『ハデスパーティ』 byMORIGUMA 「さあ〜て、いこうかね。」 カオスで賢者、ハデス・ヴェリコは、 集まったメンバーにそう言った。 淫乱で外法使いの忍者カルラ、 元ダンサーという盗賊のアチャチャ、 それに同じ賢者のイリシス 『くふふ、どいつもこいつも、 ひとくせもふたくせも、ありそうじゃないか。』 だいたいハデス自身『史上最悪の賢者』などという、 壮絶なあだ名をつけられる性格。 人のことは言えた義理じゃあないが、 それにしても面白い。 何しろカルラは、元暗殺団の首領だったそうであり、 エロい事大好きの奔放な性格、ハデスと一番気が合うタイプ。 アチャチャは可愛らしいミニ巨乳のダンサーあがり、 これがまた、妙に目を引くやつで、 運だけはやたら良いのか、ダンサーやってて処女なんてのは、 ハデスも初めて見た。それに、妙に才能を感じる。 同じ賢者のイリシスは、ど〜も頭と身体がうまく合ってない感じで、 杖に妙な力を感じるが、嫌な気配があるので手を出す気になれない。 とりあえず、同じ賢者のよしみだ、 『おめえの物はおれの物、おれの物もおれの物』で行こう。 チームは軽量級で、耐久力に欠けるが、 ま、何とかなるだろ。 コツコツコツ・・・ 「ねえハデス、この間のモーテル騒動、あなた?。」 カルラが、妖しく笑いながら聞いてきた。 質問じゃねえ、確認だこれは。 「聞くなよ・・・知ってるくせに。」 さすがに一昨日の騒動は、頭が痛かった。 横でアチャチャが真っ赤になった。 チームを作るのに、盗賊が欲しいと思っていた。 探索や宝を見つける技能は、盗賊にはかなわない。 戦闘力はとにかく、長くこもる迷宮では、その技能は生死を分ける。 何でもやみくもにやれば、生き残れるものも生き残れない。 これまで、何回か気まぐれで迷宮に入って、 ほとんど毎回痛い目にあってきたハデスは、 盗賊という連中を、意外に高く評価していた。 酒場で、迷宮に挑戦したがってる盗賊を探そうとして、 どう見てもダンサーとしか見えない、派手な服装の娘が、 「迷宮に行くにはどうしたら良いですか?」 とバカ正直に聞いていた。 『おいおい、聞く相手を考えろよ。』 誰にでも聞けばいいってもんじゃない。 何であたしがその娘に目がいったかというと、その歩き方だった。 狭い所をすべり込むような歩きは、盗賊専門の歩き方だ。 何ということは無いのだが、ちょっと気になるしなやかさがある。 だが、聞いた相手が最悪だ。 「おう、じゃあおれ達が教えてやるよ。」 おいおい、顔に“自分はハイウェイマンです”と書いてあるって。 小柄でロリロリ、そのくせ乳があたしよりデカそうな娘は、 嬉しそうについて行き始めやがった。 せっかく見つけた盗賊候補なのに、横からかっさらわれた気分は、 がまんならねえ。 案の定、路地からモーテルへ連れ込まれそうになり、 口をふさがれ、抱きかかえられそうになる。 イライラ・・・あーもう腹立つ!。 「いい加減にしとけコラ。そいつはおれが使うんだ、 お前らハイウェイマンは、さっさとマスでもかいてろ!」 「な、なんだこいつ、タチンボ(娼婦)か?」 「どう見ても色基地外だよなあ、自分を連れてけってか?」 「そりゃ、連れてって欲しいなら、並べて尻比べぐらいしてやるぜ。」 火に油、火薬庫に手榴弾、 とたんに路地は火炎地獄。 正直、少女が無傷だったのは、奇跡以外の何者でもない。 ただ、吹っ飛ばされた拍子にお尻を打ったらしく、 痛そうに涙を浮かべていた。 「おまえなあ、聞くなら相手をえらべ。」 「じゃ、じゃあお姉さんに聞きます。」 「あん?」 さすがにこう素直に来られると、返事が困る。 少女はアチャチャと名乗った。 仕方が無いので、近くの酒場で話を聞くことにした。 見かけ通り、元ダンサーで、つい最近盗賊に転職したばかりという、 かけだしもいいとこ。 「それにしちゃあ、けっこう歩き方とか様になってるみたいだけど?。」 こう見えても賢者、どう見えようが賢者。 それなりに知識や知恵はある。 隣の部屋に住んでいた爺さんと、アチャチャはけっこう仲良くなり、 この気のいい少女は、けっこうまめに世話を焼いてやったらしい。 その爺さんが、『自分には何にもねえが、一つだけ教えてやれることがある』 と、盗賊のイロハを教えてくれたらしい。 全て教え終わって、爺さんは死んだそうである。 まあ、聞いたってしょうがないことだろうが、 「その爺さん、何て名だ?」 「お爺ちゃん、トーレンス・ブレイドっていいます。」 おいおいおいっ?!。 さすがのあたしも、これは驚いた。 『千の刃』と呼ばれた大盗賊じゃねえか。 盗賊ギルドの長にまでなったが、国が滅びた時に、 ギルドも崩壊したとは聞いていたが、こんな所で隠遁してたのか。 しっかし、爺さんもまたやっばい事やったもんである。 自分の技が消えるのが惜しかったんだろうが、 全くの素人に、最高技量のテクニック教えるもんじゃねえぞ。 たまに天才と呼ばれる、才能のある魔法使いが出ることがある。 だが、そのほとんどは大成せずに滅びる。 剣もまた同じだ。 下手に強いと、最初が楽すぎて、あとで挫折して自滅する。 同じように、『千の刃』直伝のテクニックなら、 たいていの盗賊家業は楽々だろうが、そのうち楽しすぎてドジを踏む。 ただ、まれな例外として、 最初から強敵に苦労すると、天才ほど強烈に伸びるものだ。 そこで嘗め尽くせるだけの苦労を積めば、そいつは本物になる。 「お爺ちゃんが、最後に言い残したのが、 ワイズマンの迷宮に挑めと言ったの。 だから私は、迷宮にいかなきゃいけないの。」 おっきな目に涙すら浮かべて、 アチャチャは本当に爺さんが好きだったらしい。 聞くまでも無いが、家族がいるはずが無い。 全く、とんでもない爺さんだぜ。 そこまで読んで、アチャチャを迷宮に行かせたわけか。 「あー分かった分かった、あたしが連れてってやる。 その代わり、こき使うから、覚悟しろ。」 本気で飛び跳ねる身の軽さは、さすがダンサーあがりだ。 周りの客が大喜びしてるが・・・。 「アチャチャ、迷宮で気をつけるのは、モンスターや罠だけじゃねえ。 こういう連中も、いるんだぜっ!」 紅蓮の炎で、剣を抜きかけた連中が、転げまわる。 さっきの連中のつれか、まだ探し回っていたらしい。 外で群がってくるハイウェイマンどもが、 一山いくらで焼きまくられ、大騒ぎになった。 「ぶっ、くくくく」 カルラが、苦しそうに笑い出し、あたしはなんとも妙な気分。 「笑うなコラ!」 指先から火の玉が飛び出し、避けたカルラの後ろにきたスペランかーが松明になる。 「そう照れない照れない」 ハデスの横を刃がすり抜け、襲いかかろうとしたハイウェイマンが、 3人そろって首が飛ぶ。 「うるせえっ!」 「もーうるさくて集中できないじゃない!」 イリシスがいいかげん青筋を立てて、杖を一気に振り回し、 衝撃波で、ハイウェイマンもモンスも一緒くたにひき肉になる。 「みなさん、すごいですねえ。」 妙に肝が据わってるというか、アチャチャはきょとんとしていた。 「あ、後ろ来ちゃやーですよ。」 さっと男の股間をくぐりながら、強烈なひじが、 股間を盛大に鳴らしたのは、なかなか見事だった。 パーティは今日も傍若無人に進んでいく。 一応FIN