ワイズナーSS「4月10日の大問題」 4月10日。某時刻。 いつものように定時報告を始めるラヴィルと部下だったが、 今日の報告はいつもより時間がかかった。 なぜなら、一気に状況が急変したからだ。 多数の女冒険者の捕獲、そしてそのうち二人はランカー。 そして昨日捕らえた冒険者からの大量のレアアイテムの押収。 その結果、ギルドランクが7まで上昇。 ハイウェイマンズギルドの格が一気に上がったことになる。 だが、それによって新たな問題が起きてしまい、 経理としては喜んでられない状況だった。 「・・・ボス、調子に乗ってそうっすね。」 「扇子もって踊ってたって噂もあるぞ。」 「・・・なにやってんすか。」 「・・・俺に聞くな。」 ハアとため息を付き合う二人。 確かにギルドランクが上がったのは喜ばしい。 これで舐められっぱなしだったギルドの評判も上がってくるだろう。 ・・・だが。ランクが上がったからといってすぐに収入が増えるわけではない。 むしろ問題なのはこれからなのだが。 「で、問題が起きたからどうにかしなきゃならんわけだが。」 「問題?」 「その1。ならず者連中が調子に乗ってる。詳細はこっちな。」 それをラヴィルは受け取って流し読む。 見ているラヴィルの表情がだんだん険しくなり、 30ページほどめくった所でこめかみを押さえる。 「あああああ・・・・もう・・・いくらなんでも調子に乗りすぎ・・・」 「今までのウサが溜まっていたのはわかるがよ・・」 「・・・鬱憤、溜まっていたからなあ・・実際。」 「で、その2。一部の連中、調子に乗って浪費始めてんぞ?ほれ、こっちは請求書の山。」 ラヴィルの目の前に大量の請求書が置かれる。 「・・・」 また頭が痛くなってくる。 支出はこれ以上増やしたくないのだが。 減ったならず者は補充しなければ女冒険者たちの捕獲の効率に関わるし、 雇えば雇ったで食費だのなんだのの維持費が掛かる。 罠だって掛けなおさなければいけない。 性奴化した女冒険者を売りに出すのだって手間は掛かる。 普通のときですらこれだけお金が飛んでいく。 何をするにもお金はかかるのだ。 先を見越せば、余計な出費はしたくない。 「・・・かといって止めれば暴動起こすよな・・・連中。」 「・・・だが、このままだと支出が馬鹿にならなくなるぜ?」 「・・・」 「対策、何かねえのか?」 「ありゃやってるっすよ!まさか該当の人間全員に罰与えるわけにもいかんしょ?、」 人間は、自分の都合のいいほうに考えるものだ。 ギルドレベルが一気に上がったことも、 自分たちの我慢の成果だと大半のギルドの人間は考えているだろう。 このままギルドレベルが鰻上りに行くと思っているのだろうし、 実際、自分もそうなってほしいとは思う。。 だが、そんな楽観論では経理の仕事は勤まらない。 ましてや、経理という仕事はギルドの外部、内部情報を一番知りえる立場にある。 そしてその情報を元に、正確に、かつ早く最善の手を打たねばならない。 そのためにも、この緩みきった状況はよろしくない。 ・・・かといって、この状況を頭ごなしに否定するわけにもいかない。 ここ最近、ギルドは泣かず飛ばずを続けてきた。 それでも辛抱してきたものが、やっと形として出てきたのだ。 ここでこの勢いを止めれば、ならず者たちの士気に関わる。 「・・・ったく、本当に頭が痛い・・・」 「・・・で、どうするか決まったか?」 「・・・しょうがない、今日の分の浪費は認めましょ、今日は」 「大丈夫かよ?」 「まだやりくりすれば何とかなる範囲っすよ。」 「で、明日は?」 「・・・状況見てからだな・・・一応、今のままでの試算表、作っとこうか。」 「やれやれ。」 ハアとため息をつくと二人は仕事に戻っていった。 「今日は一日書類整理で終わりそうっすね・・・」