『アルム参戦』 byMORIGUMA 「よ〜、ハデスひさしぶり。」 ぬっと背の高い女が声をかけてきた。 タラッ、 ハデスの背中に、珍しく冷や汗がひと筋。 「・・・やっぱりアルムか。」 おもいっきし嫌そうな顔をしながら、 カオスが振り向くと、長い栗色の髪に、エメラルドグリーンの瞳をした、 綺麗な女性が立っていた。 手足がすらりと長く、相当なスタイルである。 ただ、彼女の顔立ちやその他の美質より、 その身につけている装備が、やたらめったら人目を引く。 ・・・・・と言うより、怖がって誰も近づかない。 恐竜の骨でも使ったのか?、と思うようなデザインの鎧、 カギの形をした巨大な斧、ハルバート、 長いマントは、ブラッドレッド(血の赤)、 それだけでも異彩を放っているが・・・。 「ほえ〜、ハデスさんのお知り合いですかぁ?」 アチャチャがきょとんとした目で、その女性を見ていた。 「ああ、まあ、そうだ。」 『できれば、あんまり会いたくないタイプなんだが・・・』 「アルム・ウト=ウィタル、まあナンダ、真面目で熱心で敬虔な神官戦士だ。 ・・・・・・邪神のな。」 「はっはっはっ、そういってほめてくれるのは、ハデスだけだ。 会えて嬉しいぞ。」 いや、普通ならこれはほめてるとは言わない。 「邪神さんですかあ、どうりで。」 ギョロギョロッ 鎧やら、ハルバートやらに、やたら張り付いてる目や目玉が、 時々動き回る。 気色悪い事、この上ない。 「ふむ、ちょうどいいな。 私も腕試しと、下らぬ連中をぶっ飛ばしたくて来たんだ。 さて、いくとしようか。」 「ちょっ、ちょっとまて。何の話だ?。」 「お前のPTだよ。ちょうど一人足りない上に、 忍者、盗賊、賢者とくれば、戦士がいる。 これも我が神、ヨグ=azato-su=クトウグァのお導きであろう。」 「まったく・・・世の常識は無いくせに、頭だけは回るんだから。」 ハデスすらため息をつく、凶悪娘アルムの参戦であった。 カルラひそひそ声で (だ、大丈夫なの、こんなの?) 豪胆なカルラも、ギョロッと目玉が睨むと、肌が鳥肌。 ハデスやはりひそひそ声、 (まあ、実力だけはあるんだ、実力だけは。 『我が神』という言葉が出たらあきらめろ。本気で死んでも曲げなくなる。) これまた意外にも、アチャチャはそういうのは苦手ではないらしく、 嬉しそうに新メンバーに話しかけて、これまたアルムも嬉しそうである。 「あの時以来だな。」 アルムがにっと笑い、目玉がいっせいにギョロギョロ。 何で着てるやつは無事なんだろう?、と酒場の人間たちは、 恐ろしげに見ている。 「ボトボトスの教団ぶっ潰した時だろ?、おかげでこっちまで狙われて、 えらい迷惑だったぞ。」 ------------------------------------------------------------------------------------  ずいぶん前だが、その頃退屈していたハデスは、旅に出かけていた。 南方の村や街を回っていて、遠くで争いあう声や音がすると思ったら、 岩を飛び越えて、血まみれのハルバートを持ったアムルが、降りてきたのだ。 「むっ、ここにも異端者がいたか。」 ぶんっ、とうなりを上げるハルバート。 「だあああっ!」 運良く、飛びのくタイミングがつかめたが、 岩肌がすっぱりと、豆腐のように切られていた。 ちょっとでも遅れたら、胴切り真っ二つだった。 「なっ、なにしやがる?!」 「黙れ異端者。」 ハルバートの柄にでろでろとまといついた眼球がギラッと光り、刃が黒い光を帯びた。 『うげっ、滅殺光!』 刃の周辺に広く、腐食腐敗の力場を作り、 かすっただけでも致命傷になりかねない。 「俺は異端者じゃねええっ!。」 冷たい整った顔が、不審そうにとまどった。 「異端者ではないのか?。」 「偏屈な宗教野郎と一緒にすんなっ!、俺は俺のしたいように生きてるだけだっ!!。」 女性は、急にハルバートを引いた。 「ふうむ、我が神の教義を受けた者か。それならば殺すわけにはいかんな。」 いや、そういう変な解釈をされても困るが、と言おうとした矢先、 シュンッ、シュンッ、 黒い鉄の矢が、そばをかすめ、甲高い音を立てて木に突き刺さる。 「ちっ、もうきおった。首領を首にしたぐらいで、器量の狭いやつらだ。 お前も我が神を信じる者なら、戦え。」 ハデスとしては、抗議したい事は山ほどあるが、 本気でそれどころでは無くなった。 真っ黒に肌を塗った、奇怪な赤い面をつけた男女が、 奇声を上げながら、数十人飛び降りてきたのだ。 その後ろにも、ものすごい数の集団が押し寄せてくる!。 「ばっ、バカヤロオオオオオオオッ!!!」 それがハデスと、邪教の敬虔な使徒アルム・ウト=ウィタルの出会いであった。 はてさて、ハデスたちの明日はどっちであろうか? FIN