【僧侶ネージュの多忙な一日 その2】  by MURASAMA BLADE!


 パタン…。

 「ふぅ…」
 自分の部屋に戻ってきたネージュは、ゆっくりと安堵の息をついた。
 「すぅ…すぅ…」
 かすかな寝息に目線を下にやると、すやすやと寝息を立てている赤ん坊が目に入る。
 「もうっ…」
 「(さっきも寝ていてくれればよかったのに…)」
 つい先程までの騒ぎようからは信じられないほど静かな赤ん坊に、ネージュは頬を膨らませた。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 礼拝堂から自室へと向かう途中の通路でのこと。
 「こ、こらっ…離しなさいっ…;」
 ネージュは自分の部屋へと向かいながら、赤ん坊に悪戦苦闘していた。
 マザーから赤ん坊を預かったネージュは、そのまま自分の部屋に向かおうとしたのだが、少々問題が生じていた。
 「だぁ…♪」

 ムニュ、フニュッ…。

 そのふかふか具合が気に入ったのか、赤ん坊はネージュの胸にしがみついたまま離れようとしなかった。赤ん坊の指を1本1本ゆっくりはがそうとするが、力いっぱいしがみついている赤ん坊の腕はなかなか離れない。

 スッ…ビクッ…。

 「(ダメっ…こすれて、感じちゃうっ…)」
 下着を着け忘れたネージュの胸は、赤ん坊がしがみついているせいで乳首の尖りすらつぶさに見て取れる。すれ違う人にそれを見られたらと思うと、ネージュの膣は本人も知らぬ間に蜜を溢れさせる。その蜜が脚を伝って垂れるのを感じ、ネージュはますます乳首を尖らせる。
 「いい加減にっ…!」
 終わらない悪循環を断ち切ろうとネージュが力任せに赤ん坊の腕を引き剥がすと、
 「だぁ…ぉんぎゃああああっ!!」
 赤ん坊は火のついたように泣き出した。周囲の人たちが何事かと振り返る。
 「あぁ、よしよし…泣かないで、泣かないで、ね…?」
 「(あぁ、もうっ…!;)」
 その中を、ネージュは顔を真っ赤にしながらこそこそと通り抜けるのだった。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 ――そんなことがあったのが、10分ほど前のこと。
 同じ教会の中にある自分の部屋という、普段5分もかからない道程に倍以上の時間をかけて戻ってきたネージュは、立っていられなくなるほどに疲れていた。

 トサッ…。

 「はぁ…」
 軽い音と共にベッドに座り込み、再び深いため息をつくネージュ。
 「…………」
 ネージュの腕の中で静かに眠っている赤ん坊。柔らかな胸に抱かれた、小さな命。
 「ふふ…」
 赤ん坊の安らかな寝顔に、頬を膨らませていたネージュの顔にも自然と笑みがこぼれる。この苦しい時代を生き抜こうとする、小さな、けれど力強い命。
 記憶はないが、自分にもこのような時代があったのだろう。
 ネージュは、かつての自分を見ているような気分になった。
 「だぁ…」
 寝言をつぶやきながら、赤ん坊が何かをつかもうとするかのように手を彷徨わせる。

 ビクンッ…!

 その手が胸に偶然当たったとき、ネージュは身体の芯が疼くような衝動に駆られた。
 「(な、何?!…今の、は…)」
 微笑から一転、胸を押さえて苦しむネージュ。
 「む、胸がっ…苦しいっ…!」
 心臓の鼓動は早鐘を打つように激しくなり、息が乱れる。赤ん坊を落とさぬよう必死に抱きしめながら、ネージュは胸の疼きに耐えようとした。
 「(い、一体…何故なのっ…?)」
 今までにも、似たようなことはあった。
 公園で遊ぶ子供たちや、母親の腕に抱かれた赤子を見て、胸が切ないような疼きを覚えることはあった。しかし、ここまでひどいのは初めてである。
 胸の中に何かが渦を巻いて溜まっているような感覚。
 「(何かが、出てしまいそうっ…!)」
 嘔吐感にも似た、それでいて官能的な刺激が、ネージュの胸を襲う。
 「だっ…ダメっ…!」
 胸からあふれ出す感覚に、ネージュはあえぎ声を漏らした。

 ビュッ!ビュゥッ…!

 「っ?!」
 次の瞬間、胸からあふれ出したのは白い液体だった。
 下着を着けていないため、乳首から噴き出したそれはローブを通して辺りに飛び散り、ローブの胸の部分をじわりと濡らす。
 「ま、まさか…母乳っ…?!」
 生温い液体。乳臭い香り。
 ネージュの胸から出たのは、まごうかたなき母乳だった。


 ――ネージュが受けた呪い。
 それは、胸を大きくするだけでなく、胸から母乳を分泌させる効果もあった。
 本格的に母乳を噴き出すには胸に多くの刺激を与えなければならなかったため、今までネージュが母乳を出すことはなかった。今までネージュが感じていた切ない疼きは、母性本能が刺激されたことによる乳腺の成長の兆候だったのだ。
 そして、赤ん坊にしがみつかれ刺激されたネージュの胸は、母性本能の刺激とあわせて乳腺を肥大させ、ついに乳首から母乳を噴き出すに至ったのである。


 「な、なな、なんでっ?…わ、私っ…ま、まだ、処女なのにっ…」
 そうとも知らず、自分の身体の変化に動揺を隠せないネージュ。
 「(ま、まさか…寝ている間に、男の人に…それで、子供が…いやあっ…!)」
 想像は飛躍し、自分でも知らぬ間に男に襲われ子供を身篭ってしまった、などという突拍子もない妄想に駆られ、心を苛む。
 「ぁぅ…だあぁぁぁ〜!!」
 そんなネージュの心の動揺を感じたのか、突然赤ん坊が泣き出し始めた。
 「あっ、ご、ごめんねっ…な、泣きやんでくれないわね…どうしたらいいのかしら;」
 慌ててなだめようとするが、赤ん坊はなかなか泣き止んでくれない。ネージュはさらに慌て始め、おろおろと誰も居ない部屋の中に視線を彷徨わせる。
 「ああぁぁぁぁぁ!…だぁ…?」
 と、今まで泣き止まなかった赤ん坊が何かを感じ、急に泣くのを止めた。

 チュッ…。

 「ひぁっ?!」
 と同時に、赤ん坊はローブ越しにネージュの乳首に吸い付いた。
 赤ん坊は、ネージュのローブから染み出た母乳の匂いに惹かれたのだ。
 突然の刺激にネージュは驚き、赤ん坊を取り落としそうになってしまう。
 「だあああぁぁぁ〜〜〜!!」
 再び泣き出す赤ん坊。
 「ああぁぁ;よしよし、いい子いい子。ね?」
 ネージュは赤ん坊を抱きとめると、何とかあやそうとする。
 「(…い、今のは…)」
 しかしその表情は、先程までとは違い官能に赤らんでいた。
 「…こ、この子…お腹が空いてるのかしら…うん、きっとそう」
 ネージュは何度も――自分に言い聞かせるように、何度も繰り返しつぶやきながら、
 「だから…この子に、ミルクあげるだけなんだから…」
 恐る恐るローブの前をはだけはじめた。



 チュウッ…ンチュゥウッ…。

 「っ…っあ…っ!」
 赤ん坊が母乳を吸うたびに、ネージュはあえぎ声を必死にこらえていた。
 乳首に引っ張られるような刺激が走るたびに、下腹部が切なげに疼くのだ。
 「はぁっ…んっ…!」
 ネージュは赤ん坊に乳を吸わせながら、もう片方の胸を手でゆっくりと揉みしだく。

 ピュッ!ビュゥッ!

 すると、中に詰まっている母乳が我先にと噴き出してくる。
 下腹部の疼きと母乳が噴き出す快感に、ネージュの精神は快楽に飲み込まれていた。ネージュの股間は失禁したかのように愛液がトロトロと溢れ続けており、胸からは母乳が噴き出している。
 愛液と母乳により、ネージュのローブは卑猥な染みで埋め尽くされていた。
 「(あぁんっ…だめっ、こんなのって…)」
 母乳を吸われるたびに、何かが下腹部から上へ上へと登ってくる。海底から沈没船を引き上げるような、ずっしりとした何かが。
 「くっ、来るっ…きちゃうっ…」
 こみ上げてくる何かに、ネージュの眼はうつろになり、唇はだらしなく開き涎を零す。
 「あっ…ダメっ、あ、あっ!…ふああああああっ!」
 そして、引き上げられた船は海面に達し、内部に溜まった大量の海水を吐き出した。

 ビュルルウッ!ビュク、ビュクッ!プシャアアアアアアアッ!

 ネージュは胸から母乳を、秘所から潮を噴き出しながら、絶頂へと押し上げられた。
 母乳は白い柱のように噴き出しては落下し、ローブやベッドの上に白い水溜りを作る。潮も秘所から一直線に噴き出し、すでにドロドロだったローブを愛液が滴り落ちるほどにぐっしょりと濡らした。
 胸から、あるいは秘所から、射精したかのような解放感が、ネージュを突き上げる。

 トサッ…。

 背筋を反り返らせて絶頂に感じ入っていたネージュは、力が抜けると同時にベッドに倒れこんだ。
 「すぅ…すぅ…」
 やがて聞こえてくる、2つの吐息。
 ネージュは赤ん坊を抱いたまま、力尽きて眠りに落ちた。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 ――どこか、牢のような地下室。
 鎖につながれた金髪の女が、複数の男に嬲られている。
 「んんうっ!ふうううううっ!」
 女は両腕を吊られた状態で、前後の穴に男のたぎったペニスを突き入れられていた。男がペニスを突き上げるたびに女の身体が跳ね、スレンダーな身体とは裏腹にアンバランスな巨乳がブルブルと揺れる。

 ビュウウウウッ!ビュルルルルルルッ!

 その巨大な胸の先端には、ホースにつながれたガラス筒が取り付けられていた。ガラス筒の中の乳首は大きく肥大し、求めに応じて絶えず母乳を出し続ける。
 「んむううううっ!ふぐうううっ!」
 搾乳の快感に女は恍惚の表情を浮かべながら悶えるが、ギャグボールをかまされた女の声はくぐもったうめき声にしかならなかった。
 「……!」
 「…………!」
 男達は何かを叫んでいるが、それらの言葉は不思議と耳に入らない。

 ビュクッ!ビュビュウッ!

 男達が女の胎内に射精する。
 しかし女にとって、それは最早物足りなかった。
 男達の射精は間欠泉のように、すぐに途切れてしまう。滝のように噴き出し続ける、この胸から溢れる母乳の方が、より快感を与えてくれる。
 やがて男達が去った後、

 ズニュウウウッ!ググウウウッ!

 「んぐううううっ!ふおあああああっ!」
 女の膣に、長大な触手が入り込む。女の口とアナルに、長い筒が押し込まれる。

 ビュルビュルビュルビュルッ!…ゴボ…ゴボ……ブリュ、ブリュリュッ…。

 触手は女の子宮の中にまで入り込み、絶えず子種を吐き出し続ける。筒は女の喉に飼料を流し込み、やがて老廃物を尻からひり出させる。
 母乳を搾るためだけの装置と化した女。
 「んんんううううっ!んふうううううっ!」
 口からは入りきらなかった飼料、秘所からは収まりきらなかった精液、アナルからは押し出された便塊を溢れさせながら、それでも女は快楽に溺れていた。
 「んむううううっ!んぶううううっ!」
 やがて女の身体が痙攣し、絶頂を迎える。女の身体がのけぞり、顔にかかった髪が脇にずれる。
 「んおおおおっ…!」
 ――その女の顔は、ネージュのものだった。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 「…っ!」
 唐突に悪夢は終わりを迎え、ネージュは飛び起きた。
 何も変わらない、自分の部屋。窓の外はすでに暗くなっている。腕の中には赤ん坊。
 「っはぁ…はぁ…っ!」
 「(何…今、のは…)」
 顔面蒼白になり、全力疾走した後のように空気を求める。頭を何度も横に振るが、悪夢は離れてくれない。
 「あんなの…嘘よっ…!」
 信じられなかった。信じたくなかった。
 夢の中とはいえ、あんな浅ましい淫蕩な表情を浮かべ、人の道を外れた業による快楽に溺れたなど、ネージュには信じられるはずもなかった。
 潔癖なネージュでは、所詮は夢の中の事と割り切れるはずもない。
 「神よ…淫らな私を、どうかお許しください…」
 赤ん坊をベッドに横たえると、ネージュはベッドから降りて床に跪き、胸の前で両手を組んで神に懺悔した。
 しかし、懺悔しても心は晴れない。
 「(あれは…私の、未来?…私の行く末は、あんな末路なの…?)」
 ネージュは、予知能力などというものは持っていない。しかし、人は夢の中で神の力の欠片に触れ、未来の姿を見ることがあると、ネージュは神学の講義で聞いたことがあった。
 苦いものが胸の中に広がり、押しつぶされそうになっていく。
 「(あんな目にあうのなら…)」
 悪夢に怯え、ネージュの心が折れそうになったそのとき、
 「だぁ…」
 ベッドの上の赤ん坊が、寝言をつぶやいた。
 それはただの寝言だったが、それを聞いたネージュの心は不思議と安らいでいった。
 「(…そうだわ。この子のような子を、増やしちゃいけないのよね)」
 ネージュは赤ん坊を抱き上げる。
 すやすやと寝息を立てる、まだ幼い命の灯。
 「(…ありがとう)」
 赤ん坊を抱き上げ、ネージュは心の中で礼を言う。
 「だぁ…」
 思いが通じたのか、赤ん坊は寝言をつぶやき、

 チュッ…。

 寝入ったままネージュの乳首に吸い付いた。
 「ひゃっ…!」
 ネージュは乳首に直に触れる感覚に驚き…自分の様子を見て赤面した。
 「(やだ、なんて格好してるのかしら…)」
 ネージュは赤ん坊に母乳を与えるために、胸をはだけたままだった。
 しかもローブは母乳と愛液でドロドロに汚れ、寝汗を吸って身体に張り付き艶めかしい曲線をあらわにしてしまっている。
 「…………」
 ネージュはなんともいえないような恥ずかしげな表情を浮かべると、母乳を吸っている赤ん坊を抱きながら、ローブだけでも脱ごうとした。

 ニチャアッ…。

 「っ…!」
 悪戦苦闘しつつもローブを脱ぐと、へばりついた母乳や愛液が糸を引く。その不快さにネージュは顔をしかめた。
 全裸になり、熱いタオルで身体を拭くと、不快さとともに悪夢も拭われていくようだった。
 「はふぅ…」
 身体を拭き終え、さわやかな気分で赤ん坊に母乳を吸わせるネージュ。
 その慈愛に満ちた姿は、神話に登場する女神のように美しかった。

 コン、コン…ガチャ。

 そのとき、突然のノックと共に開かれる扉。
 「ネージュさん、大丈夫ですか…?」
 それは、ネージュの様子を心配してきたアリエだった。
 「…?!」
 「…?!」
 ネージュは入ってきたアリエに目を丸くし、アリエは全裸で赤ん坊に母乳を吸わせているネージュに目を丸くする。
 二人の視線が交錯する。
 そして、

 「…キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
 ネージュの悲鳴が、夜の教会に響き渡った。



 …その後、ネージュに隠し子がいるという噂が流れたというが、それはまた、別の、話。



 ――END.