奴隷商人戦記(その4)





ギリギリ。

「くぅぅうううっ。」

女冒険者を捕縛した。僕の放った糸が身体を絡め獲っている。

どうして身体が動かないか分かっていないようだ。

それも当然か。僕の使う鋼糸は極細だ。

よほど注意しないと見えない。

力で引き千切る事は難しい。いくら冒険者でもね。

逃げようとしているけど無駄。

天井・床・壁に鋼糸を打ちこんである。

女冒険者は残酷な蜘蛛の巣に捕まった哀れな蝶でしかない。

「糸…?」

ようやく気がついたようだ。遅いよ。

もう終わり。冒険者としての生活も、これからの人生も。

「抵抗はやめろ。暴れたところで糸は切れない。」

「貴女…鋼糸使い…?」

へぇ、知っているの。鋼糸使いを。

暗殺者の中にも数人しか使い手がいないのに。

博識だね。賞賛してあげるよ。

でも、もっと早くに気がつけば、よかったね。

鋼糸を軽く揺らす。女冒険者の服が切り裂かれる。

「きゃああぁっ!」

「本気になれば、5体バラバラにすることも出来る。」

僕の一言に、顔を真っ青にして女冒険者は怯えた。

いい表情だね。安心していいよ。今のは単なる脅しだから。

大事な商品に傷はつけない。

ダダダダダダダダッ。

ならず者達が現れた。女冒険者を取り囲む。

来るのが遅い。大丈夫と思うけど注意しておく。

「鋼糸は前に教えた通り解きなさい。無理に解いて傷をつけないこと。」

「了解だ。」

ならず者達は頷く。大変結構。

僕はこの場を後にした。

後ろから、ならず者達の下品な笑い声と女冒険者の悲鳴声が聞こえた。





与えられた自室に戻ると、粗末なベッドに寝転がる。

疲れた。最近は働くだけ働いて、ろくに休んでいない。

だけど、何かしないと落ちつかない。

全部、アリアンのせいだ。

仮面が剥がされた。偽りの仮面が。

隠していた本当の僕を見られた。

悔しい、恥ずかしい。様々な感情が渦を巻く。

そういえば、ケルケーの奴は死神に気に入られた?

今までになく積極的に行動している。大幹部になるって張り切っていた。

ほんと欲望に忠実な男だね。

「常識とルールを教えてやる。」と、恩着せがましく毎日来るのが面倒。

むしろ、うざい。言われなくても分かっている。ちゃんとやる。

全ては黒薔薇様の為に。

あの地獄の日々の中で、黒薔薇様だけが、僕に手を差し伸べてくれた。

一生忘れない。忘れられない。

僕にとって黒薔薇様が世界そのもの。孤独だった僕の世界を変えてくれた人。

捨てられたら僕の居場所はなくなる。

耐えられない。それだけは。

だから、黒薔薇様の期待に応えてみせる。

黒薔薇様が望むなら、僕は喜んで、この命を捧げよう。

救いの手を差し伸べてくれた時から、僕の命は黒薔薇様のモノだから。





「起きろ、ロゼッタ。」

いつの間にか眠っていた。やっぱり疲れが溜まっていたみたい。

「何よ。」

僕の尻を触るケルケーの手を不機嫌に払う。

「怒るなよ。減るもんじゃないだろう?」

「減る。腐る。」

「お前なぁ、泣くぞ。」

泣け、勝手に。それにしても部屋に鍵をつけて欲しい。

寝こみを襲われる心配はない。むしろ、襲えるものなら襲ってみろ。

命がいらないなら。寝起きの僕は非常に機嫌が悪い。

眠りの邪魔をする者を容赦なく細切れにする。

今はそれほど眠くない。運が良かったわね。

そんな事を知る由もなく、ケルケーは裏社会のルールを語り始めている。

殺しておけばよかった…。

「さて話は、ここまでだ。行くぞ。」

立ち上がるとケルケーは、強引に僕を連れて行く。

「どこにいくの?」

「お前が捕まえた女の所だ。」

女?ああ、あの冒険者か。そうなると、監禁玄室?

どうして僕が?

「今日は調教の方法を教えてやる。」

いいよ。だって、調教されたことのある僕自身が1番良く知っている。

今更教わる事なんてないよ。

言っても聞いてくれないか。はぁ、本当に面倒な奴。

監禁玄室に着くと、女冒険者が多くのならず者達に犯されている。

「やだ…もう…やめて…。」

その表情は絶望に染まっていた。

この程度で絶望するなら、その先にある絶望に心が持つかな?

発狂した方が幸せなのかもね。

そもそも、こうなることは分かっていたはず。

覚悟がないなら最初から来なければいい。

何故かイライラする。

「ケルケー、戻って休みたい。」

いないし…。どこ?

いた。ならず者達と一緒に女冒険者を犯している。

調教の方法は?

聞いたら親切に教えてくれそうだから、あえて聞かないけど。

監禁玄室を後にした。

一眠りしてから、また女冒険者を狩りに行こう。





この時、気がついてなかった。

僕を見つめる視線に…。











≪あとがき≫

ランスローです。

ノルン様。ロゼッタとケルケーを使って頂き感謝です。

これからも遠慮なく使ってやって下さい。

アリスさん・キララさん・ガネッタさん・その他のSSなど

を広く書き過ぎて、収拾がつかなくなっている今日この頃。

ワイズナーが終わるまでに書き終えるといいな…。

自分の愚かさに反省。

「まったくね。」

また出たか、ロゼッタ。

「何か問題でも?」

い、いえ。ありません。

だから、そんな怖い顔で私を見ないで下さい。

「面倒ならSSの数を減らせば?」

断る!読んでくれる人達の為に私は書き続ける!

「あんたのSSを呼んでくれる人いるの?」

1人か、2人ぐらいは…。

「少な!書くの辞めたら?」

じ、自己満足の為に書きます。

DPC様、皆様に迷惑をかけないように。

「これ書き直している時点で迷惑かけているけど?」

しくしく…。

「はいはい、泣かない。これでも飲んで。」

お茶か。ロゼッタも優しいとこあるな。

「失礼ね。いつも優しいでしょ?」

・・・・・。

「優しいでしょ?」

はっ!いつも優しいであります!

なので、鬼のような形相は辞めて欲しいであります!

ありがたく、お茶を頂きます!

ゴクゴク。(お茶を飲む。)

「美味しい?」

うぐっ!?急に苦…しく…なって…。

お茶に…何を入れ…た…?

「ビタミンが足りないと思って薬をちょっと。」

な、何の…薬…だ?

「普通の薬のはずだけど…あっ。」

・・・・・。

「・・・・・。」

正直に…言って…ごらん?

「ごめんね。暗殺用の毒を入れちゃった。てへ。」

いれちゃった。てへ。

じゃねええええええぇぇぇ…ゲホガボ!(吐血)

バタン!(倒れた後、小刻みに痙攣して動かなくなる。)

「ランスロー、生きている?」

・・・・・。

(返事がない。ただの毒殺された死体のようだ。)

「あはは。だ、誰にでも失敗はあるよね?」

「緑色になっているランスローの代わりに。」

「今回も読んでくれて、ありがとうございました。」

「では〜。」


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