それは、リムカがまだ5歳だった時の話である。
明日、お父さんとお母さんは、古代文明の調査のために、未開の大陸に向かって旅立つ。
調査は、約半年間行う予定で、その間わたしは、賢者の学院のお祖父ちゃんの所に預けられる。
いつもの事だ。

「すまないな。リムカ」

父が申し訳なさそうに言う。

「ううん。おじいちゃんといっしょだから、だいじょーぶ。だから、おとうさんとおかあさんは
 がんばって、ちょーさしてきて」

リムカは、精一杯、元気に答えるが、本当は、両親と離れるのは寂しかった。
だから、必死に言い聞かせる。

お父さんとお母さんは賢者だ。
色んな事を調べて、調査してたり研究したりするのが仕事なんだ。
お父さんとお母さんが、調査や研究を成功させると、お父さんやお母さん、お祖父ちゃん、みんなが喜ぶ。
だから我慢する。寂しいけど、我慢するんだ。
そう何度も何度も、自分に言い聞かせた。

「リムカの誕生日までには、絶対帰って来るさ」

両親は、どんなに忙しくても、リムカの誕生日には、必ず帰って来て祝ってくれた。

「誕生日プレゼントは、何がいいかな?」
「うーんっと…、ハニワさんとか、おかしな仮面!」
「…普通は、かわいいお人形さんや絵本じゃないか?」

確かに、普通女の子なら、そういう物を要望するだろう。

「うーん。でも、ハニワさんとか、おかしな仮面の方が好き」

どうやら、少し普通ではないようだ。

「…母さん。育て方、間違ったんじゃないのか?」

無垢な笑顔の娘を横目に、溜息混じりに母に愚痴をこぼす。

「そんな事ありませんよ。リムカは、良い子に育っていますよ。
 この子が、変わったお土産ばかりを期待するのは、毎度毎度、変わったお土産を持ってくださる、
 誰かさんのせいじゃなくて?」

母は、笑顔で父の愚痴を返した。

母の指摘どおりだった。
いつも調査や研究に追われ、お土産を買いに行く時間を取れない父は、
調査発掘の際に手に入れた、土器等の古代の民芸品をお土産として、リムカに渡していた。
リムカも、それらを気に入ってしまい、調子に乗った父は、調査や研究に必要ない
土偶等をお土産として、リムカに渡してきた。

「むぅぅ。いかん、いかんぞ。このままでは。よし!誕生日プレゼントは、かわいいお人形さんだ!」

その父の言葉に、リムカは、明らかに不満そうな顔をするが、父は娘の不満をあえて無視する。

「おとうさんのいじわるー」

リムカは抗議の声を上げる。そんな様子を見ていた母が、リムカの傍によって言う。

「それじゃ、わたしからは、ハニワさんかおかしな仮面をプレゼントするわね」 「わー、おかあさん大好き!」

リムカは、大喜びで母の胸に飛び込み、母はそんな娘を優しく抱きしめた。

「なぬ!? あ〜、や、やっぱり、パパもハニワさんか、おかしな仮面にしようかな……」
「あら、あなた。男が一度言った事を簡単に変えるんですか?」

愛する娘が、嬉しそうに母の胸に飛び込んだのを見て、ショックを受けたのか、
あわてて、前言を撤回しようとするが、母から鋭い突っ込みを受け、言葉を詰まらせる。

「い、いや。それはだな……」

必死に言い訳を考えるが、生半可な言い訳では、突っ込み返されるだけだ。
結局、良い言い訳は思い付かなかった。

「えぇーい!こうなったら、ハニワさんやおかしな仮面よりも、凄くかわいい人形さんをプレゼントしてやる!」

そんな父を見て、娘と母は、笑みをこぼす。
憮然としていた父も、二人の笑みに釣られ笑い出す。

明日から、寂しくなるけど、誕生日には、またこうして、いっしょ笑いあえる。
だから、寂しいのも我慢できるんだ。リムカは、そんな思いを胸に、両親と笑いあった。


それが、リムカが両親と過した最後の夜だった……。





リムカSS『学院都市ウィーノル』




「ん…。朝…?」

賢者の学院にあるリムカの私室。
窓から差し込む朝日を受けて、リムカは目を覚ました。

机に突っ伏して眠っていたせいか、
それとも夜遅くまで調べものをしていたせいか、肩の辺りが少し重い。

大きく身体を伸ばす。

昨夜は、今度調査する予定の古代遺跡の下調べをしていた。
幾つもの古文書や記録を読み、調査に必要な情報を紙に書き写したり
地図と見比べながら、遺跡の構造などを計算していた。
それも九割方終わって、一息ついたところで、睡魔が襲ってきて、
そのまま机に突っ伏して眠ってしまったのだ。

何か、懐かしい夢を見ていたような気がした。
それが何だったのかは、思い出せないが、幸せな夢だった気がする。

ぼーっと、部屋を見渡す。

両親が行方不明になったと告げられた6歳の誕生日。
あの日を境にリムカは、この賢者の学院に住むようになった。

初めの内は、両親に会いたくて、泣き出しそうな日々を送っていた。
だが、めそめそしていても、祖父や学院の人達を困らせるだけだと悟り泣くのを我慢した。

昔、お父さんが言っていた。
悪い事ばかり、考えていると、悪い方へと流されていき、自分も周りの不幸になる。
だから、いい事を考えるんだ。そうすれば、良い方向へと流れて、自分も周りも幸せになれる、と。

あれから7年。
今では、この賢者の学院が、自分の家のように感じている。
やはり両親がいないのは寂しいが、祖父や学院の皆、友人達や町の人々等と交わって、
幸せな日々を送っている。

リムカ「あ、わたし、リムカです。髪をおろすと、誰だか分からなくなっちゃいますか?」

「やっとお目覚めのようだね。リムカ」

すぐ後ろから、女性の声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこに一人の女性が立っていた。

「おはよう、リムカ」

よく知っている女性だった。女冒険者のナーシェ。リムカの冒険者仲間だ。
見知った顔だったので、反射的に挨拶を返す。

「あ、おはよう。ナーシェ」

挨拶から、五秒くらい経って、

「え? ナーシェ? どうしてここにいるの? 確か依頼で、遠くへ行っていたんじゃ……」

リムカは、ナーシェが自分の部屋にいた事よりも、ウィーノルにいた事を驚く。

「今朝方、戻ってきてね。こうして、帰還の挨拶に来たってわけ」

相変わらずズレた子だねぇと、内心で苦笑しつつ答える。

「そうだったんだ……。ナーシェ、おかえり!」

嬉しさのあまり、ナーシェに駆け寄る。
リムカにとって、ナーシェは友人を超えた、実の姉のような存在なのだ。

「うんうん。あたしが留守にしてて寂しかったでしょ?」

駆け寄ってきたリムカを抱きしめ、その頭を撫でる。

「わたし、そんなに子供じゃないよ……」

そう言いながらも、ナーシェから離れようとはしなかった。





ウィーノルへ戻ってきたナーシェは、まず真っ先に賢者の学院に足を運んだ。
冒険者仲間であり、何よりかわいい妹分であるリムカに挨拶をするためだ。
学院に入るには、手続きが必要なのだが、何度も学院に出入りしているナーシェは、ほぼノーパスで中に入れた。

リムカの部屋の前まで来たナーシェ、まずはドアをノックしたが、部屋の中からは、何の反応もなかった。

「まだ寝ているのかしら?」

そう思いつつ、何気なくドアノブに手をかけたら、ドアが開いた。
遠慮がちに部屋の中を覗いて見ると、机に突っ伏して眠っているリムカの姿を見つけ、
思わず額を押さえた。





「あんた、無用心すぎよ。寝るときは、ちゃんと部屋の鍵をかけなさい」

再会を喜び合った後、ナーシェはリムカに注意の言葉をかけた。
起きている時ならばともかく、鍵を開けたまま眠るのは、無用心すぎる。

「大丈夫だよ。学院の警備は厳重だから、泥棒さんだって入ってこれません」

確かにリムカの言うとおり、賢者の学院の警備は厳重で、あちこちに魔法の罠が仕掛けられており、
泥棒などが侵入する隙間もない。
だが、部屋に侵入してくるのは、泥棒等の外部からの人間だけだとは限らない。

それにリムカは、13歳。あと半年もすれば14歳になる。そろそろ年頃の娘だ。
あまり無防備すぎるのは、如何なものか。

「一応、女の子なんだから…」

そう注意するが、その声には、半ばあきらめの色が入っていた。
多分、リムカには言っても無駄だろうと直感しているからだ。
案の定リムカは、よくわからないといった顔をして首をかしげた。

とことん、女の子という自覚に欠けた娘だ。
それは、彼女の部屋にも現れている。

部屋のいたる所には、分厚い魔導書や辞典等の難しい本が、山のように積まれている。
他にも、古代文明のマジックアイテムと思われる、わけのわからない細工物や、
不気味な置物が数多く置かれており、壁には、奇妙な仮面等が飾られている。
そういった物が、部屋の四分の三を占めていた。

唯一、ベットの上にだけ、可愛いクマのぬいぐるみが置かれており、
そこだけが、女の子らしさを感じさせる空間となっていた。

ナーシェ自身、冒険者であるためか、あまり女の子な趣味を持ち合わせていないが、
それでも、この惨状は、同じ女として、少し悲しいところがあった。
女の子な趣味を持てというつもりはないが、少しは、部屋を掃除した方がいいのではないだろうか?

足の踏み場がない。といえば、少しいい過ぎかもしれないが、
床は本やマジックアイテム、古代の細工物等が、多く散らかっている。
本人に言わせれば、置き場がなくて、仕方なく床に置いてある。
だそうだが、傍から見れば、散らかっているようにしか見えない。

「こんなに散らかってるんじゃ、彼氏なんか呼べないわよ」
「大丈夫です。わたし、彼氏さんはいないから問題なしです」

さらっと、笑顔で答える。
ナーシェにしてみれば、物のたとえで言ったつもりなのだが……

(そういえば、この子、天然が入っていたんだっけ)

リムカには、遠まわしにものを言うだけじゃ、通じない。

「彼氏とか以前に、こんなに散らかってたら、みっともないでしょ」

そう言いながら、足元に落ちていた縄を手に取る。

「あ、それは……」
「え? っつ!?」

その縄に触れた瞬間、ビリっとした痺れが走った。
あわてて、その縄を放す。

「ナ、ナーシェ、大丈夫?」
「あ、うん……。ビリってしただけ。何、今の?」

痺れの走った手を擦りながら尋ねる。

「それは、スタン・ロープです」
「スタン・ロープ?」
「この前、探索した遺跡で見つけた物なんだけど。人の肌に触れると、電撃を発生させる魔法の縄なんです」

リムカは手袋をして、スタン・ロープを持ち、机の上に置く。
直接、肌に触れなければ、電撃は発生しないようだ。

「人の魔力か何かに反応して、電撃を発生させるみたいなんだけど、詳しい事は調査中です」
「あ、あのねえ。そんな危ない物、床を置いとかないでよ」
「あ、うん……。ごめんなさい。ちょっと不注意でした」

このスタン・ロープ。電撃を発生させるといっても、その威力は決して高くない。
電撃はかなり痛いが、殺傷力はないため、そこいら辺に置いてしまったのだ。
因みにリムカも一度、スタン・ロープの洗礼を受けてる。

「まさか、他にも危険な物とかないでしょうねぇ」

注意深く床に散らばっている品々を見る。

「大丈夫です。危険な物は、研究室の方に置いてあるから」

学院に所属する賢者であるリムカは、自室とは別に研究用の部屋が与えられている。
そこには、研究用の古代のマジックアイテムが厳重に保管されている。
その中には、麻痺の視線を放つ人形。モンスターを呼び寄せるお香。
果ては、巨大化して、触手をうねらせながら、襲い掛かってくる魔法像といった危険なアイテムも含まれている。
さすがに魔法像は、危険すぎるので、近々別室に保管・封印されるという話だが。





「ところで、また夜更かししてたみたいだけど、今度は、何を調べてたの?」

ナーシェは、空いていた椅子に座って、尋ねる。

「うん。ナーシェは、淑女の道っていう地下遺跡は知ってる?」
「淑女の道? ……いや、知らないね。有名なの?」
「うーん、有名かどうかはわからないけど、学院の中では有名かな」

そう言ってリムカは、淑女の道について、簡単に説明を始める。

淑女の道とは、学院都市ウィーノルから、まる一日ほど歩いた場所にある古代の地下迷宮の名称で、
三十年位前に調査発掘されており、その際、罠や凶悪モンスターは排除されているという。

「つまり、枯れた遺跡ってわけね」

枯れた遺跡とは、すでに発掘しつくされた、財宝も何もない遺跡のことをいう。

「うん。だから、迷宮探索の実践経験を積む場所としては、最適なの」

探索し尽くされた遺跡や迷宮には、時折、迷宮周辺に生息するモンスターが迷宮の中に入り込む事がある。
淑女の道と呼ばれる迷宮周辺のモンスターは、それほど凶暴ではなく、新米冒険者でも十分対処できるレベルだという。
そのため、迷宮には、学院で魔法を学ぶ学生魔術師や僧侶達が、迷宮探索の実践の場としてよく訪れる。
因みに、ウィーノルの周辺には、そういった遺跡や迷宮が、他にも何箇所かあるという。

「学院の人間も面白い事を考えるわね。枯れた遺跡を実践体験の場にするなんて」
「うん。わたしも、四年前にお友達と一緒に行ったけど、色々とあったなぁ……」

四年前、賢者の学院の学生として、賢者の勉強をしていた。
リムカも、実践体験のため、学友達と共に探索しつくされた遺跡や迷宮等に行ったものだ。
因みに学友といっても、皆リムカより何歳も年上の少年少女達だったりするが。

「それで、その遺跡がいったいどうしたって言うの?」

懐かしい思い出に浸りそうになる少女に問いかける。

「あ、うん。えーと、実は、あの遺跡には、隠された階層が有るみたいなんです」
「隠された階層が? もしそれが本当なら、大発見になるわね」
「うん。今までわからなかった謎も解けるかもしれないしね」

「淑女の道」と呼ばれる遺跡については、調査発掘し尽されてなお、いくつか不明な点が残っていた。

その一つが、遺跡の名前の由縁である。
どうやら大昔、女魔術師達がよく利用していたらしいのだが、彼女達が、何故に淑女の道を利用していたのかは不明だ。
女魔術師達が迷宮に入って、何をしていたのかも分かっていない。

大昔の女魔術師達は、淑女の道に入って、何をしていたのか?
気になったリムカは、三十年前の調査記録を見ながら、様々な文献を頼りに遺跡の再調査を始めた。
調べていく内に、淑女の道と呼ばれる遺跡には、隠された階層が存在する可能性が出てきたのだ。

「この隠された階層を見つけることが出来れば、その謎も解けると思うの」

そう言って、机の上に置いてあるノートをナーシェに見せる。
それには、迷宮の地図の写しや何かの図形、難しい計算式などが、ぎっしりと書き込まれていた。

おそらく見る人が見れば、書かれている内容の凄さが分かるのだろうが
魔術や学問とは無縁なナーシェには、理解不能な内容だった。
そんなナーシェに気を遣ったのか、ノートに書かれている意味を説明し始める。

「これはですね。過去の調査記録を元に、同時期に作られた別の迷宮と比較しながら、
 迷宮の設計思想を推測して、当時の社会情勢や建築様式に理論計算等の補正を加えながら、
 導き出されたものです。まずこの迷宮は、今から約五百年前に滅んだ…」
「ストップ! ストップ!!」

リムカが、調べた内容の説明に入ったのに気付いて、慌てて止めた。
普段はそんな事ないのだが、こういう話になると、リムカは何かに取り付かれたように、ぺらぺらと長話を始める。
そういった分野の人間ならば、大変興味深い話なのかもしれないが、素人にとっては苦痛でしかない。
以前、某古代遺跡の説明をした際、リムカは半日以上しゃべり続けたが、
その話の大半が、一般人には理解不能な高度な内容だった。

「要点だけ話そう。隠された階層があるのを突き止めて、その確証もあるって事でいいのよね?」
「はい。わたしの推論が間違っていなければだけど……。詳しい事は、現地調査をしてみないとわからないかな」
「なるほどね……。その調査、あたしも手伝うよ」

大事な妹分の晴れ舞台。それを手伝わない理由はない。

「うん。ナーシェなら、そう言ってくれると思ったよ」

リムカは、ナーシェの申し出を心から喜ぶ。
ナーシェが手伝ってくれる事も嬉しかったが、それ以上にいっしょに冒険できる事が嬉しいのだ。

「だけど、迷宮探索となると、あたし達二人だけじゃ心もとないね」
「うん。だからキリークさんとレーヴさんに声をかけるつもりです」

キリークとレーヴは、リムカの冒険者仲間だ。
ナーシェを加えた四人で、ウィーノルを中心に数々の冒険をしてきた。

「それがいいわね。あの二人なら、いくら報酬を安くしても心が痛まないしね」

今回の再調査は、リムカ個人が行っているものであり、その費用は、全額リムカが負担している。
当然の事ながら、調査に同行する冒険者の報酬も、リムカが支払うのだ。

リムカは、賢者の学院に所属しているので、研究費などの資金は出るが、
結果を出さなければ満足な額は支給されない。
研究には金が掛かるので、冒険者の雇用に金を掛け過ぎる訳にもいかないし、
万が一、今回の再調査が失敗に終われば、金銭的な面から、今後の研究や生活にも支障が出るだろう。
まあ、そうなっても、冒険の依頼を受けて、稼げばいいだけの話であるが。

ただリムカは、研究のためならば、いくらでも金を浪費し、私生活費を切り詰めてしまうという悪い癖がある。
この間も研究ばかりに金を使い、三食を雑草――食べられる草――で凌いでいた。

祖父であり、賢者の学院の重要なポストについているストラーに頼るという手もあっただろうが
「公私混同は、よくありません」と言って、ストラーの援助も断っていたという。

本人も承知の上だとはいえ、年頃の女の子が、ひもじさを我慢しながら、研究に打ち込む姿は、あまりにも惨めに思えた。
それならば、キリークやレーヴがひもじい思いをする方が、まだマシだろうとナーシェは考える。
そういう訳で、自分を含めて、キリークとレーヴへ支払う報酬は相場の十分の一で良いと、持ちかけるが

「それは、さすがに悪いですよ」

リムカは苦笑しながら、ナーシェの提案を断る。
いくら友人だからといって、それに甘えるのは、良くない事だと思うから。

「いいのよ。レーヴは、かなり溜め込んでるみたいだし、キリークの奴は、金が入っても、くだらない事にしか使わないのが、
 目に見えてる。あたしも、依頼終えたばかりだから、当分お金には困らないしね」

それに、ナーシェにとっては、リムカは妹同然のようなものだ。
妹を手伝うのだから、金を取る必要などない。

「それでも駄目です。労働の対価はきちんと支払わなきゃいけないんです」

だが、リムカは、ナーシェの提案を改めて断る。
世間に疎く、人の言う事を簡単に信じてしまうリムカだが、通すべき筋は、しっかりと通す。
おまけに頑固なところもある。ナーシェは説得は無駄だろうと諦めた。

グー

ナーシェのお腹が鳴った。

「あはは。実は朝食、まだなんだ」

ナーシェは照れ笑いを浮かべる。

「それなら、学院食堂で食べてくるといいよ。一般人も利用できるから、問題なしです」
「それじゃ、そうしよっか」

食堂へ向かうべく、立ち上がる。

「うん。いってらっしゃい」

笑顔でナーシェを見送るリムカ。

「って、あんたは食べに行かないの?」
「あ、わたしは、えと、部屋で食べるから」

何か誤魔かすようにいう。
ナーシェは、リムカの顔をジーっと見つめる。

「……あんた、今お金、いくら持ってる?」
「え? あ、えと……。だ、大丈夫です。依頼金は、ちゃんと払えるから」

嘘をつけない性格だなと、ナーシェは苦笑する。
また研究にお金をつぎ込みすぎて、生活費がピンチなのだろう。
しかたのない子だ。

「今日はあたしが奢るから、いっしょに食べよ」
「え? で、でも……」
「子供が遠慮なんかしないの」

リムカの頭を撫でる。

「わたし、子供じゃないです」

頬を膨らませ、不満を表す。
本人は、凄んでいるつもりだろうが、残念ながら、全然怖くない。
むしろ、可愛らしいくらいだ。

「はいはい。ま、姉貴分に花を持たせると思って、素直に奢られなさいって」

笑いながら、リムカの背中に手を回して、半ば強引に部屋の外へと連れ出した。





リムカは、奢られる事に最後までごねたが、最後には、ナーシェに言葉巧みに説得された。
ただ、身支度をするという事で、一度、部屋に戻っていった。
しばらくして、ツインテールに青い帽子、青いケープを羽織った、いつものリムカが出てくる。

「身だしなみに気を遣うなんて、やっぱりあんたも女の子って事かぁ」
「よくわからないけど、身だしなみを整えるのは、当たり前の事だと思うよ」

そんなやり取りをしながら、二人は学院の食堂へやって来た。

「朝食時だって言うのに、随分、すいてるのね」
「今日は休校日だから、学生の皆さんは、まだお部屋にいるんですよ」

賢者の学院に通う学生の大半は、ウィーノル都市外の周辺諸国からの留学生だ。
彼らは、学院内にある寮に住んでいる。

二人は、カウンターまで行き、食堂のおばちゃんに朝食を注文する。
しばらくして、注文した料理を受け取り、適当な席に着く。

「なんだか、ちょっと贅沢な気分です」

テーブルに並んだ料理を前に、リムカが呟く。
一口サイズの小さなパンに、具がほとんど入っていないスープ。
小皿に盛られたサラダと、1切れのハム。

「まあ、たしかに贅沢かもしれないけど……」

ナーシェが苦笑する。冒険中、よく口にする携帯食に比べれば、贅沢だが
一般市民にとっては、ごくごく当たり前のメニューだ。
いや、一般市民の方が、もう少しまともな朝食を取っているだろう。
少なくとも、比較的豊かなウィーノルでは。

「あんたの食生活がどうなってるのか、不安になってきたわ……」

何せ、そこいらに生えている雑草――くどいようだが、食べられる草――を平気で食べる娘だ。
そういえば、この前いっしょに冒険に出た時、襲ってきたジャイアント・スラッグを保存食にするとか言っていた。

(一度、ストラーさんと、じっくり話し合った方がいいかもしれない)

リムカの祖父、大賢者ストラー・スターロート。
学院の重要なポストにつき、毎日、山のような仕事に追われているという。
そのため、孫であるリムカと接する時間も、ほとんど取れないという。
果たして、自分と話をする機会はあるだろうか?

「? どうしたんですか?」
「なんでもない。それより、早く食べちゃいましょうか」
「うん」





学院の食堂で、朝食を取った二人は、冒険者仲間であるキリークとレーヴを誘うため、町へ出た。
とはいったものの、二人がどこにいるのかは、分からない。
無難な所で、まずは二人が根城にしている酒場、通称ロンジの店に行く事にした。

その道中、リムカは、行く先々で、町の人々から声をかけられていた。

「あいかわらず、人気あるわね」

そんな様子を見て、ナーシェは、誰に言うわけでもなく呟く。
リムカには、人を引き付ける不思議な魅力がある。
献身的な性格も相まって、町の人々から愛されているのだ。

「それにしても。いつ来ても、この町は平和でいいわねぇ」
「はい。ウィーノルの人達は、みんないい人達ですから」

このウィーノルは、他の都市に比べて、格段に治安が良い。
警察機関の能力が高いだけではなく、町の住人の道徳意識も高いのだ。

(学院の連中も善人だらけだし、こんな場所で生まれ育っちゃ、お人よしすぎにもなるわね)

そう思いながら、隣を歩くリムカを改めて見る。

リムカ・スターロートといえば、このウィーノルでは知らぬ者のいない天才少女である。
雑学から冒険心得などの知識を有し、それを応用する知恵を兼ね備えている。
世間知らずなのと、簡単に人を信じてしまうお人よしさが、玉に瑕だが。

ナーシェが、この少女と知り合って、もう二年になる。
リムカと出会ったのは、ある遺跡の探索の依頼だった。
新たに発見された遺跡の調査に行くので、護衛をしてもらいたいという内容の依頼。
その依頼主がリムカであった。

正直、あの頃のリムカは危なっかしいところがあった。
ダンジョン探索の心得は学んでいたらしく、その点については問題はなかったが
それ以外のところは楽天的で、どこかのんびりした雰囲気もあって、目が離せなかった。
そうやってリムカの面倒を見ている内に、いつしか親しくなり、今では掛け替えのない親友…妹である。





ウィーノルの表街道から少し離れた場所にある酒場、通称、ロンジの店。
店主のロンジは、酒場を経営する側、冒険者の斡旋もやっており、冒険者の店としても人々に知られている。
店の主であるロンジ特性の酒のつまみが美味いと、評判である。

店に入った二人は、店主であるロンジに挨拶をし、店の中を一通り見回す。
そして店の隅っこで、一人酒の飲んでいるレーヴを見つけ、彼の席へと足を運ぶ。

「レーヴさん、こんにちわ」

自分を呼ぶ声を受け、銀髪の青年…レーヴは、静かに振り向く。

その男は、常に鋭く冷たい氷の刃のような雰囲気を放っていた。
腰には、漆黒と鮮血の色で彩られた大剣――魔剣――を挿している。
普通の人間なら、恐れて近づかないだろう。

ナーシェも、彼とは何度か冒険をした間柄で、他の冒険者と比べると、付き合いも深い方だが、
今でも彼を見ると、一瞬恐怖が全身を駆け巡る。

一方のリムカは、普段と変わらずにレーヴに声をかける。
ナーシェや他の者達と違って、まったく恐怖を感じていない。
器が大きいのか、ただ単に鈍いだけなのか。

「…リムカか」

レーヴは、表情一つ変えずに少女の名を呟いた。
何故かリムカと接する時だけは、雰囲気が和らぐような感じがする。
リムカの鈍感さに毒気抜かれているためか、それともリムカに特別な感情があるのかはわからないが。

「何か用か?」
「はい。実は…」

リムカは、遺跡の再調査の件について話し、レーヴにも参加して欲しい旨を伝える。だが

「悪いが、気分じゃない」

素っ気ない声で、誘いを断る。
リムカは残念そうな表情を浮かべるが、すぐにいつもの笑顔に戻る。
残念ではあるが、レーヴにも都合があるのだから、仕方ない。

「レーヴ、キリークの奴は知らない?」

今度はナーシェが声をかけた。
レーヴとキリークは、よくいっしょに酒を飲んでいる。
キリークは、明るく楽天的な男で、レーヴとは正反対な性格をしているのだが
何故か馬が合っているのだ。だから、キリークの居場所を知っているかもしれない。

「知らんな」

だが、返ってきた答えは素っ気なかった。

「だが、この町の中にはいる筈だ。しばらくウィーノルで、羽を休めると言っていた」
「町の中にいる筈だって言われてもねぇ…」

ウィーノルの町は、かなり広い。その中から探すとなると骨だろう。

「あいつ、ちょくちょくと、ねぐらを変えてるし、多分ロンジに聞いても判らないだろうね。どうする?」

そう言って、リムカに判断を委ねる。

「あ、それなら問題なしです」
「え?」
「前に、キリークさんに言われたんです。もし暇ならここに顔を出しなって」

そう言って、腰のポシェットから、紙切れを出す。
どうやら地図のようだ。

「ここへ行けば、多分、キリークさんに会えると思います。
 会えなくても、キリークさんがどこに居るのか、手がかりは掴めると思いますし」

たしかにリムカの言うとおりだ。
二人は、レーヴに挨拶を済ますと、さっそく地図の場所に向かった。





地図を頼りに、二人はウィーノルの路地裏を進む。
治安が良いため、路地裏だというのに、危険を感じることはない。
他の町だったら、不良やならず者の類に気をつけなければならない所だ。

「それにしても……。この地図に描かれている場所って、いったいどこなのかしらね?
 路地裏街みたいだけど」
「うーん。わたしもよくわかりません。実は、まだ一度も行った事がないんです」

教えてもらったのはいいが、暇な時は、ロンジの店や町の人々の仕事の手伝い等をしている。

「ただ、ここに行けば、色々と教えてくれるそうです」
「教えてくれる? 何を?」
「わかりません。だけど、良い事だそうです」
「良い事ねぇ……」

果てしなく怪しい文句だ。
まあ、キリークは盗賊だけど、決して悪人ではない。
正義感あふれる性格で、盗賊としては珍しい方だろう。
スケベで、リムカの前でも下ネタをかますところが、玉に瑕だが、
それさえ大目に見れば、頼りになるナイスガイだ。

「ま、そんなに心配する事もないか」

そうこうする内に目的の場所に到着した。
路地裏街の一角。少し寂れた感じの建物が立ち並ぶ中、その建物が建っている。
作りは、お世辞にも良いとはいえないが、悪くもない。
少しばかり、寂れた感じのある宿屋だ。

リムカは、初めて来た場所に好奇心で胸が高揚している。
一方ナーシェは、目的の建物を見て、ポカンと口を開けている。
そして、その表情は、徐々に怒りに満ちたものへた変わっていった。

二人の前に建っている宿屋は、娼婦宿…娼館だった。

「あの男、リムカに何を教えるつもりだったのよ!」

ナーシェは怒りを爆発させる。
前言撤回。あの男は、正義感はあふれるが、それ以上に助平のろくでなしだ。

リムカ「何を教えてくれるのかな?(ワクワク)」ナーシェ「あのスケベ盗賊、殺す!」

「ナーシェ、何を怒っているの? それより、中に入りろうよ」

そう言って、娼館に入ろうとするリムカ。

ちょっと待て。この娘には、娼館という看板の文字が目に入っていないのか?
いや、例え看板が目に入っていたとしても、娼館がどんなものなのか知らないのだろう。
魔法やモンスター、サバイバル等の知識はあるが、一般的な常識や知識は欠けている。
おまけに、恋もした事もなければ、性の知識もないお子様だ。
そのくせ、好奇心は旺盛とくる。

……危険だ。下手に娼館に入って、興味を持ったりしたら……。
最悪、純情で可愛い、あたしのリムカが、H大好きな娘になってしまう。
それだけは、回避しなければならない!
仮にH大好きな娘になるとしても、それは、あたし自身の手で…って、そうじゃない。

「と、とにかく、ちょっと待って! 中には、あたし一人で入るわ!」

慌てて、リムカの腕を掴んで引き止める。

「え? どうしてですか?」

「そ、それは……。ほ、ほら、もしかして、入れ違いで、キリークが出てくるかもしれないでしょ?」

不自然さを感じないでもないが、人を疑う事を知らないリムカは、素直に納得した。

「それじゃ、ちょっと待っててね」

そう言って、ナーシェは娼館へ入っていく。
しばらくして、娼館の中から若い男の悲鳴が聞こえてきたような気がした。





ロンジの店に戻ってきた二人は、店主のロンジに冒険者を紹介してもらう事にした。
ナーシェの話によると、キリークはどこかへ“逝った”らしく、しばらく戻って来ないという。
結局、遺跡には、他の冒険者を雇っていく事になったのだ。
事情を聞いたロンジは、店に登録している冒険者のリストをめくる。

「遺跡の再調査となると、探索力に長ける盗賊は必須だな」
「はい。わたしも探索力には、そこそこ自身はありますけど、隠された階層を探すとなると
 やっぱり、本業さんが一緒の方が頼もしいです」

魔術師や賢者は、探索術や罠を発見する術を心得ているが、やはり本職の盗賊には劣る。
リムカの言うとおり、未発見の階層を探すのだ、探索力は重要だ。

「フム。ちょうどいいのがいるぞ。まだ若い旅の盗賊の娘なんだが、迷宮探索の冒険も何度かこなしているそうだ」

「旅の盗賊さんですか?」
「ああ。ちょっと待ってろ。おーい、ミルセ!」
「呼んだー?」

客席の方から、身体にピッタリとあった革鎧を着た娘がやって来る。
リムカより年上で、ナーシェよりは年下だろうか。

「お前さん、路銀が心もとなくなって、仕事を探していたと言ってたな」
「ええ。あ、何かいい依頼が入ったの?」
「ああ。迷宮探索の依頼だ。こっちの二人と一緒に、とある迷宮に潜って欲しいんだ。
 詳しい内容や報酬の話は、依頼主である、このリムカの嬢ちゃんから聞いてくれ」

そういって、ロンジはミルセを紹介した。

「あたしは、ミルセ。よろしくね」
「リムカ・スターロートです。よろしくです」

後に、この出会いが、リムカの運命を大きく狂わせる…かもしれない事は、まだ誰も知らない…。


続く…?





 登場人物設定と補足説明

・リムカ・スターロート
このSSでは13歳な、ロウ賢者の少女。
若干12歳で賢者の学院を卒業した天才少女で、学院に所属する賢者として、古代文明の研究を行っている。
好奇心が強く、研究の傍ら、冒険者の仕事等をしている。
平和な町で生まれ育ったためか、悪党やモンスターであれ、無用な殺傷は好まず、 戦闘時は、殺傷力の低い初級攻撃魔法を使用する。
リムカにやられた悪党は、皆生き残っており、その大半は、今でもリムカを恨み続け、復讐の機会を狙っている。
滅多な事では怒らないが、怒ると遠慮なしに上級攻撃魔法をぶっ放す。
冒険者仲間であるナーシェを実の姉のように慕っている。
律儀な性格で、悪党に対しても礼儀正しく接するが、ナーシェと祖父に対してだけは、時折砕けた物言いをする。

・ナーシェ
限りなくロウに近いニュートラルな軽戦士。
18歳の処女。リムカの姉貴分で、頼れるお姉さん。
ある事件で家族を失っており、天涯孤独の身。
リムカを自分の妹のように可愛がっており、リムカに危害を加える奴は、絶対に許さない。
最近、ちょっとアブナイ方向に目覚めつつあるとかないとか。
因みにリムカが龍神の迷宮へ旅立つ際、彼女も誘うつもりだったが、当時ナーシェは依頼で、遠くの地に行ってしまっていた。

・レーヴ
通称『銀髪の魔剣士』ニュートラル魔法戦士。
実力レベルは不明だが、軽く40以上はありそう。外法持ちの恐るべき魔剣士。
近づく者達、全てに恐怖を与える冷たいオーラを放っている。
気が向いた時にしか仕事をしない。
その昔、たった一人で一個師団を全滅させ、『銀髪の悪魔』として恐れられていた。
自分を恐れないリムカにどこか惹かれている…らしい。

・キリーク
通称『助平盗賊』
ロウ盗賊。実力レベルは軽く20はあるのは確か。
得意技は、魔法のような手品と相手に気付かれずに下着だけを掏り取る、下着掏りの技。
大の女好きで、幅広い層の女性に食らいつく。
娼館で、リムカにあんな事やこんな事を教えて、あわよくば、ベットを供にしようと企んでいた。
Hは合意の上でがモットウで、たとえ、女湯を覗いたり、いきなり女性に抱きついたり、
下着を漁ったり、掏り取ったりしても、無理やり陵辱なんて真似は絶対にしない紳士。
レーヴとは馬が合っている。獲物はボウガン。
書いていたら、某もっこり好きな都会ハンターになってしまったため未登場。

・ミルセ
ニュートラル盗賊。
16歳の処女。現金な女盗賊。ワイズマン討伐に参加するために旅をしていた。
“この出会いが、後にリムカの運命を大きく狂わせる(かもしれない)とは、まだ誰も知らない…。”
と大げさに書いたが、実際はリムカにクルルミクのことを教えただけだったりする。
龍神の迷宮に眠るお宝を目当てに、クルルミク王国へ向かって旅をしていたが
途中で路銀がつき、ウィーノルで冒険者をしていた。
後にクルルミクの龍神の迷宮に挑むも、ならず者たちに襲われ、激しい陵辱を受けて性奴となる。
現在は、バロッグの知り合いの最低売春宿に売り払われ、凌辱の日々を送っている、悲惨な娘。

・ストラー・スターロート
リムカの祖父。ロウ賢者。
孫には甘いが、公私混同はしない。公明正大なお爺ちゃん。
若い頃は、色んな所を冒険してきたらしい。
年老いてしまっているが、一対一の魔法勝負なら誰にも負けることはない実力を持つ。
未登場。


・淑女の道
「リムカSS?〜Reason why a man came here〜」で、
バロッグ達が、女学生達を捕らえていたあの迷宮。
淑女の道という名前のためか、男学生達でこの迷宮へやってくる者は、ほとんどいない。

・学院都市ウィーノル
中立都市。治安が良い事で有名。
都市の治安維持は、賢者の学院が担当しており、魔法を使った治安維持能力は強力。
ウィーノル周辺には、古代の遺跡や迷宮などが数多く残っているため、多くの冒険者がいる。

・賢者の学院
学院都市ウィーノルの中心にある魔法学校。
魔術師、僧侶、賢者の育成を行っている。
入学の際には、心の審判という善悪の判定試験のようなものが行われ
これに引っかかると、入学できない。そのため、学院の人間は基本的に善人。
地下には、禁忌とされる呪文書や魔装具等が保管・封印されており
それを守護するため、情報部などの秘密の戦力を有している。





 おまけ。リムカとバロッグ、ここ半年間の歩み。

半年前:バロッグ率いる人攫い集団「女狩り」、リムカ達を襲撃するも、反撃に遭い敗退。
     復讐をしようと計画するが、賢者の学院の襲撃に遭い「女狩り」壊滅。
     バロッグは、命からがら脱出する。
     一方、ミルセは路銀が出来たため、クルルミクへ向け旅立つ。
     別れ際、リムカにクルルミク王国の事を教える。

四ヶ月前:バロッグ。二ヶ月間の逃亡生活の末、クルルミク王国へ辿り着く。
      奴隷商人達とのコネを手土産にハイウェイマンズギルドに入る。

三ヶ月前:リムカ、クルルミク王国行きを決意。
      ロンジの紹介で、クルルミク方面に向かう隊商に伴ってウィーノルを発つ。
      道中、様々な体験をする事になる。

一ヶ月前:ミルセ、クルルミク王国へ到着。ワイズマン討伐に参加。到着まで五ヶ月も掛かったのは
      途中、何度も路銀が尽き、その度、働いて稼いでいたから。
      討伐隊参加から一週間後、バロッグ達に襲撃され、徹底的に凌辱された後
      バロッグの知り合いの最低宿に売り飛ばされる。
      その際、バロッグが「リムカ、いつか貴様も同じ所に放り込んでやるからな!」と
      ほざいたとか、ほざかなかったとか。

三日前:リムカ、14歳の誕生日を迎える。隊商のみんなから祝福される。
     仲良くなった傭兵さんから、誕生日プレゼントとして、木彫りの熊さんを貰ったとか。

二日前:リムカ、隊商と別れる。クルルミクの町までは、徒歩で移動。

現在(三月一日):ドワーフの酒場亭に到着。ワイズナー討伐隊に登録し
           ウィノナ、セララ、傭兵らと、パーティを結成する。