『Festival of three days』
    First day(Part1)
 
 
 
「いや、それにしても、久しぶりだね」
 
 リネアは宿の自室で、ベットに座りながらお酒のグラスを傾ける。彼女の周りを円を描くようにして、総勢10名の男共が同じように酒の杯を傾ける。11人もいるとさすがに窮屈だが、もとより一人で泊まるには広い部屋だったため、なんとか全員座ることはできた。
 
「ほんと全くだ」
 
 リネアの目の前に座る男が豪快に笑いながら答える。だが、その男の視線も、ちらちらと彼女の胸元や太ももに行くのがリネアから見てもよくわかる。
 無理もない。野獣に囲まれた年頃の娘は、ノーブラで裾の短いチュニックに、下着のみと言う料理してくれと言わんばかりの無防備なのだから。
 
「ところで、酒盛りやって明日とか大丈夫なのか? 俺たちは全然余裕だけどさ」
 
「ん、ちょうどちょっとした短期休暇だからね。明後日までフリーだよ」
 
 毎日戦ってばかりだと身体にも心にも良くない。さらに傭兵の様に戦うだけではなく、罠やならず者にも警戒しなければならない冒険者にとってはなおさらだ。そこでちょうど現在捕虜になって捕まっている仲間の冒険者も居なかったので、三日間の休暇を取ることにした。各々、好きなように時間を使っていることだろう。
 
「しかし、リネアもずいぶんと有名になったもんだな。俺達にまで名前が耳に届くわ、町中の奴らは誰もが知ってるわ」
 
「いやいや、私より有名な人はいくらでもいるよ」
 
「だが、俺達が知ってるのはお前だけだ」
 
 恥ずかしそうに謙遜して言うリネアに、銀髪の大柄な男が答えた。
 バックス。外道部隊とも呼ばれたバックス傭兵団の団長。奴らの捕虜になって生きて帰ってきた者は居ない、と言われるほど虐殺で有名な部隊だ。
 
「そう言われると…なんか、照れちゃうな」
 
 その唯一の例外と言っていいのが、そこで恥ずかしそうに照れている少女だ。
 
 殺されてたかもしれない相手と酒を交わす。
 本来ならあるはずないのだが、バックス達とて人殺しに飢えた殺人狂ではない。戦場ではないここでは互いにただの民間人。そう言った割り切りがしっかりできているため、バックス傭兵団は誰一人として罪人にならずにいる。
 リネアも割と馴れ合いが嫌いじゃないためか、この宴の話を持ちかけられたときも断らなかった。
 
「バックス達はどうしてここに?」
 
「グラッセンとの戦に雇われるために」
 
 バックスは杯に口を付けた後、静かに淡々と答える。こういうクールな仕草に酒の性か、リネアも異性としてドキリとしてしまう。この男の本性を知らなかったら、ころっと傾倒してしまうかも知れない。もっとも、本性を知ってるからこそ、傾いてしまうのかもしれないが。
 
「…ま、前菜はこんなところでいいだろう。リネア、メインディッシュ、みんな待ち望んで居るぜ?」
 
 バックスは杯を床に置くと、にやにやといやらしい笑みを見せる。口調もどこか荒くなり、態度も大きくなっていく。闘いの時、捕虜虐待の時、バックスは本性を現す。クールな青年、なんてものではない。飢えた野獣より獰猛だ。
 周りの男達もにやにやと笑みを浮かべている。美味しい獲物を目の前にした肉食獣の笑みだ。
 
「嫌…って言ったら、やっぱり無理矢理、かな?」
 
 リネアとて、予想してなかった訳じゃない。むしろそのつもりでバッカス達を自室に入れている。でなければそんな無防備な格好はしないし、不安げな表情を浮かべつつ笑みを含めたりはしない。
 
「当たり前だ。それとも、抵抗する気か? それも悪くねぇぜ?」
 
「ま、今日は素直に降参。で、捕虜の私は何をすればいいのかな?」
 
 両手を挙げ、リネアは降参のポーズを取る。
 これは『勝者は捕虜を好きにして良い』という、傭兵の暗黙の了解。だから捕虜は殺されても拷問されても仕方ない。
 
「服を脱げ。そしたら両手を背中に回せ」
 
 無論、その『仕方ない』に、強姦や陵辱も含まれる。
 何度もやらされてきた行為。
 リネアは期待か恥辱か酒か、理由はともかくとして、肌を朱に染めながらこくりと頷く。チュニックの裾に手をかけると、一気にまくり上げて脱ぎだす。その仕草でたわわな張りのある胸がぷるんっと震えて男共の目を保養させる。
 そのまま流れるように下着に手をかけたとき、ぴたっと止まる。目をそらして考えながえてから、チュニックを脱ぐときより顔を赤らめて口を開く。
 
「…前の相手が無理矢理やったんだからね、言っとくけど」
 
 意を決してするりと下着を落とすと、全く無毛な秘所が露わとなる。野郎共の歓声を浴びて、恥ずかしそうに明後日の方向を向いているが、言われたとおり両手を背中に回し、それどころか肩幅に足を開いて見せつけるようにしている。
 
「おい、両手を縛れ。それから戸締まりをしろ」
 
 バックスが指示を出すと、男共はてきぱきと言われた通りに動き出す。脱いだばかりのチュニックで両手を縛られる感触と、目の前で戸締まりをされる光景に、リネアは不満そうに頬を膨らませる。
 
「そこまでしなくても、逃げたり抵抗したりはしないよ」
 
「おいおい、何言ってるんだ?」
 
 バックスが立ち上がり、リネアの前に来ると、ぐいっと顎を掴んで自分の顔に向けさせる。背丈の差は頭二つ分はあるだろうか。リネアは強引に顔を向けさせれて、ごくりと唾を飲み込んだ。
 
「お前の性癖を知らないとでも思ってるのか? 逃げたり抵抗できなくなったんだぜ? 体中乱暴に何本もの手にまさぐられて、口にも膣にも尻にも俺たちの物を無理矢理入れまくられて、中に出されて犯されて、性奴隷以下の玩具として俺たちが飽きるまで輪姦されるんだぜ?」
 
「…う…」
 
 しっかりと抑揚まで付けられて説明されたリネアの身体は、ぼっと火が付いたように熱くなった。堂々と開いていた足も、太ももをすりあわせてごまかすように動かしている。
 
「で、でも、助けとか…」
 
「バックス、『激しいプレイ中だから乱入禁止』ってプレート見つけましたぜ?」
 
「じゃ、それドアノブに引っかけておけ」
 
 バックスに指示されると、部下はプレートを掛けに行った。
 
「これでもう助けは来ないな」
 
 バックスの言葉に、リネアは答えない。顔を俯かせたまま、荒く熱く甘い吐息を、堪えるかのようにして吐いているだけだった。
 準備が終わった男達はリネアを取り囲むようにして集まった。
 屈強な男が十人。全裸で後ろ手拘束されている娘が一人。
 逃げられない。抵抗できない。助けも来ない。
 
「さて、明後日までフリーだったんだよな」
 
 もはや足腰がふらふらしているリネアを、顎を強引に向かせながら確認を取った。
 リネアは答えない。恍惚な表情を浮かべ、これから三日間続く宴への覚悟と絶望と快感をすでに受け入れ始めていた。