−捕らわれしもの−

 3月27日
「マスター、こちらにセレニウスさんは戻っていませんか?」
勢いこんでそう尋ねたのは、フォルテパーティーのリーダー、フォルテだ。
ここは冒険者の酒場の一角、体を麻痺させられほうほうの体で帰ってきたばかりなのに必死である。
それも当然、自分のメンバーの安否を気遣うのは当たり前である…ましてや自分のミスなら…な。
え?お前は何者かって?オレはオニヘイさんのところで雇って貰ってるしがないならず者さ。
オニヘイさんにフォルテパーティー…主にコトネのだが…の監視をするように言われているのさ。
話を戻すと、その致命的ミスをやっちまったのは数日目のことさ…



「はぁ、参っちゃったなぁ、ホント」
コトネが溜息をつきつつ言う。
ここは地下六階のダークゾーンだ。
真っ暗闇に閉ざされた空間では進軍も難しいし、トラップを見つけるのも至難の業だ。
しかも…リーダーであり探索や罠の発見を努めていたフォルテの装備が肌着のみという状況だ。
実際メンバーのコトネが退却をするべきだと主張している。
しかしフォルテは、
「幸いみなさん無事なのですからここはもうしばらくこの階層を調査するべきではないでしょうか?」
と主張し、コトネもしぶしぶ了承したようだ…


しかしこれが失敗だった。闇に慣れてないメンバーは罠がどこにあるかわからない。
案の定トラップを踏み、更に運の悪いことに処女限定のトラップによって全員が麻痺してしまう。
麻痺してるところに凶悪なモンスターが襲いかかる、これはからくも逃げれたが、
トラップが発動したことを察知したギルドの人間に襲いかかられ、
惨状を見たコトネとセレニウスは自らを囮にして他のメンバーを逃がしたのである。
幸い(オニヘイさんにとっては不幸なことに)コトネはならず者を蹴散らしたが、
殿軍を引き受けたセレニウスは逃げ切れずに捕まってしまった。



と、ここまでが致命的なミスさ。
まったくあの慎重なリーダーらしくない決断のせいで仲間が捕まってしまったのさ。
…まったく一体何を焦ってるんだろうな?ほんとらしくないぜ…
冒険者の性奴化報告が聞こえてくる。
もしこの中にセレニウスがいたらあの賢者はどんな顔がするのだろうか?
そして…あの賢者が堕ちた時どんな顔をするのだろうか…

そして彼女たちは龍神の迷宮へ向かう…新たな獲物となるために…


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−失われしもの−に続く
フォルテ応援団