『Festival of three days』
    The second day(Part1)
 
 
 リネアは一度死にかけた。
 いや、自分の中では、あれは死んだと言う部類に入っている。
 十歳の夏のある日、とある病にかかった。七日七晩熱でうなされ、時に意識を失い、呼吸すらも危うかった時すらもあある。今となってみれば生きているのが不思議なぐらいだった。
 両親と医者の必死の介抱の末、リネアはなんとか生き延びることが出来た。だが、第二次性徴の大事な時期での病だったためか、医者からは将来子を産めないと宣告された。
 当時は話半分に聞き流していた。子供を産めない。母は泣いていたけれど、ただそれだけだと思っていた。だが、日に日に成長し、女の子らしさを付けていくと、その涙の意味がわかって来た気がした。
 歳が十四になった頃。隣のお姉さんが子供を産んだと聞いた。自分の身体の事情を察してか、リネアは呼ばれなかったが、こっそりと見に行ってしまった。
 そこで見たのは、我が子を抱く、幸せそうな母の顔となったお姉さんの姿だった。
 それからやや家出気味に、リネアは外に飛び出した。子を産めない女なんて女じゃない。そう自分に言い聞かせて、男の仕事らしい傭兵業に飛びついた。意外に予想よりも多くの女傭兵が居てびっくりしたのは、入ってからの後の事だった。
 
 
 
「…ん…」
 
 頭の中がぼやっとしている。微睡みから冷め、ようやく今までの体験が夢だと理解する。もう朝だろうかと、瞳を開ける。
 
「…ん、ん…?」
 
 リネアの視界は暗かった。灯りが付いてないのだろうか。いや、顔の目元に布の様な感触を肌で感じる。目隠しをされたのか。それを取ろうとする。
 だが、腕を動かそうとしても動かない。だんだんと明瞭になっていく頭の中で、腕は背中で布で縛られていることを理解する。
 足も動かない。両足を大きく開いたまま、縄で固定されている。木の感触からすると、テーブルか椅子だろうか。
 体中の肌から、ひんやりとした空気を感じている。本来下着で隠すはずの部分も空気に直にさらされている。自分が裸だと、ようやく理解する。
 
「ん、んん…んっ?」
 
 今更ながら、口に布の味を感じる。口に詰め物をされた上に猿轡されているらしい。
 何一つ動けなかったが、頭で考えることは出来た。
 今の身体の姿勢からすると、自分は肘置き付きの椅子に裸で縛られている。目隠しと猿轡をされ、秘所を晒すように腰を突き出し、両足を拡げたまま拘束をされている。男にとってはさぞ挿しやすいだろう格好を想像すると、その卑猥な姿に顔が赤くなる。
 それだけではなく、膣や腸に、液体が入っている感触がある。自分が意識を失っている間も弄ばれたのだろう。バックスに言われたように、性奴隷扱いどころではなく、もはや玩具同然である。
 
「…ん…」
 
 耳を澄ますと、静かな寝息がいくつか聞こえる。皆疲れて寝てしまっているのだろう。しばらくは身体を休めることができる。ほっとついたため息は猿轡を少し湿らした。
 だが、起きたら再び犯される。今度は完全に意識がある状態で。身動きどころか相手を見ることも出来ず。男を満足させるためだけに、穢される。
 
「…んん…んっ…」
 
 顔が赤くなるのが解る。胸の鼓動で、期待しているのが解る。下の口は愛液というよだれをとぷりと溢れさせているのが解る。身体を休めるつもりだったのに、火照ってしまう。縄で固定された太ももを、何とか動かそうともぞもぞと動かす。男の物を受け入れる予行練習かのように、秘所がぱくぱくと呼吸をする。
 これからの陵辱を頭の中で思い描き、空想する。それだけで身が蕩けさせられるほどの快感を得てしまう。
 縛られて指一本動かせないのに、自慰をしてしまう。
 自縛癖はこう言うのが好きなのかと思いつつ、のめり込んでいってしまう。
 
 ・
 ・
 ・
 
「たまんねぇなぁ」
 
「んんんんーっっっ!?!!」
 
 自分の真正面からバックスの声が聞こえた。予期せぬ視姦者に身体を震わせて、身動きできないのにじたばたと暴れようとして、椅子を揺らす。だがそれは視姦者に物欲しそうに収縮する秘所を見せつけただけ。声の位置からしても、余すところ無く、ばっちり、全てを視られている。
 
「んん、んんんっ、んんっ、んんんんー!!!!!?」
 
 いや、それだけではない。男を求めていた身体はこの上なく屈辱的な痴態を見られただけで、絶頂に達してしまった。紅潮した顔をがくりと俯かせ、鼻で荒い息をする。
 大勢に裸を見られ、数え切れないほどの男に貫かれてきたが、生まれてきてかつて無い、一世一代の大恥を見られてしまった。もうお嫁には行けない。とっくの昔に、かもしれないが。
 
「リネアが落ちてからずっと視てたが、凄かったぜ。ちった寝不足だが、良いもんが見れたぜ」
 
「んん…んん…」
 
 己の人生を顧みても今までにない痴態を『良い物』と呼ばれるとこそばゆい物の、あまりの恥ずかしさに身体が自分の体温で焼け死んでしまいそうだった。
 
「さぁて、そろそろ欲しいんだろ? まぁ、嫌だっつーっても、やることには代わりはないが」
 
 リネアはこくこくと激しく首を縦に振る。陵辱を強請る行為も、あのような痴態を視られた前では、牛の角に蚊が刺した程度にしか感じない。建前や立場を脱ぎ捨てた後に残ったのは、男の物を強請る一人の女だった。
 
「んっ…」
 
 熱く固い物が秘所に触れる。見えないので肌で感じるだけだが、十割以上の確率で男の物だろう。これが己の身体を貫けば、痴態と言う淫蕩地獄から解放される。無論、次に存在する快楽と言う淫蕩地獄があるのも忘れては居ない。忘れているわけではないのだが、むしろ望むかのように快楽を求めた。
 
「そうらっ!!」
 
「んんんんんんんーーーーーーっっっ!!!」
 
 人間の知覚の大半を占める視覚は無く、次に知覚を占める聴覚が、自分と男が奏でる淫らな音のメロディに聞き惚れてしまう。視覚がないことで敏感になった触覚が、己の身体に侵入する淫らな物の形を事細かに感じてしまう。
 女のあげた嬌声の大半は口に含んだ布に吸われた。だが、それでも性欲を満たすことしか考えない男達の目を覚ますには、鶏の鳴き声よりも効果的だった。