リラ・ライラック編 5


 穢れる事の意味を知らないままに訪れた凌辱の波は大きく激しく、それはリラにとってあまりに過酷過ぎる出来事でもあった。どれだけ彼女が日々の生活に満足した上で、さらに輝きを求めては鍛錬し。そんな彼女が振りまく笑顔に、周囲にいる人々まで癒やされていく。決して裕福では無かった実家の生活は、まるできらびやかな宝石よりも彩りに満ちていた毎日だった。
 だが、その輝きが綺麗であればあるほど。宝石を手中に収め、自分達の手によって傷痕を刻み込む行為の価値が高くなり、男達にとってはその愉悦も大きくなる。
 今、この場において男達は白く濁った欲望の塊を叩きつける事によって、これでもかという喜びを覚えていた。
「う……ッ、ううぁぁぁ…………ッ。うぁぁ……っ、あ……ああぁ……」
 男達に身体を押さえつけられ、さらに別の男が紙を準備して股間のあたりに好色な笑みを浮かべてしゃがみこむ。リラがバケツに垂れ流した汚物の処理を、紙で一通り拭き取ってから冷水をかける。
「ひゃうっ!?」
 押さえつけられている状態でリラが身体を跳ねさせ、冷水の刺激に膣口とアナルがググッと別の生き物のようにうごめく。まだ精液が派手にこびりついている膣口と、精液も汚物も拭き取られてすっかりと綺麗になった肛門。そんな対照的な二つの穴を前にして、紙を手に持っていた男は満足そうな笑みを浮かべる。
「ベネ!(よし)」
 一つの仕事を終えたすがすがしい表情、その眼前に広がるのは未発達ながらも開発されつつある性器だった。冷水を浴びせられたせいで拡がりかけていた膣口は萎縮したように閉じながら、はみでた肉ヒダが淫らさをアピールする。
「あ……ぅぁぁぁぁ…………ッ」
 特に人前で汚物を垂れ流すというのが効果的だったのか、先ほどからリラは小さな子供のように泣きじゃくるばかりになっていた。殴られる、叩かれるといった痛みとはまったく別の恥辱による心の痛み。
 それは年齢のいっていないリラにとって、ことのほか大きく響いていた。耳にした事があるだとか、頭で理解しているだとか。そういった事で恥辱を耐えられるかというと、そんなはずもなく。
「よーく頑張ったじゃねーか。あんなにタップリ出して、相当我慢していたんだな」
 男の一人がそう言葉をかけると、リラはビクッとまた大きく身体をすくませる。そんな様子を見て、男達はリラを押さえつけていた手足を離す。
「あ……っ」
 ここでもし聡明な人間、あるいはこういった凌辱に慣れている人間ならば、全身が自由になるというタイミングを見のがさなかっただろう。だがしかし、そうするにはリラはあまりにこういった状況に対して無知であり。凌辱によって冷静な判断力を完全に穿たれていた。
「う……っ、うぁぁ…………あぁ……っ、くっ、うあっ、うぁぁ……ぅ……」
 自由になった両手はただ顔を覆い隠すようにして、股間も何もさらけだしたままその場で泣きじゃくる。この過酷な状況に適切に対処するには、あまりにリラは今までの生活とその才能に恵まれすぎていた。
 才能がある人間というのは、予想を超えた状況に遭遇した時に対処できなくなってしまうという事にみまわれる事がある。今のリラがまさにその状況だった。
「そっか、人前でケツの穴おっぴろげてクソするのがそんなに辛かったのか。あんな風に股おっぴろげて、ブリブリすげぇ音させてたもんな」
「や……っ、やめてっ。やめてくださ……いっ。そ、んなこと……いわないでぇ……おねがいですから、いわないで……」
 小さく身体を震わせてはさらに身体を固く、小さく亀のように縮こまらせ、リラは男達の投げつける言葉から自分を守ろうとする。だがそんなささやかな抵抗も許さないという感じに、男はリラの身体をひっつかんで抱きかかえる。
「そうそう、今まで何人もの女がああやって俺達の前でクソをひりだしたが。お前のが一番太くて、臭かったぜ」
 それは当然ながら、ウソである。
 冒険者達の中でも比較的小柄であるリラの体躯が、他の人間と比較して一番になる事はまずありえない。だがそんなウソの真偽を確かめる手段を持たないリラは、男達の言葉を鵜呑みにするしか出来ない。
「いやっ、そんな……そんなのちがいま……っ、やめて……やめてくださ……」
 さらに頭を大きく振り乱しながら顔を覆っていた手で両耳を塞ぐ。だが男はそうやって身を守ろうとするリラの手を耳から引きはがし、手首を強く握って自由を奪う。
「隣の玄室にいる連中が、こっちまで臭うって文句言われちまったよ。だから俺達は、パン屋の娘で龍騎士になったリラ・ライラックがしたものでゴメンなって。他の連中に代わりに謝ってやったんだぜ」
「わっ、わた……そ、んな……ぁ……ぅ」
 言葉のナイフは容赦なくリラの心へと次々と深く突き刺さっては、豆腐でも切り崩すようにたやすくボロボロに解体していく。
「だからそんな連中に謝る為にも、罰を与えてやらないといけない。そうだよな?」
 どこかの玄室から持ち込まれたのか、丸太を削りだして三角柱にして、さらに先端には木彫りの竜を模った物がリラの前に姿を現す。男は泣きじゃくっているリラを、その木彫りの竜へと持ち上げてはまたがらせた。
「はぐうっ!?」
 三角柱になっている頂点の部分が、リラの股間へと一極集中した刺激を与えるように配置される。自重で股間を食い込ませながら、リラはその痛みに目を白黒させる。
「どうだ、龍騎士様専用にあつらえた三角木『竜』の味は。先端にある竜の細工は、ギルドボさんがわざわざ自前で彫った代物だからな」
 よほどギルドボは凝り性なのか、先端の竜はそれだけでかなりの躍動感がある。おしむらくはこれが拷問具であり、この細工に対して正当な評価をできるような連中はこんな場所には足を運ばないという事だ。
 しかもそれは、輪姦の後でまたがされているリラの視界には認知されない。リラはただ悲しみの中で不意にやってきた痛みに、あえぐしか出来ない。
「は……っ、はああぁぁぁぁああっ、いぎっ、あ……いたぁ…………ぅ、いたい、いたいいたいいたぁいっ!!」
 快楽とはまったく真逆の苦痛のみを重点的に与える拷問具を前に、心が痛めつけられているリラは耐えるという事が出来ない。普段なら耐える事が出来る程度の痛みでも、今のリラには激痛に感じられた。
「いやー、実際に罰を与えるのは心が痛むんだけどな。でも仕方ないよな、リラちゃんがケツの穴おっぴろげてるから悪いんだよな」
 男の言っているのは冗談めかして聞こえるが、実は本当である。罰を与えるなんて殊勝な事を道具でこなすぐらいなら、自らの肉棒でもってリラの穴を塞いで味わう方が良いと心の底から思っているのだから。
「はっ、あぐ……うぅぅぅぅううっ。やめ、てっ、くださ……おねがいで……すから、いたいっ、いたすぎます、こんなっ、のぉ……やめ……ぅいたぁいっ!!」
 輪姦されて無理矢理に漏らさせられたという状況にも関わらず、そうやってさらに反省を強要される。あまりに理不尽すぎる流れを前に、怒りという感情も大きな悲しみと苦痛にかき消されてしまう。
 希望という言葉はとうになくして久しいはずなのに、それでも今こうして襲われる苦痛から逃れたいと願い。激しく吐息を織り交ぜながら、リラはさらに新しい涙をポロポロとこぼしていく。
 とめどなく溢れ続ける涙、髪の毛が張り付いている肌、醜くはみ出した肉ヒダ、そんなリラを艶やかに彩る要素のすべてが責め苦によって側面の魅力をのぞかせる。
「はっ、あがぁっ、いぎっ、いぎいっ、いた……ぁ……っ、こんな、のぉ……いたい……いたすぎて……だ……ぁぁぅ…………」
「そっか、ならアレだ。素直に『リラは悪い子です、ギルドのみなさんの前でお尻からとても臭いウンチをしてご迷惑をおかけしました』って謝れば許してやるぜ?」
 男はニヤニヤとそう言葉を口にしながら、そんな言葉を促す。リラは少しだけその瞳を見開いて、小さく息を飲み込む。
「り、リラは……わる…………いこ……です。ぎっ……ぎぃ……るどの……みな……さ…………ッ」
 股間から鋭く迫る苦痛は今のリラにとってあまりにも激しく、苦しく、正常な思考力を著しく奪い取っている。だがそれでも、何を言って良いのか、言ったら駄目なのかという部分は残っていた。
 ここで諦めるような言葉を口にしてしまっては、自分を構成していた重要な部分を自分の手で捨ててしまう事になってしまう。それだけは、その一線だけは絶対に超える訳にはいかない。
 ギリッ
 痛みにこらえるべくリラは奥歯を強く食いしばり、絶望の淵に沈みかけていた意識を一気に引き戻す。
「どうした? 痛いから続きが言いにくいのはわかるが、言わないと終わらないぜ」
 リラが精神的に陥落したという確信めいた気持ちを持って、男はそこでリラに敗北感を植え付けるために尻を叩いて言葉をうながす。
「はぎゅっ!」
 より一層激しくなった食い込みに目を白黒させながらも、意思の力が引き戻されたリラは涙を浮かべたまま男をにらみつける。すっかりと光が舞い戻った目の色に、男は自分のかけた言葉が失敗であった事を感じ取っていた。
「わた……しは、悪い子なんかじゃ…………ないっ!」
 萎えていた抵抗の意思が蘇ったリラは、三角木竜にまたがったままの格好で強く宣言して身体をぶるりと震わせる。さっきまで脱力していた四肢に力が戻り、自由になっていた手で自身の身体を支える。
「しまぁ……ッ」
 男が狼狽の言葉を漏らした瞬間、リラは自力でまたがっている状態から抜け出るように片方の足を持ち上げて床へと着地する。全身から精液をしたたらせながらも、そこにはまだ抵抗する気力が少しばかり残されている少女の姿があった。
「……なんてな、ちょっと驚いたフリをしただけだ。実はここにもう一つの罠があったりしてな」
 驚いた声をあげたはずの男は、そこでリラをからかうように舌をベロリと出し、右手の人差し指を持ち上げて頭上を示す。
「ぇ?」
 ここがすでに、心理的駆け引きでの上手下手という部分だった。男は次の瞬間に体勢を低くして、リラに向かってタックルをしかけていく。意識を完全に上へと持っていかれていたリラは、完全に反応が遅れてしまった。
 足に飛びついてくる男の体重を支えるにはリラの体重は軽すぎる。そんな駆け引きの結果はすぐさまに形を取る。
 ぐらついたリラは床へとまた押し倒され、状況を見ていた男達も再びリラを押さえつける手伝いへと回った。最悪の状態から脱出しかけたリラは、こうして振り出しに戻されてしまう。
「いやっ、こ……このっ。離してっ、離してください……ッ!」
「んー、今のはマジでやばかった。さっきまでので完全に落ちるんじゃないかと思ってはいたんだが、意外と精神的タフだったな」
 リラがそうやって持ち直した事に対して舌を巻きながら、男はそこでリラの頭を優しい手つきでぐしゃぐしゃと撫でる。
「ま、それならそれで構わないさ。なーに、まだまだゆっくり楽しもうぜ」
「……そんなの……おことわ……りです…………」
 男の宣言にリラが顔をそむけようとすると、男はそこで強引にリラのアゴをガッとつかみあげる。そのまま自分へと引き寄せ、唇と唇を密着させた。
「んぶうっ!?」
 あまりに突然にされた出来事に反応できず、リラは驚きの声をあげる。

 ……それはまた次の凌辱に繋がるステップで。

<つづ……くの?>