ワイズナーSS「4月11日のおしゃべり」 4月11日。某時刻。 「・・・まさかここまでとはな。」 「ギルドレベルは下がってるが?。」 「いや、この程度は十分想定内。むしろ100単位が19人もいるのにこの結果は見事っしょ。」 「まあな。」 ため息を付き合う二人。 だが、それはいつのも落胆のため息ではなく、 むしろ感嘆すら入っていた。 「で、どうする?今の出費状況。」 「・・・も少し、続けてみようか。  幸い、今日3人”堕ちた”おかげで資金の先行きにも少し余裕はある。」 「ならず者連中が調子に乗ってるほうは?」 「・・・そっちはちょっと釘刺しとこか。」 「これ以上暴走されても困るしな。」 「うん。」 「ああ、そういえば問題がもひとつ起きたって?」 その言葉に思わず顔を背けるラヴィル。 「うん。にわかには信じたくねえけど。」 「・・・何が起きたんだよ・・・」 「今日捉えたメリッサパーティーの・・・スーだっけか?盗賊の嬢ちゃん。」 「ああ。スーで合ってるぜ。そいつがどうかしたって?」 「玄室担当者の所見なんすけどね・・・」 そう言って一枚の紙を机の上に乗せる。 「17日かかるってさ・・・”堕ちる”まで。・・・あはは。」 「・・・あはは。」 「「あはははははは・・・・・・」」 乾いた笑いが部屋に響く。 「・・・」 「・・・」 「仕事、はじめっか。」 「・・・んだな。」 「そーいやさー。主任。」 「んー?」 「あんた、妙にこういうの慣れてるけど・・・マジに元冒険者?」 「いやまあ、現役時代・・・  普通の冒険者の例としてパーティー組んでたんすけど。  つかあんただってそうでしょ?」 「ま、な。俺も似たようなものだが・・・それで?」 「ん。あまりに仲間の現金管理がずさんなもんだから、  身につけた処世術っすよ。ぶっちゃけいえば。」 「・・・どんだけひどい使いかたしてたんだ・・・そのパーティー・・・」 「使い方云々というより、金銭感覚が甘かったんすよ。  だって使ってきたものの金額すら覚えてないような連中だったっすから。  いや、ほんと、苦労したっすよ。」 「・・・んでなんでこうなってるのさ。」 「・・・いや、いろいろありまして。  つかウチのパーティー解散したの15年前だし。」 「長ッ!ってかそれからギルド入るまで何してたんだよ・・・  確かあんた、古参ってレベルではねえよな?」 「まあね。ボスの下について・・・5年は過ぎたけど・・・10年はたってねえっすし。  どっちかってえと実力でのし上がってきた部類っすし。」 「んではいるまでは?」 「まあ、実際の所冒険者続けてはいたっすかね。  もっとも解散の原因のせいで、前ほど正義感はなかったっすけど。  どっちかというとより”日々の糧を稼ぐため”って思考が強くなって。」 「ほうほう。例えば?」 「酒場のウェイトレスを人質に採った山賊は思いっきり無視してたっすけど、  食事邪魔した山賊は再起不能にしたっすから。」 「人の命より食事の方が重要なのかよ・・・」 「だってウェイトレスで腹は膨れねえっすもん。  それに食べ物の恨みは何より深いんすよ?」 「・・・はいはい。っとそろそろ昼食か。」 給仕係のならず者が持ってきたそれぞれの分のパン数個と水を流し込んで、 少々の礼をいい。また仕事に戻る。 「そういえばそろそろ裏口も”掃除”しとかなきゃまずくねえか?」 「・・・っすなあ・・・そろそろ密偵どもが集まってくるころっすし。」 「前から結構たつからなあ・・・」 「一応、あそこもいろいろ罠は仕掛けてあるっすけどねえ・・・  単純な意味じゃなく。」 「ぶっちゃけ裏口ばれるとやばいからなあ・・・」 「でもないわけにはいかないんすよね・・・物資搬入のことを考えると。  もうちょっと空間跳躍系の魔法の精度が高けりゃいいんすけど・・・  あいにく俺はそっち系は苦手だしなあ・・・」 「ま、しばらくは書類整理で無理だな。」 「っすな。ならず者向かわせて様子は見させておきましょ。」 「そういうことで。」