31人斬りの真実 おまけ



 それは、ある晴れた昼下がりの事。


 「あはははははははははははははっ♪」
 「いやああああああああああっ!!」

 『ドワーフの酒蔵亭』では、なんとも奇妙な光景が大不評放送中であった。
 周囲の客は、テーブルをバリケード代わりにしてその後ろに隠れつつ、こっそり酒を飲んだり、無関心に飯を食べたり、展開中の奇妙な光景を覗き見たりしている。
 その中心にいるのは…


 全裸の女性を抱き寄せ ―― というか、小脇に抱え。

 お互いに指を絡めあい ―― というか、一方的に手をわしづかみにし。

 華麗なステップを踏みながら ―― というか、どたばたと縦横無尽に駆けずり回り。

 ワルツを踊る ―― というか、四股を踏む。

 そんなジャイアントエルフの姿。


 それはおよそ一切の種族に聞いたことも見たこともない奇怪なエルフであった。


 言わずと知れたトラブルメーカー、我らがフリーデリケおばあちゃんである。
 そのフリーデリケに抱えられているのは、先日フリーデリケに捕縛・陵辱された元ならず者のカタリナ。
 モンスターとの戦闘で疲れたパーティを襲ったものの、カタリナの姿を見たフリーデリケは「フリーデリケVision」を発動、バーサークして両手両足の指を足してもまだ足りないくらいのならず者を葬り去った挙句、カタリナをお持ち帰りしてきたのである。



 フリーデリケはカタリナの身包みを剥いだ

 (装備レベル 10→0)

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 カタリナは天の助けを祈った・・・

 しかし助けは現れなかった

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 カタリナは脱出の機会を窺った・・・

 しかしチャンスは巡って来なかった

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 カタリナはフリーデリケに散々に凌辱された・・・

 「やっ、だめっ、っ、あ、ああああああっ…!」

 「ほらほらほら、オンナノコがこんなにうすよごれてちゃダメなのれすううう、身体の外も中もぜえぇぇぇぇんぶ綺麗にしてあげるのれすううう♪」


 カタリナは激しい凌辱に耐え切れず、ついにならず者としての全ての気概を失った

 そして『かあいいもの』である己はしょせんフリーデリケの性奴隷に過ぎないことを悟ると、虚ろな目でフリーデリケにそう宣言した

 フリーデリケはそれを聞いて嬉しそうな奇声を発すると、カタリナに再びのしかかっていった・・・

 「ぁ、ぅ…」



 * カタリナ は フ リ ー デ リ ケ の 『 か あ い い も の こ れ く し ょ ん 』 に 記 載 さ れ ま し た *



 「…なあ、婆さん」
 どすんばたんと暴れまわるフリーデリケに、『ドワーフの酒蔵亭』店主、ペペフォジチノ・ビナヴェスニチィアン・グラッチェルニズ(以下ペペ)は、こめかみを押さえながらつぶやくように言った。
 「ウェイ?何ディスか、ペ。持病の癪でも来たディスか?」
 「……俺にはアンタが一番の持病だよ」
 「ウェイ?」
 ペペの嫌味も、フリーデリケには全く通じなかった。
 「…で、婆さん。ウチは酒場なんだがよ」
 「それがどうかしたディスか?」
 ペペの言葉に、フリーデリケは首を傾げる。
 「…酒場は暴れるところじゃねえって、何度言ったら判るんだ?」
 「オヨヨィ、ボケたですか、ぺ?」
 ペペの呆れたような言葉に、フリーデリケは逆方向に首を傾げ――というか、首を直角に折り曲げた。さすがジャイアントエルフである。
 「私は暴れてないディスよ。人がダンスを踊ってたのに、失礼な奴ディス」
 フリーデリケは大真面目に言った。この人の場合、大真面目だからこそ問題なのだが、当人がそれを自覚しているはずもない。
 「自分の行動に自覚を持ってくれと…いや、やっぱいい。どうせアンタに言っても、夕方まで覚えてるわけがねえ」
 「…ウェーイ?」
 ため息をひとつつくペペを見て、フリーデリケは大袈裟に肩をすくめてみせると、
 「汗をかいた後はお風呂ディス!ウェーーーーイ!」
 「きゃああああああああっ!?」
 悲鳴を上げるカタリナを抱えて、公衆浴場へと駆けていった。
 それを見て、ペペはひとりつぶやく。

 「…誰かあの婆さんを止めてやってくれ」


 そのとき、酒場にいた全員が、同時に首を横に振った。



 それは、ある晴れた昼下がりの事。
 売られていく子牛の哀しげな歌には、あまりにもそぐわない光景だった。



 ――END.





【キャラクター設定】

「人間なんて一皮剥けば皆一緒。なら、最初から中身の知れてる悪人の方がまだマシよ。…あなたは、どっちかしらね?」



・名前 カタリナ

・性別 女

・設定
 人間の軽戦士。女性。21歳。非処女。才能には恵まれなかったものの、一人で生き抜いてきたため経験は積んでいる。
 クルルミク貴族の使用人の家に生まれるが、7歳のときに雇用主の貴族は民衆に反乱を起こされる。それは税の徴収を巡るライバル貴族の仕掛けた扇動だったが、民衆は簡単に騙され貴族の舘を襲う。結果、エリナの一家は貴族もろとも民衆に襲われ、父は惨殺、エリナは母とともに暴走した民衆の欲望のはけ口として輪姦される。愛し守ろうとしていた民衆に殺された貴族、その煽りを受けた自分と家族。エリアの心に、善人への不審が根付いた瞬間だった。
 エリナは母とともにスラム街に移り住み、母が心労から帰らぬ人となった後は自分から悪い連中と接触を持つようになる。カタールの扱いを覚え、それとともに名をカタリナ(「カタールのエリナ」から取った)と変えた。服も、好んで挑発的な服を着た。それを見て寄って来た男と寝た事だって、一度や二度じゃない。それでも、エリナ――否、カタリナはこの道を選び続ける。あの惨劇が、カタリナの心を苛む限り。
 「人間なんて一皮剥けば皆一緒。なら、最初から中身の知れてる悪人の方がまだマシよ」。龍神の迷宮に挑むのも、決してクルルミク王国のためではない。好きあらば仲間を売り渡すことにだって躊躇しない。
 「人間の底を暴くこと」。最早それだけが、彼女の愉しみなのだ。

・性格 カオス

・職業 軽戦士

・設定レベル  経験レベル 16
         名声レベル 10
         才能レベル 4

・運勢レベル 14

・オプション  欺瞞(2) 淫乱(2) 売渡(2) 露出(2)

・ダンジョン方針 大胆