はじめに このSSは、あくまでMORIGUMAの勝手な妄想において、 竜神の迷宮事件が、20年後に引き起こすIFという事で、 組み立ててみてます。責任は私にあります。 変わる人、変わらない人、時は残酷に過ぎていきます。 勝手に引っ張り出したキャラの親御さんで、 ご不満がおありの方は、遠慮なく申し出てくださいませ。  <壊れた心をひきずって>  その5 −『ONIの泣く夜』−  byMORIGUMA  ドガガッ、ドガガッ、ドガガッ、 激しい雨の中、馬のひづめの音が走る。  ピカアッ 閃光と雷鳴が、一瞬、闇の世界をさらけ出す。 黒い巨馬と、白い肌、長い白金の髪。 宝石と金糸を編みこんだ紫の下着に、 赤皮のハーフブーツに短いジャケット。 怒りに光る目は、鮮やかなアメジスト。 『史上最悪の賢者』 ハデス=ヴェリコだった。 濡れた紫の下着が、雨にはりつき、 長い脚線美が、馬の胴を締め付ける。 だが、横腹から足に流れ落ちる赤黒い痕は、 おびただしい血の色。 勝気で傲慢な美貌は、怒りの鬼相を帯び、 血走ったアメジストの目の下に、 出血によるくまが現れていた。 『くそっ、あたしとしたことがっ!』 わき腹に、何度目かの治癒の呪文を投じようとするが、  バリバリバリッ 身体中に突き刺さった黒い針から、 魔力に反応した電撃が走った。 太めの釘のような針は、細かな魔術の紋様を刻まれた上、 釣り針のような逆とげをはやし、容易には抜けない。 魔術の紋様は、魔力に反応して自動的に電撃を発するのだ。 わずかな集中阻害、それだけでも呪文の効果効力は、大幅に減ずる。 びくっと馬も震え、足が乱れた。 闇の中を、無数の気配が追ってくるのを感じる。 ここで馬が足を止めれば、最後だ。 ハデスは、わずかに痛覚が引いたことに我慢するしかなかった。  ピシャアアアッ また一つ、落雷が夜の闇を裂いた。 だが、暴かれたはずの闇の中に、 闇が凝り固まったような、影が立ちはだかっていた。 2メートルをはるかに超える巨体。 暗闇の色をした、薄い布の服は、 幅も厚みも恐ろしいほどの圧力を発していた。 だが、何よりその姿を見たものは、 闇の悪夢に、うなされることになる。 巨大な白い顔。 落ちくぼんだ眼に金泥の巨大な目玉。 凶悪に裂けた口は、恐ろしいまでの牙を、 上下に唇からはみ出させ、 その額の両脇からは、鋭く太い角が禍々しく伸びていた。 般若(はんにゃ)と呼ばれる、東洋の魔物『ONI』の顔。 激しい怒りのオーラが、その鬼面から吹き出していた。 『おのれ、おのれ、おのれええっ、  我が結界を破りおるとはあああっ!』 周りに控えていた、数個の影、 暗闇と同じ色の、東洋の服に、 稲光に一瞬浮き上がる顔は、全くの無表情。 己の死すらも、その顔のままいくであろう、 人にして人にあらぬ者たち、『忍び』。 だが、『ONI』の声に出さぬ激しい怒りの気に、 恐怖を知らぬはずの彼らが、ほんのわずか身体を震わせた。 凶暴に沸き立つ血を沈めねば、 すさまじい殺戮の嵐が吹き荒れることになる。 すでに、察していた者が、 長い袋を担ぎだしていた。 ビリビリビリッ わざと、音を立てて袋を引き裂くと、 ごろりと、もがく物が転がり出た。 「んうっ、うぐっ、うううっ!」 長いスカートのすそが乱れ、 健康的なむっちりした足が、むき出しになっていた。 さるぐつわを噛まされ、 両手を後ろに縛られ、 つぶらな黒い瞳が、恐怖におびえきっていた。 近所の農家からさらわれてきたばかりの娘だった。 巨大な岩盤のような胸板が、大きくうごいた。 「んうーっ!」 三つあみのおさげをつかまれ、軽々とひきあげられ、 皮ごとちぎれるような痛みの中、 闇夜の悪夢が、それすら忘れさせた。 シャアアアッ 黄色い尿を派手に撒き散らし、恐怖にあがく。 悪夢にも出てこぬような、ばけもの。  ビリィィィッ まだ薄い膨らみかけた胸、 ほとんど何の茂りも無い無垢なる身体、 まだ14、5の細い裸身が、 闇の中に痛々しく浮き上がり、 釣り上げられた魚のように、むなしくもがいた。 強靭な手が、ほそくしまった両足首をつかみ、 必死にあらがうそれを、 人形を壊すように、ぐんっと広げた。 「んうーっ!、んうーっ!」 さかさまに少女の身体が倒れ、 雨に打たれながら、青白いほどの白い肌が広がり、 まだ華奢な腰や足が、雷鳴の光に晒される。 巨人の着衣のへその部分が盛り上がり、 ぐいと腰をくねらすと、着衣がずれた。 ぬるりと異形の物が伸びた。 人の腕ほどもあろうかというそれが、 湯気を立てながら、激しく脈打っていた。 青黒く、異常に血管の浮き上がった生殖器。 小さな、愛らしい場所が、 グロテスクで凶暴な青黒い物に襲われる。 「んぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 ビチッ、ブチッ、ビチビチッ、 鮮血が飛ぶ、悲鳴が響く、 裂ける音、引き裂かれる粘膜の悲鳴、 白目を剥き、さるぐつわの隙間から、泡を吹く少女に、 その苦痛は容赦なく突き進む。 破瓜の血の匂いに興奮し、 痙攣する肉体の感触に狂喜し、 ただの獣と化したそれは、若い肉を貪り続けた。 白い足首が、ガクガクと震えた。 オスの脈動が、絶望する少女の中を蹂躙した。 ドビュグッドビュグッドビュグッ のけぞる腹に、おびただしい震えが走り、 泡がさるぐつわの縁から零れ落ちる。 「うがっうがっ、がっ、うごっ」 獣そのものの声で、巨体が動き出し、 萎えない巨根が、あふれるザーメンと血の中を動き出す。 どこかで、かすかなため息が聞こえた。  黒い馬が、木の根か何かに脚を取られたのか、がくりとヒザを折って倒れた。 音も立てずに追っていたいくつもの黒い影が、急速に近づいた。 嵐で、目潰しや吹き矢、しびれ薬等は使えない。 卵の殻の中に、乾いた石の粉と唐辛子末を入れた目潰しは、 視覚封鎖と呼吸困難を同時に起こし、 相手の動きを封じるのに、効果的だ。 音も立てず、目にもとまりにくい吹き矢も、 麻痺毒を塗れば、忍びが持つと凶悪な兵器となる。 『生きて捕らえる事』を厳命されていた忍びたちは、 手裏剣や、分銅をつけて女の髪を編みこんだ縄を取り出していた。 重い鉄の手裏剣は、薬を塗らずとも投げつければ、簡単に手足の骨を砕く。 分銅をつけた縄は、生き物のようにからみつき、 相手の動きをやすやすと封じる。 樹にすがって、のろのろと立ち上がろうとする女を捕らえることは、 造作ないはずだった。 だが、それこそがハデスの罠だった。 嵐の中の長い疾走で、忍びたちですら疲れていた。 倒れた獲物に、全員が夢中で駆け寄り、 連絡役や、警戒役を持つ忍びすら、 忘れてフォーメーションを壊してしまっていた。 『魔力を使うだけが、魔法だと思うなよ!』 ハデスが凶悪な笑いを浮かべた。 彼女は『賢者』なのである。 忍びたちは平常であれば、絶対しない事に、 巧妙に誘い込まれていた。 <<雷の時は、高い樹には近づいてはならない>> 一本だけ、ぽつんと取り残されたように伸びた樹。 偶然と地形の恩恵から、雷の被害にあわなかった樹に、 ハデスは手をついて、タイミングを計ると、 雷撃の強力な呪文を放った。 あらかじめ気を整えておけば、 全身の電撃も耐えることはできる。 その間に、忍びたちの影が肉薄する。 忍びの迫るタイミング、雷光のリズム、 その全てを計る能力も、また一つの魔法に等しい。 樹に走った雷撃が、天空を駆け巡る雷を絶妙のタイミングで誘った。  グワアアアアアアアッ 3本の雷が、同時に樹に落ち、 樹の枝から、手裏剣や分銅を握った忍びたちに襲いかかった。 人体で一番電気を通しやすいのは神経である。 手から身体の中を通り、足へつきぬけた雷撃は、 神経や筋肉、内臓を焼き尽くし、全員が即死か戦闘不能の重症になった。 ハデスにも頭上から直撃したが、 身体中に突き刺さっていた金属針が、 避雷針のように、針から針へ雷を誘導し、足元へと抜けさせた。 針は全て、雷の負荷に耐え切れず、弾け飛んだ。 雷は表面の金属などを伝うと、 体内に入らず地面へ落ちることも多いのである。 「く・・・っ!」 とはいえ、逆とげをはやした針は、 弾け飛ぶときに、皮膚や筋肉を引き裂く。 雷のダメージも少なくは無い。 皮膚表面に、広範囲の火傷が走っている。 必死で治癒呪文を唱えると、 なんとか痛みが引いてきた。 足を折った馬にも、治癒呪文をかけると、 ハデスは冷えていく身体にムチをうち、走り始めた。 治癒呪文は、体力を元にして、 傷やダメージを高速で直す魔法であり、 見かけ上のヒットポイントしか治せない。 眠らずにいられる人間はいないのと同じである。 体力を元に戻す魔法は、極めて高位の神術系にしか存在しない。 ましてや相手は、忍びたち、 即座に追撃がかかることは、目に見えている。 どこの忍びなのかは、考えるまでも無い。 行きがかり上とはいえ、先日クルルミク王家の忍びの女頭領の末路を、 見届けたばかりなのだ。 だからこそ、・・・ハデスは馬の向きを変えた。 追っ手の全滅と、 ハデスの逃亡の報告を受けた鬼面の巨漢は、 むっつりと黙り込んだ。 忍びとは、一面スパイであり、テロリストであり、暗殺者でもある。 対象を必ず抹殺するためのシステムが存在する。 クルルミクの忍びは、特にその方面では優れ、 狙ったターゲットを逃がしたことは無かった。 生け捕り目的とはいえ、賢者一人を取り逃がすなど、 初めての事だった。 先日、忍びの女頭領が、行方不明になった。 その直前、彼女はひどく目立つ女性の報告を聞いていた。 顔色を変えて立ち上がり、そして消えた。 それは例の竜神の迷宮事件で、色々物議をかもしたあげく、 行方不明になった『史上最悪の賢者』ハデス・ヴェリコだと分かった。 それゆえ、忍びたちはハデスの情報を集め、対策を練り、 万全の状態で捕獲するはずだった。 高レベルの魔法を持つハデスだが、好んで『分身』を使う事が多い。 そのときは、同時に防護魔法は使えない。 口は一つなのだから。 その瞬間を狙って、忍びの二人が至近距離で自爆し、 無数の対魔法使い用の『針』をまきちらし、 ハデスに手傷を負わせ、魔法を封じた。 もちろん、仲間の忍びも巻き込まれ大怪我を負ったが、 それをあえてやる所に、忍びの恐ろしさがある。 いまだ、ハデスの足取りはつかめていない。 クルルミク周辺の街道は、要所を押さえてあるはずなのにだ。 もし、あんな場所に馬がいなければ、 徒歩のハデスは町外れから逃げ出せることも無く、 すでにつかまっていたはずだった。 『・・・・あんな場所に?』 鬼面の巨漢は、胸中に沸いた疑念に、必死に考え始めた。 「ん・・・あむ・・んんっ、んふんっ」 暗い粗末な部屋に、甘い女の声がする。 かすかな獣脂のランプが、 白くぬめるような肌に、切り取ったような陰影をつける。 長いまつげが濡れたように光り、 媚を含んだアメジストの目が、そそり立つ男根を映す。 赤い舌が、別な生き物のように伸び、 唇がキスし、包み、しゃぶり上げ、 トロトロに濡らし、興奮をあおっていく。 太った男の股間に顔をうずめ、異臭を高い鼻に嗅ぎながら、 全裸のハデスは、丁寧に、甘く、奉仕を続けていく。 「んっ、んうっ、ええだぞ。そ、そこいいだ。」 武骨な農夫らしい男は、 満足げな声をあげて、ハデスの巧妙なテクニックに、 必死に耐えていた。 そして同時に、めったにない幸運にこっそり感謝しながら、 ハデスの顔に押し付けて、思いっきり放った。 「お、おめえが馬ぬすっとかや?!」 農夫は、用事から戻る途中で嵐に会い、 めったに使わない無人の小屋に逃げ込んだ。 自分の持ち家の一つで、ちゃんと馬小屋もついているが、 町外れもいいところの寂しい場所で、 家からも離れているため、使わないのだった。 だが、ようやく嵐がおさまり、 帰ろうとすると馬のアオがいない。 あわてて探していると、女がアオに乗って戻ってきた。 農夫が一番可愛がっていた馬なので、激昂するのも無理はない。 この時代は、家畜の財産価値が恐ろしく高く、 反面戦争や軍役で、国家に供出させられることもあるため、 国が所有権の保護を非常に強くしている。 家畜泥棒は持ち主に殺されても、文句が言えない。 「ごめんなさ・・・い・・・」 アメジストの目に涙を浮かべて見せながら、 ハデスは、農夫にもたれかかるようにして失神した。 半裸の、それもそうとうな美人が、 びしょ濡れで倒れ掛かるのに、農夫はぎょうてんした。 大きな胸の谷間に、手が入り込んでしまったが、 柔らかな肌は、ひどく冷え切っていた。 あわてて古い毛布にくるむと、本宅へ連れ帰ったのだった。 割と大きな農家だが、 人の気配が無い家で、農夫は急いで火をおこし、 ハデスの服をひっぺがすと、自分も裸になって抱き込んだ。 新しい毛布をひっかぶり、 冷え切った白い肌を、乾いたタオルでこすりながら、 空いた手で、全身をなでさすり続けた。 徐々に冷え切っていた肌が、ぬくもりを取り戻してくると、 はたと我に返った。 どう見ても20前後、 少々きつめだが、めったに見ないほどの美人を、 全裸無防備の状態で抱き込んでいるのだ。 また、その裸体の極上なことは、 抱きしめている柔らかさ、重たげで美麗な乳、 引き締まった腰つきに、絶妙の脚線美などなど、 気付くと身体が、かっと熱くなってくる。 冷たかった乳房は、手にずっしりと重く温かく、 乳首の柔らかさが、手のひらに感じて、 血がどっと股間に集まる。 『まあ、こうなっちまったら、食っても一緒だんべ。』 右手を、失神したままのハデスの股間に滑り込ませ、 無抵抗な秘所を探ると、茂みの奥の柔らかなふくらみ、 そして小ぶりなスリットがあった。 指が探り、そっと開きながら、中指をもぐりこませる。 クチュクチュ、と音を立てながら、 柔らかい粘膜を探り、なぞり、かき回していく。 目の前にある青白いほど白く、細いうなじも、 思わず口をつけ、なめあげ、キスマークを散らし、 乳房のふくらみに口を埋めていく。 昨年家族をはやり病で亡くし、 女に触れたのは久しぶりだった。 まして、こんなに夢中になっていくのは。 息を荒げ、ふくらみに甘くかぶりつき、 乳首をチュウチュウ吸いまくる。 あそこが次第にトロトロと濡れてきて、 指の根元まで濡れていく。 両手で、よく張った尻肉を掴み、 腿の付け根で持ち上げた。 ぱっくりと開いたあそこから、雫が一筋垂れ落ちる。 クチュルッ 女のあそこは、ギンギンにそそり立った農夫の黒肉を、 やすやすと飲み込んだ。 「くうぉっ、こ、こりゃあ・・・」 柔らかな女の粘膜は、 何十人もの男の精を吸ったのか、 恐ろしく柔軟で、ぴったりと武骨な男を包み込んで離さない。 密着してくるのは、粘膜だけでなく、 女の肌も、乳も、腿の白い内側も、 男に吸い付いてきて、離れないような錯覚を覚えさせる。 興奮が腰を突き動かし、 ぬらぬらと、胎内を律動し始める。 無抵抗な女の肉を、存分に突き立てる感覚は、 これまた新鮮で、興奮が高ぶってくる。 失神したままの女の息も、次第に荒くなり、 美しい柳眉が、震え、かすかにしかめられる。 グチュルッグチュルッグチュルッグチュルッ 白金の髪を揺らし、しなやかで熟れた肉体を揺さぶり、 女の腰を深く割って、濡れそぼる肉襞を突きまくった。 集まりきった血が、沸騰した。 『や、やばいっ!』 必死に引き抜こうとする黒肉を、 女の粘膜は、ぎゅううっと引き締めて離さない。 その抵抗で決壊した。 ビュドッ、ビュドッ、ビュドッ、ビュドッ、 思わず女の膣の奥に、思いっきり突き上げていた。 あせりと、罪悪感と、そして無抵抗な女の膣に射精する喜悦が、 痙攣する膣の中に、くりかえしありったけの精液を放出させてしまった。 荒い息で、ハデスを抱きしめたまま、 放心していた男は、ぼそっと、 「すまねえ・・・」 心底もうしわけなさそうに、小さな声で。 失神していたはずのハデスが、かすかに笑った。 あのハデスが、『史上最悪の賢者』が、 この程度で失神なぞするわけも無く、 涙を浮かべて倒れ掛かった所から、芝居である。 ただ、身体が冷え切って、疲れていたのは本当で、 わざと馬どろぼうとして捕まることに賭けたのだった。 農家の小屋に、スケベそうなおやじ、 ハデスは、狙い通りの相手に『しめた!』と思いながら、 わざとしなだれかかってみせた。 相手は忍びの集団、 下手に逃げ回れば、即座に捕まる。 こういうスケベおやじに捕まるのは、かくまわれるのと同じ。 身体をエサにするぐらい、安いものだった。 『ただまあ、本気であんなに一生けんめい、  身体をさすってこすって、必死になってくれるとは、  思ってなかったけどねぇ。』 最後はSEXになだれこんだが、 冷え切った身体を抱きしめ、必死にさすってくれたことは、 意外にハデスのつぼを突いていた。 目を覚ますと、丁寧に後始末をされ、あったかい毛布に包まれ、 手にもうしわけ程度の手鎖と、細い首輪に鎖でつながれていた。 『う〜ん、困ったもんだわね。』 思わず苦笑してしまう。 手鎖は甘いし、首輪は細い、 つないだ鎖も細いし、つないだ先がまた柱にいいかげんな結び方。 普通の女性でも、ちょっとがんばれば、すぐ外れるだろこれは。 なんというか、形だけ捕まえられてるけど、 ほとんど『逃げてもいいよ』と、言われてるようなものだ。 『かえってはずしづらいじゃない、これじゃあ。』 太った農夫は、朝飯を運んでくれた。 スープにパン、それにチーズと、かなりちゃんとしている。 「さて事情はどうあれ、馬ぬすっとは重罪なのは、知ってんな。」 はい、としおらしくうなずくハデス、 「お上に突き出してもいいんだが・・・、」 困った顔をするハデスに、 「おめえが、それなりの誠意をみせるんなら、考えてやっていいぞぉ」 とまあ、ふんぞり返る。 おねがいいたします、としなだれかかったハデスが、 開いた股間をさすると、隆々と盛り上がってきた。 おずおずとしてるように見せながら、 男の黒肉を引き出し、愛撫を始めたのだった。 顔をトロトロに光らせながら、 ペニスを丹念にしゃぶり、キレイにするハデスに、 ペニスもまた勢いを取り戻す。 「ようし、尻を向けろ、尻。」 頬を染めながら、おずおずと、 引き締まった腰をむけ、ぷっくりした形のいい尻をあげた。 だが、もう一筋、雫が腿を伝っている。 「おう、なんだこりゃあ。」 ビンビンになったペニスで、ぷっくりした尻肉をペシと、叩き、 「なめてる間に感じやがったか?、えれえ淫売じゃねえか。」 ペシ、ペシ、とこん棒のようなペニスを、尻肉にぶつけた。 「ああん、い、いわないでぇ」 恥ずかしげに言うハデスに、ますます逆上、 「こんな淫売には、前戯なんざいらねえな、おしおきだ、おしおき。」 いきなり、ぐいと突っ込んだ。 濡れているとはいえ、相当抵抗がある。 「んあああんっ、い、痛いいぃ、もっと、優しくぅ、」 声をあげて、尻をイヤイヤさせるハデスに、 「んだあ?、何甘えたこと言ってやがる、おらおらおらぁ。」 きつく抵抗がある膣肉は、むしろ刺激が激しく、 突き出した腰を掴み、ガンガンうちつける。 「このっ、馬ぬすっとがっ、かくごっ、しや、がれっ、」 激しく突き揺さぶられ、胸がシーツをこすり、 あえぎながら、かすかに笑いつつ、高まってくる快感に、 あそこがジュンジュンと濡れて、 律動はますます激しくなった。 膣とペニスが激しいせめぎあい、 あえぎと、悶え、暴行と、狂乱、 のけぞる女体の奥に、男がたたきつけた。 「うりゃぁぁぁぁぁぁっ!」 「うあっあっ、ああっ、ひっ、いああああああああああっ!!」 ドビュグッ、ドビュグッ、ドビュグッ、 硬直した肉体の奥に、ぬめり放つ音が、くりかえした。 男女のあえぎと、かすかな動き、 農夫がぐふぐふと笑う。 「ぐふふふ、意外に具合がいいじゃねか。つい中に出しちまったぜ。」 あえぐハデスが、恨めしくつぶやく。 「ひ、ひどい・・・」 「ぬすっとへの当然の罰だ、まだまだおわらねえぞ。」 片ヒザを掴み、ぐいと広げて、あそこへ深く突っ込む。 「いやあっ、中に、中にいっぱい入ってるぅ。」 そう言ってイヤイヤと首を振りながら、 自分から腰を振っているハデス。 けっこう具合のいい感触に、 艶のある声で、嫌がりながら、身体を深く絡めあい、 快感を貪っていた。 相手の男も、ある程度察しているらしく、口調も芝居がかっていた。 嫌がっている風でありながら、 身体を積極的に絡め、快感で締め付けてくる動きに、 顔がゆるんで気持ち良さそうである。 言うなれば、大人のじゃれあい。 二人は猫のようにじゃれあい、さかりあいながら、 お互いの肉体を、むさぼりあっていた。 「デスタス様、報告書が届いております。」 初老の執事が、銀の盆にのせた紙を差し出す。 身長180センチぐらいで、がっちりした体格の腕が、 それを掴んだ。 筋肉の塊のような、四角い体つきに、短く刈った黒い髪、 いかつく鼻の太い顔が、太い眉と、糸のような細い目で、 じっと報告書をみていた。 「姉上」 これまた太い、石のすれるような声で、 窓際へ歩み寄る。 窓際の暖かい場所に、その女性は静かに座っていた。 いや、車椅子である彼女は、座っていることしかできない。 きれいなストレートの金髪が、日差しをはじき、 細い繊細な面差しと、青い目が、物憂げに顔を上げた。 その顔は、あの忍びの女族長によく似ていた。 立てば150センチぐらいだろうか?。 ほっそりした肢体は、ワルツを踊れば、 社交界の花として話題になったことだろう。 マエッタと呼ばれる少女は、報告書を青い目で見ると、 弟デスタスの目を見て、何事かをアイコンタクトで伝えた。 デスタスは、それで全て分かったようにうなずくと、 執事に向かって、2,3命令を伝えた。 深々と礼をして去る執事に、振り返りもせず、 そっと車椅子の取っ手を握った。 「姉上、もうひなたぼっこは十分でしょう、 あちらでお休みください。」 キイ・・キイ・・・ かすかな音だけで、ほとんど揺れもぶれもしない車椅子は、 隣の部屋に消えた。 扉が閉まると同時に、薄暗い室内に数個の気配が起こった。 濃い茶色一色の、目だけを出した薄い服。 背中には、忍び刀と呼ばれるつばのある直刀。 クルルミクの王室が抱える忍びたち。 先日行方不明になった女頭領には、二人の子供がいた。 “ロック(岩)”のあだ名を持つ、弟のデスタス。 “クリスタルフラウ(水晶花)”のあだ名を持つ、姉のマエッタ。 あだ名は、優れた忍者にのみ、与えられる称号のようなものだ。 だが、弟はとにかく、車椅子から動くことのできない姉も、 あだ名を持っていた。 「ロック」 その姉が、先に口を開いた。 「はい、姉上。」 さっと紙を広げ、筆を墨に浸して、かまえる。 「お前たちの報告、今来た王家の情報網からの報告、 それらから、各町や村にハデスの痕跡がありませぬ。」 クルルミク周辺の町や村の名が、ささっとかきこまれ、 それらにチェックをいれていく。 「ハデスの状況からみて、体力を消耗し、嵐で叩かれた状態で、 夜の街道外の道を抜けた可能性は、極めて低いでしょう。」 街道以外の道は、ほとんど獣道に等しく、 まして嵐の夜には、川のような水路になったり、 泥、がれき、がけ崩れなど、人が通れる状況ではない。 空を飛んで逃げたので無い以上、 クルルミクの王都に潜伏している可能性が一番高い。 だがしかし、つい最近まで行方不明になっていたハデスに、 クルルミクで隠れる場所があるのだろうか?。 彼女の昔の知り合いたちは、全員チェックを入れられている。 残るは、旧市街のスラム以下の『棄民地区』か、あるいは・・・。 「あの目立つ女が、『棄民地区』に隠れた可能性はむしろ低い。 最初の逃亡した場所、あの馬がいた辺りを、もう一度重点的に捜査。」 その他、王家からの命令や、内部の連絡、情報収集の定時報告など、 山のような数の案件は、ほんの数分で、全ての方針が決まると、 部屋の気配は即座に消えた。 恐るべき情報管理能力、それが“クリスタルフラウ”の能力のひとつ。 だが、静かになった部屋の中で、 青く激しい輝きは、どんよりと曇り、そして、閉じた。 すやすやと眠る姉のわきで、 弟は、眠りをわずかも邪魔すまいと、 静かに立っていた。 チャラ、チャラ、 細い鎖を握った農夫が、 裸のままのハデスを連れて行く。 ほとんど奴隷扱いだが、実際に家畜泥棒をすると、 捕まった時、奴隷として売り飛ばされることも、珍しくはない。 人と家畜と同レベルで扱うのかと言われそうだが、 大型の家畜一頭を、上手に解体処分すると、 家族5人が一冬飢えずにすむ、そういう世界なのである。 ハデスは、胸と前を手で隠しながら、 しおらしくついてきた。 やってきたのは、浴室。 おおぶりで、4つ足のあるバスタブと、たっぷり湯を入れた大きな桶があった。 ハデスと戯れたあと、何かごそごそしていると思ったら、 これを用意していたのだ。 もちろん、バスタブは空で、湯をかぶるのである。 「ほれ、入れ。」 「え?」 てっきり入浴の世話をさせられると思っていたハデスは、 バスタブに入れられてしまった。 ざぶっ、 「にゃっ」 いきなりざんぶと、熱めの湯をかぶせられた。 「ま〜、使うにしろ、売り飛ばすにしろ、キレイにしとかにゃなぁ。」 本気か冗談か、いまいち分からない口調で、 タオルに石けんをなすると、 ハデスをごしごしこすりだす。 「ちょっ、ちょっと、やああん。」 困惑するハデスの、なめらかでセクシーな背中から、 でっかい胸をモミモミ、 「うむうむ、ちょっと細ぇが、にくづきはええな。」 ピンクの乳首をキュッとつまみあげる。 尻をこねくるように嬲り、アナルまで指を突っ込み、 「にゃっ、ああんっ、あうっ、あっ、」 悶える真っ白い尻肉をふんふんと嗅ぎ、 「このへんは、特にええなぁ。」 あそこをパクパクさせて、 いやいやするハデスのピンクのひだひだまで覗き込み、 「意外にきれいじゃのう、どスケベのくせにたまらん色じゃ。」 ヒクヒクする粘膜に、指を突っ込み、 内側からさぐりまわす。 「にゃああっ、あんっ、そ、そこはだめぇ、描きまわさないでぇ。」 弱そうなGスポットまで探られ、根元まで中指を突っ込み、 ニヤニヤしながら、したい放題である。 ハデスもハデスで、いやいや言いながら、 尻を突き出し、あそこを押し付けていた。 「腿の肉もなかなかじゃの、こりゃあええ家畜になるぞぃ。」 ぐいと左足を持ち上げ、青白い内股をぺろりと嘗めあげ、 震えた肉を、かぷりと噛んだ。 「ひぁっ!」 わずかに歯型がつき、かぷ、とまた噛んでは、 ぐにぐにと口を動かす。 「やんっ、やんっ、たべちゃだめぇぇ。」 「ん〜、美味美味。」 泡だらけでもてあそばれ、 のぼせ気味のハデスは、全身ぐにゃぐにゃ。 大ぶりのバスタブは、二人はゆっくり入れる。 農夫も太った身体を沈めてきた。 泡だらけの身体で、ハデスが抱きつく。 豊満な胸の感触が、胸板にこすれ、 若い肌の感触が、全身に密着してくる。 わざと身体をなすりつけ、農夫の身体を女体で洗う。 白金の髪をすいてやりながら、農夫は楽しげにそれをあじわう。 ハデスの薄い唇が、武骨で日に焼けた唇を捕らえ、 舌をからみつけ、すすりあう。 「はむ・・んっ、はんっ、んちゅ、」 太った農夫の腰を、引き締まった腿で挟みつけ、 しなやかな白い手で、日焼けした背中を抱き、 濡れた茂りで、そそり立つペニスの根元と絡めあう。 ザブッ、ザッ、ザザッ、 激しく絡み合う動きで、 湯があふれ、盛大にこぼれる。 王都は、城を中心に、 貴族地区、豊かな商工地区、外区画、農地と、 円を描き、数層に分かれている。 ここは農地の少し手前、人口の少なめな外区画に属する。 クルルミクのてだれの忍びたちに狙われ、 王城が望めるほどの近くにいて、いわば敵陣。 そんな場所で、裸で男と抱き合い、無邪気にたわむれあう、 危険だから興奮するとか、刺激があるとすら思っていない。 心底楽しげに、面白そうに、 表情が妖艶さを増し、肌の色つやまでも増していく。 みなぎってくる生命力が、女の色香をますます立ち上らせる。 気持ち良いたわむれの中でも、 男がとうとう我慢が切れた。 腰を抱き、自分の上に引きずり上げた。 ギンギンに反り返った黒肉の上に。 ハデスの淫肉が広げられ、 ザブリと落とされた。 「んっはああああんっ」 グチグチとゆっくりと、 男根が侵入してくる。 ザバッ、ザバッ、 湯が揺れ、ハデスの身体が浮き上がり、 「んはっ、はっ、あんっ、」 ゆらゆらと揺れる裸体が、濡れて光りながら、 声を上げて、男にしがみつき、 下半身を激しくくねらせる。 もっこりした尻がくねり、 飲み込まれた黒肉が、くねられ、締められ、 上下する動きが、激しい刺激を引き起こし、 男はうめきながら、 女はあえぎながら、 身体をのけぞらせて、ぶつけ合う。 ザバッ、ザバッ、ザブッ、ザブッ、 水音が続く、 「んっ、んっ、あっ、ああっ、」 ハデスの声が濡れる、 バスタブがきしみ、しぶきが跳ね上がる。 爪が、男の肩にしがみついた。 赤い痕がきざまれ、痙攣する。 「んはああっ!!」 ぶるぶると、二人の身体が震え、 深くつながった身体が、どろどろに蕩けあう快感に貫かれた。 胎内深く、息づいてるそれに、 ハデスは満足げなため息をもらした。 何かが、この男にも業火をまとわせている。 どこかで、壊れた心をひきずっている、そんな気がした。 太った農夫が、畑を耕していると、 黒づくめの男が二人、鋭い眼をしてたずねてきた。 「お前は、妙に派手で、怪しい姿をした女を見なかったか?」 王国の下級役人である印を見せながら、 横柄な口で、聞いてきた。 もし、わずかでも農夫が動揺を見せたり、 顔色を変えたなら、二人は即座に気づいただろう。 二人とも、忍びなのである。 「女だぁ?。おれんとこは、昨年の疫病で家族はみんなおっちんじまったよ。 いるのは家畜だけさ。 先日も真っ白い子猫を一匹手に入れたんだが、見るかい?、かわいいぜぇ。」 「けっ、馬鹿が。」 動揺どころか、農夫の目は、さげすみを帯びていた。 からかわれたと感じた二人は、 腹立たしく、つばを吐いて立ち去っていく。 だが、その目の色が激しい憎悪を秘めている事までは、気づかなかった。 役人化すれば、忍びは見る見る能力が落ちるのだ。 『おっかあっ、おっかあっ、死ぬなっ、死ぬんじゃねええっ!』 悲痛な声が、薄暗い部屋にこだまする。 『わ、わたしはいいから、こ、子供たちに、お願いあんたっ』 やつれた女房の顔が、死相を帯びていく。 『だめだ、お前が飲むんだっ!』 『お願い、子供たちにっ!』 どんなに飲ませようとしても、妻は飲もうとしない。 急激に広まった疫病。 どんな医者も、扉を閉ざし、 ようやくのことで、薬屋が分けてくれた薬も、 一人分しか残ってなかった。 薬は治る可能性が高くなるだけで、特効薬などと言うものではない。 子供は体力が低く、治る可能性はなおさら無かった。 しかも二人いる。 どちらか一人を選ぶ事など、できるわけが無い。 そして、薬効の低い薬は、半分にすればほとんど効果は無いに等しい。 だがそれでも、夫は必死に祈りながら、 苦しむ子供たちに半分ずつ飲ませた。 『の、のんで、くれた?。』 『ああ、のんでくれたよ、お前も、がんばるんだぞ。』 『よかった・・・ごめんね、あんた・・・』 妻の声は、二度と聞こえなかった。 そして、子供たちも再び起き上がることは無かった。 あちこちで、不審な病が出始めた時、 王国は何の対応も取ろうとしなかった。 数年前の不審な王女の死の後、 第一王子もほとんど外に出なくなり、 竜王とまで呼ばれた名君のハウリ王子も、 公式の場に出ることは、年に数えるほどしかなくなった。 そして、摂政と呼ばれる、 王権の代理人が権勢をふるい出した。 せめて、先代の時のように、 市民に薬を施したり、司祭を走らせて、 市民の不安を取り除いたりしていれば、よかったのだろうが、 摂政は、市民からの訴えを握りつぶし、 何の対策も採らず、ただ税金の項目を増やす事だけに熱心だった。 農夫の心に、どれほどの憎悪が渦巻いていたか、 誰にも分かるまい。 どす黒い怒りを、太った腹の中に渦巻きながら、 農夫は、耕し終わった畑を後にした。 「うちの子猫は、よく寝てたようだな。」 真っ白い裸身が、毛布に包まれて、自堕落に寝ていた。 細い首輪も、柱につながれた鎖もそのままに、 眠そうに目を開くと、はだけた胸元も隠さず、 「ニャァ」 笑いながら、ハデスは猫鳴きして返す。 「すぐエサだからな、おとなしくまっとれよ。」 ひどい言い方だが、料理は熱心に作っている。 農家としては、かなり贅沢なものをハデスにふるまっていた。 彼女が怪しいことぐらい、分かりきっている。 だが、それが何だというのだ?。 ハデスはハデスで、 屈託の無い笑顔で、自分の境遇を味わっていた。 首輪と鎖・・・100年ぶりぐらいだろうか?。 モゴリフ侯爵に作られた頃の、 まだ何も分からぬ赤子のような時代を思い出す。 そして、面倒くさくなると、 金持ちの妾にもぐりこんで、何年でも自堕落な生活をしていた。 人に所有される事には慣れっこなのだ。 自分が狙われていることすら、すっぽりと忘れ、 ごろごろと、猫のように毛布に包まっていた。 「なにしてんだい?」 飯のあと、農夫が台所でごそごそ何かを作っていた。 長いしわくれた紐のようなものに、 くず肉とニンニクなどを混ぜたものを、詰め込んでいく。 「腸詰め(ソーセージ)作ってるんだよ。」 よく洗った腸に、次々と詰め込み、ねじり、また詰め込む。 なかなかの手際に、感心した目をして見ていた。 「やってみるか?」 「おう」 ハデスは不器用な手つきで、 悪戦苦闘しながら、子供が遊ぶように、 不器用な形の腸詰めを作っていった。 ただし、細い首輪をつけただけの全裸であぐらという、 とんでもない格好だが。 農夫はクックッと笑いながら、 楽しげに、全裸のハデスを眺めつつ、 黙々と腸詰めを作っていった。 どうしてもハデスの手がかりが掴めず、 忍びたちは、あせりの色を濃くしていく。 しかも、彼らはクルルミク王家直属の忍びであるが、 王が公式の場に出なくなり、ほとんど一切の公務は、 摂政の貴族とその関係の一族が握るようになっていたため、 必然的に、摂政の命令を聞かざる得ない。 王家にとっては、直属の忍びでも、 摂政のバダラ公爵にとっては、『単なる道具』である。 デスタスが苦りきった顔を隠そうともせず、部屋に戻ってきた。 「姉上、バダラ公爵がグラッセンの情報が少ないと言ってきている」 マエッタの額に青筋が浮かぶ。 『少ない』というのは、情報が足りないのではない、 『バダラ公爵の満足する報告が足りない』というのだ。 大きな混乱の後、旧王家の血を引く新帝が即位し、 急速に国力を回復しつつあるグラッセンに、 周辺国家は黙って見ていたわけではない。 クルルミクは、忍びを使い、騒乱を引き起こそうと画策した。 だが、想像以上にグラッセンの中枢は強靭かつ細心だった。 わずかな騒乱との引き換えに、忍びたちは多大な犠牲を強いられた。 「くっ・・・さらに騒乱を起こせと?。 あやつは、忍びがいくらでもいると思っているのですか?!」 “クリスタルフラウ(水晶花)”のあだ名を持つマエッタが、 返事を期待してこのセリフを吐いたわけではない。 分かってはいる。 バダラ侯爵にとっては、 『忍びの代わりなどいくらでもいる』なのだ。 国家という権力を握った者にとっては、忍びの一族の興廃など、どうでもいい。 使えなくなるまで、こき使えばいい。 “ロック(岩)”のあだ名を持つ、デスタスも、 苦い顔のまま、何もいわなかった。 ただ、わずかにゆらいだ目が、悔しさをにじませる。 『母上さえいてくだされば・・・』 その思いは、マエッタも同じである。 竜王の寵愛を得て、二人の落とし子を持つと噂された母親は、 大貴族たちといえど、警戒せざるえない存在だった。 その女頭領が、側近たちと行方不明になっていることは、 どこからか、侯爵たちに漏れ伝わっているらしかった。 「中忍“ONI”に伝えなさい、グラッセンに2部隊を差し向けるように。」 それは現在の忍びたちにとっては、かなりの数であった。 そして、数を減らされた忍びたちの必死の捜索にも関わらず、 ハデスの行方はわからなかった。 「んっ、んんっ、んふっ、ふっ、んうんっ」 甘いあえぎ声が、暗い部屋に響く。 ぴチャ、チュル、チュブ、ピチャ、ピチャ、 赤い舌がひらめき、あえぎ声とからみあい、 銀色の雫が、薄闇の中を落ちる。 かすかな犬歯の白さ、淫らな唇の動き、 すぼまり、すすり、しゃぶり上げ、 肉太のペニスを、翻弄し、もてあそび、奮い立たせる。 かさっ、かさっ、かさっ、 窓の外から、人の耳には聞こえないほどのかすかな足音、 忍びの、殺した足音。 ハデスの耳には、それが聞こえる。 「はあああんっ、入れて、入れてぇ、」 あそこを自分で嬲り、雫だらけにしながら、 興奮したハデスは、サカった声をあげる。 汗に光る背筋がぞくぞくし、快感が増幅していた。 「このメス猫め、まだしつけが足りねえだか。」 農夫は、にやにや笑いながら、 ハデスの片ヒザを抱え、片足立ちにさせると、 濡れた襞をめくり、一気に押し入った。 「にゃああんっ!」 ぞくぞくする、声が高ぶる。 外の足音が近づき、そして、止まりもしない。 ジュグ、ジュク、ズブッ、ズブンッ、ジュク、ズブッ、 「にゃっ、はっ、にゃっ、にゃんっ、あんっ、深いっ、ああんっ!」 ゴリゴリ、ゴツゴツ、肉襞を掻き分け、淫肉を小突きあげ、 ハデスのしなやかな肉体が、激しく揺れる。 窓の外で、かすかに視線が交わされ、 『ちっ、さかりやがって』 『殺したろか、田舎者め』 激しい、隠そうともしない、あえぎ声に、 不眠で赤くなった目に、濁った不満をつのらせて、 忍びたちは、疑いもせず走り抜けていく。 打ち付ける腰の動きに、 ベッドにしがみつき、何度も声をあげてのけぞり、 白金の髪が、激しく跳ね上がった。 まさか、激しく声をあげてSEXしている女が、 当のハデスだとは、思いもしないのだった。 男のうめきが、熱いほとばしりとなって、 反り返ったハデスの胎に、何度も撃ち込まれた。 開ききった白い腿が震え、 うめきと、痙攣と、濁液の白い雫が、 何度も零れ落ちた。 醜い男の陰嚢を、唇の中で転がし、 愛液と精液にまみれたペニスをしゃぶり、 再び勢いを取り戻していくそれに、にひっと笑う。 まるで、自分が狙われていることを、 忘れきってしまったかのように。 実際、忍びがうろつかないなら、 このまま男のペットで飼われていても、 何の不自由も感じないのがハデスの奇妙さだ。 鼻の穴のでかい、 カエルを潰したようなみっともないご面相に、 腹の突き出た中年男だが、 そそり立ったペニスに、ハデスはためらいも無く跨った。 ズブ、ズブ、ズブ、 「んっ、んっ、ああんっ、いいっ、」 真っ白い肉体が、ぞくぞくしながら腰を落とす。 潤んだアメジストの目を、農夫の目に向けたまま、 腰をくねらせ、入りゆくものをこね回しながら、 自分の胎内深く沈めていく。 3日の休息で、身体は十分に復調していた。 ただ、『めんどくさい』。 3日抱かれ続けて、体の慣れてきた男に、 このまま飼われているのもいい。 ひどいご面相も、けっこう面白い。 だが、また忍びの足音が近づき、そして遠ざかる。 『うるせえな・・・』 軽くイキそうになったところに、 足音が無粋な邪魔をする。 ぐっと深く沈め、ゴリゴリと子宮にこすり付けて、 感じる、しびれる、身体を震わせる。 「んはっ、あっ、ああんっ、」 「ここか、これか、これかっ!」 ズンッ、ズンッ、 農夫が合わせるよう、腰を打ちつけ、 ハデスの子宮を小突き、えぐった。 「はんっ!、はあっ!」 赤い唇が、銀糸を引いて、声をあげた。 瑞々しい乳房が、激しく跳ね、 ぴんと立った乳首がつままれ、ひねられ、声をあげる。 白い肌を桃色に染め、 深く腰をふるい、男にしがみつき、唇を重ねて痙攣した。 男の分身が、膣の底に激しく吼えた。 何度も、何度も、あびせるそれに感じて、イッた。 『意外に、よかったな・・・』 ふっと夜中に目を覚ました。 男に跨ったまま、数回絶頂に達して、 生で射精され続けた精液が、 たっぷり胎にとどまっている。 体の相性がいいらしく、けっこう気持ちが良くて、 このまま飼われていていいなと思ったが、 周りをうろつく忍びどもが、どうにもうるさい。 刺激にもなるが、イクのの邪魔にもなるし、 何かあったらめんどうくさい。 『しゃあねえな。』 ぐっすり寝ている農夫に、そっとキスをすると、 男の匂いをまとわりつかせたまま、置いてあった服を身に着けた。 「いっちまったか・・・」 農夫は、しばらくして目を覚ました。 ハデスが横にいない事と、首輪が置いてあるのに気付くと、 そうつぶやいた。 「最後の最後で、いい夢が見れたな。」 いい女だったな、いい体だったな、 自分みたいな男には、もったいないいい女だった。 年甲斐も無く、貪るようにSEXに溺れちまった。 身を起こすと、ずきりと中から痛んだ。 息が止まりそうなぐらいの痛みが。 胃に何かできているらしかった。 時折、真っ暗な穴に引き込まれるような痛みを起こす。 今のような。 医者がさじを投げたぐらいだから、 もう長いことは無いのだろう。 死期が迫ると、かえって無性にSEXしたくなることがある。 肉体が本能的に子孫を残そうとするのだろうか。 女房子供が死んで、自分だけ生き残ったら、 『自分だけ薬を買って生き延びたらしい』と噂され、 いい加減生きていくのは嫌になっていた。 ハデスの瑞々しい肉体と快感を思い出すと、 ふっと痛みが消えた。 周りの連中に、ざまみろと言いたいような、 ちょっといい気分だった。 鼻歌を歌いながら、太いロープを持ち出すと、 イスにあがって、家のでかい横木にかけた。 不思議と、もう何も怖くなかった。 イスが、大きな音を立てて倒れた。 王都の見捨てられた区画、 その一番奥にあるクルルミク書店に、夜中に客が訪れた。 「あら、ハデスどうしたの?」 細い、日陰の花のような女性が、 さほど意外そうでもなく顔を上げた。 深夜だというのに、まるで何事も無いかのように、 パーラは店に座っていた。 「まだ起きてたのか?」 ふっと、軽くため息をつくパーラ。 「というか、もう寝る必要も無いものね。」 彼女はアンデッドに近い存在であり、 むしろ昼間の方がうつらうつらしている。 「クルルミクの忍びのこと、分かるかい?」 急にパーラの目がギラッと光った。 パーラをアンデッドに落とした、最後のトドメになったのが、 クルルミクの忍びだったのである。 当然パーラはかなり詳しいはずだ。 「死者たちから分かる情報だと、 今の忍びは、先代女頭領の二人の子供、 “ロック(岩)”のあだ名を持つ、弟のデスタス。 “クリスタルフラウ(水晶花)”のあだ名を持つ、姉のマエッタ。 この二人が、上忍(司令官)となって、 その下に“ONI”と呼ばれる中忍(部隊長)が中心となって動いてるわ。」 「“ONI”ねえ・・・チラッとしか見なかったが、 あのでっかい白い顔のバケモノのことかな?。」 パーラが酷薄な笑いを浮かべた。 「そうみたいね、クルルミク王家の忍びは、上忍の一族が支配し、 中忍の筆頭になる“ONI”が実戦の指揮をとるのね。 “ONI”はいつも白い仮面をかぶっているって。」 体の隅々まで死と穢れを詰め込んだ少女は、 クスクスと狂った笑いを浮かべる。 「ハデス、派手にもめたみたいね。死者たちがにぎやかに話してくれるわ。」 生まれながらのアンデッドであり、 ネクロマンサー(死霊術師)のパーラは、 夜であれば、何もせずとも、死者たちとどこででも会話ができる。 「おめえも無関係じゃねえだろ。」 「ククク・・・もちろん、無関係でいるつもりは無いわよ。」 ハデスはちょっと考えた。 パーラは忍びに恨みがある。 だが、彼女をけしかけるのは面白くない。 「まあ、何かあるときは頼むわ。」 出て行くハデスの後ろ姿を見ながら、 パーラは身体にまとわりつく無数の亡霊たちに笑いかけた。 「何かあるとき、と言ってもねえ、 彼女自分がどれほど目立つか、スポーンと忘れてるわ。」 視線を感じて、ハデスは警戒しながら、走り出した。 ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ、 かすかな風斬り音と共に、 黒い物騒な刃物がいくつも飛んできた。 ガキキキキンッ ハデスの防御魔法に、8つの刃を持つ手裏剣がはじけ飛ぶ。 だが、同時に彼女の足元が盛り上がった。 ボフッ! 地面から腕が伸び、彼女の足を掴んで押し倒した。 あらかじめ地面を掘り、忍びがもぐった上で、 ハデスを手裏剣でその位置に足止めし、掴みかかったのだ。 「下手な真似をすると、そいつら自爆するぞ。」 くぐもった声が、せせら笑うように言った。 2メートルを越す巨大な鬼の仮面だった。 ハデスを掴んでいるのは、年寄りの忍びで、 死ぬ覚悟が目に出ている。 これだけ密着されて自爆されては、助からない。 ブスッ、ブスッ、ブスッ、 「うぐっ、ぐっ!」 闇の中から、いくつもの黒い針が飛び、 ハデスの身体中に突き刺さった。 例の魔法封じの針である。 腕は後ろ手に縛られ、身体には魔法封じの針を打たれ、 ほぼハデスの魔法は封じられた。 「きさまには、聞きたいことが山ほどある、が、」 スウッ 巨躯の胸が大きく膨らんだ。 スウッ、スウッ、 息が荒くなり、何か興奮しているようだ。 急に口を閉じると、ハデスのアゴを捕らえ、 ゴキリ 「んぐうーーーーーっ!」 いきなり関節をはずした。 アゴがだらりと下がり、みっともない顔になる。 舌をつかみ出し、横から針をぶすりと刺した。 「うがああああっ」 「くけけけけけ」 再びゴキリと音がし、アゴをわざわざはめたのは、 むしろ苦痛を倍化させるため。 横に針を打たれ、唇を閉じることもできないまま、 苦痛にのたうつハデスに、ONIはひどく興奮していた。 ビリビリッ ハデスの薄い下着を紙のように引き裂き、 夜目にも白い尻をむき出しにさせ、 ONIがズボンをズリ下げると、こん棒のような一物が飛び出す。 あがく白い足をひっつかみ、強力で引き裂くように開いた。 「うがっ!」 股関節が壊れんばかりに広がる。 ズンッ 激しい痛みと、強烈な衝撃、 「んぎーーーっ!」 濡れてもいない秘所に、無理やりにねじ込まれ、 裂けるような痛みが走った。 ガクッガクッガクッガクッ 暴力的な動きが、無理やりに柔肉を広げ、 乾いた粘膜を、犯し、殴り、暴行する。 内側に響く痛みとひりつき、 強引に突き進む黒い塊、 うめき、のたうつ背筋が、背徳的な快感を膨らませる。 ジクジクと濡れてくる胎内に、 深く、押し込み、えぐりだし、 「あぎっ、ぎっ、いぎぎっ、あがっあがあっ!」 ハデス長い白金の髪を掴み、頭皮を剥がんばかりに引っ張り、 えぐり、こねまわし、突き上げる。 首が折れそうに引かれ、 だらだら血が唇を伝い、 のけぞった胸が、ブラを弾き飛ばし、 広がった脚が、ガクガクと揺れ動いた。 指が血がにじむほど握られ、 眉が苦しげにしかめられる。 あえぎ、のけぞる、 うめき、痙攣する、 「うぐぉおおっ!」 獣じみたうめきが、ハデスの中心を突きぬいた。 ドビュグウウウウウウウウウッ ドロドロのマグマが、 のけぞった腹を焼き、粘膜を穢した。 深く、深く、深く、 ハデスを突きぬいて、射精を繰り返す。 薄い腹が震え、あえぐ唇がわななく、 何度も、何度も、人とは思えぬほどの量をほとばしらせ、 ようやく引き抜いて、 髪を掴んだまま、ハデスの顔にさらにぶっかけた。  ふっ どこかで、かすかにため息が聞こえた。 「なるほど、そういうことかい」 ハデスのはっきりした声がした。 ピュッ 白い粘っこい液が、ONIの面を襲った。 精液が目をピチャリとふさぐ。 「ぐっ、なっなにをするっ!」 だが、腕がおろおろしたようにして、 顔の辺りをさぐっていた。 「変なところから、声がすると思ったぜ。」 バリバリバリッ ハデスが裂けた。 顔の正面から、胸の間から、 そして、生まれたままの姿で、つるりと飛び出した。 ONIの手に残っているのは、 なめらかな牛の皮だった。 ソーセージのように、牛の皮をかぶり、 変身術で外側を作り上げて、まとっていたのだ。 吹き矢程度の針では、牛の皮はほとんど貫通できない。 微妙な顔の造作も、夜であればまず分からない。 針を刺された舌も、牛の皮の一部だった。 「あつつ、あそこも作っとけばよかったかな。」 激しく強姦された膣が、ひりひりした。 さすがに股間は開けておかないと、困るのだが、 おかげでモロ犯されてしまった。 「このっ!」 ONIが声を上げ、他の忍びが襲い掛かった。 縄が、吹き矢が、そして自爆忍びが飛びつこうとする。 「フラアアアッシュ!」 強烈な閃光が、ハデスの全身からほとばしる。 短時間対象から、太陽に倍する光を発するだけの魔法だが、 夜目が利く忍びが、真夜中の戦闘で完全に瞳孔が開いていたからたまらない。 「がっ!」「ぎっ!」 かすかな悲鳴を上げて、全員がのたうちまわった。 トドメと振り上げた両手の間に、 でかい火炎弾が生まれた。 中心めがけて飛んだそれに、ただ一人無事だったONIの手裏剣が飛び、 交差した瞬間、爆裂した。 だが、灼熱した熱塊が無数の散弾となって飛び散る。 「ぎえっ!」「ぎゃっ!」「があっ!」 腹をぶち抜かれ、頭を焼かれ、抱いた爆弾が誘爆し、 忍びたちはほぼ全滅に近い被害を受けた。 必死に頭部をかばったONIも、 体のあちこちを焼け焦がされている。 火災が発生し、周囲が騒然としてくる。 ONIは失敗を悟り、即座に飛び、走った。 本能的に、深い闇、人の気配の無い所へ。 あえぎながら、廃墟のような場所で、ようやく足を止めた。 「どこへ行こうってんだ?」 ギクッと飛び上がったONIの前方に、 台形の石があり、それに裸のハデスが、 片あぐらをかいてすわっていた。 淫靡な姿が、闇の中に浮かび上がり、 なまめかしく、みだらだった。 小さな声の呪文と共に、ハデスの右手が振られ、 風が、凶暴な牙を走らせた。 必死に避けたONIの仮面が、悲鳴を上げた。  パチッ! そして、頭部を覆っていた布も、カマイタチに切り裂かれていた。  ファサッ、カラーン 美しい金髪が、夜目にも鮮やかに浮かび上がる。 青い目が釣りあがり、鬼気迫る表情を浮かべる。 “クリスタルフラウ(水晶花)”のあだ名を持つ、忍びの娘マエッタ。 だが、その顔のすぐ下に、もう一つ武骨な顔があった。 “ロック(岩)”のあだ名を持つ、弟デスタス。 マエッタの身体は、小児よりも小さく、 手足は赤子のように短かかった。 それゆえ、デスタスの頭部にしがみつく姿は、 芋虫のようにすら見えた。 頭部だけがまともなサイズであるゆえに、 その姿は異様に強調されている。 普段の車椅子の姿は、 その短い身体を隠すための擬似ボディであり、 動けないふりをするためだった。 そして、ONIの首のところに、 細かな透ける布で、デスタスの視界を確保し、 二人で一人の巨人を演じていたのだった。 母親譲りの美貌が、ONIの面の般若そのものに変わる。 忍びの女頭領は、二人の子供をさずかっていた。 噂では、ハウリ王子の落とし子というが、定かではない。 姉の方は異常に小さい身体に、 頭脳だけが非常に成長し、 弟は、逆に手足が異常に長く、 首は短く、頭脳は非常に不安定で凶暴だった。 ただ、弟は姉に非常に従順であり、 彼女にだけは絶対的に服従していた。 二人が異常な組み合わせを生み出したのも、 無理のないことだったかも知れない。 そして、姉は頭脳と魔法を、 弟は忍びとしての卓越した能力を持つにいたり、 母親は、二人をONIとして使うことを決断した。 忍びは、いくつもの顔や名前を持つ者も、珍しくは無い。 暗殺や裏切り、諜報など、人にあらざる心を持つ者たちを、 束ね、あるいは裏切り者を見つけるのに、 上忍の頭領や一族が、わざと中忍の顔をつけて内情を見張るのは、 上忍のしきたりのようなものだった。 不憫な子供たちに、何としてでもハウリ王子の落とし種と認めてもらい、 人並みの生活を保障させたい。 それが、女頭領の悲願であり、悲劇の発端でもあった。 バダラ侯爵らの一派につけこまれ、その走狗となっていったのだった。 「お、おお、おのれえええっ!」 誰にも秘密にしていた、醜い姿を露にされ、 マエッタは目を血走らせ、鬼面と化して絶叫する。 八方手裏剣が、冷たい音を立てて飛んだ。 防護魔法を張ろうとして、 ハデスは直感的に中断し、大きく後ろに飛んだ。 マエッタの魔法で直後に黒い霧が広がり、 視界をさえぎられそうになった。 以前クルルミクの忍びが、 防護魔法や結界を破壊する短剣を使っていたのを、思い出したからだ。 視界をさえぎられたまま接近戦になれば、 忍びのほうが、利がある。 手裏剣の弾ける音がしないことから、 ハデスが飛び下がったことを直感し、 デスタスは白い物を数個上に投げて、横に走った。 黒い霧から飛び出した直後に、 マエッタがフラッシュの魔法を使い、ハデスの目を潰して、 同時に上から落ちてきた数個の目潰しが、 唐辛子の粉末をまきちらして、呼吸を阻害、 タイミングをあわせ、麻痺毒を塗った手裏剣が飛んだ。 すさまじい連続攻撃は、ハデスに呪文を唱える隙を与えないため。 動きが止まれば、餌食にされる。 ハデスはさらに大きく飛び下がった。  ガンッ だが、そこはがれきが林立する場所だった。 後頭部に軽いショックが走った。 二人は、ハデスをそこに追い込んだのだ。 肉薄する巨体に、必死に右へ飛んだ。 だが、何かがおかしい。 『金髪がいねえ?!』  ブスッ、ブスッ、ブスッ、 空中から吹き矢が、ハデスの腕や胴に魔法封じの針を撃ち込んだ。 転がった身体を、手裏剣がかすめ、麻痺毒がハデスの動きを封じた。 デスタスがマエッタを宙に投げ、 自分が肉薄することで注意をそらし、 マエッタの吹き矢で相手の力を封じる絶妙な連係プレイだった。 落ちてきたマエッタは、デスタスの肩にスポリと座った。 「てこずらせてくれたわね、 死なせてくれと、泣き叫ぶようにしてあげるわ。」 デスタスもぐふぐふと笑いながら、動けないハデスに手を伸ばした。 「アホが、雷撃!」 閃光が二人を直撃した。 『な・・・なに!?』 一瞬の失神から目を覚ましたマエッタだが、 数千ボルトの直撃を受けた身体はすぐには動かない。 雷撃系の呪文は、威力はそこそこだが、詠唱時間が短く、 何より相手を短時間だが無力化しやすい。 だが、なぜ?。  ベリッ 立ち上がったハデスが裂けた。 もう一枚の皮が、ずるりと脱げ落ち、突き刺さった魔法封じの針も、 同時に抜け落ちていた。 「つけてる皮が一枚だけだと、思ってたのかい?。 すっぱだかのままで、おめーらといつまでもケンカしてられねえよ。」 「それに、ここに来た時点で、負けは確定していたけどねぇ。」 物陰から、ざくざくと足音が近づいてくる。 かすかに首が動き、マエッタの目にか細い女性の姿が映った。 黒い、まがまがしいドレスと、細く折れそうな首、 ひよわげな笑みの下に、どす黒い妖気が漂っている。 『だ、誰だ?』 彼女は知る由もない、かつてパーラと呼ばれた女のことなど。 ましてや、彼女たちの母親が、一度殺した相手などとは。 「ハデス、こっちに来るようにわざと火をつけたでしょ?。」 「まあ、半分は偶然だけどな。」 裸のハデスに、小さめのシーツを渡すと、 ハデスは無造作に肩にかけた。 素裸に白い布をまとっただけのハデスは、 異様に艶な姿だった。 「私としては、感謝するけどね。」 その女は、赤い血のような色の唇を、ニヤリとゆがめた。 悪夢にでそうな、そんな笑いだった。 「では、そろそろ感動の対面といきましょうね。」 にこやかに、悪意のかけらすら感じない笑い。 それでいて、悪魔が笑うなら、こんな笑いを浮かべるだろうと思えるような笑い。 「デー、モン、ズ、ゲート」 そっとささやく声。 それが、黒い炎を無数に呼んだ。 どす黒い闇、生臭く吐き気のする腐臭、 女の中心から吹き出す、穢れの嵐。 6つの揺らめきが、地を牙のように開いた。 ウジャ、ウジャ、ウジャ、 目に映ったのは、無数の蛇ともミミズともつかぬ物。 「・・・ひっ?!」 マエッタの足元が消えたと思った瞬間、 彼女は、奇怪な場所に落とされていた。 小さな身体を必死に動かし、 なんとか起き直ろうとする、 だが、あらゆる場所が、無数の触手に埋まり、 動けば、触れば、それが次々と、次々と、 連鎖したように襲い掛かってくる。 「いやあ、うぐっ、ぐうっ!」 体中に巻きつき、群がり、這いずり回る。 服を引きちぎり、無残な身体をむき出しにする。 唇を犯し、喉を這い回る。 暴れる両足に絡みつき、根元へいっせいに襲いかかる。 「うぐううっ、ううっ!、ううーーっ!」 気が狂うような感触が、 あらゆるところにもぐりこみ、ねじ込んでくる。 暴れ、のたうつ彼女を、犯し、嬲り、蹂躙する。 その横に、ぽかりと白いものが現れた。 無数の触手に埋まり、あらゆる場所にそれが出入りし、 豊満な乳房が、わずかに上下しているだけの、 もはや人とすらいえぬ無残な肉塊。 だが、表情の無いその顔は、紛れも無く彼女と生き写しだった。 「あ、あ、姉上ええっ!」 触手の海を、必死に暴れ、掻き分けながら、 デスタスが近寄ってくる。 「いやだっ、いやだあっ、姉上はオレのものだああっ!」 狂った目をしていた。 いや、いつの頃からか、デスタスは狂っていたのだろう。 狂獣のような性欲を、マエッタの身体に埋めるようになってから。 マエッタをもてあそぶ無数の触手に、 怒り狂い、嫉妬し、泣き叫びながら、必死に近寄った。 泣きながら銀の筒を振り上げ、 マエッタの広い額に、それをたたきつけた。 激しい爆発が、起こった。 深く、触手の海がえぐれ、 おびただしい肉塊が飛び散っていた。 ワシャ、ワシャ、ワシャ、 再び触手たちが動き、肉塊を貪り、 見る見るその痕跡は何も無くなっていた。 地鳴りと共に、全てが、地の底に消えていった。 翌日、ハデスは元の服に戻り、 農夫の家に戻ってみた。 ぶら下がっている農夫に、 数秒目をやると、しずかに扉を閉じた。 あいにく酒場には、年をとった吟遊詩人がいるだけだった。 だが、ハデスのリクエストに、自身ありげに微笑むと、 リュートをかきならし、まるで別人のように歌い出した。 急に広がったその曲は、まだ歌える者が少なかった。 『It Only Love(ただ一つの愛)』という曲。 神様、もしもたった一つかなえていただけるなら、   私は彼女のそばで死にたいのです   戦場に向かう少年兵の、軽やかなソプラノを、 吟遊詩人は、見事に歌い上げる。 どこであろうと、どんな時だろうと 私はあなただけを見つめています この世界がこんなにも美しいから 『輝かしき少年よ、君は自分の美しさを知らない』 小さな私、醜い私、ひ弱な私、 私はこんなにも悲しいのです 自分が無価値であることに ぬるい涙を流すしかないのです 私は今日戦場へむかいます もし今あなたに会えるなら 私は声すらもでないでしょう でも神様、もしもたった一つかなえていただけるなら、   私は彼女のそばで死にたいのです   『輝かしき少年よ、君はこんなにもすばらしい』 苛烈なまでに美しい曲と旋律は、 割れんばかりの拍手を浴びた。 ハデスは荒っぽくグラスをあけた。 「幸せそうな顔して死んでんじゃねぇよ、ばかやろう・・・」 曲の中に歌い上げられる、 少年兵の悲しいまでに純粋な願いは、 何かの予兆を秘めているかのようだった。 FIN