ならず者の1日(その4)
【ケルケーの場合】
くそ!女冒険者を捕まえる事が出来なかった。
やはり少数精鋭では駄目か。
所詮ならず者。数で攻めるしかないな。
敗因はまだある。最大戦力として期待した3人が不在だった。
ロゼッタは行方不明。ミラは死神様の折檻中。
カスチューも行方不明。こいつはいつもの事だが…。
まいった。どうしたものか。
「ケルケーさん。定期報告です。」
手下の1人が来た。
良い報告を聞かせて、俺様の心を和ませてくれ。
最近は悪い報告しか聞いてないからな。
「あのスピリアが、ついに堕ちました。」
「おお、本当か!?」
調教師の奴ら頑張ったな。
あのエルフの人妻のおかげで、何十人が精根尽きた事か。
「最後まで残った4人の猛者に、栄誉賞が与えられたそうです。」
「だろうな。何か褒美があってもおかしくない。」
「しかも、ギルドボ様直々にです。」
「まじか!?」
「はい。しかも、ならず者達から4天王と呼ばれています。」
羨ましい。俺様も活躍して、早く大幹部になりたいぜ。
「次ですが、監禁玄室に数名の女冒険者達を捕縛。調教開始しました。」
あとで場所を教えてもらうか。俺様も調教に行ってやる。
ただ最近は奪回される事が多い。
調教に行って殺されたら洒落にもならん。
「捕縛した女冒険者の中に、ランキング3位のラファがいます。」
ランカーがいるのか!
それなら、ならず者達が数多く集まるだろう。
「600人以上、集まりました。」
そいつは凄い。ラファが堕ちるのも時間の問題だな。
あとは助けに来た馬鹿な女冒険者達を、返り討ちにして捕まえれば最高だ。
ラファの所に行ってみるか。
「最後ですが、女冒険者の1PTが9階にいます。」
「なんだと!?」
「かなり順調みたいで、10階に到達するかもしれません。」
そいつは不味い!
ワイズナーの野郎が、どんな奴かは知らねぇ。
こんな大事を起こした奴だ。簡単に負ける事はないと思う。
しかしだ。万が一負けたら、女冒険者達が迷宮に来なくなる。
ギルドにとって死活問題だ!
「・・・・・。」
よし!俺様が止めてやる。
そうすれば、俺様の地位も上がるだろう。
やる気が出てきたぞ。
「人数を集めろ!9階に行くぞ!」
「分かりました!」
「ちょっとまて。」
「はい?」
俺様は気になっていた事を聞いた。
「ラランとロゼッタの件は何か分かったか?」
仲間殺しの容疑がかかっているララン。
突然行方不明になったロゼッタ。
2人に何があった?
「その件ですが、まだ調査中です。」
「そうか…。行っていいぞ。」
「では。」
1人になって溜息をつく。
あのラランが実の兄を殺すとは思えない。
それにロゼッタ。白の騎士団とやらの密偵になった噂があった。
まさか死神様に粛清されたか?
考えても仕方ねぇな。調査待ちだ。
9階から戻って来るまでに、何か分かっているだろう。
俺様は部屋を出た。
【コイルの場合】
「怪我人です!」
「そこに寝かせておけ。」
最近は患者が多い。面倒な。
怪我をして戻って来るぐらいなら、最後まで戦って死ね。
と、物騒な事も平気で思えるようになっていた。
俺はコイル。ハイウェイマンズギルドに雇われた闇医者だ。
最初は楽だった。
大半の奴らは冒険者に挑んで戦死。
仕事があるとすれば、相談相手になってやること。
ならず者とはいえ、心に不安や悩みを持っている者は多い。
それも最初は少なかった。
それが今では、この現状だ!
医務室を見渡せば、患者の山!うざっ!
冒険者達が強くなったのか、ならず者達が弱くなったのか。
戦闘から逃げ帰って来る馬鹿共が増えた。
昔の根性はどうした?根性無しめ。
後続の為に必死で戦って死んで来い。
嫌なら勝利して、冒険者達を捕まえろ。
「ああ…ううう…。」
ベッドの方から、ゾンビのような声が無数に聞こえた。
スピリアとかいう冒険者の調教で、精根尽きた奴らが寝込んでいる。
アホか、お前ら。尽きる前に休め。
ギルドの威信の為に無理をするのも良いが、俺に迷惑をかけるな。
ドリンクをやるから、医務室から出て行け。
「おおーい!聞いたか!」
ならず者の1人が大声を上げて医務室に入って来た。
「やかましい!医務室では静かにしやがれぇ!」
「すんません。つい。それに先生の方がうるさ…いえ!何でもありません!」
俺が睨むと、ならず者は静かになった。
「それで?何があった?」
「はっ!みんな聞いてくれ。スピリアが堕ちたぞ!」
「お…おお…おおおおお…おおおおおおおおっ!」
大歓声が医務室に響いた。
ついに堕ちたのか。それは結構な事だ。
もう精根尽きた馬鹿な患者が増える事はないな。
「あ…あいつらが…やってくれたのか。」
「ああ!あいつらが、やってくれた!俺達の勝利だ!」
「よかった…俺の行為も…無駄じゃなかった…よな…。」
「当たり前だ!倒れて逝った奴らは無駄死になんかじゃねぇ!」
「そうか…そうだよな…皆の力で…勝った…。」
「ああ!早く元気になれ!倒れて逝った奴らの分まで生きろ!」
「俺は…もう駄目だ…。逝った奴らに…勝ったと…伝えるぜ…。」
「馬鹿野郎!弱気になるな!しっかりしろ!」
「ハイウェイマンズ…ギルドに…栄光あれ…ぐふ。」
「お、おい?おい!死ぬな、死ぬなあああぁぁぁっ!」
はっはっはっ、そろそろ怒っていいか?
「死んでない。疲れて眠っただけだ。」
くだらない三文芝居しやがって。
俺はメスと注射器を持って椅子から立ち上がった。
「せ、先生!?な、何を!?」
「医務室では静かにしろと言ったよな?」
「は、はい!す、すみません!」
「治療してやるよ。」
「えっ!?えっ!?」
「頭の治療を…なぁ!」
「ぎゃ、ぎゃあああああああああああああああああああああっ。」
ならず者達の悲鳴が辺りに響いた。
まったく馬鹿共め。
医務室には治療の終わった奴らが累々と倒れている。
これで、しばらくの間は静かだな。
コーヒーを飲んで、気分でも落ちつかそう。
「先生!」
「・・・・・。」
また大勢来たよ。今度は何だ?怪我なら唾でもつけておけ。
「実は相談があって…。」
そっちの方か。仕方ない。聞いてやるよ。
「実家の母が危篤で…。」
「帰れ。」
「恋人が冷たくて…。」
「知るか。」
「上司との関係が…。」
「頑張れ。」
頭が痛い。休めるのは、まだまだ先のようだ。
ギルドボ様に頼んで、助手を雇うことにしよう。
願わくば、助手は美人の女性がいい。
【カスチューの場合】
「う、う〜ん。」
おっ?やっと目が覚めたみたいだ。
あたいのベッドで寝ていた女が身体を起こす。
「気分はどうだい?」
「悪い…。」
そう言って女は、辺りをキョロキョロと見渡している。
「ここはどこ?」
「あたいの部屋だよ。部屋っていっても迷宮の中だけどね。」
「迷宮?そもそも貴女は誰?」
「あたいはカスチュー。ハイウェイマンズギルドの関係者だよ。」
「…知らない。」
知らない?おかしな事を言うな。この女は。
「こっちから質問。あんたは誰?どうして迷宮で倒れていたの?」
そうなのだ。
この女は迷宮で倒れていた。かなりの重傷で。
気まぐれで手当てしたけど、どうやら死なずに済んだようだ。
「僕は…誰?」
「はぁ?」
「何も思い出せない。」
それって記憶喪失?冗談じゃなさそうだ。
まぁ重傷だったし、怪我の後遺症ってやつ?
「聞いていい?」
「何でもどうぞ。」
「どうして僕は兜を…かぶっている?」
兜。頭を守る防具。様々な種類がある。
女のかぶっているのは、クロスヘルムと呼ばれるもの。
頭全体を完全に覆っているのが特徴的。
重装備の傭兵や騎士などが、よく装備している。
「しかも、どうやっても…脱げないけど。」
「あんたの兜じゃない?」
「分からない。記憶がない。」
ふむ。しかしなんだね。
女は裸だ。あたいが血まみれの服を脱がした。
あとは包帯を巻いた。
痛々しい中にも色っぽい要素があるはずなのに、兜で台無しだ。
「聞いてる?」
「ああ、はいはい。兜だったね。」
あたいは簡単に説明した。
倒れていた女の近くに兜が落ちていた。
女の物だと思い、かぶせて部屋まで運ぶ。
その後、どうやっても兜は脱がせなかった。
きっと脱ぐ方法があると思って放置。
「・・・・・。」
「問題あった?」
「色々と…。」
「ん〜。ヒネモスのおっさんに聞いてみようか。」
「ヒネモス?」
「魔法使い。あんたのクロスヘルムについて知ってるかも。」
死霊使いヒネモス。
ハイウェイマンズギルドに属している凄腕の魔法使い。
何度殺しても復活する面白いおっさん。
「服はあたいの貸してあげる。」
「ありがとう。」
「礼なんて、いらないよ。」
女は、って名前がないと困るね。
「よし。記憶が戻るまで、仮の名前をあたいがつけてあげる。」
「記憶が戻るまで?」
きょとんとする女に、あたいはニヤリと笑って言った。
「そう!記憶が戻るまで面倒見てあげる。」
「いえ…面倒をかけるわけには…。」
「遠慮しない。困ってる人を放り出す事なんて、あたいには出来ないから。」
「カスチューさん…ありがとう。」
「いいって、いいって。それからさ、さんはいらない。」
あたいは他人行事が嫌いだ。敬語も。
まぁ、困っている人を放り出す事なんて、平気でするよ。
あんたは別。身体や今までの動きを見れば分かる。
特殊な訓練を受けた人間だってね。
記憶を失っても、あたいの計画の役に立ちそう。
今のうちの恩を売って損はなし!
「名前はミスティでどう?」
「ミスティ…良い名前です。」
「気に入ってもらって嬉しいね。さあ、行こうか。」
「はい!」
ミスティの手を引っ張って部屋を出た。
ヒネモスのおっさんは迷宮を彷徨っている。
だけど多分、あそこに居るはず。
手駒も手に入ったし、これから面白くなりそう。
あたいは微笑した。
【ラランの場合?】
始めに言っておこう。
私はならず者ではない。傭兵だ。
名前はリッツアー。
そして、不本意ながら、ハデスファンクラブの会員80だ。
うぐぐぐ…情けない。
「はぁはぁ、今日もハデス様は美しいですね。」
「本当ですね。」
「当然だ。ハデス様だぞ?」
私は穴があったら入りたい気分だった。
目の前に3人のストーカーがいた。
かなり手前にいる冒険者PTのハデスを、飽きることなく見つめている。
悲しい事に1人は実の妹であり、残りの2人は知り合いだった。
「あっ、ならず者達と交戦状態に!」
知り合いの1人、ラランが叫ぶ。
なぁ、ララン。お前って…ならず者だよな?
いいのか?仲間の加勢をしなくて。
「しません!ハデス様の活躍が見れないじゃないですか!」
そんなにはっきりと言われても困る。
まぁ、ならず者のラランを放置している私も問題だが…。
「はぁ、素敵です。私も打たれたい。」
妹よ。うっとりした目で危ない事を言わないでくれ。
今は亡き両親よ。私は妹の育て方を間違えただろか?
それとも父よ。貴方の血のせいか?
妹の名前はアルティシア(アル)。
私はお前の未来が心配だ…。
「素晴らしい。ならず者達がゴミのようだ。我の花嫁に相応しい。」
こいつも駄目だ。目を覚ませ。
失礼だが、あんな花嫁は私ならいらない。
「あのじわじわと痛めつけて殺すのが良い。」
・・・・・。
ドサディストめ。
結婚しないでくれ。とんでもない夫婦が生まれる。
万が一にもないと思うが怖い。
こいつの名前はロイルツ。
見ての通りの性格だ。
3人に共通しているのは、ハデス・ヴェリコに陶酔していること。
最初はよかったのに…。
今ではこれだ。危険な龍神の迷宮に入ってまで、ストーカー行為をしている。
勘弁してくれ。
ならず者に捕まったり、罠や魔物で命を落としたら、どうする気だ?
・・・・・。
分かっているよ。何も考えてないよな。
だが、そんな事になったら亡き両親や、2人の家族に申し訳が立たない。
苦渋の決断の末、私は3人に同行する事にした。
さようなら、傭兵家業。
ファンクラブに入ったのは、常にハデスの現状を把握しているからだ。
これなら3人が先走っても問題ない。
3人は必ず、ハデスの傍にいるのだから。
どうやら戦闘は終わったようだ。
ハデス達の圧勝で。
はぁ…またストーカー行為の再開か。
「!」
魔物だ!ララン、アル、ロイルツ!
※メガトンパンチャーが現れた※
ラランはハデスを見つめている!
アルはハデスを見つめている!
ロイルツはハデスを見つめている!
リッツアーは1人で戦った!
「まてやああああぁっ!お前らも戦ええぇ!」
リッツアーは6ターンで、メガトンパンチャーに勝利した!
生き残った者達は、それぞれ30点の経験を得た。
「納得いかねええぇぇぇっ!」
「ハデス様が行っちゃいますよ。」
「バレないように追いかけよう。」
「リッツアーさん、置いていくよ。」
すみません。誰か私の代わりに、こいつらを殴って下さい。
むしろ止めてください。
ハデスを追って、さらに迷宮の奥へ進む。
地上に戻れるかな…。
楽しそうな3人を余所に、私だけが暗々たる気持ちだった。
一行は大胆に先に進んでいる。
・
・
・
アルは罠に掛かった!
※弩の弓だ!※
アルはリッツアーを盾にした!
リッツアーはHPに10のダメージを受けた!
「ぐわあぁっ!?」
「ふ〜。危なかった。」
い、妹よ。兄を盾にしますか…。しくしく。
一行は何事もなく先へ進んだ。
「心配ぐらいしやがれえぇぇぇっ!」
神よ。こいつら見捨てても、いいですか?
お願いです。いいと言って下さい。
悪魔でもいい。言ってくれ。頼む。
※ならず者達が襲い掛かってきた※
「ラランだ!見つけたぞ!捕まえろ!」
ならず者は手に指名手配書を持っていた。
ラランの名前と似顔絵が載っている。
「ララン!何をしでかした!?」
私の問いにラランは笑顔で答えた。
「知りません。」
嘘つけえぇぇぇっ!
15人のならず者がラランに飛び掛った!
ラランは15人をリッツアーに擦りつけた!
5人のならず者がアルに飛び掛った!
アルは5人をリッツアーに擦りつけた!
5人のならず者がロイルツに飛び掛った!
ロイルツは5人をリッツアーに擦りつけた!
15人のならず者がリッツアーに飛び掛った!
リッツアーは15人を屠りさった!
ラランが15人擦りつけた!何とか15人を屠りさった!
アルが5人擦りつけた!何とか5人を屠りさった!
ロイルツが5人擦りつけた!何とか5人を屠りさった!
ならず者達を撃退した。
・
・
・
お宝は発見出来なかった…。
・
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・
一行は休憩して回復行動をとった。
全員に才能に応じた経験値を得た。
「しまった!今ので、ハデス様を見失ってしまった!」
「何てことでしょう!」
「くそ!ハイウェイマンズギルドめ!」
はぁはぁはぁはぁ。違うだろ、お前ら!
息切れしながら、私は3人を睨んだ。
まず、私に謝れ。殺す気か?
いや、こいつらを心配した自分の愚かさを呪うべきか。
私は生きて帰れる事を切に願った。
誰か…助けて…。
一行は更に前進する事にした…。
【???の場合】
「どうしても、ギルドを抜けるのか?」
「ああ。この決意は変わらねぇ。」
「そうか。」
冒険者の酒場で俺は相棒と酒を飲んでいた。
ならず者だが、俺と相棒は奴隷商人との交渉役。
正体は冒険者達に知られていない。
だから、ここで堂々と酒を飲んでいられる。
相棒が今日、ギルドを抜ける。
30年間の長い付き合いも終わりだ。
「白の騎士団って奴に入るのか?」
「ああ。心配するな。仲間は売らねぇよ。」
「分かっている。お前は悪人にしては義理堅いからな。」
白の騎士団。最近結成された女冒険者の救出・支援をする組織だ。
物好きな奴らもいると思った。
しかし、こいつの行動は馬鹿に出来なくなっている。
確実に売りさばいた女冒険者の場所を探して救出するのだ。
おかげで、お得意様が怯えている。
忌々しい組織だ。
「理由は最後まで教えてくれないのか?」
俺が聞くと相棒は困った顔になる。
何故か赤い。酒のせいだけではないようだ。
「笑うなよ。」
「笑わないさ。」
相棒は一気にグラスに入っていた酒を飲み干すと言った。
「惚れちまった。」
「惚れた?」
まさか…女冒険者に!?
「一目惚れだった。40過ぎの俺がな。」
驚いた。女は商品にしかすぎないと言っていた相棒が…。
一体誰なのか?この相棒のどす黒い心を射抜いた奴は。
「今居る。」
「何!?」
酒場を見渡した。
4人の女冒険者がいる。全員名前は知っていた。
チャイカ・ゴンチャロフ。並みの男より良い体格をした重戦士。
クレール・アズナヴール。銀竜の異名で呼ばれる凄腕の竜騎士。
ダイアナ。戦で竜を失った竜騎士。
マリグラント・メラノーマ。呪い人形を使って戦う恐るべき僧侶。
この中の誰かに一目惚れしたらしい。
何と言っていいのか。
止めても無駄だろう。決めたら突っ走る男だ。
「誰だ?」
「今に分かる。」
「?」
「告白する。」
「ほ、本気か?」
相棒は頷く。また驚いた。
今この場で告白するとは…。無謀というか勇敢というか。
酒場にいるのは、俺や相棒、女冒険者達だけではない。
傭兵達やその他の客も多い。
俺は心配になった。
ふたれたら時、いい笑い者になるのではないかと。
「心配するな。ふたれてもかまわん。」
俺の心を見透かしたように相棒は言った。
「ふられても思いは変わらん。白の騎士団で彼女を支える。」
相棒は立ち上がった。
告白に行くのだ。俺に止める事は出来ない。
あそこまで覚悟している。
見守ってやろう。ふられたら、今日はとことん酒を付き合ってやる。
カウンターの上で、こっちを見ている黒猫。
お前も相棒を応援してやってくれ。
「ちょっと、よろしいですか?」
相棒は女冒険者に声をかけた。
酒場の視線が女冒険者と相棒に注がれる。
「一目見た時から貴女に心を奪われました。」
「・・・・・。」
「私と付き合って頂けませんか?」
言ったよ。相棒。お前は男の中の男だ。
こんな大勢の前で告白するとは…。
女冒険者はきょとんとしていた。
同じ席に座っている女冒険者達は驚き、交互に相棒と告白された女冒険者を見る。
観客たちも固唾を飲んで見守っていた。
騒がしかった酒場が静寂に包まれる。
果たして結果は…?
女冒険者は言った。
それから数時間後。
酒を飲みすぎて相棒は酔い潰れていた。
仕方あるまい。予想していたが見事にふられた。
堅物のお前にしては上出来だったよ。
ふたれたが、思いは変わらないだろう。
頑張って、女冒険者の支援をしてやれ。
明日から俺とは敵同士だ。
また酒を一緒に飲める日が来るといいな。
「とんでもない騒ぎになったものだ。」
酒場の店主が言った。
「元凶はそいつだ。」
「確かに。」
俺は頷いて苦笑する。
確かにあの後の騒ぎは、相棒のせいだと言っていい。
ふられた後だ。
「あんた男だぜ!俺も告白する!」
「私もだ!」
「おいらのこの熱い思いを聞いてくれ!」
と、4人の女冒険者に、思いを寄せていた連中が告白したのだ。
相棒と同じように。
さすがの女冒険者達も驚き慌てていた。
あんな表情は滅多に見られない。
相棒を慰めながら、俺は声を押し殺して笑った。
「にゃ〜ん。」
足元に先程の黒猫がいた。
腹が減ったのか?
皿にあった肉を一切れやった。黒猫は美味そうに食べる。
今日は特別だ。
相棒の記念だからな。色々と。
俺は立ち上がると酒場の入り口まで移動する。
振り返り、眠っている相棒に言った。
「じゃあな。」
・
・
・
・
・
≪あとがき≫
ランスローです。
何かキャラが沢山出て、ごめんなさい。
ちょっと思いついた小話とかも含めて書きました。
「ランスロー!」
おわっ!?ロゼッタ!?
終わったキャラが、もう出てくるな。
「失敬な!僕を復活させるんだろ?」
どうだか?
「放棄した感じとか、中途半端だとか、落ちナシとか、言われたくせに…。」
うぐ…そうだが…。
「うだうだ言わずに出しなさい。」
気が向いたら。
に、睨むな。終わりとか、想像に任せるとか言っておいて出すのも何だろ?
「まあいいわ。早いうちに復活させることね。」
はいはい。
「今回も駄文を見てくれて、ありがとうございました。」
駄文って言うな!
それでは。みなさん、また(・ω・)ノ
「あれ?俺様の…ケルケー様の出番なし?」
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