【処女神の沐浴】  by MURASAMA BLADE!

 それは、フェリルがタンと出会う前。龍神の迷宮への旅を続けていた頃の話。

 「あっつぅ〜い…」
 草原の中を、フェリルは一人うなだれながら歩いていた。
 その日は殊の外天気が良く、太陽がさんさんと照りつけていた。前の町を出て3日、昨日まで雨だったのが嘘のような快晴。農家は大喜びだろうが、フェリルは暑さでだれていた。
 「龍神の迷宮、まだかなぁ…」
 大地に溜まった雨水が蒸発しているため、蒸すような熱気が肌に纏わりつく。フェリルの顔からは玉のような汗がしたたり落ち、服は汗を吸って鈍く光を反射していた。鎧や服の下で下着が肌に張り付く感覚に、フェリルは何度も顔をしかめた。
 「どこか休めるところ…あれ?」
 そのとき、フェリルの視界に青いものが入った。足を止め、それが何かを確認し…
 「わぁ〜っ!泉だぁっ♪」
 フェリルは喜び勇んで駆け寄った。
 それは、草原にぽつりとたたずむ泉だった。陽光を受け、静かに青い輝きを湛えている。
 フェリルはそのまま泉に手を入れようとして、
 「…っと、危ない危ない」
 慌てたように手を引っ込め、注意深く周囲を観察しはじめた。
 『休憩できるところに着いたら、一層気を引き締めるんだ。ようやく休憩できる、と油断したところを襲われたらひとたまりもないからね』。
 以前パーティを組んだ先輩冒険者の教えを思い出し、フェリルは辺りに気を配った。きょろきょろと見回してみるが、周囲に人や凶暴な動物の気配はない。
 続いてフェリルは、泉を観察する。
 『綺麗な泉は危険よ。魚も水草も住めないような泉だからこそ、綺麗なのかも知れないのだから』。
 これまた先輩冒険者の教えを思い出したのだ。
 しかし、泉の中には魚こそいないものの多数の藻がゆらゆらと揺らめいている。底を探ればサイドステッパーなども見つかるだろう。
 「人影なし、危険なし、と…それじゃ、遠慮なく♪」
 危険がないことを確認し終えると、フェリルは遠慮なくといいつつも大きな木の陰に隠れ、鎧を脱ぎ始めた。


 ガチャ、ゴトッ…。

 鎧を脱ぐと、中にこもっていた熱気が立ち上ってくる。下着はおろか服までがたっぷりと汗を吸って身体に張り付いており、フェリルの控えめな胸の形や、着けている下着の線までが露骨に浮かび上がっている。その様を見て、フェリルは誰にも見られていないのに顔を赤らめ、慌てて上着を脱いだ。

 シュルッ、パサッ…。

 スカートも脱ぎ、フェリルは下着姿となった。可愛らしい薄いピンクのブラジャーに包まれた胸が、ショーツに隠されたお尻が外気に晒される。ブラジャーもショーツも、すでに滴り落ちるほどの汗にまみれほとんど透けてしまっている。小さいながらもしっかり自己主張するフェリルの小さな乳首の尖りがブラジャーの一部分を押し上げ、ショーツもお尻の線やぴったりと閉じた縦筋がくっきり浮き出ている。フェリルは早く泉に入ってしまおうと、手早く下着を脱いでいく。

 シュッ、スルッ…。

 ついにフェリルは、布一枚すら纏わぬ生まれたままの姿となった。発育途上の胸は小ぶりながらも瑞々しさに溢れており、肌を滑り落ちる汗を弾いて輝く。また、未だ男を知らぬ女性器は筆で描いた一本の線のように究極の美を醸し出し、またその周囲に繁る産毛は汗に濡れ太陽を受け、まるで自ら光を放っているかのようだ。
 汗まみれの布地から解放された素肌を柔らかな風が撫で、フェリルに涼しげな感覚をもたらす。そのくすぐったいような刺激にフェリルは頬をほころばせ、泉にその輝ける裸体を踏み込ませた。



 「ふひゅひゅひゅひゅひゅ…」
 そんなフェリルの沐浴を、一人の男が覗いていた。痩せぎすの貧相な体格で、顔つきもそれに相応しく小物っぽい。
 「フェリルたんのちっちゃいオパーイカワユスw今日こそ漏れがフェリルたんの処女を貰ってあげるよ、ハァハァ」
 この男の名はダルトス。見た目に比して小物な男で、卑怯で卑屈。強者にへつらい弱者をいたぶる。そんな糞野郎である。
 1週間ほど前、フェリルは運悪くこの男に目をつけられ、今までずっと尾行されていたのだ。これまた見た目と同じく隠密行動が得意で、経験の浅いフェリルにこの男を見つけられなかったとしても、責められるいわれはないだろう。
 「ふひゅひゅひゅ…フェリルたんの沐浴…」
 ダルトスはフェリルの沐浴を覗きながら、自分の貧相な逸物を取り出してしごき始めた。



 欲望にぎらつく2つの目に視姦され、オナニーのおかずにされているとも知らず、フェリルは久し振りの沐浴に心躍る思いだった。誰かが通ったらという事も忘れ、仰向けになって胸や股間を晒したまま泉に身体を浮かべたり、堂々と身体をこすって汗を落としたりと、開放的な気分になっている。

 スッ…。

 そうしているうちに、太ももを手でこすって汗を落としていたフェリルの指が、ふとした拍子に股間の縦筋に触れた。
 「ひゃぁっ?!」
 今まで感じたことのない感覚に、フェリルは飛び上がった。バシャッと水が跳ね、周囲に飛び散る。
 「…………」
 男性経験などないフェリルだが、今の感覚が何を意味するかくらいは知っていた。むずかゆさで頬を赤く染めながら、フェリルはもう一度、慎重にそこに触れた。

 ヌルッ…。

 「……〜っ!」
 そこに触れた瞬間、フェリルは確かに、指先にぬめりを感じた。再び、むずかゆい刺激が下腹部を痺れさせる。
 暑さからの解放感で、フェリルのそこは自分でも気づかないうちに濡れていた。
 フェリルは言葉を失い、顔中を真っ赤にした。冷えたはずの身体の熱が、再び首から上に集まってくる。
 「……誰も、見てない…よね」
 再び周囲を見回し、誰も居ないのを確認すると、フェリルは再び指を股間に当てた。

 ヌル、クチュッ…。

 「っ…ぁ、んっ…!」
 身体は少し冷え始めているにも関わらず、そこは未だ熱気に包まれていた。股間に近づけた指の腹に熱さを感じ、そのままそっと触れる。途端に全身が痺れ、すぐに指を離す。そしてまた、ゆっくりと近づける。
 オナニーとも呼べないような女性器への軽いタッチで、フェリルは今までにない快楽に溺れていた。

 ビクッ、ビクッ!

 「ひ、んっ!…はぁ、はぁ…っ!」
 「(嘘っ…こん、なの…すごい、っ…!)」
 自分の指に与えられる快感。熱が再び全身に広がっていき、溶かされそうになる。全身に電気が走り、身体が痙攣するかのように揺れる。そのたびに泉の水が跳ねて波打つ。
 フェリルはあられもない嬌声を上げながら、指が触れるたびに泉を波立たせていた。



 「ふひゅひゅひゅひゅひゅ!ふぇふぇふぇ、フェリルたんのお、お、おなぬぅぅぅぇい!?!?!?」
 フェリルの痴態を見せ付けられ、ダルトスは逸物から汚液を吐き出しながら魅入っていた。
 すでに周囲には、ダルトスが何度も吐き出した汚液が撒き散らされ、不快な臭いが立ち込めている。
 「こここここれは、フェリルたんからの誘いッ!ならば、受けなければ男として恥ッ!」
 一方的な思い込みで、ダルトスはその欲望を実行に移した。



 バンッ!

 「フェリルたん!キミの愛、確かに漏れに届いたモナー!」
 「っ!?」
 突如響いた破壊音とそれに続く男の声に、フェリルは驚き、声のした方を見る。
 そこには、砕け散った岩と、フェリルめがけてダイブしてくる男の姿があった。
 ――ダルトスは、岩に偽装した空間の中に隠れていたのだ。
 あんな狭い中で1週間もフェリルをつけまわして、しかもその中でオナニーするなど、正気の沙汰ではない。
 「イヤアアアアアアアッ!」
 フェリルの悲鳴が、草原に響き渡った。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 「…ふぅ、びっくりした」
 泉を出たフェリルは、身体についた液体を拭いながらため息とともにそうつぶやいた。
 先程の出来事は、なるべく早く忘れたかった。

 と言っても、フェリルがダルトスの糞野郎に犯されたわけではない。



 「漏れの思いを受け止めてくれー!」
 「キャアアアアアアアアアアッッ!」

 ザボーンッ…!

 フェリルめがけてダイブしたダルトスは、そのまま着水した。大きな水柱が二人を飲み込む。
 水柱が消えたとき、そこにはずぶ濡れになったフェリルと、うつ伏せで泉にぷかーと浮いているダルトスの姿があった。



 ――結局のところ、ダルトスが着弾点をミスって自爆したと、それだけの事である。
 それでも、股間から汚らしい逸物(しかも白い汚液にまみれている)をさらけ出し、自分めがけてダイブしてくる男の姿は、フェリルにとってトラウマになりかねない光景だった。
 一刻も早くその場を離れるため、フェリルは濡れた身体を拭くのもそこそこに着替え始めた。身体に残った水分が、清潔な下着を濡らし、薄い染みを作る。

 ジワ…。

 ショーツのクロッチ部分にも、じわりと染みができる。それは、拭いきれなかった泉の水か、それとも…。
 「……は、早く龍神の迷宮に急がなきゃ!」
 フェリルは自分に言い聞かせるようにそう言うと、足早にその場を立ち去った。

 下腹部に起こった、わずかな疼きを振り払うかのように。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 夜も更けた頃。
 「…ぼべらぁっ?!」
 経絡秘孔を突かれたモヒカンの断末魔のような悲鳴と共に、ダルトスはようやく目を覚ました。そのまま永遠に目覚めないでいてくれれば、フェリルを狙う悪い虫が減ってくれたのだが、仕方がない。
 「仕方ないわけねーだろこのDQNが!」
 ナレーションに対して怒るな。後お前のがよっぽどDQNだ。
 「くそっ…フェリルたんめ、この漏れが世界の中心で愛を叫んだのに逃げるとは…許せんッ!」
 ダルトスは身勝手なことを喚きながら、のろのろと泉から這い出た。
 「確か龍神の迷宮へ行くと言ってたな…フェリルたんめ、ヒィヒィ言わしてやんぜwwっうぇwwwwっうぇwww」
 ダルトスは不気味な笑い声を上げながら、龍神の迷宮を目指した。


   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


 「くちゅっ!…風邪引いちゃったかな?」
 ずずっと鼻をすすりながら、フェリルは寝袋にくるまる。
 地図の通りなら、一両日中には龍神の迷宮の近くの町にたどり着くはずだ。
 「…………」
 そう考えながらフェリルは眠りに落ち――ることができなかった。

 トロッ…。

 股間からにじみ出た粘液がショーツを濡らすのを感じながら、フェリルはごそごそと寝袋の中で身体の位置を入れ替えた。



 ――END.