『謝る勇気と近くにいる優しさ〜〜2〜〜』

必死にタンちゃんの後を追いかける…

もうどれ位走ったかはわからないけど、とにかく走った…

………いた!!泉の前にタンちゃんは座ってた。

「タンちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!」

ビクッっとタンちゃんの耳が動く…逃げられる前に…本当に失う前に…捕まえたい…謝りたい…それだけしかわたしには無かった…


「捕まえた!!」

タンちゃんの後ろから抱きつき…転倒…全力疾走して勢いがあったからさすがにちょっと痛かった…腕の中でタンちゃんが必死にもがく…

「離して…フェリル…タン、またフェリルに迷惑…」

「迷惑じゃない!!」

ピタッとタンちゃんが抵抗をやめた…わたしは思いっきり、タンちゃんを抱きしめて、想いをぶつける…

「タンちゃんは迷惑なんかかけてないよ…タンちゃんは悪くない…悪くないよ…」

やば、声が震える…ちゃんと謝らなきゃいけないのに…涙が出てくる…

「フェリ…ル?泣いてるの?…タン、またフェリル傷つけた?」

タンちゃんの声も震えてた…また、迷惑をかけたと思い込み暴れようとするけど、思いっきり抱きしめて抵抗できないようにする…

「ううん…違うよ…タンちゃんは悪くない…悪いのはわたし…タンちゃんを傷つけたから…だから、」

タンちゃんの耳元で囁く…もうタンちゃんを傷つけたくない…泣かせたくない…あの頃に戻りたい…

わたしは勇気を振り絞って、震える声で、伝えた…

「ごめん・・・なさい……ごめんね…タンちゃん…わたし…タンちゃんを何度も泣かせた…ごめんね…悪いのはわたしなの…ごめんね…」

涙がボロボロこぼれてくる…ようやく言えた……

「フェリル…な、泣かないで、フェリルが悲しいと、タンも悲しくなる。フェリル、泣かないで…」

タンちゃんがわたしの腕にしがみつく…タンちゃんも泣いていた…わたしの腕に涙が伝わるのがわかった…

『ひっく…ウゥ…あああ…うあああああああああん』

わたしたちはお互いに…力いっぱいの声をだして…泣き続けた……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

乱れた衣服を整えながら、お互いの顔を見る……すこし恥ずかしかったけど…すぐにお互いに手をとって笑う…

「戻ろう。タンちゃん。エルザさんがケーキ作って待ってくれてる!」

「うん……ねぇ…フェリル…」

タンちゃんがうつむきながら、少し不安そうな声で尋ねてくる……

「これからも…一緒?」

「タンちゃん……うん!!一緒だよ!!」

満面の笑みで答える…それがわたしの出した…答え……

「あ、あと…あの…あのね…」

パァっとタンちゃんの顔が明るくなったと思うと、今度は顔を真っ赤にしてうつむいた…わたしには聞かれることはわかった…

「うん…さっきのはみんなには秘密…わたし達だけの…秘密だよ」

さすがに自分で言ってちょっと照れる……なにをしてたかはご想像にお任せします……

タンちゃんと手をつないで教会に戻ると………教会の子供達とじゃれあう人の影…って!酒蔵亭のみんな!!??

「みんな…やっぱりフェリルが心配だからって、隠れてた…ご、ごめんね…」

驚愕を通り越して呆然としていただろう…20人近くは居るよ?こんなに…わたしの事…心配してくれる人が…いてくれた…

嬉しくて、また涙が零れだす…そして恥ずかしさでいっぱいだった…泣き崩れるのを抑えて、みんなと向き合う…

「みんな……心配をお掛けして、ゴメンナサイ!!!」

深々と頭を下げる…中にはウィルカの姿も見えた…酷い事言ったのに…わたしの事を心配してくれた…それが…嬉しくて、申し訳なかった

『仲直りできてよかったですね』

『な〜んだ、もうちょっとグレたフェリルが見れると思ってたのにな〜』

『あら、同感ですわ…せっかく、スレたフェリルさんに邪神様の素晴らしさをお教えしようと思ってましたのに…』

『ふ、二人とも…せっかくのいい場面なんですから!!』

笑い…広い空間にいろんな笑いが溢れる…その笑い声が、とても、心地よかった…

『は〜〜〜い、ケーキの登場ですよ〜〜〜〜〜!!』

教会の扉が開き、スピリアさんやネージュさんがケーキの載ったトレーを持って出てくる……そしてエルザさんも……

『ザワッ』

その場が騒然とする…メイド服……エルザさんが…メイド服を着ている…それも、フィオーネさんとお揃いのメイド服…

『お、お、お、お…………』

一人だけ嬉しそうに震える人がいた……フリーデリケおばあちゃんだった……

『オ〜〜〜〜〜〜〜〜モチカエリィイイイイイイイイイイイ!!!』

叫んだと思ったら、着ていた鎧を脱ぎ捨てて二人目掛けて飛びつく…どうやったら鎧が形を維持したまま脱ぎ捨てられるんだろう?

『きゃああああああああああああ!!』

凄まじい勢いで二人を抱えて教会の中に飛び込むおばあちゃん……あ、鍵…かけられた…

みんなの空気が静まり返る……その一瞬後、窓ガラスをぶち破っておばあちゃんが…たたき出された…自業自得?

『ま…まったく…別に珍しいものじゃないでしょ…』

エルザさんが少し乱れたメイド服を整えながら息を荒げて出てくる…十分珍しいものだと思うよ?とみんなが思っただろう…




「タンちゃん…」

「どうしたの?フェリル」

「ううん………楽しいね」

タンちゃんと一緒にケーキを頬張る……美味かったからか、嬉しかったからかはわからないけど…涙が一筋、頬を流れた……




―――――――………END……