それは敵意を持っていた。
 だから殺した。
 紅蓮の中で、踊るようにして焼けていく。
 果てに残るのは消し炭と静寂。

「お前は人を殺すのに、燃やす必要があると思ってないか?」

 ヤカツはそう云う。
 どういう事だ、と訊く前に私は宙を舞っていた。

「魔術師が、魔法を使って戦わなきゃいけないなんてルールは無い。つまり」

 地面の方向を把握。
 それを見ながら両手をつき、次には足。
 膝を曲げて勢いを多少殺す。
 そしてそのまま残った勢いでころころと転がっていき立ち上がる。

「……そんな猫みたいに受け身を取られたら、使えないが。まあいい。転ばして首を踏んづけてやるだけで、人間は容易く死ぬ。覚えておけ」

 確かに魔法が使えず、武器も無い状況ならそれが一番いいだろう。
 だが、そもそもそんな状況に陥るような真似はするべきじゃない。
 まず使わないだろうな、と思いながら軽く頷く。

「それにしても、その受け身はなかなかだ。誰から習った?」
「猫から」

 答えると、ヤカツは声を上げて笑った。