ワイズナーSS「4月21日の・・・未来計画」 4月21日。某時刻。 いつものように定時報告を聞いていたラヴィルは苦虫を噛み潰したような顔をしながらその報告を聞いていた。 「主任、どうしたよ。そんな苦虫噛み潰したよう顔して。」 「いや、またならず者たちが調子に乗るかと思うとな。  しかも今回は前回の比じゃねえし。  まあ、今回は一気に8も上がったからなあ・・・しかも初の10レベル。」 「どーせあしたには落ちてるだろーに。」 「だからこそ連中、今日、一気に吹っかけてくるぞ?  んで、その後始末するのは俺らってわけっす。」 「んだなあ・・・」 「グラッセンとの戦況も久しぶりに悪化したというし・・・もしかしたらやべえかもな。」 「なんでだよ。グラッセンが攻め込んでるせいで、  こっちに竜騎士団がこねえんだろ?」 「・・・程度にもよるっすよ。  実際、一気にクルルミク首都制圧までされるのは少しおいしくない。」 「その理由は?」 「今俺らがいるここ・・・竜神の迷宮。  クルルミクの人間にとって、ここはどういう場所かわかるっすか?  ・・・そう。王位継承の儀式を行う聖地。  いわば、クルルミクという”国”を現す場所。  だからこそ、連中だって女冒険者繰り出してこんなことしてるんすからね。」 「・・・まあ、そりゃそうだな。」 「そういう”国”としてあるための  侵略者にとって厄介なもののひとつなんすよ、それって。  だからグラッセンの連中がクルルミクを占領した場合、  真っ先にここをつぶしに来るっしょうね。  ”クルルミク”という国を、完全に、滅ぼすために。  ・・・グラッセンの軍の連中が包囲してる中で戦って、  生き延びる自身、あるッすか?」 「・・・ねえな、さすがに。」 「だから、こっちとしてはグラッセンが押している。  でも押し切れてない。・・・ぐらいがちょうどいいんすけど。  それならばクルルミクとしても竜騎士団をこちらに回せないっすし。」 「・・・それはちょっと都合よすぎねえか?」 「一応、いろいろと裏で手は回してるっすよ?  クルルミク、グラッセン、ほかにもいろいろとギルドのパイプ使ってね。  どこの国にもこういうことに溺れる御偉方ってのはいるもんっすから。」 「・・・結構裏でいろいろやってるんだな、あんたも。」 「そしてもうひとつ・・・10階にいるクォーパーティーっすよ。  もしあいつらにワイズマン倒されたら、  クルルミクは男どもをこぞってこの竜神の迷宮に投入できる。  もしそうなったらクルルミクの兵に囲まれて以下同文になるっすからね。」 「・・・ずいぶんな端折り方だな。」 「同じこと繰り返す意味ねえっすし。  でも、あいつら、絶対そこんとこ解ってないの多すぎだよなあ・・・  ・・・火遊びすんなとはいわねえが、ちったあ風向きとか考えろよ、あのアホども・・・  結果、こっちに火の粉がかかったんじゃ意味ねえっしょ?」 「そんなのあいつらに求める方が無理じゃねえか?  大体、ただのならず者の集団でしかねえんだし。」 「・・・そりゃそーなんすけど。」 「それよりも今はこれから起きる惨状への対策考える方が大事だと思うぜ?」 「・・・そっすね。そっちがさき・・・か。」 「・・・こんなところかね?」 「そっすね。あとは来て見ないと解らない・・・のが現状っすから。  ところで、もうちょっと起きててもらっていいっすか?」 「いいけどよ。何するんだ?寝るわけじゃねえよな?」 「寝るならあんた先に回してるっすよ。  そうでなくて、ちょっとトレーニング。  ・・・そろそろ、腕を戻しておかないとやばいっすからね。  ”ここ”が終わった後のことかんがえると。」 「あれ?ギルドに残るんじゃねえのかよ?」 「・・・今回の件であの人への義理も果たしたっすからね。  また風のように彷徨わせてもらおうかな、と。  元々、一所にいる性分じゃないんすよ、自分。  ま、後始末はちゃんとつけるっすけど。」 「そうか・・・」 「あんたはどうするんすか?」 「・・・どうするかねえ・・・まだきめてねえし。」 「ま、考えたほうがいいっすよ。んじゃ、いってくるわ。」