っ赤になっていた。
 
「理由を言ってみろ」
 
「…い、言わなきゃ…ダメ、かな?」
 
 珍しく、リネアはしどろもどろに答える。さて、どうした物かとバックスは考えていると、リネアはさらに口を開く。
 
「言わなきゃダメ、なら…言う…けど…」
 
 バックスはそれで理解した。言うのが嫌なのではなく、言わせて欲しいのだと。
 
「言え。こいつは命令だ。逆らうとお仕置きするぜ」
 
 あえてすごみを付けて言うと、リネアはごくりと唾を飲み込んだ。口ごもろうとする自分の無意識をはねのけて、賢明に喋ろうとしだす。
 
「え、えと…その…私って、いつも…無理矢理、犯されてた、から…その、否応無く、ね。だから、無理矢理…やられたり、恥ずかしいところを見られるのは…抵抗、あんまり、無いんだけど…」
 
「割と自由の身で自ら進んでやる、ってのは恥ずかしい、ってわけか」
 
 リネアはこくりと頷く。バックスからは背を向けているので顔色は解らないが、首筋まで真っ赤なのが見える。
 
「その…なんて言うか、淫乱、な感じがするし…いや、自分でも、ほら、淫乱…だとは、思うけど…」
 
 要するに、リネアは『無理矢理させられている。自分の意志ではない』と言う免罪符が欲しかった。それが羞恥心という理性のブレーキを外す方法だと、自分でも確信している。
 
「だから、拘束されるのが好きなんだな」
 
 質問ではなく、確認をする。リネアは、小さく頷いた。拘束されれば自分の意志ではなく、淫乱な身体と心をさらけ出せれるから。
 例えば全裸で街中を歩かされても、それが男達にやらされていることなら、抵抗無く出来ただろう。だが、それが自分一人では、絶対にできないことだった。
 
「なるほど…じゃあ、そのパンは普通に食って良いぜ」
 
 無理矢理命令をするのではなく、あっさりと許可を出してくれるバックスに疑問を抱きながらも、心境が変わらぬうちにさっさとパンを手で掴んで口の中に入れる。その間、背を向けていたので、バックス達の笑みに気づくことはなかった。
 
「その代わり、頼みがある」
 
「ぬぐっ?!」
 
 バックスの言葉に、危うく喉をつまらせそうになる。ミルクの入った皿をつかみ、ぐいっと飲み干して、パンを胃の中に押し流した。
 
「…え、えっと、頼み?」
 
「そう、頼みだ。俺たちも確かに、無理矢理ばっかしかやってねぇからな。ここは一つ、女が一人でやっているところを見てみたくてな」
 
 恐る恐る振り返ると、とても良い笑顔のバックス達以下10名の顔が見える。それはリネアを陥れる、悪魔のよう…いや、リネアには悪魔にしか見えなかった。
 
「頼むぜ、リネア。こんなこと頼めるのはお前ぐらいなんだから。見せたら、ご褒美もするから。嫌だったら、しなくてもいいぜ」
 
「…うっ…」
 
 今までの人生の中で、自慰を他人に見られた経験は、実は一度もない。捕虜になったときは陵辱者はいつも自分が気持ちよくなることだけを考えて突っ込むし、そうでないときもこちらから自分の好みのシチュエーションに持って行くよう頼んでるからだ。
 だが、今回は違う。『脅迫』ではなく『頼み』。『お仕置き』でなくて『ご褒美』。『無理矢理』じゃなくて『しなくても良い』。所詮うわべだけの言葉で、やる行為は全く変わらない。変わらないのに、リネアの羞恥心は高ぶっていく。
 しなくても良い自慰を見られるぐらいなら、一日中無理矢理犯される方がマシだと思ってしまう。いや、リネアに取っては確実に後者の方がマシだった。
 だが、すでに一日中犯され、性欲で火照った身体は、さらなる快楽を望んでいた。羞恥心が次第に快楽に変わり、精神を蕩けさせ、壊されていくのが感じる。
 
「う、うん…わ、わかった…」
 
 リネアは立ち上がると、自分の意志でベットに座る。そして自分の意志でゆっくりゆっくりと足を開いていく。先日命令されて脱がされたときは、自分で見せつけるように足を開いていたのに、今は躊躇いながら、後悔しながら足を開いている。
 これで男共が無理矢理足を開かせてくれたら、どんなに楽だろう。足を固定して閉じれないようにしてくれたら、どれだけ楽だろう。
 だが、男共はそうはしない。リネアが自分の意志で足を開くのを待ち続ける。
 
「ん…あぁ…うっ…」
 
 視姦させられただけで、イキそうになる。けれど、羞恥心と言うブレーキを壊すための恥辱にはまだ足りない。
 リネアの中で二つの心が競り合う。全てを晒して快楽を得ようとする心と、羞恥心でそれを阻害する心。リネアの意志としては前者なのに、後者の心がどうしても邪魔をする。だが、その心も、今日で最後だろう。自らの意志で、羞恥心という壁を砕いていく。
 
「はぁん、ん、ぁ…ふんっ!」
 
 足を大きく開く。精と愛液が混じった液体が、秘所からどろりと溢れてくるのを、男達にマジマジと見られる。先ほどまで椅子に縛られていたときと同じ姿勢なのに、今まで以上に愛液がどろりと溢れていく。
 これから自慰をする。開いた足は、万力で固定したかのように、力強く床を踏みしめる。一度足を閉じてしまうと、もう二度と開けないと思ったからだ。息が荒くなる。顔を背けて目をつむり、ゆっくりと指を秘所に近づけていく。
 誰に強制されたわけでもないのに、自慰するところを見せつける。自分の意志で、自分を犯させる。自分から望んでご褒美という陵辱を強請る。
 秘所の目の前で震えて止まっていた指が、不意に秘所に触れる。
 
「んんんんーーーーーっ!!?」
 
 ついに視られてしまった。自分の恥ずかしい行為を。
 指先がほんの少し秘所に触れただけだったが、やってしまったという意識が暴走し、一気に絶頂まで導かれる。
 
「…はぁ…ん、はぁ…」
 
 ぐったりと上半身をベットに転がす。足は未だ開いたままで、男共に視られっぱなしだが、閉じられるのに閉じようとはしなかった。
 
「まぁ、この辺で勘弁してやるか。ご褒美をくれてやろう」
 
 バックスがにやりと笑って言うが、本当はバックス達が我慢できなかっただけである。部下達は嬉しそうにリネアに覆い被さっていく。
 
「…やっぱり、お仕置きの方が、好きかも」
 
「じゃあ、お仕置きだ」
 
「…んんっ」
 
 バックスが言い直すと、リネアはぴくりと跳ねた。それだけでイッたらしい。
 バックスは苦笑じみた笑みをすると、リネアへのお仕置きを楽しんだ。