ガシャン。

「……それを装備して来なさい、リリス。」
「何のつもりですか?ご主人様。」

確かに、不可解だろうな。彼女の目の前に出したものは、ワイズマン討伐隊に所属
していたときの装備。

「これで、私が刃を向けたらどうするの?」
「……私は死なない。仮に消滅させられたとすれば、貴女はこの次元の狭間の中で
孤独に死ぬ事になる。」
「最悪……」

つまらない真実を告げる。決して脱出できない恐怖。

「……だが、今日は外に連れ出してやる。用事があるのでな。まあ、私から逃げら
れると思うなら逃げるといいが……
その前に、うっかり死んだりするなよ?」
「私に、何をやらせるつもりなの?」

今日は、冥府の王が直々に下してきた密命がある。
一介の将軍である私は、下された命令には従わねばならない。

「……竜騎士とその乗騎を、一揃いで冥府に送りにいく。」
「冗談! ……拒否権は、無いのね。」

私がかけたギアス(制約という名の呪縛)が、彼女に激痛を走らせた。抗う事は、出
来はしない。


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「……。」

ここは、クルルミクから少しばかり離れた、グラッセンの侵攻軍の中継地。

「へっへ、いい女じゃねぇか。」
「あんまり近づかないほうがいいぞ……ゴーレムに殴られた。」
「何やってんだ、お前。だらしねぇなぁ。」

まあ、傭兵とは何処でもこんな物だろうな。

「ねえ、何で私の名前でグラッセンの傭兵に参加してるの?貴女なら、直接竜騎士
団と戦っても大丈夫なんじゃ……」

《……私は『地獄の将』だ。現世の民を直接殺傷する事は禁じられている。

念話で言葉を伝える。私は、ここではリリスに付き従うストーンゴーレムと言う扱
いであり、言葉を発するのは避けている。

「つまり、直接手を出せないから私に竜騎士を狩れって言うの?あの一騎当千の化
け物を?」

まさしく、その通りだ。最近、冥府に送った人材が如何せん貧弱すぎて雑兵として
も使いにくいと言われている。
そこで、戦力増強のために、冥府の王は戦争中の竜騎士団に目を付けた。

竜騎士と竜の死体がもっとも手軽に手に入るのは戦場だが、戦乙女という名の天界
の使徒が目を光らせている場所だ。

そこで私が、元冒険者でそこそこの実力がある奴隷を購入した事が冥府の王の耳に
入り、
その元冒険者が戦場に出て竜騎士を葬る事で優れた死体を得ようと言うわけなのだ
が…

《……正直、心配か?
「当たり前じゃない。……酒場であった、顔見知りを相手にしないといけないかも
しれないし。」
《……女竜騎士は、そう多くない。出会う可能性は無くはないが、その時はその時
だろう。
戦うからには、もちろん出来うる限りのサポートはしよう。
後は、お前の努力次第だ。いざとなったら私を盾にしても構わんぞ?
「貴女を盾に?……戦場での唯一の楽しみになりそうね。」
《そうか。精々ストレス発散に私をこき使ってくれ。









いや、まさか本当に盾にされっぱなしになるとは思いもしなかった。

騎竜の炎を避けるのに、一番手近な物陰として利用されていたのだ。彼女に限ら
ず、他の傭兵達にも。
流石にこれにはたまらなかった。既に、どろりと融けて動く事すらままならない。

「あち、あちあち!全く……上空から炎吐かれるだけで、ここまで手も足も出ない
なんて……」

正直、私も竜騎士を甘く見てた。体がガラス状になってしまって少々動けない。

《仕方ないか……リリス!聞こえる?

「ん、何か言った?」
《向こうの竜に対抗するために、こっちも竜を呼ぶ。ただ……問題がある。
「問題?」
《……私の言う事を聞かない。戦場から勝手に逃げる事は無いが、勝手に暴れるの
で巻き添え食わないように注意しろ。
「はあ?ちょっと冗談じゃ……」

彼女の突込みが入りきらないうちから転移先を決める。

「……何これ?」
《投げろ。その玉の中に例の竜が入ってる。投げたショックで出て来るんだが、投
げた玉は後でちゃんと回収しろ。
奴を再び戻すのに使うからな。

「ぎぃぐぅあああああああああ!」

……何故、こいつが出てくる?私はドラゴンを呼んだつもりだったのだが。

「何だ、こいつは!?」
「エンシェントドラゴンの類か?」
「厄介な相手のようだな。術者を一気に片付けるぞ!」

「え、ちょっと……」

炎が、槍が、竜の牙がリリスを襲う! ……だが、その攻撃は、全て白い竜のよう
な魔物が受け止める!

「ごぉああああ!」

「庇ってくれた?ちょっと!何よあれ!」
《私も、ミスであんな奴を呼んでしまうとは思いもしなかった!
「ミス?」

【久々に開放されたかと思えば、私を無視して主に襲い掛かるとは……貴様ら、唯
では済まさん!!】

突然、竜の一匹が、羽ばたく事を止める。そして、竜騎士を乗せたまま墜落し、動
きを止める。

【命を懸けて……かかって来い!】

「何を!」
「クルルミク竜騎士団の力を舐めるな!」

……その後は、一方的な殺戮だった。身動き一つ取れなくなってしまった私は、た
だ傍観しているだけだったが、
『深海に眠る銀の翼(シルバーフェザー・ロード)』の強さは圧倒的だった。
念一つで竜を地上に引きずり落とし、吐息で纏めて薙ぎ払い、
羽ばたき一つで竜騎士団の編隊を崩して、多少の傷は一瞬で治癒できる回復力を持
つ。

そんな化け物が相手では竜はまるで役に立たず、地上に落とされて竜を失った竜騎
士達は傭兵達の餌食になる。

……竜騎士団が敗走を始めるのに、それほど時間はかからなかった……

「凄い。」

《早くボールに戻しなさい。さっきは、竜騎士団が手を出したから加勢してくれた
けど、本当は全く言う事聞いてくれないはずよ。

「え、そうなの?」

……正直、あのような高位の存在が自身を封じたボールを持ってるというだけで主
とみなして、壁になるとは思いもしなかった。
そもそも、転移で持ってくるアイテムを同じ部屋で近い場所においてあったら勘違
いして、勘違いして呼んでしまっただけなのだが…
だが、結果は上出来か。さて、死体処理は冥界側に任せるか。

《竜騎士団達の死体からはさっさと離れろ。塵も残さず冥府に送るからな。

「へ?」

ボールにさっきの魔物を封じなおしたリリスが、突然背後に発生した炎に仰天す
る。

「びっくりした……」

《さっさと帰るわよ。

「え、ちょっと待って、これだけの戦果挙げといて報奨金も貰わずにたちさ…」

《貴女の体、乗っ取られたい?

「分かりました、すぐに帰ります……。」


後日、クルルミクとグラッセンの戦争において、謎の神獣が乱入したと言う噂が流
れた。

その戦場では、神獣と交戦して撤退した竜騎士団以外は誰一人、生き残っていない
と言うのだ。
竜騎士団が撤退した後、巨大な炎が上がったと言う報告もなされており、
あたりが消し炭になっていた為に戦死者の確認も不可能なほどの凄惨な傷跡をのぞ
かせている…。


シルバーフェザー・ロード
『海の神』の異名を持つ神獣。その名のとおり、普段は海の奥底で眠っている。
普段は大人しく、滅多な事では人を襲いはしないが、一度怒れば一国すら滅ぼせる
力を持つ。
神獣の中では比較的攻撃能力は大した事が無いとは言え、それでも人間如きがどう
こう出来る相手ではない。
……かつて人の手によって魔に落とされ、闇の神獣として世界を恐怖に陥れたと言
う伝説もある。
どうでもいいけど、最上級の伝説のポ○モンは反則だよなぁ……

エアロブラスト・ふきとばし・サイコキネシス・じこさいせい





@名前:ヘル・ベルティサーラ

@年齢:不明(死んだ時は0歳。ギルドボとの付き合いは約5年。)

@性別:精神は女。ただ、肉体が取り替えられるので×××

@設定

・元々は死産だったが、母が長年の研究の末に強引に蘇生。(最初期はドロドロした
不気味な物体だった。)
・兄(彼女が死んだ後に生まれているので、弟が正しいが彼女は兄と呼ぶ)とは、異
父兄弟。
・彼女は主に物質を操る術を叩き込まれている。(兄は精神を支配する術が専門。)

戦闘面での能力
・接近戦能力は、精々ならず者よりマシな程度。ゴーレムのボディでも如何せん反
応が鈍い。

@装備品
・集魔の杖:本来は精霊を呼ぶ為の杖だが、製作者自体(彼女の実の父)がこの神聖
な杖で
人魔を問わず『撲殺』をして杖自体を血で染めたため、魔の者を呼ぶ媒介として最
適なものとなっている。
一応、本来の用途である精霊を呼ぶ為の媒介として使う事も出来るが……

・黒のローブ
ただの黒い布切れ。防御魔法すらかけられていない。



・無駄に杖の先端から魔力を集める事で、鎌状の刃が出るという設定があるが、
 先に挙げた理由で   全く 無意味

・魔力を消耗しすぎると、即座に冥界行き。全力は出し切れない。
・属性魔法は光属性含めて全て使える。だが、基本3属性(炎・氷・雷)の攻撃魔法
と暗黒系以外は器用貧乏。
・ここ数年は、ネクロマンシー系・転移魔法・死体を焼くための炎魔法しか使って
いない。
・最上級の魔術は、魔力の総量の関係で知っていても扱えない。前に暴れた鮫が使
ってましたけど、
 地上にいる限り、彼女には  メテオ  なんて  無理 です。

・実は、ギルドボとガチでやったら負けた事があると言う設定。


……『地獄の将』という割にはえらく貧弱に思えるでしょうけど、
あくまでも『指揮官』なので、前線に出て暴れるタイプじゃないのですよ。
ネクロマンシー使ったり、ゴーレム生産してその部隊を統率するのが彼女の役目。
冥府ではざっと5000体ほどの部隊が彼女の命令を待っているらしい…

……ですが、頭脳派であるかと聞かれると……
知恵を貸してるはずなのにハイウェイズマンギルドがボロボロですしねぇ……
……将来に期待?

@性格:N(ニュートラル)

@職業:冥府の将(キャラクターシートでは、『賢者』と同様のステータス)

@設定レベル

経験レベル:15
名声レベル:3
才能レベル:12

@ダンジョン方針 無難

@運勢レベル 7

オプション 外法 人徳 雇用 統率 識別 光源 軽装 向上


……ってプレイヤーでもないのにこれは無い気が。

モンスターならこんな感じか?


名前:死神ヘル
戦闘力:75〜100
HP:100

魔法耐性(強):魔術師、賢者の攻撃力は3分の1として計算する。
全体魔法:ダメージは人数で割らずにパーティ全員が同時に受ける。

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