『流れのままに』 byMORIGUMA 世のことわざに『水火御(ぎょ)しがたし』というのがある。 水や火を制御する事は、極めて難しいという意味だ。 水も、井戸や耕作に使えれば便利だが、 洪水や嵐になれば、どうにもならぬ。 元来、水や火に善も悪も無い。 しかし、それ無くては、人は生きてゆけない。 ゆえに、人は、水や火をあがめ、そして恐れた。 「やあっと追い詰めたぜ。魚女のネエチャン。」 筋肉が乱暴に寄せ集まったような体つきと面構えの男が、 わざと『魚女』を強調する。 相手の怒りを誘うためだ。 冷静さを失えば、こちらがより有利になる。 だが、彼女にはチャチな口先など、聞くほどの価値もない。 つばの広い黒い帽子を脱ぐと、 魚のひれのような耳が、濡れたように青く震えた。 髪もまた薄い水色の、水流が流れるような美しい色合い。 真っ白い肌に赤い瞳が、深く重い輝きをたたえて、ギラッと光った。 高い鼻梁、美しい顎のライン、抜けるように白い肌。 その美貌は、飛び切りの美人に入るだろう。 だが、その表情は人形のように無表情だ。 右手がすっと動き、青い水神の神官服をはらりとはだけた。 服の前が解かれ、男たちの目が吸いつけられる。 身体のラインにぴったりの薄いインナーが、乳と秘所だけを覆い、 白い肌を縦横に走る、細い縄状のの筋力補助具が、 まるでSMの縄のように、際立っている。 肉感的なラインが、青白さすら感じる肌で描かれ、 人魚族特有の妖しさを、強く浮き出させていた。 「油断するなよ、せっかくここへ追い詰めたんだ。」 目を奪われそうになるのを、ようやくこらえ、 筋肉男は、部下どもに注意させた。 「あきらめて、おとなしくすりゃあ痛い目にはあわせねえゼ。」 体を覆う補助具が、縄に取って代わるだけだ。 『そうすれば、ついでに楽しい事もできるってものだぜ。』 縛り上げた白い肌を、転がし、貫き、泣き叫ばせる、 陰茎がゾクゾクしてくる。 いやらしい目つきが、その心根まで露にしていた。 「ここへ?、おいつめた??。くっくっくっ・・・。」 無表情だった女性は、さもおかしそうに笑った。 「な、何がおかしい、ナガレぇっ!」 ナガレ・エタブール、人魚族ハーフの賞金首である。 そして、筋肉男たちは、賞金稼ぎの一団だった。 それだけに、ナガレが水の近く、海や川、湖などに近寄られては、 掴まえるどころではない。 またナガレも、人魚族の血の関係から、水とは縁が切れない。 それゆえ、なかなか水の近くから離れない。 この連中は、ナガレの退路をこまめに断ちながら追跡し、 そういう大きな水の無い場所へ、追い込んだのだった。 小さな沢の側だが、背後は崖。 もはや逃げるに逃げられぬ場所である。 「けっ、おかしくなりやがったか。とっつかまえろ!。」 「−−−−」 小さな声が、淡いピンクの唇から漏れでた。 青い神官服が、ふわりと舞った。 三つのナガレの姿から。 「なっ・・・?!」 大ぶりの神官杖を一振りすると、仕掛けが開き、ガチャリと伸びた。 水神官だけが持つ、巨大な双頭の槍である。 音が一つだけだと、筋肉男が気づいたときは、 三つの影が同時に撃ちかかり、部下の目を、首を、喉を、 瞬時に切り裂き、6人のうち4人がその場で戦闘不能になった。 「くそっ、幻影かっ!」 沢が、霧を発し、霧が、影を写す。 水神の加護による、神聖魔法の一つだった。 残る二人の部下が、同時に曲刀を振りかざし、 左右から同時に切りつける。 この二人は、筋肉男の子飼いの部下で、 音と仲間のやられる様子から、幻影に惑わされなかった。 双頭の槍で、二人を同時に防げば、 筋肉男の剣が、がら空きの体を襲う。 美しく盛り上がった乳房の間に、剣が吸い込まれようとした。 「ウォーター・シールド」 ボソリとつぶやいた言葉に、青い薄い皮膜が立ちふさがった。 水の皮膜は、剣にたやすく切り裂かれた。 だが、 「うっ、うぶっ!?」 ゴボッ、ゴボッ、 筋肉男は、剣を取り落とすと、急に喉をかきむしった。 驚愕する部下たちが、槍をさばいて身を引こうとしたとたん、 彼らまでが喉をかきむしり、転げまわった。 たちまち顔色が紫になり、 二人は喉を切り裂かれ、筋肉男は『溺れ死んだ』。 切り裂かれて生まれた水滴は、 生き物のように、鼻の穴から肺に飛び込んだのである。 そうなれば、肺でしか呼吸できない生物は、戦闘などできはしない。 運が悪ければ溺れ死ぬ。 ナガレは、全員に止めを刺し、金目の物を集めると、 神官服を身につけ、沢に対してヒザをついて祈った。 あらゆる者に平等に、そして公平に力を振るう水神へ。 水神、火神には、基本的に善悪は無い。 真に理解し、深く祈る者に力を貸す。 わずか九歳で、一族を皆殺しにしたという濡れ衣を着せられ、 水に逃亡するしかなかった娘は、 死の直前で、神との交流を得て救われた。 以来、彼女は水神の神官戦士になった。 『それにしても、なぜこいつらは、私のことをわかった?』 考えてみても、賞金稼ぎに足取りを捕まれるような、ドジは踏んでいない。 長い逃亡生活でつちかったカンが、警鐘を鳴らしていた。 その夜 宿屋は偽名を書き込み、出来るだけスミの部屋を頼む。 いざと言う時に、すぐに踏み込まれない用心だ。 ベッドに服を着たまま、横になる。 浅い眠りの中、奇怪な夢が、ドロドロと渦巻いていた。 「う・・・っ」 気がつくと、全身にべったり汗をかいていた。 「きもちわるいな・・・」 少し迷ったが、不快さには勝てなかった。 パチッ、パチッ、シュルルッ、 留め金をはずし、筋力補助具をはずした。 真っ白い肌が闇の中にあらわになる。 インナーを脱ぐと、見事な乳房がプルンと揺れた。 濡らしたタオルで、汗ばんだ肌をぬぐうと、 気分の悪さが、少し取れていくようだ。 ビクッ! 「な・・なんだ・・・??」 ものすごい妖気が、急激に沸き上がる。 血のように赤い三日月が、よどんだ雲をまとった。 怒声が沸き、そして、途絶えた。 悲鳴が起こり、そして、途絶えた。 人の気配が消え、そして、扉がきしんだ。 ドバンッ 闇夜になれた目に、大柄な男がぬうと入って来るのが見えた。 ドアを、鍵ごとひきちぎって。 「えふぇふぇふぇ、ナ〜ガ〜レ〜ここ〜かあぁ」 ヒュコンッ 短剣が銀光をひいて、その額に突き立つ。 だが、今度こそナガレの赤い瞳が見開かれた。 根本近くまで短剣をめり込ませ、男はにいっと笑った。 今日殺したはずの、筋肉男が。 「そぉこぉかぁぁ」 動きは遅い、だがナガレも、自分がスローモーションのように歯がゆい。 筋肉男の後ろには、やはり今日殺したはずの手下たちが、 目を潰され、喉を切り裂かれ、首を折り曲げたまま、 ゾロゾロと、血まみれの武器を持って、入って来る。 もはや疑う余地はなかった。 吐き気のするような、死人の部隊だ。 槍に神聖魔法を唱え、聖なる力を宿らせる。 単なるゾンビとは違い、こいつらは、意志を持ち自分を狙ってくる。 『死霊払い』程度の魔法では、効かない可能性が高い。 グワンッ 聖なる光を帯びた槍を、男の剣がものすごい力で弾いた。 単なるゾンビでも、人間の数倍の力を出すと言うが、 この男はさらに凄まじい。 しかも、ナガレは筋力補助具をはずしていた。 「うあっ!」 人魚族は、さほど筋力には恵まれていない。 その血を引くナガレは、補助具をはずすと常人と力がさほど変わらなくなる。 多少スピードが勝っても、圧倒的な力にはかなわない。 槍が天井に突き刺さり、ナガレはベッドへ吹っ飛ばされた。 「ぐふぇふぇふぇ、いい場所へ逃げるじゃねえかああア」 腕に響いた衝撃が、体まで不自由にした。 ワラワラと群がる死人が、逃れようとあがくナガレを捕らえた。 十数本の手が、ナガレの脚を、手を、身体をつかんだ。 ビリビリビリッ マントが、服が、紙のように破られ、 白い肌がむき出しにされる。 インナーすらつけていない、全裸の姿が闇に晒される。 恥辱で赤く染まるほほが、むしろ妖艶で欲望を煽る。 悲鳴は無かった。 恥辱の叫びは、九歳のときにすべて上げつくした。 「ぐへへへ、なんつういい身体してるんだぁ。 おめえに殺されてよお、姦りたくて、姦りたくて、仕方がなかったんだぜえ。」 ヌラッ 男の青白い舌が、数十センチも伸びた。 「ぐ・・・!」 あまりのおぞましいありさまに、白い歯の間から、声が漏れる。 群がる腕が、脚を強力のままにギリギリと広げていく。 股が壊れるかと思うほどの力で、腿を広げられてしまった。 引き締まって長い太腿が、真っ白く光を浴びたことの無い内股が、 無残にあらわにされる。 ゾロッ、ゾロッ、 鳥肌が立つような冷たい感触が、下腹をしゃぶり出す。 眉がしかめられ、歯がキリキリとかみしめられる。 おぞましい陵辱が、ふさふさとした茂りを、柔らかい内股を、 そして、スリットをこじ開けるように入り込んでくる。 「うぐ・・・っ!」 グジュルッ 死人の舌という、おぞましい物が、 冷たく、強引に割り込んでくる。 侵入を開始すると、身体は必死に拒否しようとする。 あがいても、動こうとしても、つかまれた身体は身動きすらできない。 ズジュルズジュルズジュル 「ひ・・・・!」 冷たい感覚が、ヌロヌロ蠢きながら、ざわつく膣の中を荒らしまわる。 紅潮した顔を、激しく打ち振り、必死に感覚に抵抗しようとするが、 グズッ、グズッ、 「うああっ!」 必死に食いしばっていた歯すら、声を漏らしていた。 9歳で罪人あつかいされて、強姦された時から、 何度強姦されたか、数え切れない。 戦場で一部隊から、一晩中輪姦されたこともある。 だが、これの気持ちの悪さには、比べようが無かった。 冷たい、胎内から腐りそうなおぞましさが、 広げるだけ広がった股間から、激しく出入りし、 にたにた笑いながら、味を、感触を、丹念に探りつくしている。 グジュルッ 別の舌が、さらに伸びて、尻肉の間に滑り込もうとする。 「や、やめろおおおっ!」 必死にうごきくねる尻に、めり込まされるそれが、 心臓が止まりそうな、つめたい侵入、 「うあああああっ!」 さらに、中を掻き回し、抉り出してくる。 のたうち、中身を引きずり出されて恥辱に悶えるナガレを、 死人どもは楽しそうに視姦する。 無理やりに引きずり出し、中をさらにえぐり、 前も後ろも内臓を引きずり出されているかのようなそれに、 身体が、体温すら失いそうだった。 「お前ら、契約を忘れたんじゃああるまいな。」 ひどく低い声がして、死人どもはびくりと動きを止めた。 長い長いヒゲを、床に着きそうなぐらい伸ばした、 背の低い老人が、黒い杖を突きながら入ってきた。 メガネをかけて、好々爺のような容貌だが、 よどんだ黄色い目の狂気は、死人すら凍りつく。 「わ、忘れちゃいねえですよ、メフィズさん。」 筋肉男が、舌を戻すと、おどおどと応えた。 「だったら急げ、何か面倒が起こったら困る。」 ナガレをギリギリと縛ると、 持ち物全て、天井の槍まではずし、 何も分からないぐらいにすると、ほろ馬車で走り出した。 周りの家々は、恐怖におびえおののき、誰一人窓すら開けなかった。 ぶすくれた死人たちに、 メフィズと呼ばれた老人は、黄色い目を向けた。 「何をやっておる?。契約をきちんと果たすなら、 ほかの事をしてはならぬとは、ひと言もいうてないぞ。」 死人のよどんだ目に、ぎらついた欲望がふたたび起こった。 「一つだけ、契約に基づいて命ずる。ここでは殺すな。 夜明けまでは退屈じゃからのう。」 「キサマ一体何者だ?。」 ナガレが、怒りを抑えながら、メフィズに聞いた。 「無粋な質問じゃな。もっと楽しいことを、聞かせておくれ。」 メフィズの声と同時に、ナガレが引き倒された。 縄が引きちぎられ、暴れようとするナガレの身体を、 おびただしい手ががっちりと押さえ、また腿をぐいと広げられ、 腰を突き出すようにさせられた。 まるで誰かに差し出したかのように。 「うへへへ、さあて待ちに待ったしょうーたいむだぜ。」 青黒い、おぞましい剛直が、がちがちの硬直状態で反り返った。 「やめろおおっ!、このやろおっ!」 わなわなと震える腿に、死人がのしかかる。 グリュルッ 「−−−−−−−−−−−っ!」 舌よりさらに冷たい、それが、めり込んできた。 ズジュッ、ズジュッ、ズギュ、ズギュズギュズギュ まだ良く濡れてもいない膣を、それが押し込み、広げていく。 痛みと、屈辱が、胸をあぶり、煮えくり返る。 動くたびに、なめらかな柳眉がわななき、 「くはっ、あがっ、ぐぐっ、んううっ!」 非人間的な暴行は、ナガレに短い声を上げさせ続ける。 「生きてやがるぜ、ナガレぇ、あったけえぜええ、おらっ、おらっ、」 腰をたたきつけ、奥まで長大なストロークを刻み込み、 ナガレの胎内を蹂躙する。 ピンクの襞が引きずり出され、冷たい亀頭にからませられ、 また押し込まれる。 おぞましい、おぞましいそれに、身体は濡れて、反応を始めている。 それが悔しく、なお一層身体に、奇怪な刺激を感じさせていた。 「くおっ、おおっ締めるっ、感じてるのかあっ、死人に感じるたあ、トンでもねえ変態だおめえっ、」 「そ、そんなわけがっ、あるかあっ!、あぐっ!、やめろおっ!」 だが、快感のつぼをえぐられ、身体はしだいにトロトロの状態になっていた。 「だすぜえっ、死にたてのザーメンだ、まだ生きてるかもなあっ!」 恐怖で目が見開かれる。 歯が砕けそうになる。 奥が、えぐられ、突かれ、めり込まされ、膨張し、脈動が走った。 「や、や、やめてえええええええええええええええええええっ!!」 ついに、ナガレの仮面が落ちた。 必死に保持していたプライドが、ガラガラと音を立てて崩れた。 絶叫する女体に、死人は歓喜しながら、腰を反り返らせた。 ドビュルルルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥ 冷たい、凍りつきそうなザーメンが、盛大に中にぶちまけられる。 「いやあっ、やめてえっ!、」 「おらっ、おらっ、おらっ、」 ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、 あらがい、のたうつ白い腹に、死人の精液が勢いよく噴出していく。 それを何度もしゃくりあげ、ナガレの下腹を耕すようになすりこんでいく。 「あああ・・・・・・」 涙で、目がかすむ。 おぞましい暴流が、胎内一杯にあふれていた。 「うへへへ、すげえいいぜえ、こんな穴、生きてるうちにやりまくりたかったぜ。 なあ、おめえらあああっ」 死人は、他に6人いたのだ。 「ひいいいいいいいいいっ!」 冷たい、いきり立ったペニスが、ナガレの胎に押し込まれる。 「ひぎいいっ!」 ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズブッ、 激しい音と、凶悪な律動が、腰を突き刺し、子宮を突き上げる。 「いやあっ、やめっ、やめてえっ、もうやめてえっ!」 どんな強姦も、輪姦も、これに比べればはるかにましだ。 少なくとも、生きている相手なら、獣姦でもここまで絶望に狩られない。 「ダメだな、おめえは生きてる、そして俺たちはお前を殺せねえ。」 ぐいと身体を起こされ、真下から直上へ、喉まで突き抜けそうな律動が、 激しいピストンを繰り返す。 だが、筋肉男が、後ろから、 「やめ、やめええっ、やめてええっ!」 ギリギリギリッ 裂ける、裂けるううっ、 激しい痛みとともに、冷たい凶器が侵入し、 先ほどまで掻き出され、嘗め尽くされた直腸を犯す。 下から子宮に届くような衝撃が突き上げ、 後ろからは、背筋をつきぬくような律動が轟き、 そのどちらも、おぞましい死人の欲望。 気が狂うような感覚と、それに・・・ 「あっはははははぁぁ、えらく濡れてるぜええ、この変態人魚が!」 「うそっ、うそおおっ、いやあっ、うそよおおっ!」 だらだらと、ダダ漏れの愛液が、腿を伝い、下に雫を散らす。 振動する馬車と、揺さぶられる女体、 ガクンッ 馬車が大きく揺れ、同時に、のめりこんだ。 「ひぎいいいいいいいいっ!!」 ドビュウウウウウッ、ドビュウッ、ドビュウッ、 ドギュルッ、ドギュルッ、ドギュルッ、 冷たい、ぬらついた、おぞましいものが、 ナガレの肉体を同時に陵辱した。 「いやああっ、いやあああっ、いやあああっ!」 くらい夜道を、  這うようにして獣のごとく犯され、 漆黒の森を、  口もアナルもヴァギナも、あらゆる穴を貫かれ、 ごとごととゆれるほろの闇で  声もなく、ただ涙しながら、暴行され続ける。 死者の際限ない欲望が、途切れなく白い裸身を汚し、犯し、輪姦し続ける。 焦点を失った目が、闇のように光を失い、 嬲られつくした裸身は、前も後ろもドロドロにされ、 それでも、亡者たちは、ナガレの肉体を壊しつくそうと腰を振り、男根を突き刺し、かき回す。 「やれやれ、ようやくついたか。」 瘴気と、死と腐敗の漂う空気が、むっと馬車の外を包んでいた。 ぐったりと、力なく、動かぬ肉体を、 亡者たちは、荷物の一つのように運んでいく。 黒い魔方陣の上に、投げ出され、ナガレの目に、少しずつ光が戻る。 『これは、ネクロマンサーの魔方陣?!』 あわてて起きようとしたが、身体が磁石に吸い付けられたかのように動けない。 「なんだ、まだ正気を保っていたのか。さっさと狂えば楽になるものを。」 動こうとあがくナガレをせせら笑う。 「無駄じゃ無駄じゃ、この瘴気と、死と腐敗の領域で、 まともに動けるのは、死人とわしらネクロマンサーぐらいじゃ。」 ま、やつらも特別じゃがな、とまるで世間話。 「お前も、ここで儀式をするから、死ねばあとはわしが下僕として使ってやる。 前から欲しかったんじゃよ。神官の死人をな。だがへたな宗教に手を出すと、 うるさいでのう。お前がお尋ね者と知って、嬉しかったぞ。」 怒りのあまり、ナガレの顔色が白くなる。 「きさまはっ、そんなことで私をさらったのかっ!」 「あの死人たちを見たじゃろう。本人の肉体に入れなおすことで、 はるかに知性も能力も高い死者になる、わしのオリジナルじゃ。 だがお前は、ちと元気が良すぎるの。」 そこへ、筋肉男が情けない顔をして、のっそりと入ってきた。 「大将ぉ、オレのチンポコから液がでねえんだ。」 「死んでるんだから、仕方なかろう。精液は生きてる間しか作れんぞ。 使い切ったらそれまでじゃ・・・いや、もう一つ方法があったな。」 寄せ集められた状態のいい死体から、ペニスを陰嚢ごと切り取り、 筋肉男のそこへ押し付けると、しゅわしゅわと音を立ててひっついた。 「お前たちの身体は、ある程度付け替えがきくのじゃ。そいつならたっぷり陰嚢が膨らんどるからの。」 動かない身体をあがかせるナガレに、筋肉男がのしかかった。 「姦り殺してもかまわんぞ。ここならいつでも下僕に出来るからの。」 「やめろおおおっ!」 一晩中嬲られ、赤く腫れた秘所とアナルに、 凶悪な2本のペニスが襲った。 「ひぎいいっ!!」 同時に押し込まれるそれが、命すら削られるかのような、 強烈なショックを与えた。 「お前が死んだら、今度は使えるかぎり犯しまくってやるからなぁ。」 ガスガスと、赤く腫れた穴を壊さんばかりに突きまくり、えぐり上げる。 「くっ、くっ、ううっ、水の神よ・・・・−−−!」 人の耳に聞こえぬ低周波の声が、神の名と呪文を唱えていく。 キュワワワワワ 白い光が集い、薄い水色の陰が腐敗の沼の上に現れる。 それは、水の精霊のウィンデーネだった。 キャアアアアアアア ウィンデーネは、悲鳴を上げて消滅した。 「無駄じゃ無駄じゃ、この領域に他の精霊が入れば、よほどの上位精霊でないかぎり消滅するわ。」 激しく腰を突かれ、息も絶え絶えになりながら、 ナガレは呪文を唱え続けた。 キャアアアアアア キャアアアアアア キャアアアアアア 次々と消滅するウィンデーネ。 無駄なはずの行為に、絶え間なく悲鳴が続き、 ネクロマンサーも不信な顔をした。 「くうっ、うあっ、あっ、くううっ、−−−−−−−−!」 ズズズズズズズズ 何か、地鳴りのような音がした。 「なっ、なんじゃ?!」 アアアアアアアアアアアアアアアアアア 精霊の声が、無数に膨らみ、そして耳が破れそうな高周波になる。 「おまえは、ウィンデーネの、数、うっ!、知っているか。」 あえぎながら、ナガレが言った。 うめき声が、おぞましいほとばしりを注ぎ込むが、 しだいに身体の疲労は消えていく。 水の力が増している。 「この世界の水の量だけ、ウィンデーネはいる。」 筋肉男は、白い肉体への妄執に囚われ、 ナガレの身体をむさぼることだけに夢中だった。 獣のように犯され、尻が裂けんばかりに、広げられていても、 冷たくおぞましいペニスが、身体を貫き続けていても、 水神の神官は、己の信仰と誇りを取り戻していた。 精霊に数や時間の概念は無いと言う。 死も、消滅も、過去も未来も、彼らにはあまり意味がない。 いつもあり、いつもいない。 数はゼロでもあり、無限大でもある。 神官の要請に、数限りない無数のウィンデーネが、 巨大な大群となって膨れ上がり、 死と腐敗の沼に押し寄せた。 「水神の神官をなめるな!!」 山すら飲み込む大津波となり、 死と腐敗の沼は、一瞬にして飲み込まれた。 ネクロマンサーも、死者たちも、強大な水圧に粉々になった。 まるで、人魚の血が戻ったかのように、 ナガレの肉体が水を切って進んだ。 輝く肌から、滴る水滴は宝玉、 伸びやかな肢体が、水から上がった姿は、 見たものを虜にするというマーメイドの妖しさだった。 「私も、まだまだ修行が足らんな・・・」 ウィンデーネたちが拾ってきてくれた装備と服を身につけ、 水神への深い感謝を捧げ、ウィンデーネたちに礼を言うと、 数多くの微笑が返ってきた。 ナガレは、何事も無かったかのように歩き出した。 FIN