はじめに このSSは、あくまでMORIGUMAの勝手な妄想において、 竜神の迷宮事件が、20年後に引き起こすIFという事で、 組み立ててみてます。責任は私にあります。 変わる人、変わらない人、時は残酷に過ぎていきます。 勝手に引っ張り出したキャラの親御さんで、 ご不満がおありの方は、遠慮なく申し出てくださいませ。  <壊れた心をひきずって>  その3 −『諸行無常』−  byMORIGUMA −−−ナゼ、コンナコトニナッテシマッタノダロウ−−− 「うおおおおおっ、」 「我らがセニティ王女のためにいいっ!」 激昂する騎士や兵士の声が、 城内にこだまする。 同じクルルミクの騎士や兵士同士が、 もっとも守るべき、王城の中で、 死に物狂いで戦っていた。 唐突に、それは始まった。 現統治者であるハウリ王子には、 双子の子供がいた。 ファーニッシュ第一王子と、セニティ第一王女である。 ハウリは、失われた姉姫セニティ王女への、 思慕を込めて、娘にセニティの名を与えた。 娘は、その名前が乗り移ったかのように、 気が強く、魔力とさまざまな才能に長け、7カ国語をあやつり、 まだ16才でありながら、美貌は近隣に鳴り響いていた。 ファーニッシュ第一王子は、凡庸でおだやかな性格だったが、 『竜王』と敬われるハウリ王子もまた、 年少期は似たような性格であったため、 健やかに育てば、立派な王になるであろうと言われていた。 よく似た姉弟はとても仲がよく、 お姉ちゃんぶっているセニティと、 あとについていくファーニッシュは、 城の者たちに、いつも微笑みを浮かべさせた。 −−−−− いつからだろう、セニティが笑わなくなったのは?。 ハウリ王子の治世12年目に、 ある小さな出来事が起こった。 近衛騎士ラシャの死。 姉姫セニティの側近であった彼女が、 いつの間にかハウリのNo1の側近になり、 その後も、異常なほどの信任を得続け、 王族に連なる大貴族すら恐れはばかる存在だった。 それゆえ、 変わり身の早さを『転身の権化』と笑い、 おとなしいハウリの擁立をたくらんだ『策士』といわれ、 手練手管に長けた『寝技師』などと執拗にささやかれた。 特に、『寝技師』という呼び名は、 『ハウリをベッドで篭絡した』 というあてこすりも多大に含まれている。 彼女がセニティの側近の頃は、 さほど目立たぬ容姿だったのだが、 ハウリの側近として現れた時、 異常なまでに妖しい美しさで、 見るものの息を飲ませるほどだったせいでもある。 彼女の金色を帯びた緑の目は、 見た者に不思議な戦慄と恐怖を与え、 何気ない視線で、腰を抜かす者すらいた。 会議や交渉で彼女ににらまれて、 相手になれる者は全く無かった。 ある小心な大臣は、 特殊な性癖(M)を持つことでも有名だったが、 会議で彼女ににらみつけられ、 「まるで、巨大な肉食獣ににらみつけられたみたいだった、 私は、思わず射精してしまってたんだよ!」 王の御前会議でなければ、 思わず彼女のブーツを嘗め回していたところだと、 興奮のあまり友人たちに漏らしたそうである。 肉食獣の目、 それは、竜神の迷宮で、 人の血肉をすすって生き延びるという、 苛烈で非情な年月の証だった。 同時に苛烈きわまる体験は、 彼女の生命を急激に縮めることにもなった。 いかなる暗殺者も、近寄せもしなかったが、 自分の寿命だけはどうにもならなかった。 彼女が何者であるのか、 知る者はわずかしかいない。 しかし、ラシャは、 ハウリ統治のもっとも大きな柱石であった。 彼女がいれば、王も臣下も、 どんな困難でも背中を、家族を、心配することなく、 安心して全力を注ぐことができた。 『一つの時代が終わる』 ものの見える者は、何らかの予兆を感じ、 彼女の死をいたんだ。 ラシャが死ぬ前日、 同じ近衛騎士のレイラが、彼女の部屋に呼ばれた。 ベッドに横たわる彼女を見て、 レイラは片目を見開いた。 彼女の片目は、竜神の迷宮事件の時、 決意と共に彼女自身でえぐったと言われている。 数日前まで、気力がみなぎっていたラシャが、 ベッドで、ひどく青ざめた顔をしていた。 おびただしい人の死を見て来たレイラは、 まぎれも無い死相を見た。 「きた・・・か・・・。」 声ももはや力が無かった。 もう、彼女の枕元には死神が控えている。 「私も・・・ここまで、の、ようだ・・・」 慰めの言葉は不要だった。 どちらも、死を常に見続けてきた戦士である。 そして、ラシャが自分を呼んだ以上、 彼女の話は、竜神の迷宮事件の事に決まっていた。 あの事件の真の顛末を、 いくばくかなりと知って、証明できる人間は、 自分を含めてわずかしかいない。 側近では、ラシャと自分だけだ。 ましてや全貌を知るのはラシャのみだろうと、 レイラは直感的に感じていた。 「ひとつ・・だけ・・・こころのこりが・・・」 必死に言葉をつむぎ出そうとするラシャ。 「セニティ・・・様、を・・・ころ・・し・・て・・」 悲痛な、痛みを帯びた声。 体の痛みや苦しみではなく、 自分の魂を切り裂くような、 悲しみを帯びた声。 その苦しみと痛みは、彼女の命の火を一気にすり減らした。 驚愕するレイラの前で、 彼女の意識は消え、呼吸もほとんどわずかになった。 どこをどう帰ったのか、レイラは記憶が無かった。 ただ、驚愕の言葉に、意識が混乱し、 気がつくと、自分の部屋の粗末な椅子に座っていた。 黒曜石の瞳が、ようやく理性を取り戻す。 彼女の言う『セニティ様』とは・・・今の王女様ではあるまい。 耳に焼き付いている言葉、その響き、 少女ではなく、主を意識した言葉だった。 彼女の本当の主とは、現王子の姉姫セニティ。 元々彼女はセニティ付きの騎士だったはず。 『だが、なぜ今になって?。』 あの時、自分とフィル、15、カテリーナだけが、 その光景を見ていた。 無数の汚らしい男たち、 そして、その中で縛られ、つるされ、 ありとあらゆる所を嬲りつくされ、一片の救いも無く犯され尽くして、 精液に溺れきったような、セニティ王女。 彼女を救出した直後、突如現れたハウリ王子。 十数年封じていた記憶、 心の痛みと共に封じ込めていたそれを、 ゆっくりと開放する。 吊るされた細い両手、 無数の手で掴まれた、長い真っ白な脚、 残酷に、壊れたように広げられた腿、 「・・・・・・・・・・」 群がる裸の男たちが、凶暴な下半身を林立させ、 たった一人のか細い裸の体を、 口を、顔を、額を、耳を、 嬲り、犯し、描き回し、 胸を、脇を、手を、背中を、へそを、 貪り、くすぐり、握らせ、こすりつけ、 淫核を、アナルを、膣を、腿を、ヒザを、足先を、 押し潰し、突き上げ、貫き通し、しごき、はさみ、なすりつけ、 女性という存在すべてを、陵辱し、暴行し、輪姦する。 子宮の底まで精液であふれ、 アナルから腸から、胎内全てが精液に穢れ、 高い鼻にも、可愛らしい耳にも、 滴る穢れた雫で汚れ、 ただ、貫かれ、腿が開く、 ただ、突き刺され、尻肉が脈打つ。 ただ、射精され、新たな精液が子宮にたたきつけられる。 争うように入れ替わり、また腰がたたきつけられる。 「・・・・・・・・・・・・」 私たちは、怒りのあまり飛びかかった。 「私…助かった…の……? そう…《冒険者》に…助けられたのね…… ……皮肉な話…ね……」 救い出した王女の、呆然とした声。 現れた王子の、突然の告白。 『全ては、無かったことにする』 私たちは、ただそれにうなずくしかなかった。 この小さな少年が、 これまで戦ったどんな相手より恐ろしかった。 彼女は死んだことになっている、表向きは。 だが、王子の会話を聞いた私たちは、 それがウソであることは分かっている。 ラシャも知らないはずが無かった。 だがなぜ、今になって『殺せ』と・・・?。 病による錯乱などでは絶対に無かった。 あの目と、必死に搾り出す声を聞いた自分には、 断言ができる。 ラシャは、あまりにも巨大だった。 想像がつかぬほど、巨大で、恐ろしい存在だった。 レイラは、彼女が失われようとしている今、 その事を痛感する。 『あなたは何を言いたかったのだ、ラシャ!』 苦悩するレイラは、ただ、煩悶するばかりだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 朝、唐突に城門が、くぐり戸が、通用門が開いた。 一斉に無数の足音がなだれ込み、 中庭の一角で、よく通るソブラノが、高らかに宣言した。 「我、セニティ・フォン・グランデルセ・クルルミクは、 この国の穢れを廃し、 長年の悪しき風習を除き、 新たなるクルルミク王朝を築くために、 新王となることを宣言します!」 彼女が長年てなづけてきた親衛隊、 協力する新興貴族の配下、 おびただしい傭兵部隊。 興奮に城をゆるがす雄叫びが上がる。 この数週間、隣国国境に頻発する紛争、 加えて、一昨日起こったグラッセンの不穏な動き、 調査のためにハウリ配下の忍びは、ほとんど全て出払い、 王城周辺は、警戒が極めて薄くなっていた。 だが、そのほとんど全てはニセ情報だ。 要は、王都を盲目にすればいい。 辺境に位置する貴族と、セニティ第一王女が結託すれば、 造作もない情報操作だった。 竜神の迷宮事件の時、セニティ王女が使った戦略と、 やり口はよく似ていた。 号令と共に、セニティの軍は、目標めがけて走り出した。 目標は3つ、 1、ファーニッシュ第一王子 2、現王子ハウリの軟禁。 3、近衛騎士のレイラ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 闇の中で、ラシャがのたうっていた。 血の涙を流しながら、 暗い洞穴のような目をして、 私の方に手を伸ばして、叫んでいた。 「セニティ・・・様、を・・・ころ・・し・・て・・」 何かが、血しぶきを上げた。  バッ! 「ハアッ、ハアッ、ハアッ、」 真夜中、 飛び起きたレイラは、全身が汗に浸っていた。 滑らかな首筋から、豊かな胸の谷間に、 おびただしい汗が流れ落ちていく。 全裸で寝ていたため、体中を流れていくのが分かる。 今年40歳になる彼女だが、 よく鍛え上げ、力に満ちた身体は、 まだ30前にしか見えない。 「な、なんて夢・・・」 いや、とても夢とは思えない強烈な夢。 起き上がると、いやな予感が膨らんでいく。 『ラシャ、あなたは何を告げたかったの?』 この4年の間、レイラを悩ませ続けていた疑問。 汗をぬぐうと、豊かな乳房が大きく揺れた。 へそから、濃い陰毛の茂みをなぞり、 滑らかで筋肉質な背中をこすった。 ふと、手のひらに浮かび上がる文様に目をとめた。 『竜紋』と呼ばれる、 竜神の試しを制覇した者だけがえられる証。 「そうか・・・聞いてみる価値はあるな。」 急いで下着を着けると、 久しぶりに物置の奥にある金庫を開いた。 竜神の迷宮で、リーダーだったときの宝物が、そのまま入っていた。 暗い闇の中を、レイラは風のように走った。 体の、細胞の一つ一つまでが、 その闇を覚えているかのようだった。 激しい緊張、死にも勝る苦痛、 身体に刻まれた醜い陵辱の経験、 あまりに鮮烈な記憶は、 その場所全てを、鮮やかに再現した。 コインの効果で、一気に最下層へ降りていく。 移動装置の合間の階層で、最低限の戦闘を行い、 あるいは巧妙に隠れ、かわし、すり抜けていく。 16年にわたる長い鍛錬の日々は、 若い時分をはるかに超える力となっていた。 『あんなに苦労したのにな』 スラッグコングの巨体を、あっさりと胴切りにし、 一動作で血のりを払い、鞘に収めた。 淡く輝く竜神の座に歩み寄った。 もう、モンスターたちは近づいてこない。 巨大な、威圧の存在の前で、 レイラはひざまづいた。 「竜神よ、クルルミク近衛騎士のレイラと申します。 なにとぞ、なにとぞ、この愚かな騎士に教えをくださいませ。」 もう、何も考えなかった。 ただ必死に、教えを請うことだけを願った。   《何用ぞ》 紛れもない、凄まじい迫力の声がした。 レイラの目が、歓喜に輝いた。 だが、   《ここまで来たお前の心根に免じて、教えてやろう》   《世界には我も、思いも寄らぬこともある》 えっ、とレイラが顔を上げた。   《お前は、一卵性双生児というても、分かるまいが》   《子供が出来るとき、まれに一人で生まれるはずの子が》   《二人に分かれることがある。》 ファーニッシュとセニティの事だろうか?。   《普通なれば、同じ子供が二人できる。》   《だが、ハウリの子供は月の影響を受けてしまった。》   《月の潮力が、混ざり合った男女の因子を引き分けた》   《ファーニッシュに、男性の因子が多く集まり》   《セニティは、女性の因子が強く出た》 ま、ま、まさか?!。   《それゆえ、同じ男でありながら、》   《セニティは女の姿を持って生まれた。》   《このような存在を、半陰陽というのだ。》   《セニティは、ペニスこそないが、》   《陰唇に小さくも睾丸を持っている、紛れもない男だ。》   《我はクルルミク王家と約束を交わした。》   《必ず男児が生まれ、その第一子には加護を与えると》 レイラは青ざめながら、その言葉を必死に理解した。 つまり、ファーニッシュもセニティも、同じ第一子の男児とみなされる。   《3月前に、セニティはここへ来た。》   《それゆえ約束に従い、我は竜紋とDコインを与えた》 竜神が、わずかに言いよどむ。   《・・・あれは、心に怒りをあふれさせていた。》   《封殺の塔に、押し込められたハウリの姉姫を、》   《偶然に見てしまったからだ。》 死ぬまで押し込められる、封殺の塔。 周りの塔は、そちらに面した窓を全て封じられている。 だが偶然嵐で、封じられたはずの窓が一つ、開いていた。 遊んでいたセニティは、その窓から見てしまった。 悲しげな歌を口ずさみながら、 人形と幼げに戯れる女性を。 とてもきれいで、悲しく壊れてしまっている姿を。 肖像画で、いつも見ていた女性だった。 自分の名をもらった女性、父ハウリの姉姫セニティ。 桁外れの知能を持つ娘は、 すぐに理解してしまった。 父たちの言う嘘を。 竜神の迷宮事件、 その細かい記録が王家に残されていた。 ハウリすら忘れていたそれを、 セニティは見つけ出して読んでいた。 王女が何をしたかは厳重に消されていたが、 消されたところを、 さまざまな出来事から読み解くのは、 彼女にはたやすい事だった。 彼女は王位継承の争いに敗れたのだ。 いや、争いを起こしたから、 女であるから、幽閉されたのだ。 激しい怒りが、彼女の中に沸き上がった。 『自分には、女性には、資格が無いというのですか?!』 怒りは、年を追うごとに強くなっていった。 それに、最初に気づいたのがラシャだったのである。 あまりにも、姉姫セニティのあの頃に似ていた。 にこやかな仮面の下に、底知れぬ怒りを秘めて、 静かに牙を研いでいたあの頃に。 だが、その時すでにラシャの寿命は尽きる寸前だった。 「だから・・・彼女は私に、託したのですか・・・。」 あの光景を見ている私に。 繰り返すというのか、あの悲劇を。   《どこかで、断ち切るべきだったのだ。》 冷たく厳しい声に聞こえた。 だが、優しさは時として罪となる。 ハウリの姉姫への幼い思慕は、 大罪を起こした姉を生かした。 それゆえ、悲劇は再び繰り返そうとしていた。   《いや、もう遅いか》   《すでに始まってしまったようだ。すぐに帰れレイラよ。》 頭に、怒涛のように映像が流れ込む。 クルルミク城になだれ込む兵士、 セニティ王女の宣言、戦いの剣戟、 血が流れ、争いが城全体へ広がっていく。 立ち上がったレイラを、竜神の力が包み、飛ばした。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− セニティの兵士たちの目標は3つ、 第1は、ファーニッシュ第一王子。 彼を抑えるか、殺すかすること。 第2は、現王子ハウリの軟禁。 ハウリ王子を抑えてしまえば、 ほぼ国は制圧したに等しい。 できれば、正当な委譲として認めさせたいところだ。 第3は、なんと近衛騎士のレイラだった。 ラシャ無きあと、ハウリのもっとも信頼する騎士は、 彼女であるというのが、衆目の一致するところだ。 また、城内での彼女の存在は、彼女自身が思うより、 はるかに大きい。 何より、敵を率いているのが、セニティ王女であるという事が、 城の兵士たちの動揺と混乱を強くしている。 なまじ筋目だった育ちの良い騎士ほど、 外部の攻撃には一致団結するが、上の混乱には弱い。 現在城内でそれをまとめ、率いる技量を持つのは、 『竜王』ハウリ王子か、 アウトローから成り上がった、異色の経歴のレイラしかいない。 だが、肝心のレイラが見つからず、 第3担当だった最大戦力の部隊が、城内をまごまごしていた。 第2担当の部隊は、直接戦闘するのではなく、 王子を部屋に閉じ込めておけばよい。 だが、意外に手こずっていたのが、 ファーニッシュ第一王子を担当する戦力だった。 「メキド、エサナ、東の塔との連絡はどうです?。」 「はっ、いま返答がきまして、 メリアナの部隊が全力で助力にまいりますと。」 王子が矢文を送らせるという奇策で、 別の塔との連携をとりつつ、 よほど度胸がいいのか、落ち着いて指揮をとっている。 分断しているはずの相手が、連携してぶつかってくると、 セニティの部隊は動揺し始めた。 そして、手薄だった南の古い城郭に、 光が飛び込んだ。 ボンッ! 宙に放り出されたレイラは、 何とかバランスをとって着地した。 「おおお、えらく派手なご登場じゃねえか、 レイラ嬢ちゃんよお。」 鼻の頭を赤くした、白髪の兵士が声をかけた。 そこは、年をとって、第一線は退いたが、 予備の老兵として居座っている連中の溜まり場だった。 声をかけてきたのは、 何度か戦場で顔を会わせた古参兵、ボストだ。 「ボスト爺さん!、詳しく話してる暇無いが、 ハウリ王子が大変なことになってる。 力を貸してくれ!。」 「むっ?」 「なんだと?!」 「どういうことだいそりゃあ。」 わらわらと、数十名の兵士が集まってきた。 どれもけっこうな年寄りばかりだが、 重い鎧と武器をかつぐと、平然と走り出した。 みな、レイラの倍以上戦場を経験してきた者ばかり。 よぼよぼしているように見えても、 鎧を身につける手際は、恐ろしく早い。 この用意の早さが、大きな影響を及ぼした。 突然、南から起こった喚声に、 まだ戦っている両軍は動揺した。 「いけえええっ!、ひるむなああっ。 我らはハウリ王子の臣下であるううっ!。」 レイラのよく響く声が、騒然とした城内を走り、 混乱した城側の兵士を、落ち着かせる。 古い鎧と武器をまとった老兵たちが、 整然と陣形を組んで、押してきた。 ヤリと弓を交互に使い、 剣を中心に組まれていたセニティの部隊を、 狡猾に翻弄する。 しかも、頑固で迷いが無い。 いざ戦いとなると、この粘りが相手を辟易させる。 駆けつけたレイラを抑えるはずの部隊は、 老兵たちの巧妙な戦略に引き込まれ、 大広間を使った弓の一斉攻撃によって、 ほぼ壊滅してしまった。 「レイラ、レイラではないか。」 ファーニッシュ第一王子が、部隊を率いていた。 「ファーニッシュ様、ご無事でしたか。」 鷹揚にうなずくファーニッシュ。 「うむ、大事無い。それより、本当に姉上なのか・・・?」 「はい・・・間違いございませぬ。」 苦しげなレイラの表情に、 悲しげな目したが、すぐに顔を上げた。 「私はクリスタルの間にいく、 レイラは、鏡の間から玉座の間へゆけ。」 「王子、私も一緒にまいります。」 「父上が心配だ、それに、急がねば混乱が広がる。」 王子にそう言われると、 レイラも強く押し切れなかった。 だが、それが彼女を後々まで後悔させることになった。 「なんですって、いつの間に南から?。」 レイラが、老兵たちを率いて、 手薄だった南の古い城郭から打って出たことが、 セニティに伝わると、彼女は立ち上がった。 「こうなれば急がねばなりませぬ。クリスタルの間へ向かいます。」 ハウリ王子を抑え、それを盾に二人を抑える。 親を人質に取るという非情な方法ですら、 今のセニティは、迷わなかった。 ある意味、それは恐怖だったかも知れぬ。 悲しい姿で、歌いながら、人形と戯れる姉姫セニティの姿が、 彼女の背筋を震わせ、目を血走らせた。 彼女は、両腰にさした大小2本のサーベルを抜いた。 実戦向きに、肉厚に作らせたそれが、ギラリと光った。 次第に弱まってきていたセニティの軍が、 急激に勢いを回復してきた。 先陣に立つ、白いドレスの小柄な女性。 自ら引き裂いた長いスカートから、 真っ白い足がひらめき、 二本のサーベルが、双頭の蛇のように立ちふさがる者を屠っていく。 「セニティ様、お止めください!。」 立ち塞がった若い騎士を、 長い右手のサーベルが、剣と打ち合い、 その瞬間に、左手の短いサーベルが股座に突き刺さった。 「うごぼっ!」 戦場では、より残酷な方が勝つ。 何の感慨も無く、血ぶるいするように前へと走り出す。 『強くない身体なら、いらない』 素早い一撃が、目を貫く。 『早くない腕なら、いらない』 足首を切断された兵士が転げまわる。 『弱くなんかなりたくない』 修羅の笑みを浮かべ、己の力の証明に酔いしれる。 凶悪無比の殺人剣に加え、彼女の強力な魔力を、 力の増幅、感覚の鋭敏化、体力のチャージ等にほどこし、 たおやかな姿に似合わぬ、強烈な剣をふるい続ける。 その姿が、彼女の軍を狂信的な熱狂に捕えていた。 しょせん、剣の力無くして、国を統べることはできない。 姉姫セニティの失敗を分析し、 彼女はその事を痛感した。 ------------------------------------------------- 『お上手でございます姫様。』 王国でも、一二を争うと言われるサーベルの名手が、 にこやかに笑いかける。 『お上手?、あんな子供だましがお上手ですって!?。 あなたの見せた試合での妙技、国境線での15人切り、 そんなものと、比べろというのですか!!。』 キリキリと詰め寄られ、 間近に迫った王女の気迫と美貌に飲まれそうになる。 青い大きな瞳、長く麗しいまつげ、 絹糸より細い金髪が、輝くウェーブをえがき、 上気した頬が、かすかに汗で輝く。 折れそうな細い首筋から、鎖骨のなまめかしいくぼみが、 思わず魅入られそうになる。 必死に目をそらす剣士に、 『私に、あなたの知りうる最強の必殺剣を教えなさい。 私は、私の持つ最高の代償を払います。』 その言葉の響きが、肉の疼きを強烈に引き起こす。 それがたとえ、悪魔のささやきであったとしても、 だれが、抗しえただろう?。 思わず向き直った兵士の口に、 世にもかぐわしい香りと感触が襲った。 身体が白いスパークで覆い尽くされる。 甘いなめらかな感触、 とろけるような淡く甘い味と肌。 『手付けは払いましたわ、もう逃げられませんことよ。』 胸元を、ぐいと引き裂いた。 目を突き刺す白い肌が、純白のふくらみが、 男の理性を完全に崩壊させた。 穢れを知らぬ、青さすら帯びた白い肌。 広がるスカートの奥に、 淡い桃色のふくらみが、小さく震えていた。 『弱い身体なんていらない』 凶暴な肉欲が、塊となって押し入ってくる。 目を閉じ、歯を食いしばり、破瓜の痛みに耐えた。 のしかかる男の、呆けた様な面が、 自分の肉の代償を、確認させた。 身体の中を上下する痛み、 肉の槍のようなそれが、 お腹の中まで、屹立を繰り返す。 細く長い腿を、 真っ白な内股を赤く染め、 純潔の代償の痛みは、鈍く、重く、 人形のような整った顔をしかめさせ、 細く剥かれた裸身を、淫らに揺さぶり動かす。 熱いうめきと痙攣が、胎の奥底に、 吐き気のするような、熱い、濃厚な液を、 くりかえし吐き出していく。 『私は、間違ってしまった父様とは違う。』 淡い日差しの中、 椅子にしがみつくようにして、 細くしなやかな裸体が、 上下に揺れ動く。 グジュッ、グジュッ、 濡れた赤い肉が、卑猥な音を立てて、 大振りな黒い肉柱を、小さな胎内に必死に飲み込んでいく。 要望のままに、青空の下に裸身を晒し、 恥じらいに染まりながら、 ひざの上に跨ってやる。 金髪の輝きが、日差しに一層増し、 妖精のような穢れを知らぬ裸身を飾り立てる。 だが、その下半身は、どす黒いグロテスクな生殖器を、 淫らな音を立てて、深く飲み込んでいく。 ひどく狭い胎内に、 鍛え上げた肉の動き、 吸い付くような感覚と、 締め上げられる数段の刺激、 奥底の無数の粒、 恥じらいに上気し、 屈辱に耐えながら、 身体を動かそうとする気位、 凶暴な欲望が、さらにあおられ、猛り立った。 「うう・・・・・・っ!!」 ひきつけられた腰が、 えぐられる狂気と共に、 中に精の塊をぶち込まれる。 ドビュルッドビュルッドビュルッ、 ドビュルッ、ドビュルッ、ドビュルッ、 弓のようにのけぞった背筋が、 フルフルと震え、 細い手足がつっぱり、力を落とした。 胎内にあふれる精液が、 ジクジクと染み出していく。 暗い地下室の奥、 冷たいテーブルに両手を縛られ、 小ぶりだが可愛らしく盛り上がった尻が、 真っ白いふくらみを輝かせる。 弾力のある尻肉を、 押し広げ、 薄茶のすぼまりをロウソクの光にさらけ出す。 「う・・・あああ・・・っ」 ぬめる肉先が、それをなぞり、探り、こねくる。 目に涙が浮かぶのが、悔しく、 セニティは歯を食いしばり、絶叫を飲み込む。 『欲しければ、こんな身体、いくらでも貪ればいい!』 その気位の高さ、強烈な意思の光が、 相手の興奮を際限なくあおりたてていく。 のけぞり、震える尻に、 カチャカチャとズボンが下ろされ、 熱く脈打っている物が、当てられた。 おびえ、震えながら、 白い歯を食いしばる。 『強くなれるなら、何も、いらない!』 グリュリュッ 「・・・・・・っ!」 引き裂く痛みと、屈辱の感覚。 何度も前後を繰り返しながら、 小さなすぼまりを、次第に深く、奥まで、執拗に征服していく。 テーブルがきしみ、 肉の締め上げがこすれ、 細く引き締まった腰がきしんだ。 輝く背中の汗に、細い金髪がからみつき、 ろうそくの明かりを、妖しく照り返す。 声を耐える唇が、血の糸を引いた。 根元まで突き入った男根が、肉の奥を、 姫君の内臓を、こね回し、かき回し、たたきつけた。 滴る愛液が、際限なくこぼれ、光る。 のけぞる男の、狂気のほとばしりが、 叩きつける切っ先から、 吹き出す衝撃を、 身体に何度も何度も、焼き付けられ、刻印された。 「ぐぐ・・・うっ、あっ、ああ・・っ!」 耐え、声を抑えるセニティに、 萎える事を忘れたそれは、 再び、陵辱をくりかえし、 自分の精液のわだかまりをかき回した。 「はあ、はあ、はあ、」 白い腿まであるストッキング、 長い、ひじ上まである薄いレースの手袋、 それがひじとひざを紐で結び合わされ、 無残なM字に開脚させられていた。 「ううっ、うっ、うっ、」 晒されたアナルに、 激しく律動が突き立ち、 括約筋がこすれ、広げられ、お腹を描き回される。 ずるりと引き抜かれた物が、 体液にテラテラと光りながら、 びくびくと脈打ちつつ、前の濡れた穴に突っ込んでいく。 「くっ、うっ、うっ、んうっ、」 わななく膣の蠢きに、 男を受け止めた感覚に、 必死に白い歯を食いしばり、耐えるセニティ。 「がまん、しなくていいんですよ。」 指が、震える秘所の上をなぞり、 首を振る彼女をあざ笑うかのように、 膨らんだ大きな淫核を、摘んだ。 「いっ、あっ、だめえええええええっ!」 ぎゅんっ 肉が締め上げる、 襞が歓喜に蠕動をくりかえす。 耐えに耐えていた唇が、ついに言葉を放った。 ビクッ ペニスがさらに、歓喜に膨張した。 指先が、執拗につまみ、嬲り、こねくった。 「ひいっ、だめっ、い、い、いっちゃう・・・だめぇぇ!」 縛られたまま、あえぐ姫君の乱舞、 貫かれた身体が、ドロドロの快感に蕩け、 腰が勝手に、男の動きに合わせ、 ジュボッジュボルッ、ジュボッジュブッジュブッ 突き出して、深く、奥まで、底まで引きずりこんでいた。 白い爪先が、絡み合い、腰を捕らえて離さぬ。 手が、白いレースが、男を抱え、爪を立てた。 「ああうっ、ああっ、あっ、あひっ、ひっ、だめっ、くっ、いくうっ、いっちゃううっ!」 乱れ狂う姫君に、欲情に蕩けた笑いを浮かべ、 興奮の局地を、たたきつけ、えぐり、こじ開けた。 「らめえっ、入るうっ、はいってくるうううっ!」 ろれつの回らぬ声で、男にしがみついて、 腰を振り、腿を締め付け、 子宮まで犯される快楽にがくがくと白い肌を震わせた。 ズボッズボッズボッズボッ 金髪が跳ね、汗が飛び散る。 歯がカチカチと音を立て、 のけぞる身体を、男根が征服した。 「いくううううううううううううううううううううううっ!!」 ブビュルッブビュルッブビュルッ、ビュルッ、ビュルッ、ビュルッ、 赤い粘膜の中に、男の精子が暴発し、たたきつけ、さらにえぐりこねた。 痙攣する薄い腹に、射精の脈動が広がり、震え、 愛らしい胸の先が勃起し、細い息を繰り返した。 「今日で、私の教える事は全て終わりました。」 男は、手足の紐を解きながら、優しくささやきかけた。 「ですが姫様、もう止めましょう。あなたに、殺戮は似合わない。 あなたは、私のものです。もう私も、あなた無しでは私は生きていけない。 私と一緒になってください。」 打算が無かったとは言わない。 なりゆきに溺れたのも事実だ、 だが、いまや姫と離れることは、男には耐えられなかった。 汚れきった裸身が、ゆっくりと微笑みながら起き上がる。 身体中に男の刻印を刻まれ、浴びせられ、注ぎ込まれたたセニティは、 裸の両手を大きく開いた。 唇に精液の味がする。 だが、 「ぐっ!」 セニティの右手の手首にぶら下がっていた紐が、 男の首に巻かれ、締め上げていた。 「ありがとう、色々と教えてくれて。でもね、」 にっこりと笑った白い歯が、手のひらのレースを引き裂く。 そこには、妖しい紋様が青く浮き上がっていた。 『竜紋』と呼ばれる、竜神の試練制覇の証。 そして、王の資格をもつ証。 「私は王になるの。あなたと一緒になれるわけが無いわ。」 強烈な力が、男の全ての抵抗を奪う。 「あなたには本当に感謝しています。 あなたの技で私は戦います、 そして、最初の男だったあなたの事は、生涯忘れません。 だから、安心して死んでくださいまし。」 ゴキッ 首の骨が砕ける音がし、 なぜか男は、笑ったような顔をしていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− クリスタルの間は、 王の間の手前の、城内でも2番目に大きな広間だった。 最後の激闘が、そこで繰り広げられていた。 チェスと同じだ、王を手にした方が勝つ。 だが、ほとんど同時に、二つの部隊が流れ込んだ。 セニティの部隊と、ファーニッシュの部隊。 ハウリ王子を閉じ込めていた部隊が、城の部隊と戦い、 それをセニティの部隊が挟み撃ちにしたが、 直後、ファーニッシュの部隊がなだれ込み、 乱戦になった。 そして、もっとも勢いのある部分同士が、 ぶつかり合うことになった。 「姉様・・・」 「ファーニッシュ」 一番あってはならぬこと、 だが同時に、一番避けえぬことだったかもしれない。 「姉様、なぜ、なぜこんなことをしたの!。」 泣きそうな声で叫ぶファーニッシュに、 哀れみを含む声で答えた。 「私が王になるからよ。あなたには資格が無いわ。」 白く長い手袋がはずれ、掌に青く竜紋が浮かび上がる。 ファーニッシュは、悲しい目をした。 「姉様・・・もう、ぼくにもあるんだよ。」 驚愕するセニティの目に、 ファーニッシュの掌に浮かぶ竜紋が写った。 彼もまた、竜神の試しを終えていたのだった。 「ならば・・・王は一人よっ!」 血のりを払ったサーベルが、うなりを上げた。 受け止めようとしたファーニッシュのわき腹を、 左の短いサーベルが狙った。 必死に下がるファーニッシュを、セニティの刃が追い続ける。 ファーニッシュを守ろうとする兵士を、 傭兵の突撃が阻み、 セニティをかばおうとする親衛隊を、 老兵の短槍が串刺しにした。 リズムを変えて打ち出される剣先を、 ファーニッシュは必死に読み、受け流し、何とか奪おうとする。 だが、しょせん戦いは残酷な方が勝つ。 ビッ、 耳が切り裂かれた。 ザクッ、 浅く腿が斬られた。 殺人剣の技は、正当な剣筋を惑わし、 ファーニッシュを圧倒していた。 「くくく、しょせんあなたには無理なの、 安心しなさい、勝てないあなたを殺しはしないわ。」 ギリギリで目を狙った剣先を跳ね上げる。 「手か足の一本で、あとはゆっくり暮らせばいいわ。」 回転する切っ先が、距離を惑わし、 隙を開き、防御をはずさせた。 刃が一気にファーニッシュを襲った。 『殺される?!』 恐怖が、ファーニッシュの理性を吹き飛ばした。 「うわあああああああああああっ!」 時間が、急激に遅くなる。 いや、ファーニッシュの感覚が超スピードに叩き込まれた。 ドラゴンの血、それが爆発していた。 瞬時に人間の血を、何倍もの力で走らせ、 その力も、スピードも、違う次元のそれに吹き上げる。 <ドラゴン・バースト>と呼ばれる、竜神の加護がおこす奇跡。 光と化した剣が、 空間を切り裂く。 同じ血をもつセニティの両刀が、 クロスして受け止めた。   キンッ・・・ 両刀が同時に砕け散り、 細い首筋を断った。 ゆっくりと、ゆっくりと、 金髪を揺らしながら、 小さな頭部が、 落ちていく。 時間が戻る、 全ての喧騒が戻る。 そして、現実が、容赦なく、赤い血の海となって広がる。 同時になだれ込んできたレイラの部隊が、 残りの敵を掃討する。 ただ、レイラだけが、悲痛な光景に凍りついた。 そして、王の間の扉の向こうで、 ハウリが、立ちつくしていた。 赤い血の海のそばで、 ファーニッシュは声も無く、表情すらなく、 ただすわりこんでいた。 −−−ナゼ、コンナコトニナッテシマッタノダロウ−−− 封殺の塔、 長いクルルミクの歴史の中で、 生涯押し込められる運命にある者の最後の場所。 塔の一階には出入り口は無く、 窓は4階より上からしかない。 一切の出入りは地下からのみ行われ、 盲目と聾唖のメイドたちと、 年老いた冷たい目をした執事だけが、 その中を整え、取り仕切っていた。 塔の最上階、もっとも厳重に秘された部屋の中に、 奇妙な、言葉とも歌ともいえぬリズムが、 終わることなく、途切れることなく、続いていた。 豪奢な部屋の中は、 無数の人形がずらりと並び、 その真ん中に、金髪の美しい女性が、 半裸に近い姿で、人形と遊んでいた。 奇怪なことに、 その人形たちは全て、 頭部が歪み、あるいは溶けて、 顔がなくなっている物も多かった。 濡れたような色合いの唇から、そのリズムは流れ続ける。 青いうつろな目は、何も写さず、何も感じず、 ただ、人形と戯れ続ける。 「あはっ、あはっ、ふふっ、」 抱きしめ、笑い声をたまに上げる。 豊満な胸の間に、人形がうずまり、時々ぴょこっと顔を出す。 胸元が乱れ、たわわな乳房がこぼれ落ちる。 転げまわり、すそが乱れ、 なまめかしいふくらはぎや、長い艶やかな腿までもあらわになる。 下着を着けていないため、 乱れたすそは、奥に息づく淫の花びらすら、見せてしまう。 その無残な姿が、 かつてクルルミクの名花とまで言われた、 ハウリの姉姫セニティ王女だと、 言われなければ誰も気付かないだろう。 いつの間にか、くるぶしまで沈むじゅうたんの上に、 一人の女性が、腕を組んで立っていた。 長い豊かな白金の髪、 大きな妖しいアメジストの瞳、 きつめの美しい顔立ちだが、 短い赤皮のジャケットに、 紫の下着に、薄い布に金や宝石の飾りを縫いつけ、 腰と胸だけをわずかに隠しただけという、 破廉恥極まりない姿だった。 「ハウリの子供たちは、相打ちだ。 セニティは首を落とされ、 ファーニッシュは己の心に、 抜けない刃を突き立てた。 満足かい?、セニティ王女。」 呼びかけられても、セニティの不思議なリズムは変わらなかった。 そのリズムが、呪文であることを、 ハデス・ヴェリコは気付いていた。 古代語の呪歌に近い形式と、 セニティ自身が編み出したオリジナルの魔力の旋律。 『歪め、ゆがめ、ユガメ、』 『変われ、世界よ、ゆがみの中へ、』 『恐怖よ、きたれ、夢魔をひきつれ』 稀代の魔法使いと言われたセニティ王女のオリジナル呪文。 『歪み(シンセサイズ)』 人間の潜在意識を歪め、恐怖と混乱を静かに植えつけていく、 そして、より本能的な衝動に突き進むように、 ひそかに洗脳していく凶悪な呪文だった。 対象を選ばず、無差別に、かなり広範囲に影響を及ぼす。 ただし、さほど力はなく、 普通の人間なら、ほとんど影響はない。 だが、子供の柔らかい頭脳は、そうは行かない。 それが、運悪く向かい側の塔をのぞいてしまった、 幼いセニティ第一王女の、意識と頭脳を直撃した。 そして、姉姫の姿を見るたびに、 呪文は深く、強く、少女を呪縛していったのだった。 ラシャも、最後の死の床で、 セニティの『歪み』を思い出したのかもしれない。 「くふっ、くふっ、くふっ、」 急にセニティが笑い出した。 「きゃはははは、きゃはははは、きゃはははは」 狂ったように笑いながら、人形の頭を嘗め回す。 嬉しそうに身体をよじらせ、腿を淫らにすり合わせる。 じゅうたんの上で、身をよじり、すそを乱し、 乳房をむき出しにして笑い続ける。 豪奢な金髪が、ふわりと広がり、輝いた。 雫を滴らせた淫唇を開き、 人形の頭を突っ込んだ。 「きゃははは、ああんっ、はんっ、はんっ、きゃはははは」 別の人形を咥え、ドロドロになるまでしゃぶりながら、 腰をガクガクと揺り動かす。 それを己のアナルにぐいと突き刺し、グリグリとこね回す。 「きゃはははは、はははは、ああんっ、あんっ、きゃははははは、」 次々と人形を取り、咥え、しゃぶり、はさみ、突っ込み、 裸の熟れた裸身の周りに、汚れ、穢れた人形たちが、 いくつもいくつも、転がっていく。 誰もいない部屋で、 今はいない無数の男たちを相手に、 あの竜神の迷宮最下層の狂乱の中に溺れ、 セニティ王女は、人形たちを相手に、身をくねらせ続けた。 FIN