あんたは知ってるか?ハイウェイズマンギルドの死神の話。
あのギルドの幹部に収まってて、そんな異名を持つ割には連中の用心棒とかやって
るわけでもねえし、
いろいろと得体が知れないんでちょっと聞きたいんだが。
……知らないって?そうか、すまなかったな。
情報屋の俺が知らない情報があるってのは気に食わなくてな…
竜神の迷宮内に潜んでて、ギルドがやらかした事の後始末を担当してるらしいんだ
が、
素顔も過去も、戦闘能力も一切が不明。
唯一分かってるのは、強力な魔術師って事ぐらいだ…
直接出合った事のある冒険者は10人にもみたねぇ。もし、お前さんが出会えたら
俺にその情報売ってくれよ。



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「…。」



……今日も犠牲者が出た。知恵も力も無き愚者が、最下層に挑まんとする勇士達に
挑み無残な屍をさらす。
逆に力なき勇士、運の無かった勇士は愚者の糧となり、無残に心の果てまで喰らわ
れるのみ。
100人近い屍と、惨たらしい陵辱の後を思わせる白い水溜りはここであった事を
赤裸々に語っていた……


「さて、『仕事』だ。」

私は杖で足元を叩く。その叩かれた場所から炎が燃え上がる。

「片付けろ。」

炎は、まるで主の言葉を理解したかのように屍の転がる一角を焼き払い、後には何
も残さず消えてゆく…

「……相変わらず、見事な手並みだな。ヘル。」
「……何のようですか?」
「つれねぇな。ハイウェイズマンギルドのボス自らお前に会いに来てやったって言
うのに。」

ギルドボ。この周辺のならず者達を己の腕一つで纏め上げている、クルルミク最大
の賞金首。
王宮から数々の追っ手や賞金稼ぎに狙われており、今はワイズマンが放ったモンス
ターが潜むこの竜神の迷宮を根城としている。

「……それにしても、今回はまた凄まじい人数がやられたな。なんでも、ギルドラ
ンクが下がるほどだって?」
「へっ、この程度の被害なんざ大した事はねぇさ。
確かにえらいダメージは被ったが、ギルドランキング1位に名を連ねていたアリス
を捕らえる事ができたのは大きな成果だしな。」
「……そうか。まあ、私には関係ない事だが。」
「関係ないって、おい(^^;; ……まあ、お前にはこんなちんけなギルドに興味
はねぇんだろうがな。
一応は幹部の席を用意してやってるんだし、もう少し協力的でもいいんじゃねぇ
か?」

……『協力的?』

「何か勘違いしていないか、ギルドボ。私はお前を監視している側だぞ?」
「はっ、俺をあの世から連れ出して何言ってんだか?」

私は、この男との最初の出会いを思い出す。

「私は地獄の将軍だ。お前の出獄は冥府の王が定めた事。そして、その監視も
な。」
「……あくまで表面は取り繕うか。テメェだって、くそったれな地獄の言いなりに
なってるつもりはねぇんだろ?」


@@@ 闇の向こうから見える、ギラギラとした瞳。数々の名だたる地獄に落ちた
罪人の中では、
@@@ 何故このような小物が勝ち抜けたのか、疑問に思わざるをえないほど比較
的体格も頭も良さそうには見えなかった。


「……今はまだ、な。」


@@@ だが、他の連中とは決定的に違うところが一つあった。
@@@ 奴は、本能と転生の勘の化身だった。まるで、奴には未来でも見えている
かのような凄まじさと、あらゆる物を蹂躙する天才だった。


「だから、俺とつるんでるんじゃないのか?」


@@@ 「死なずにすんで、おめでとう。と、でも言っておこうか。正しくは、生
き返る機会を得た訳だが。」
@@@ 「無論、俺は生き返る事を願うぜ。生きて、俺ができる事、やりたい事を
やってやる!」


「お前に、何が出来る?」


@@@ 「貴様は、何がしたい?女を抱く事か?名誉を得ることか?誰にも負けな
い力を得ることか?」
@@@ 「何がしたいか、つったら……。まずは女を抱く事だな。お前も例外じゃ
ねぇ。」


「ヒデェな。一応これでも、俺はお前のことが気に入ってるんだぜ?」


@@@ 「私を……?あっはっはっはっは!生まれながらの死人を抱きたいだ
と!?」
@@@ 「何言ってやがる。どう見たって、お前は将来いい女になるぜ?」


「……この、仮面の下は無骨なゴーレムだと知っていてもか?」


@@@ 「……。口説かれると言うのも、悪くはないな。だが、私には体がない。
そして、仮に私が生きていたとしてもお前のようなブ男はご免だ。」
@@@ 「俺の顔はクソミソかよ、ヒデェな。ところで、俺が地上に出た後、監視
役がつくんだろ?お前、一緒にこねぇか?俺のギルドの幹部にしてやるぜ。」


「そうだとしても、俺はお前が気に入ってる。女だとか魔術師とかそういうんじゃ
なくて、今のギルドを立ち上げた時の相棒、としてな。」


この男は……まったく、昔から口が巧いな。


「クックック……あははははは! ……相棒、か。いいだろう。戦いに手を貸す事
はできないが、色々と知恵は貸してやる。」
「テメェは、そうでなくちゃ。全く、おだてがいのある野郎だぜ。」
「この借りはでかいぞ?」
「借りは俺が本当に死んでから取り立てるんだろ?まあ、せいぜいこき使ってくれ
や。」






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ヘル・ベルティサーラ

生まれながらの死人。と言うか、死産でした。
その後、狂気に取り付かれた母親がヴァニシュメンツに加わってネクロマンシーを
体得し、冥府より蘇った。
母親が亡くなった(冥府にいないので、正しくは消滅した)後は、力を求めて冥府へ
行き、地獄の将になる。
ギルドボ(勝手に元死人にしてすいません)とは、冥王が戯れに開いた娯楽の候補と
して選別したときからの付き合い。
現世の人間に無断で危害を加える事は禁止されており、冒険者との戦闘を行う事は
ない。
死体の始末は、冥府への点数稼ぎも兼ねている。

肉体は既に死滅しており、本来の体というものを持たない。
その為、ゴーレムや他人の死体・ホムンクルスなどを器として現世では行動する。
ただ冥府では、もし母が順当に成長していたらこうなっていたのかもしれないと想
像した最後の器の姿をとる。

地上:石で出来たゴーレムに黒いローブを着せ、骸骨の面をつけて赤い宝石のつい
た木の杖を持った姿。
冥府:金髪緑眼で、中学生くらいの背丈。黒いローブと木の杖は変わらず。母が作
った犬の使い魔を常に従えている。