迷宮の壁にポスターが貼られている ハイウェイマンズギルドのならず者達が貼った悪趣味なポスター いつもの私なら怒りと恥ずかしさが入り混じった複雑な感情を抱いていただろう だけど今の私達は目の前のポスターを見て愕然としていた ポスターに描かれていたのは・・・フェリルさんだった 私と一緒のパーティーだった時明るくムードメイカーだった彼女 それが今私達の目の前であまりにも残酷な姿を晒されている そしてポスターに描かれた「SOLD OUT」の文字は あまりにも残酷すぎる現実を突きつけていた… 「ふぇ…りる……」 タンさんが震えた声で親友の名前を呟く 彼女は目の前の光景を信じたくないのだろう ―フェリルさんと別れた時の事が頭を駆け巡る 自力で脱出して助かっていたらしいフェリルさんと酒場で再開した時 彼女からは出会ったときに見せてくれた笑顔は消えていた 仲良しだった筈のクリオさんに自分達を見逃す為に売り渡され、 私もそれを止めなかったから私達の事を信じられなくなったのだろう フェリルさんを助けに行く為に同行してくれた傭兵の人達が 別れ際にきっと仲直りできるだろうと言ってくれたけど 結局酒場で別れてから一度も会うことが出来なかった… ならず者達に監禁された時の恐怖が蘇る 私はこの鎧のお陰でなんとか脱がされずに済み 他の冒険者の方達が助けてくれた為無事に戻れたけれど あのまま助けが来なかったら? 助けられてもそのまま置いて行かれたら? 捕まっていた時フェリルさんがどんな気持ちだったのかが分かった あの程度のならず者の数だったらフェリルさんを庇いながらでも 撃退できていたかもしれなかったのに… クリオさんの売渡を止めれなかったから彼女にあんな厭な思いをさせてしまった あの時フェリルさんを守れていたら彼女はこんな事にはならなかったのでは? そうでなくてもあのまま一度戻らずにすぐにでも助け出せていれば… どうしてあの時私は― ―フェリルさん、ごめんなさい… 心の中でそう呟く… 「嘘…だよ……こんなの…」 タンさんがフェリルさんの身に何が起こったのかを少しずつ理解し始めたようだ 「……タン、気をしっかり持って」 キルケーさんがタンさんをそっと気遣う。 「……だ、大丈夫。進もう? こんなの、嘘だよ。  タンは、タンは信じな……ぐすっ…うっく…  ご、ごめんね……大丈夫…進、もう……」 なんとか気丈に振る舞おうとするタンさん。 本当なら今すぐにでもフェリルさんを探しに行きたい筈なのに… 彼女にかける言葉が見つからなかった… 一緒にフェリルさんを探すと申し出をしたかったけど まだタンさんは信じていないようだからその言葉を言うのは憚られた それにフェリルさんが何処に売られたかの手掛かりも存在しないし… 「…そうですね、今は進みましょう。」 いつまでも立ち止まっている訳にもいかないのでそう皆に告げる 今は進もう。 ワイズマンを討伐して魔物たちも消えればギルドを壊滅に追い込んで 性奴にされた人達の売買ルートなどを掴めるかもしれない。 全てが終わった時私もフェリルさんを探すのを手伝おう。 それが今彼女のために私達が出来る事だと思う。 …例えどんな結末が待ち受けていようとも。