Baby, please go home!! 〜If...3/29  その時、自分が焦りのようなものを感じていると思った・・・。    私達3人は龍神の迷宮の地下5階を無難に引き返して・・・いるはずだった。 「ねぇリーダーッ!戻るんなら違うルートなんじゃないの・・・ッ?」  仲間の一人――アクアマリナ――は先行するリーダーの私――サフィアナ――に言った、  急ぎながらだったので少し強めの口調のようだった。 「・・・・・・迂回する。」  引き返すのならばもっと早く戻れるルートがあったはずなのだが何かに突き動かされるようにそれとは違う・・・  別なルートへと足早に歩を進める。 「そんな・・・ッ!?急いで戻らないと・・・ッ!」  アクアマリナが驚くのも無理はない、というのも仲間の一人――コリーナ――が昨日ならず者に捕らわれた・・・。  この階層のモンスターから逃げ延びる際のどさくさに紛れてでいつものことながら・・・卑怯な奴等だ。  いつものことながらだが、この日ばかりは何かいつもと様子が違う気がしてならなかった。 「それに・・・・・・アメジスタの手当てもしないと・・・ッ!」  もう一人――アメジスタ――も昨日のモンスターから逃げ延びる際に深手を負っているので心配ではあった。  実際にアメジスタを抱えているアクアマリナとしても一刻も早く帰還した後に体勢を整えてコリーナを  救出に向かうということに異論はなかった。  ただ、ここは迂回するべきだという自分の直感はどうしても曲げられなかった。  そしてしばらくしてある扉の前まで到着した、それはならず者達の監禁玄室であるようだった。 「ちょ・・・ッ、リーダーァッ?!?」  アクアマリナの制止を無視して私は部屋の扉を開けるとその中ではむせ返る臭いと共に大量のならず者が、  3人の女冒険者を陵辱しようとしていた。その中に―――仲間のコリーナを発見した!  ならず者達は私達に気がつくと血走った目で襲い掛かってきた!! 「アクアマリナ、アメジスタを頼む。私への援護は力の無駄だ・・・!」  過去の自分の苦い思い出と捕らえられている仲間を見て、いつものような冷静さを保つことは不可能だった。  怒りで我を見失う前に一言そう伝えると剣を抜き、襲い掛かるならず者達の中へと突っ込んだ。  初撃で2,3人を、そこからは隙間を縫うようにして刃を振るっていく。  しばらく何十人かのならず者を屠り去ったが、あるところで剣の切れ味が落ちてか剣がならず者の体から抜けなくなった。 「行け!コリーナと二人、必ず戻る!」  咄嗟にだがアクアマリナに逃げるよう指示を出し、落ちていたならず者の武器を拾うと  さらに数人を倒し逃げる時間を稼ぐ。 「くっ、そんな、諦めないでよリーダー!まだ…ッ!!」 「私が、私が足手まといになるなんて…」  だがどこから沸いて出てくるのか、一向に減らないならず者を前にしてはこれ以上の戦闘は危険だった。  アメジスタを連れアクアマリナが玄室から脱出するのを見届けるまでは何とか持ちこたえた・・・しかし、  慣れない武器で苦戦しているところを大勢のならず者に半ば押しつぶされるような形で捕縛された。 (まったく・・・私らしくないこともあるものだな・・・)  流石にこの大量のならず者に捕縛されて自分でも諦めのようなものか、  二人が無事に逃げるのを見届けて安心してか、自嘲気味に思った。  だが数刻の後、別な冒険者達の手によって奇跡的に・・・捕らわれていた4人は救出されることになった。  ・  ・  ・  ・ 「ん……すまない、その…不覚だった。」  助けてくれた彼女達に礼を言うとコリーナの傍へと駆け寄った、モンスターとの戦いで負傷してあまり動けないようだった。 「あっちゃー・・・カッコわりーとこ見られちったな・・・。」  何とか歩けるようだったので肩を貸すと傷も痛むのだろうにいつもと変わらない笑顔をみせた。  さらに助けてくれた彼女達一行は他の捕縛者の応急手当てと街まで一緒に同行してくれるとのことだったので  大変ありがたい話だった。 「でもさー・・・よくここにいるって分かった・・・?」 「ん・・・たまたま迂回路を取ったら迷い込んだだけ・・・だ。」  正直に話したつもりだったがコリーナは信じていないようだった。 「それに・・・いつもの一言が無かったからな・・・。」  ・  ・  ・  ・  それからしばらくはなんだかあまり話す気にはなれなかった。  元々自分が無口だということもあるがやはり自分が自分らしくない感じがして、というのもあった。  そんな中、一日かけてやっと迷宮の外へと出ることができた。 「・・・こういう時に言うのもなんだが・・・・・・」 「ん・・・?」  同行してくれた冒険者達と別れ酒場へと向かう途中で私はコリーナに話しかけた。 「こうやってゆっくりと帰るのも、悪くないもんだな・・・・・・。」  なんとなくこのパーティーを組んで、少し自分が変わったような、そんな気がした。   END...?  :  :  :  : 「あとがき」  年単位で久しぶりの文章作品を書きました、正直かなり自信ないですが。(笑)  この日のある種地味だけどドラマティックな展開に思わず書き始めましたが  なかなか形になるまで時間がかかる・・・他のパーティーの方々をあえてぼかした表現にしたから、  ということもありましたが・・・正直そこまでやるともっと時間がかかりそうで恐いというのもあります。(笑)  ご意見、ご感想は usnfws@hotmail.com まで。  原曲同様、長いのをご希望は同様にご一報を。(謎爆)それでは、До свидания!