はじめに このSSは、あくまでMORIGUMAの勝手な妄想において、 竜神の迷宮事件が、20年後に引き起こすIFという事で、 組み立ててみてます。責任は私にあります。 変わる人、変わらない人、時は残酷に過ぎていきます。 勝手に引っ張り出したキャラの親御さんで、 ご不満がおありの方は、遠慮なく申し出てくださいませ。 <壊れた心をひきずって> その9  −『絡みつく因果』−  byMORIGUMA 褐色の細い手と、 白い大きな手が優しく握り合う。 裸の腕と腕が、しっとりと汗ばみ、 甘く密着していた。 もう片方の大きな手が、 薄い毛布ごしに優しく、何度も何度もなでてくれた。 トクンッ、トクンッ、 耳に心地よく響く、ゆっくりした鼓動。 大きな胸板の奥から、いつまでも聞いていたい音が、 エルザの耳に、しみこんでくる。 潮騒、洗われる波、 大きな海の中で、彼女はゆったりとたゆたう。 しなやかで優美な裸身が、 ゆらゆらと波にゆれ、 ゆっくりとした喘ぎが、美麗な丸い乳房を、 大きく、艶やかに彩り、次第に激しくなる。 彼女は波に乗り、それに揺さぶられ、 荒々しい波にもまれ、 たたきつけられる。 しなやかで優美な脚がひらめき、 細くくびれた腰がのけぞる。 衝撃に打たれ、 あえぐ身体を、突き抜ける。 「−−−−−−−−−−」 何度も、何度も、その波にさらわれ、 激しい高ぶりに打ち上げられ、 絶叫した。 何度も、何度も、 幸せな、瞬間に身をまかせ、 エルザは至福の色に染まり、涙を流した。 幸せが、全身を震わせた。 「エルザ」 太く、静かな声。 「なに?」 きらめく黒曜の瞳が、闇の中を見通す。 ダークエルフの血が半分だけ覚醒し、 夕暮れ時のように、彼の顔を写す。 よりそう小さな女性を見る、暖かな茶色の瞳。 「俺は、怖い。もうこれ以上追わないでくれ。」 ひしと抱きしめるたくましい腕。 その腕は、心底彼女を心配していた。 戦いとなれば、暴風のような剣技を振るう彼も、 愛する女の前では、正直で小心で、素朴な男性にすぎなかった。 エルザは、その心が嬉しかった、 しかし、 レイラのことを放っては置けない。 何より、国内で事件が起これば、 赤竜騎士団の副団長である彼も、無関係ではいられない。 彼の動き一つで、本当に内乱や騒動の引き金にもなりかねない。 エルザのような、あいまいな立場と、 王国の様々な因果に関係の薄い者こそ、 ややこしい事態に動く事が可能だ。 エルザのしなやかで優美な裸身が、 彼の上に四つんばいになる。 月光をはじき、肉食獣の華麗な獰猛さを秘めて、 艶やかに笑った。 「大丈夫よ、うまく、やるわ。」 王宮の清聴の間から、緑鱗の塔に向かう長い廊下。 重厚な赤い扉が開かれ、豪奢な服を着た太った男が、 ゆっくりと歩いていく。 分厚い顔に、巨大な目がギロリと動いた。 大きく分厚い唇がかすかに笑う。 「おや、そなたは・・・拳闘士のエルザ・クラウンどの」 細く描かれたような眉がピクリと動いた。 そこに、片ひざをついてかしこまるエルザがいた。 「はい、お目を汚します。摂政バタラ・デビ・ヴォム・レイレン侯爵閣下。」 「いやいや、そなたの武名はよく耳にいたしますよ。」 ゆっくりと歩きながら、6人の男女を引き連れ、 巨大で印象的な顔をうなづかせる。 非公式な略式の謁見として、廊下を使う事は、意外に多い。 緊急の用件、内輪の話、 そして、『他人に聞かれたくない時』などに。 侯爵は足を止めようともせず、 レイラも優美に身を起こし、そっと後方についていく。 長目の地味な上着だが、 深いスリットから、しなやかで理想的な脚線美が、まぶしくひらめく。 とても格闘のプロとは思えない、美しすぎる脚だが、 彼女の筋肉は極めて細かく、そして極限まで無駄なく絞り込まれていた。 その上に、成熟した女の肌が艶めき、筋肉はほとんど目立たない。 そして相手、特に男の目をそらす働きまでしている。 彼女自身は、単に動きやすいから、そうしているだけだが。 「お尋ねいたしてもよろしゅうございますか?、レイラ・シュヴァイツァーの事。」 「ふむ」 意味の読めぬ声に、許可と踏んで、 エルザは言葉を続けた。 「彼女が行方不明というのは、ご存知かと思います。」 知らぬはずが無い、この地獄耳の侯爵が。 「前置きは抜きにしましょう、それに・・・、」 そう言いながら振り返った侯爵の顔は、 無表情の中に奇怪な喜悦をにじませていた。 「よろしいのですか?、あのような者に。」 付き従っていたオレンジの髪の若い女性が、 そっと小声で尋ねた。 すでに、エルザの姿は無い。 「かまわぬさ、むしろ面白い事になろう。」 ぞっとするような笑いが、その巨大な顔に浮かんでいた。 『レイラは、ある事件の首謀者とひそかに会っていた。』 王家の忍びの首領と、竜騎士2部隊が行方不明となったその事件、 『その首謀者は、ハデス・ヴェリコという賢者。』 侯爵の口からでたハデスの名は、エルザに衝撃を与えた。 レイラも、エルザも、知らぬでは済まされぬ名であり、 大事件の首謀者として、否定が難しいほどの存在でもある。 事実、彼女が引き起こした騒動は、 エルザも何度か巻き込まれ、えらい目にあっている。 そして、何の見返りもなく、 侯爵がここまで打ち明けるはずがない。 何より、『知らぬでは済まされぬ』相手。 『エルザ殿、期待していますよ。』 ・・・・はめられたかもしれない。 場合によっては、彼女自身も疑われても不思議は無かった。 だが、略式とはいえ、謁見の上での話、 レイラのためにも、自分の潔白の証明のためにも、 与えられた情報に対する、返答を持ち帰らねばならない。 ハデスを追う以外に、方法は無かった。 「ふっふっふっ、思わぬ援軍も飛び込んできた事ですし、 高い金を払うのです、彼らにも頑張ってもらわねばね。」 緑鱗の間に、5人の男女が思い思いの姿勢で立っていた。 ビリビリと張り詰めた気が、 侯爵の秘書官たちを、怯えさせる。 to be continue