いつもの酒場、「ドワーフの酒蔵亭」。 マウリーがいつもの如くカレーを食べ終えているとアカリが何かを悩んでいた。 「どうしたんですの?」 「あ、イエロー」 答えるアカリ。 「こないだ戦況悪化でシュリさんが抜けたでしょ?で、リオさんが入ったんだけど・・・  あの人はブルーってイメージじゃないし、レッドは譲れないし・・・色はどうしたものかなぁって思って」 乾いた笑いを浮かべるマウリー。 「いっそ、桃にしようかなぁ・・・で、浮いちゃったブルーはキルケーさんかな?  ・・・でもまだ正式なメンバーじゃないしなぁ・・・」 「あら、噂をすれば・・・」 そう言っていたアカリ達の目の前を横切るキルケーであったが、様子がおかしい。 「・・・なんか元気が無いですわね?」 と言うマウリーの脇から黒曜がつぶやく。 「まだ気にしているのか・・・?」 「なにかあったの?」 「まぁ、な・・・こないだ拙者が罠の発見が遅れてキルケー殿が引っ掛ってな」 「それを気にしている、と?」 「本当は罠を見抜けなかった拙者の責任なのだが・・・」 覆面で隠れて良くは見えないが、黒曜はバツの悪そうな顔をしてそう言った。 「私、様子を見てきますわ」 そう言って酒場を後にするマウリーを見送る二人であった。 当てもなくブラついていたキルケーは気付くと裏路地に入り込んでいた。 ふと、背後から人の気配が。 「誰!?・・・カレーの人か」 コケそうになるマウリー。 「何か用かしら?」 「ん・・・同じ魔法戦士として気になったから・・・ではダメかしら?」 「気を使わせてゴメンね。・・・でも、ブラついてスッキリしたから。  疲れてると、気持ちも弱くなるみたいね」 軽く微笑み返すキルケーとホッとため息をついたマウリー。 酒場戻ろうとした二人は数人の人影を見かける。 ブランバーとならず者達の様だ 「どれ、例のモノは手に入ったし、後はこれを使って迷宮の配管に細工をしてやれば・・・  女冒険者達など一網打尽だ!」 そう言って迷宮の方に向かうバランバー達。 「キルケーさん、アカリさん達に知らせてきてくださらない?」 そう言い残し、ブランバー達を追うマウリーであった。 迷宮に向かう途中にある森。 ブランバー達を追っていたマウリーは木々の間に姿を隠し、近づいていた。 そんな彼女は急激に異変に襲われた。 『なに?身体が・・・熱い・・・!』 「はうっ!」 たまらず声を上げてしまったマウリーはたちまちならず者に囲まれてしまう。 「もうネズミが掛かったか・・・これは女のみに効果のある強力な催淫アイテムでな、  これで迷宮の配管に細工をしてやれば女冒険者はみんな肉奴隷となるのだ!」 服を完全に剥ぎ取られたマウリー。ならず者が彼女を凌辱しようとしたその時! キン!! 一枚の手裏剣がブランバーが持っていた催淫アイテムを直撃し、アイテムは粉々に砕け散っていた。 「何者だ!?」 叫ぶブランバー。 すっと現れる影。 「可憐なる乙女の心と身体を踏みにじるなんて許せない!  竜神様に代わって、お仕置きよ!! 」 口上と共に颯爽と現れるアカリ達。 「ええい、今一歩の所で邪魔しおって!野郎共、かかれ!!」 怒り狂ったブランバーはならず者と共に襲い掛かってきた。 ・・・しかし、所詮はならず者。アカリ達の猛攻にあっさりとやられ、残るはブランバー一人となった。 「ここまでよ、観念なさい!」 そう叫ぶアカリに対してブランバーは 「こうなったら奥の手だ!!」 と、叫ぶなり、一本のキノコを口にすると、たちまち巨大化するのであった。 「巨大ブラ〜〜ンバ〜〜!!」 たちまち形勢は逆転。 巨大化して火を噴くブランバーにアカリ達は押される一方であった。 「なんとかしなきゃ、なんとか・・・」 アカリが巨大ブランバーの猛攻に辛うじて耐えていたその時、 キルケーは自らの眼帯を外していた。 「これでトドメだ!!」 巨大ブランバーが一際大きな炎を放とうとしたその時! ガキィィィン!! 一体の巨大な鉄の塊が立ちはだかっていた。 そう、キルケーのゴーレムである! キルケーは眼帯の下にあった目・・・魔眼でゴーレムを見やり、 「ゴーレム!、そいつにあなたの力を見せてやりなさい!!」 次の瞬間、ゴーレムの一撃で吹っ飛ぶ巨大ブランバー。 「バ、バカなあぁぁぁぁ!?」 尻餅をついている巨大ブランバーに、『剣のゴーレム』とも呼ばれているそのゴーレムは トドメの剣撃を一閃する。 「ウギャアアァァァァァ!!」 爆炎と断末魔の叫びの中に消える巨大ブランバー。 ・・・その後ではアカリが 「成敗!!」 と、ちゃっかり決めポーズを取っていた。 そして、キルケーの元に駆け寄ると、 「それにしても、これだけのロボを動かせるなんて、キルケーさんて凄いんだね!  是非とも私達『正義忍者戦隊』に正式に入って欲しいわ!!」 喜びに沸くアカリに『え!?』という顔をするキルケー。 そんな二人のやりとりを微笑ましく見つめているマウリーであった。 つづく                                       ・・・かも知れない。