『絶望の果てに(前編)』
ぶしゃああああああああああああああっ!!!
盛大な音と共に、肛門の穴から、ずっと堰き止められていた排泄物が勢いよく噴き出していく。
満たされぬ排泄欲からようやく解放された少女は、冷たく澄み渡った青空に、獣声を轟かせた。
どよめきも、ざわめきも、周囲の声を全て掻き消すように――
ならず者に手足を抱えられた揺り籠に揺られ、少女は絶頂の余韻に浸っていた。
黒騎士の象徴ともいえる黒いブーツに覆われたつま先を小刻みに痙攣させ、排泄物を出したりないように、執拗にお尻の穴をひくつかせて。
足元には、撒き散らしたばかりの排泄物が、異臭を漂わせながら茶色い水溜りとなって広がっている。
「あーあ、とうとうやっちゃったよ」
「人前であんな派手にぶちまけて、恥ずかしくないのかねー」
広場を取り囲むクルルミク市民の視線は冷ややかだ。
小刻みに息をして排泄の余韻に浸る少女に、辛辣な言葉を投げかけてくる。
余りにも冷たすぎる周囲の反応に、アリスは余韻が醒めていくにつれて、全てが終ってしまった事を悟った。
ブラックナイツの天才、颯爽とした黒騎士。
少女を彩るスマートなイメージは踏み躙られ、これからはもう、人前で排泄に及んだ変態女としてしか見てもらえない。
いかに強制浣腸されての事といえ、お尻の穴までひくつかせては、弁明の余地がない。
どんな理由を付けようと、排泄の瞬間、絶頂に達していたのは、誰の目にも明らかだった。
「……サイテー」
ざわめきに混じって聞こえてきた同年代の少女の呟きが、傷心のアリスの心に突き刺さる。
だが、恥辱はまだ終わりではない。
アリスが囚われている竜神の迷宮は、市街を通り抜けた先の郊外だ。
ブーツと長手袋だけの敗残姿は、なおも延々と晒し続けなければならない。
ならず者に敗れた者がどうなるか、最悪の末路がそこにあった。
「公開調教はこれまでだが、その様子じゃ、歩いて帰れねえよなあ?」
ならず者の頭目格、巨漢のヴァルガーが勝ち誇った面でやってきて、すすり泣くアリスの顔を覗き込んだ。
糞生意気な黒騎士少女の名誉を貶める事に成功し、ご満悦といった様子だ。
一月前までだったら、気丈に睨み返して、立ち上がるなり、それが無理なら唾を吐きかけて、負けん気の強さを見せていただろう。
だが、積み重なる陵辱で気概を奪われた今のアリスには、もうそんな気力は湧いてこない。
憎らしいほど嫌味な笑みを向けるヴァルガーの前で、蛇に睨まれた蛙のように身を竦ませるだけだ。
「アリスちゃんはお疲れのようだから、いつものお気に入りをアレを、用意してやりな!」
ヴァルガーが上機嫌に指示を出すと、取り巻きのならず者が木製の器具と滑車付きの牛を引いてきた。
どうせまた、アタシを貶めるための算段だろう。
余韻で冷め切らない思考でも、それ位の察しは付いた。
身に覚えがないのに、「いつもの」だの、「お気に入り」だの、白々しいのよ。
日常茶飯事の事のように、さり気なく周囲の観衆にアピールしている。
けど、排泄まで晒した後では、いくら身に覚えがなくても、真実にされかねない。
案の定、牛に引かれた滑車の上に、木製の器具が組み立てられていくと、広場を囲む市民のざわめきは増してきた。
「おいおい、アレって三角木馬じゃねえか?」
「うええ、マジかよ。あの女、SMプレイが趣味だったのかよ……」
突拍子がない単語に、アリスは眩暈がした。
言うまでもないが、SMプレイなど、やった事はない。
見た事もないし、知識として知っているだけなのに、勝手にSMプレイの常習犯に仕立て上げられていく。
SM趣味を既成事実化するように、ならず者達はロウソクや鞭まで用意する。
卑劣すぎる手口に、アリスは泣きそうになった。
好意的な声なんて、とっくに消えてしまってるのに、どこまで貶めれば気が済むの。
まるで、アリスの評判が二度と日の目を見ないように、徹底的に塗り潰していった上から、二重三重と、変態のレッテルを貼り付けていくようなやり口だ。
移動式の三角木馬に乗せて、SMプレイしながら市内を引き回せば、どこから見ても完璧な変態の出来上がりだ。
好意的に見る余地なんて、もうどこにも無くなってしまう。
SM趣味なんて、冗談じゃない――
大声で否定したい衝動に駆られたが、カラカラに乾いた喉は声が出ない。
疲労のせいもあるが、それ以上に、ヴァルガーに対する恐怖心が大きい。
下手に反抗的な態度を取ったりすれば、何をされるか分からなかった。
「アリスちゃんも待ち切れねえようだし、さっそくお馬ちゃんに乗せてやるとするかあ」
また一方的に勝手なアピールをすると、ヴァルガーは部下達に、アリスを木馬に乗せるように指示を出した。
ならず者の一人が両腕を後ろ手に堅く縛り、白く映える裸体を荒縄で縛り上げていく。
いわゆる亀甲縛りにして、アリスを、三角木馬の拷問台に持ち運んでいく。
せめてもの抵抗で、好きでやってるわけでなく、無理矢理やらされているのだとアピールしようとしたが、数人がかりで力の勝るならず者に抱えられては、身じろぎが精一杯だ。
それを曲解解釈され、また周囲の輪から、「あの女、よっぽど嬉しいらしい。身悶えしてやがるぜ」と、見当違いな野次が飛んでくる。
アピールの一つも許されないまま、黒騎士少女は三角木馬の上に運ばれ、鋭く尖る三角形の頂点に乗せられた。
「あぐうッ!?」
剥き出しの股間を押し付けられて、白目を剥いて、海老ぞりに仰け反った。
「あおあおぉッ、かッ……はおぁッ!!!」
滑りのいい木面には何の取っ掛かりもなく、急傾斜になっているため、足をバタつかせても、股間はどんどん食い込んでいってしまう。
刺激から逃れるためには、太腿に力を入れ、木馬の背を挟み込んで自力で腰を浮かすしかないのだが、連日の責め苦と調教で足腰が弱ったアリスにそんな余力があろうはずもない。
「お、見ろよ、アリスの奴、もう感じてやがるぜ!」
もがく内股から、生理的な防御反応で溢れてきた愛液を見て、ならず者達はさっそく観衆に大声で言い触らす。
「いきなり汁だくかよ。どんな淫乱だ、テメーわ!」
「ちっ、ちがッ……感じてるんじゃなくッ」
「潔癖な振りはもういいんだよ!!」
「あぁぅッ!?」
反論を封じるように、ならず者は乱暴に木馬の腹を蹴りつける。
木馬が揺れ動いて、股間の食い込みが更にキツくなるが、後ろ手に縛られた状態で三角木馬に乗せられていては、どうにもできない。
黒いブーツで覆われた両足首に数キロの重りを付けられると、足が攣ってしまい、股間の食い込みはますます激しくなった。
「うあああッ、降ろしてえッ!! 降ろしてええッ!!!」
「思ってもねえこと口にすんじゃねえ!!」
金髪を振り乱しながら絶叫するアリスの尻を引っ叩いて、罵声を浴びせる。
別のならず者が牛の尻に鞭を入れると、滑車が付いた三角木馬はゆっくりと動き出した。
舗装された街路といっても、平面は決してなだらかではなく、石の繋ぎ目など凹凸が数多い。
断続的な轍の揺れが木馬を絶え間なく揺らし、尖った背中に罪人のように乗せられた黒騎士少女は、声も枯れんばかりに暴れ狂う。
その背に、ヴァルガーはしなりのいい皮鞭を打ち込んでくる。
容赦なく食い込む股間の刺激を緩和しようと、しきりに腰を動かしているが、その様は端からすれば、木馬の尖った背に股間を擦り付けているようだ。
「おいおいおい、アイツ、完全に腰振ってねーか?」
「よっぽど三角木馬の上が気持ちいいんだろうなー」
一部の勘違いした観衆の嘲るような批評の声が、悶え苦しむアリスに降り掛かる。
その言葉に触発されて、観衆の間で、次々とアリスを批難する野次が上がった。
「なんだよ、アイツ、やっぱりただの変態だったんだな」
「応援して損したぜー。カッコいい振りして、結局、ならず者に捕まって犯られたいだけだったのかよ」
「あーこりゃ100%マゾ確定だな。激写、淫乱黒騎士娘の本性、大暴露ーって感じか!?」
「全くだ。変態がヒロインぶっても、すぐバレるっていい面の皮だな!」
「うあうーッ、そんなんじゃッ、アタシ変態なんかじゃないッ!!!」
「今更清純ぶったって、おせえんだよ、バーカ!!」
「どうせ被虐のヒロインのシチュに酔ってるだけなんだろッ、この淫乱!!!」
観衆の罵声は、次第にヒートアップしてきた。
通りのど真ん中で繰り広げられるSMプレイに感覚が麻痺してきたか、それとも、ならず者相手に立ち回っていた少女に対する期待の反動か、移動する拷問台を取り囲む観衆は確実に暴徒化している。
「うあああッ! ああぁんッ! 股間がッ! 股間がぁッ! 引き千切れぇ……ッ!!!」
「だったら太腿で挟み込んで腰浮かしゃいいだろが!! 自分でケツ振ってる分際で、言い訳なんかすんじゃねえッ!!!」
特に過激な言動を繰り返す市民の一人が、苦悶するアリスを即刻切り捨てた。
だが、そんな事は最初からずっと挑戦している。
精神の限りを尽くし、全身全霊を注いで太腿を挟み上げても、重りに引っ張られた腰は少しも浮き上がってくれないのだ。
木馬が揺れるたびに、股間を責め続ける木製の三角形は鋭さを増していく。
牛車に引かれる三角木馬の速度は緩やかで、大人が歩くほどの速度しか出ない。
ノロノロした動きでは、アリスがいかに泣き叫ぼうが、大名行列のように付いてくる過激な一団を引き離す事など出来やしない。
木馬から降りる事も出来ないし、集まった観衆と四方八方から飛び交う罵声のせいで、行く先々で、一般市民の注目を集めてしまう。
黒い長手袋とブーツを見れば、それがアリスである事は一目瞭然だし、三角木馬の上で悶えている姿を見れば、どんな状況かも一目瞭然だ。
あの黒騎士少女がSMプレイを受けながら市中引き回しされてる事は、すぐ街中に広まってしまうだろう。
下手をすれば、広場での痴態と共に、面白おかしく尾びれが付いて、SM趣味まで真実にされかねない。
「はははっ、お気に入りの鞭の味はどうだあ!?」
「あぁん、うああぁッ!!!」
ヴァルガーに背中から鞭を打たれ、悲鳴を上げる。
2メートルを超す巨体から振り下ろされる皮製の鞭は、肉を打つ音と同時に焼けるような痛みをもたらすが、程よく手加減されているため、意識が飛ぶ事はない。
「待ってろよ。今、別の気に入りもくれてやるからよー!」
「ああッ、そんな、待ってええッ!!」
乳房を掴まれ、蕾を摘まれながら、火の付いたロウソクの赤いロウを垂らされる。
眉をへの字にした泣き顔で、荒縄に縛られた上体を左右に揺するが、ロウは容赦なく、胸の上に落ちてくる。
「あああぁーッ、熱い熱い熱いィーッ!!!」
全身の汗を飛び散らせて狂乱するが、ならず者に取り囲まれて、縛られた状態で三角木馬の上では、どうする事もできない。
真っ白で形のいいキャンバスに、点々と赤い染みが広がっていく。
「なんだあ、乳首ビンビンに立ってるじゃねえか!?」
「さてはロウソク垂らされてイキやがったな、このマゾが!!」
「あぁんッ! あぁッ、イってなんかぁ、ないぃんッ!!!」
必死に首を振って否定するが、アリスの声は明らかに嬌声を帯び出していた。
木馬とロウソクと鞭、言葉責めも合わせて、四重の責め苦の前に、調教の中で引き出されたマゾの炎は見事に燃え上がり、官能となって脳髄を灼き始めていた。
「違う違う! これは無理矢理やらされてッ……アタシ、こんなのされて、喜んでなんかないーッ!!!」
口でなんと言おうと、ロウソクを垂らされる度、乳首を痛いほど尖らせ、鞭を受ける度、熱い息を漏らしてはなんの説得力もない。
木馬の尖った背に股間を擦り付けながら、大きな嬌声を上げる様は、動かぬ証拠として通りを行く何十、何百の市民に見られてしまっている。
「あぁんッ! もうラメッ、ああんッ! やああーッ!!!」
轍の揺れに合わせて、愛液で滑った木製の鋭角に跨る腰がリズミカルに動いてしまう。
初めは間違いなく、股間の刺激から逃れるための動作だったものが、いつの間にか、快楽を享受するための動作に変わってしまっていた。
「こんなんじゃッ、こんなつもりじゃああああッ!!!!」
「こんなつもりなんだろ!! いい加減認めたらどうなんだ!!」
「そうだそうだ! 気持ち良いなら、気持ち良いって素直に認めろよな!!」
「うあんッ、あうぅ! あんッ、あッ、き、きもちいッ……あああッ!? ちがうちがうちがうーッ!!!」
ならず者や暴徒化した民衆にステレオになじられて、思わず敗北の言葉が口を付きかけたが、淫熱でうつろう視界の正面に、あどけない幼女の顔が飛び込んできた途端、我に返って否定する。
ここで感じてると叫んでしまったら、今度こそ本当に、何もかもオシマイだ。
自ら市民に向かって、大声で変態宣言するようなものだ。
だが、竜神の迷宮への道のりはまだ遠く、ならず者や市民の責め立ては激しくなるばかりだ。
とても堪え切れそうにはなかった。
変態と罵られようが、ヴァルガーに打たれる鞭の痛みに感じてしまっているのも、胸の上にロウが落とされるたびにイキかけてしまっているのも、事実だ。
全身の快楽スポットを異なる刺激で責め立てられ、次々と罵声を浴びせられては、いつまでも言い逃れ続ける事は不可能だった。
両の胸に熱いロウを同時に垂らされ、蕾を強く握り潰された時、アリスはとうとう屈服の声を上げた。
「認めるッ!!! 認めるからッ!! 気持ちいいって認めるからッ!!! 感じてるからッ!!! 感じてるから、もう許してええええええッ!!!!!」
絶叫と同時に絶頂し、ぶるっと大きく震わせた下腹部から、大量の黄金色の液体が溢れ出てきた。
『ドワ―フの酒蔵亭』。
ワイズマン討伐を目指す女冒険者や傭兵が集まる店内は、いつものように騒がしいほどの活気に包まれていた。
料理皿を抱えたウェイトレスが忙しく店内を行き来し、あちこちのテーブルでは、客達が他愛のない会話で盛り上がっている。
だが、一つのテーブルの周辺だけは、取り残されたように、重く沈んだ空気が漂っていた。
同じテーブルに着いた四人は、さっきから一言も喋らない。
食べるのに忙しいわけではなく、料理が運ばれてきても、一人を除いて全く手をつけない。
新たに忍者技能を身に付けた獣人の少女マリルだけは、卓上の盛り皿に手当たり次第、手を伸ばしていたが、やがて場違いな空気に気付いて、おずおずと手を引っ込める。
賢者の少女ウィルカも、旅の傭兵魔術師フランムと名乗っていたフィアナも、そしてハーフエルフの魔法戦士ムーンストナも、暗い顔で塞ぎ込んでいた。
「ねえ、折角の料理が冷めちゃうよ? 食べないなら、みんなボクがもらっちゃうよ〜?」
「ああ……」
フィアナはやっと口を開いたが、心ここに有らずといった生返事だ。
「食べたかったら、アンタ食べなよ」
もっとも経験豊富で、冒険者として食べられる時に食べる事の重要性を良く知っているムーンストナでさえ、少しも料理に手を付けない有様だ。
今回の探索で起きた事件は、彼女達にとってそれほど衝撃的だった。
パーティの元リーダーだったアリスとの再会――
いつも前向きで、自信に満ち溢れていた少女が、たった一晩で性奴隷に堕とされたと聞いた時、俄かには信じられなかった。
だが、迷宮内で変わり果てた姿を見せ付けられて、現実を認める他なくなった。
巨躯の男に四つん這いで犯された体勢で、無理矢理顔を上げさせられて、気弱に泣きじゃくる。
その光景だけで、アリスがどれ程の陵辱を受けていたかは、一目瞭然だった。
ムーンストナ自身、ならず者に陵辱された過去があり、今でもたまに悪夢にうなされるほどだが、アリスのそれは自分の比ではないだろう。
明るさ、前向きさ、自信、信念、気概――アリスという少女を構成するあらゆる要素を蹂躙し、徹底的に踏みにじった結果がそこにあった。
だが、そんな想像さえ生易しく、現実は遥かに過酷だった事を、地上に戻ってきた時、知らしめられた。
裸で街中を引き立てられ、公開調教の名の下、人通りが集まる広場で痴態を晒された挙句、排泄プレイまで余儀なくされ、その上、三角木馬に乗せられてSMプレイを受けながらの市中引き回し。
入れ違いに帰還したメリッサパーティの面々が火消しに奔走し、事態を知ったクルルミク王宮が国際問題に発展する事を恐れて、外部への戒厳令を敷いた為、対外的に広まる事だけは食い止められそうだったが、市民の大半には知られてしまい、街中は今その噂で持ち切りだ。
勿論、同情を寄せる声も少なくないのだが、ワイズマン騒動による治安の悪化や女冒険者への無償協力に対する不満もあって、過激な誹謗中傷は後を絶たない。
王宮は王宮で、不満の矛先が向く事を恐れてか、対内的には黙認状態で、民衆の不満の捌け口のようにアリスは叩かれている。
「はぁ……」
もっとも重く沈んでいるのは、ウィルカだった。
アリスが捕らわれた時、即座の救出を主張したフィアナとムーンストナに対し、戦力を整えた後の救出を主張し、それが結果的にアリスの性奴化の一因となったのだが、自分の判断が招いた結果を最悪の形でまざまざと見せ付けられたのだから、無理もない。
迷宮を引き返す時から翡翠の瞳は虚ろで、ずっと茫然自失としている。
「――アリスちゃん……」
憧れだった少女の名を呟き、ウィルカは腰に佩いた短刀に目を落とした。
それは、かつてアリスが使っていたカタナの、折れた切っ先を切り取って作ったものだ。
ならず者に捕まった時も決して手放さず、身に着けていると、いつも傍で、自分に勇気と自信を与えてくれる気がしたのだが。
「やっぱり、私じゃ何も出来ないのかな……」
鉄格子を挟んだアリスとの再会シーンが、リプレイのように、頭の中で繰り返される。
アリスはボロボロに泣いていた。
気の強さも、漲らせていた自信も失くして、幼子のように……。
プライドをかなぐり捨てて、泣きながら助けを請うていた。
「なんで、助けてあげられなかったんだろ……」
手を伸ばせば触れられる距離だったのに、手を差し伸べる事さえできなかった。
目の当たりにした衝撃的な出来事に思考がストップしてしまい、気が回らなかったのだが、そのせいで、アリスはまた深い絶望の闇の中に堕とされてしまった。
あの時、助けようとしていれば、助けられたかも知れないのに……。
「私、ホントにアリスちゃんの事、助けたいと思ってるのかな……」
故国に仲のいい黒騎士の同僚がいると聞いた時、胸の中がちくりと痛んだ。
もしもこれが、アリスちゃんの心がその少年に向いている事に対する嫉妬心だとしたら――
現実のアリスちゃんを見捨てる事で、心の中で描いた理想のアリスちゃんを自分だけのものとして独占したかったのかも知れない。
現実のアリスちゃんがいなければ、その心は他の誰かに向くことなく、永久に胸の内で自分だけのものに出来る、と。
そんな事を考えてしまう自分が、堪らなく嫌になってくる。
今もきっと、私のせいで堕とされた絶望の闇の中で、泣いているのに――
「――なんだよ。俺が潜ってる間に、そんな面白え事があったのかよ!」
「だから言っただろ。あのアリスって女、カッコいいのは外面だけで、裏じゃドスケベなヤリマンに決まってるってよー」
「ああ、まったくお前の言う通りだだったわ。チクショー、騙されたぜ!」
店内にやってきた四人組の会話に、ウィルカははっとして顔を上げた。
重装備に身を包み、いかにも傭兵風の出で立ちの男達だ。
四人組はアリスの、それも下卑た話題で盛り上がりながら、ウィルカの真後ろのテーブルに着いた。
「なんせ、必死に便意堪えながら、「気持ちいいから抜かないでー!」だぜ。その後すぐ抜かれたけどよ、変態丸出しの大噴射!! イキながら糞ぶちまけやがったりして!」
「マジかあ? そんな事までやったのかよ!」
「全くいい様だったぜ! アイツ、生意気だったから徹底的に犯ってくれてせいせいしたぜ。ヴァルガー、グッジョブ!!」
「あー、くそっ、なんで俺がいる時に来なかったんだよ。そしたらあの清純ぶった仮面剥がして、本性暴いてやったのによっ!」
声高に、しかもエスカレートしていく内容に、ウィルカは反射的に席を立って、背後の傭兵達を睨みつけた。
「ん、なんだテメエ? 俺たちになんか用か?」
「……今の言葉、取り消して!」
「ああっ?」
水を差されて、不機嫌そうにガンを付ける傭兵その一。
「取り消してって言ってるでしょ!」
叫んだ瞬間、マリルが手にしていたグラスがはぜ割れた。
「わきゃっ!?」と可愛らしい声を上げながら、マリルが椅子から転げ落ちる。
きっと睨みつけるウィルカの眼差しに、訳が分からない様子で顔を見合わせる傭兵達だったが、
「……ああ、あんた、前にあの変態女と組んでた嬢ちゃんか」
「あんたも災難だったなー。あんなどうしようもねー、売女と組まされてよー」
「俺もマジショックだったぜ、ファンクラブまで作ったのに裏切られてよ。変態なら最初からそう言えっつーの!」
「まあなんだ、強く生きろ。わははは!」
テーブルを叩いて爆笑する傭兵達の姿に、ウィルカの力の箍が一気に外れていく。
周りのテーブルや食器が振動を始めた。
突然の揺れに、何人かの客が驚いたが、ウィルカを知る冒険者はいなかった為、それを、店内の一角で立ち上がって怒りに震える賢者の少女と結び付けて考える者はいなかった。
自分でも怒っているのが分かる。
「あなた達に――あなた達に、アリスちゃんの何が分かるって言うの! アリスちゃんが今どれだけ苦しんでるか、どんなに辛い思いしてるか――」
「はぁ? んなもん、どーせポーズだろ。嫌がってる振りしてりゃ、まだ自分が潔癖だと思ってもらえると思ってんのかね、アイツ」
「――ッ!!!」
店内の揺れが激しくなった。
食器が浮かび上がるほどの揺れに、慌ててテーブルの下に潜る客が続出し、両手に料理皿を抱えたウェイトレスが落とさないように右往左往する。
「フィアナちゃん、止めないでよ!」
静止するように間に割り込んできたフィアナに、興奮して声を荒げる。激情は頂点に達しかけていた。
「いや、止めぬぞ。仲間を侮辱されて黙っておるほど、私はお人よしではないからな」
「そうだね。アタシも今の言葉は許せないよ。あの娘の事は、アンタ達なんかよりよっぽど分かってるつもりだ」
「フィアナちゃん、ムーンストナちゃん……」
ムーンストナも、四人組みの傭兵が座るテーブルの前に立ち塞がり、切れ長の鋭い目で睨んでいた。
見ると、マリルも訳も分からずといった感じだが、仲間に従って傭兵達を睨みつけている。
一緒になって抗議する仲間の姿に、暴発しかかっていた感情は、噴火寸前の火山が鎮火するように、次第に沈静化していった。
それに合わせて、店全体の揺れも収まっていく。
そして、また店内に活気が戻ってきた。
不穏な空気に気付いて、ウィルカ達に奇異な目を向ける客もいたが、冒険者同士の対立など、それほど珍しい事ではないので、すぐに視線を戻して各々の会話に戻っていく。
ウィルカ、フィアナ、ムーンストナ、マリルは仁王立ちして、テーブルに着いたままの四人組の傭兵をじっと睨み付けていた。
傭兵達は、これ以上関わり合いになりたくないといった顔で視線を泳がしている。
先ほどの地震が、目の前の少女によって引き起こされたものだと察したらしい。
席を立って離れたいと思いつつ、女に謝罪するなんてみっともない真似はできないといった、半端なプライドが渦巻いている様子で、適当なきっかけを探しているようだ。
活気を取り戻した店内で、二つのテーブル周辺を取り巻く、張り詰めた静寂。
傭兵の一人が苦々しげに口を開きかけた時――カウンターの方で、バシン、とテーブルを叩く大きな音がした。
「登録されてないって、どういう事なんですか!? 確かに、ここで冒険者登録されたって聞いたのに!」
「だから何度も言ってるだろう。上からのお達しでね。その娘の事は何も知らないし、知ってても話せないんだ」
いかにも歯切れが悪い口調で弁明しているのは酒場のマスターのペペだ。いつもは温和な顔がウンザリとしている。
食って掛かっているのは、黒衣を纏った銀髪の少年だ。
背丈は中肉中背、顔もそれなりに整った感じだが、意志の強そうな眼差しが目を引いた。
「くそっ、こんな事で時間を食ってられないのに!」
感情を抑えきれず毒づく少年に、ぺぺは「力になれなくて悪いな」と、申し訳無さそうに謝った。
「こうしてる間にも、アリスは……くそッ!」
血が滲みそうなほど拳を強く握り締めた銀髪の少年が呟いたその名に、視線を戻しかけたウィルカははっとして振り返った。
黒を基調としたかの国特有のデザインの衣服に、白いマント、輝くような銀の髪――直情的な印象は聞いた話と少し違っているが、アリスが前に話していた騎士団の同僚の少年にそっくりだ。
もしかして、この人がアリスちゃんの――!?
「あのっ、待ってください!」
興奮した足取りで酒場を出て行った少年を追いかけて、ウィルカは息を切らしながら、声をかけた。
「あなたはもしかして、フィルさんですか!?」
「――そうだけど、キミは?」
まさか他国で自分の名前が知られているなど、思ってもいなかったのだろう。
振り向いた少年の顔は驚いていた。
やっぱり、この人がアリスちゃんの――
騎士団に所属しているはずのに、アリスを探してクルルミクにやってきた。
酒場での様子だけで、どれだけ想っているか、よく分かる。
正直、敵わないかも知れない――
たった一人のために、何もかも投げ打って行動した事なんてなかったから。
決定的に、二人の想いを見せ付けられてしまうかも知れない。
胸がずきずきと痛む。
でも――私が行動する事で、アリスちゃんを助けられるなら、私――
「私――アリスちゃんの居場所、知ってます!」
目覚めた現実も、また悪夢だった。
「へへ、いい夢見てたみてえだな?」
覆い被さるならず者が、鼻が詰まるような息を吐きかけながら、にいっと笑った。
また、膣内に熱い塊が埋まっている。
ここ最近、ずっとそうだ。
意識を失うまで犯され続けて、夢の中でも犯され続けて、目が覚めた時も犯されて。
実際には多少の休みは与えられているのだろうが、四六時中犯されている気がする。
もう、どれだけの時が経っただろうか。
時間の流れも忘れてしまった。
何日、何ヶ月、何年――どれだけの月日が経ったかも分からない。
いい加減、解放してほしい。
もう、この人達の怖さは充分思い知ったから――
「おらっ、舌を出せ」
ペチン、と頬を叩かれて、アリスは泣きながらピンク色の小さな舌を出した。
それを、ならず者は嬲るように絡め取っていく。
舌を絡めながら、唇を貪り食い、口の中に唾液を流し込んでくる。
蹂躙されるようなキスに、自然と涙が溢れ出てきた。
「どうだ、彼氏のキスより情熱的だろ?」
嫌味ったらしく嗤う言葉に、悔しくなった。
フィルとは、一度もキスした事ないって知ってるのに……。
ファーストキスも、あの卑劣な男に奪われてしまった事を知っている筈なのに……。
心に残るほんの僅かな思い出さえ、ならず者は容赦なく踏みにじっていく。
粘着質な水音が膣を叩き、淫らなハーモニーを奏でる。
好きでもない男との性交に、身体は敏感に反応してしまっていた。
ほんの一月前までは、こんなならず者に触れられるなど有り得ないと思っていたのに、今は膣も、胸も、唇も、弄られ放題だ。
触られていない場所など一箇所もなく、お尻の穴の中ですら、フリーパス状態で、無骨な指先で穿られる。
たとえ全力で抵抗しようと、もう、ただのならず者一人にすら、全く歯が立たない。
「よしっ、出すぞ……うっ!」
「……ッ」
ならず者は宣言して、歯を食いしばるアリスの膣内に、大量の精液を流し込んだ。
熱い奔流が下腹部に溜まり、腰を掴む手が放されると、逆流して零れ出てきた。
ボロ雑巾のように打ち捨ると、男はアリスの傍から離れていく。
「おーおー、アリスちゃーん、股ぐらい閉じたらどうなんだ? みっともねー!」
膣から白濁液をドロドロに垂れ流しながら、ガニ股の格好で脱力しているアリスに、周囲を囲むならず者の一人が嘲るように揶揄した。
だが、もうアリスには、開いた股を閉じる気力もない。
閉じた所ですぐ押し開かれるだけだし、断りなく股を閉じようものなら、「見得張ってんじゃねえ!」となじられて、より手痛い陵辱を受けるだけだ。
嘲笑されて顔が熱くなろうと、ガニ股を晒したまま、次のならず者がくるのを待つしかできなかった。
黒騎士少女として、ヒロインのようにならず者相手に立ち回っていた少女には、無様な姿を晒し続ける事しか許されていない。
そして、アリス自身、そんな無様な自分に慣れてしまい、受け入れてしまっている。
「アリスちゃんが入れて欲しそうに誘ってるから、しゃあねえ。俺が入れてやるとするか」
動物でいう所の服従のポーズを取り続ける少女に影が差し、別のならず者が肉棒を突き入れてきた。
「おらっ、おらっ、どうしたあ? あの時の小癪な態度はどこいったんだよっ?」
ならず者は激しく腰を突き入れながら罵り、敗北感を刺激する。
不敵な態度など、今更、取れない事は分かりきっているのに。
昔の自分を思い出させて、惨めにさせる為に――溢れてくる悔し涙を眺めて、悦に入る為に、過去の慢心を暴き立ててくる。
「下っ端のならず者なんかじゃ、倒せねえんじゃなかったのかあ? おらっ、大事な所にズッポリ入ってるこれは何なんだよっ?」
「もうヤメて、許して……」
「何が許してなんだ、あぁん? 捕まえたら幾らでも思い知らせていいっつってたじゃねえかっ?」
昔の言葉尻を捉えて、まだ言う。
とっくに反省して、心の底から後悔してるのに……。
「あの言葉は取り消します……。どうか取り消させてください……。
手加減されてたとも知らないで、生意気な態度を取って……。もう二度と、あんな態度は取らないから……」
勿論、手加減されていたわけなどないが、執拗なほど敗北感を植えつけられた少女は、持ち前の実力をも否定する言葉が口を付くようになった。
いつしか、世界中で一番弱い存在だと思うようになっていた。
少女黒騎士として、天才と持て囃された姿は偽りで、周りの人間が手加減してくれていたから、そう振舞えただけなのだと。
本当は目の前の男達よりずっと弱いクセに、手加減してただけの相手を打ちのめしていい気になっていたのだと。
そして、これこそが、男達と自分の本当の実力差だ、と。
――絶望的な敗北感が、アリスの心を蝕み始めていた。
しかし、何千回、何万回繰り返そうが、一度口にした言葉は決して飲み込ませてくれないし、同じネタで何度となく嬲られ、その度に心を打ちのめされる。
「けどよ、へへ、あの天才少女がすっかり落ちぶれたもんだな」
言わないで……。もう、天才でもなんでもない事、分かったから……。
いつまでも過去の慢心を穿り返すような事は言わないでよ……。
「天才だぁ? もうただの肉便器だろ」
「いやいや、これだけ突っ込まれても、まだ締め付けやがる辺り、確かに天才だぜ? 肉 便 器 の 天 才!」
「はははっ、うまい事言うな! 肉便器の天才だから、いくらやっても壊れねーわけだ!」
ならず者があちこちで爆笑する。
肉便器の天才――あたしはそれだけの存在価値なんだ……。
壊れたい……。
もう、いい加減、壊れて…………楽になりたいよぉ………………。
無機質なガラス器具が菊門に押し込まれた。
襞を掻き分け、腸内に注入される便下しの冷たい薬液。
ならず者に取り囲まれ、黒い長手袋に包まれた肘と黒いブーツに覆われた膝を付いた姿勢。
数十秒と経たぬ内に、下腹部で唸るような音が鳴り出し、急速な便意が高まっていく。
アリスには、人として最低限の尊厳さえ認められていなかった。
三日に一度の排泄は、ならず者の前でお尻を突き出し、浣腸されての公開排泄。
ならず者に野次られながら、三日分の排泄物を一挙に排出される。
どれだけ頑張ろうが、最後にはぶちまけるしかないし、それ以前に便意を耐える力もない。
括約筋を締めるだけの筋力が残っておらず、垂れ流し状態だ。
尊厳を踏みにじる粘っこい音が、執拗なほど響き、四方八方から
「あーあ、こんなとこでお漏らしかよ。躾がなってねーなあ!」だの、
「ウンチはトイレでって、ママに習わなかったのか!?」といった、下劣な野次が飛んでくる。
そして排泄が終ると、便を受けるタライがどけられ、調教という名の陵辱が始まった。
ならず者の一人が、手膝を付いて突っ伏すアリスのバックを抑えて、お尻を二度叩く。
教えられた通りにやれ、という合図だ。
「うっ、くぅ……」
嗚咽を噛み締めながら、お尻を高々と上げて、長手袋に包まれた手で、自らの秘部を押し開く。
「ど、どうか、ご自由にお使いください……」
惨め過ぎる自分の立場に、声が震えている。
自分から受け入れている事が明白なシチュエーションは、惨め以外の何物でもない。
いっそ壊れたくなるが、一方で、まだ壊れたくないという気持ちも強い。
あと、一度だけでいいから、フィルに会いたい――
それが今のアリスを突き動かす原動力だった。
陵辱の中で気付いた自分の素直な気持ちを伝えたかった。
再会なんて儚い夢かも知れないけど、もし奇跡が起きて、フィルと再会できた時、自分が壊れてしまっていたら……。
――それが、何よりも怖い。
頑張れば会えていたのに、その時にはもう壊れていたら――それほど無惨な事はなかった。
「そこまで頼まれちゃ、男として使わねえわけにゃいかねえよなあ」
白々しい声がお尻の上から降りかかり、自ら捧げた腰を掴まれ、自ら手指で押し広げた肉壺の中に、ならず者の剛直が埋まっていく。
「誰のモノが一番気持ち良かったか、後で順位付けさせるから、この味をしっかり覚えておけよ!」
「うずっ、ひっく……。ふぁ、ふぁい……」
涙声で、肉壺を押し広げたまま突っ伏すアリス。
玄室内には二十人ほどいたが、この後、代わる代わる犯されて、それぞれの「味」を判定させられる。
順位を付けなければ、何度でも輪されるし、順位を付けたら付けたで、「お気に入り」の高順位者にはもう一度犯され、低順位者には腹いせに手酷く嬲られる。
どう答えても、終わりのない陵辱が待ってるだけだ。
惨めな格好で犯されているというのに、膣はすぐに淫らな水音を叩き始めてしまう。
目を閉じても、粘着音は頭の中でこだまして止まない。
手指は硬直したように秘部を押し開いたままだが、仮に耳を塞いだところで、即刻手を引き剥がされて、自分の膣が叩く淫らな音を聞かされるだろう。
小刻みな吐息に、鼻にかかるような声が混ざってしまっては、感じているのは明らかだった。
「あぁっ、あっ、あん、はぁん、あんっ、あっ」
尻を叩かれながら、肉棒を突き入れられると、嬌声が止まらない。
性奴隷に成り立ての頃は、下唇を噛み締めて、必死に嬌声を堪えたりもしたが、そんな態度は取れば取るほど苛烈な仕置きに変わると教え込まれ、いつしか嬌声はだだ漏れになってしまった。
嬌声が官能を刺激し、脳髄を灼くような淫熱に突き動かされて、腰は自然と動いてしまう。
疲労の極致にある身体で、尻だけ上げたうつ伏せ姿勢での連続的な腰振りは無理があるので、実際には、呼吸に合わせて僅かに上下する程度だったが、意識の中では激しく腰を振っているのを自覚していた。
心は快楽に流されていた。
犯される事に対する嫌悪感と、慣らされてしまった快感の狭間で、揺れ動いていた。
これは防衛本能だ。
アリスは懸命に自分に言い聞かせる。
心が壊れてしまわないように――
生きるために身体が感じているのだ。
そう、反芻しながら、意識の中で淫らに腰を振り続けていた。
今夜も、鎖付きの首輪を填められ、四つん這いで引き立てられながら、ギルドのならず者だけが知る迷宮の裏道を徘徊させられていた。
お尻の穴には、犬の尻尾を模したバイブをねじ込まれて、丸っきり雌犬扱いだ。
利尿剤を飲まされた為、途中で尿意を催してきたが、勿論、本物の犬のように片足を上げた格好で放尿を強要された。
だが、それだけに留まらない。
今夜は雌犬扱いから、正真正銘の雌犬にされるのだった。
「お、ようやく来たか」
アリスの首輪に繋がる鎖を握るならず者は、待ちくたびれた様子で、奥の通路からやって来る人影に目をやった。
アリスを引き立てるならず者の数は五人。
薄闇の向こう側からやってくるならず者は三人――いや、もう一つ、小さな影が見えた。
小刻みに息を吐き散らしながら、ならず者に引かれて近づいてきた。
それは犬だった。紛う事なき本物の犬だ。
体長はアリスと同じくらいか。かなりの大型犬だ。
獰猛な顔つきからして、狼の血が混じっているようだ。
鎖に繋がれてやってきた犬の姿に、これからさせられるプレイが完璧に想像付いた。
まさかそんな事はないと思いたいが、今までが今までだ。「そんな事がない」可能性の方がずっと低い。
あからさまに引きつった表情で、鎖を引くならず者を見上げて、アリスは嫌嫌と首を振ったが、ならず者は嗤うだけだ。
首輪に繋がる鎖を乱暴に引っ張られ、雌犬さながらに、通路の奥に進まされる。
「こんな勝手な事していいのかよ。後で、どやされたりしねえか?」
「ヴァルガーさんの許可は貰ったから安心しろや。『今手ぇ離せねえが、後でじっくり見るから、録晶に撮っとけ』だってよ」
「おほ、ヴァルガーさんお墨付き♪」
用意周到なならず者は、ヴァルガーの許可もしっかり貰ってきたらしい。
嬉々とした様子で、録晶と呼ばれる映像保存用の水晶を専用の魔法器具に取り付けていく。
これで、アリスの運命は確定した。
「おね、おねが、がい、ヤメ、ヤメて……」
声を震わせるが、ならず者は四つん這いのアリスの真後ろに大型犬を連れてくると、問答無用でけしかけた。
「うああぁあぁあッ!!!! あうあッ、うああぁあああッ!!!!」
犬の毛皮がお尻に当たり、肉棒らしきものをあてがわれた途端、アリスは狂ったように暴れ出した。
だが、即座に、両手足、頭、腰を取り押さえられて、決死の抵抗はあえなく終った。
本気の抵抗は久方ぶりだったが、ならず者達にしてみれば、無駄な抵抗はされた方が、却って征服感が増して機嫌が良くなるらしい。
「おいおい〜♪ そんな喜ぶなよ、すぐ入れてやるからさ〜♪」
上機嫌に鼻歌を歌いながら犬の背を叩き、そそり立った獣直を、再度アリスの膣口に押し当てさせた。
ハッハッハッ、と小刻みな呼吸音がして、首筋に生暖かい息が降りかかる。
もう、犬との性交――いや、交尾はどうあっても避けられそうになかった。
魔法器具に取り付けられた録晶が鈍い光を放って、じーっ、と獣姦の瞬間に怯えるアリスの表情を録画していく。
「排泄でも、SMでも、オナニーでも、なんでも喜んでするから……犬だけは…………犬とだけは許してよぉ……」
畜生にまで犯されてしまったら、心の中の何かが、本当に音を立てて壊れてしまいそうだ。
一縷の望みを託して、アリスは必死にならず者達に懇願するが、嬲る事が目的のならず者達は、言いたいだけ言わせた後、お預けを解いて、犬のモノをアリスの中にねじ込ませた。
「ああうぅぅッ!!!?」
ならず者達より小ぶりだが、異質な肉の塊が膣の中に飛び込んできた。
犯された!? 犬に間違いなく犯された。あたし、今犬と、犬と……ッ!
「やああぁん、やああぁっ!!!」
腰を左右に振って振り払おうとするが、一度中に入ってしまえば、簡単には引き剥がせない。
狂乱するアリスを他所に、犬の肉棒はどんどん奥に入ってくる。
突き当たりに辿り付いた所で、膣の細道を抉る部分がぼっこりと膨れ上がり、膣内をロックオンされた。
これでもう、交尾が終わるまで、抜けなくなってしまった。
「抜いて抜いて抜いてええッ!!! 一生、性奴隷になるのッ、誓うから!! 心の底から性奴隷になるって、誓うからあああッ!!!」
泣き叫んでも、交尾の準備は容赦なく進められていく。
潤滑液が発射され、ぬるぬるした液体が膣内を満たした。
犬は射精の前段階として、挿入用の潤滑液を出すのだが、射精さながらの感触だ。
違うのは、精液特有の生臭さがないくらいか。
人の精液でも、出されるたびに嫌悪感を感じるのに、犬の精液なんか出されたら、どうなってしまうのか。
「はぁああんッ! やめえぇーッ!!」
絶望的な気持ちを他所に、犬はついにアリスの中で腰を振り出してしまった。
こうなってしまうと、後は出されるまで、時間の問題だ。
だが、信じられない事に、ならず者はそのタイミングで、アリスの首輪に繋がる鎖を引っ張るのだ。
「おらっ、散歩の続きだ。とっとと歩け!」
「そそんな"ぁ」
犬に犯されたまま、犬の様な体勢で、首輪を引かれながら歩かされるなんて。
これじゃ、本当に、本物の雌犬そのものじゃない……ッ!
アリスの心の中で、明らかな綻びが生じ始めた。
「歩かねーと、散歩はいつまでも終らねーぞっと♪」
言外に、歩かないと何度でも犯させるぞ、という意味を込め、ならず者は鼻歌交じりに頭をポンポン叩く。
「うっ、うっ……」
大型犬の腰振りをバックから受け、生臭い獣息をうなじに吹き掛けられながら、アリスは手膝を動かして、ゆっくりと歩き始めた。
犬ごと引っ張る体力はないのだが、そういうプレイを躾けられているのか、背後の犬は、「きゃぅん」と惨めさを引き立てるような鳴き声を上げて、アリスの動きに付いていく。
前足が肩に圧し掛かり、腰から背中まで、体重をかけてくる犬の毛皮の感触に支配されると、間違いなく犬に犯されてるのだと実感させられる。
小刻みな吐息が、耳元で悪魔の囁きのように恐怖心を煽ってくる。
ザラつく舌で頬を舐められると、犬との性交という紛れもない事実をとことん思い知らされる。
せめて早く終って欲しいと思うのに、一向に果てる様子がない。
それどころか、アリスの中を楽しむように、犬は執拗にねちっこく、腰を突き立ててくる。
人として、大切な何かを失っていくのを感じていながら、膣内はピチャピチャと淫靡な水音を立ててしまっていた。
「すげえ音、立ててやがんな」
「アリスの奴、犬のチンポがよっぽどいいらしい」
顔を上げて、囃し立てるならず者を睨みつけたが、実際、立ててしまっている水音を前にしては何も言い返せない。
魔法器具で獣姦シーンを録画しているならず者が、録晶をこれ見よがしに鈍く光らせながら、アリスの真っ正面に持ってきた。
逃げるように顔を背けても、録晶は追いかけて、また正面にやってくる。
「ッ……」
録晶の動きから逃れようと、手を止めて顔を伏せた途端、
「何勝手に休んでんだ!!」
罵声が飛んできて、首輪の鎖を思いっきり引っ張られた。
「うっ、くぅ……うぅっ……」
犬のペニスによる膣内挿入と、生臭い獣の息を受けながら、アリスは交尾をしつつ鎖を引かれ、雌犬として四つん這いで、人気のない迷宮を歩かされていく。
涎を垂らしながら背中に覆い被さってくる大型犬の挿入は続いていた。
「はっ、あはぁん、ああっ、はぁん……!」
獣らしい力強いストロークの前に、鼻にかかるような甘い声が上がり始めていた。
頭がボーっとして、何も考えられない。
「感じてるんだろ?」と言わんばかりに、耳元で小刻みな吐息が繰り返され、呼応するように、股間ではこれ見よがしな粘着音が鳴り響いている。
自ら腰を振り出してしまっているかもしれないが、その辺りはハッキリしない。
とにかく、言い訳できない位、犬のチンポに感じていたのは確かだ。
もう十分近く歩かされて、いつまで続けられるんだろうと、淫熱に浮かされた頭で思い始めた頃、急に犬が「きゃぅ……」と甲高く鳴いて、子宮内に生臭い獣精を飛び散らせた。
「ああぁ……」
早く終って欲しいと思っていながら、出された瞬間には絶望的な声が漏れた。
とうとう畜生に膣内射精されてしまった。
迸らせる獣精は最奥に発射され、子宮を汚すように流れている。
人の精液と同じく、決定的に制圧された事を感じさせる灼熱感。
だが、犬のそれは、支配されるというより、人としての誇りを剥ぎ取られる感覚だった。
人間では無くなっていくような、一匹の雌犬に堕とされるような決定的な――
「抜いてえッ!! もう出したんだから、早く抜いてええッ!!!」
このまま突っ込まれてると、本当に自分が自分じゃなくなってしまう。
一秒でも早く抜いて欲しい……!
なのに、ならず者達は、
「あん? なに言ってやがる、犬の射精は十分以上が基本だろうが。まだ続くんだよ」
「コイツは特別に調教されてるから、一時間近く続くぜ〜♪ ほら、散歩散歩〜♪」
とんでもない事を言ってくる。
じゅっぷ……いちじか……そんなの、堪えられるわけないッ!!
その場で突っ伏して、泣き喚くが、背後からペニスを突き立てる犬は、また熱い獣精を注ぎ込んできた。
「うあう、うあうぅーッ!?」
「録晶に記録されてるって事忘れんなよ? なんだったら、クルルミク中にばら撒いてやってもいいんだぜぇ?」
ならず者の一人が髪を掴んで顔を上げさせ、魔法器具で記録しているならず者が、録晶の鈍い光を突き付けながら脅してくる。
もう名誉や名声なんて、何一つ残ってないし、無理矢理貼り付けられた変態や淫乱のレッテルしかないのは分かってるけど、それでもこんな姿を映像としてばら撒かれたら、人としても扱って貰えなくなる。
「うあう、あう、あうぅ……ッ!!」
壊れかけた泣き声を上げながら、手膝に力を入れて、残る力を振り絞って腰を持ち上げる。
膣と獣直の結合部分から、犬の精液がボタボタと零れ落ちてきた。
「きゃぅ」と耳元で鳴きながら、また犬が精液を中に出してきた。
いくら抜きたくても、抜かせてもらえず、断続的に獣精が子宮に注がれてくる。
「ああぁあうあッ!!! うあうッ、あうあああぅあッ!!! あああぁーッ!!!!」
長手袋とブーツに包まれた手と膝の動きに合わせて、交尾する犬にストロークを叩き込まれて、絶叫が轟く。
そしてまた出される獣精。
首輪を引かれながら、雄犬に犯される雌犬として、黒騎士と呼ばれた少女は、冒険者が来る事のない迷宮の裏道をひたすら歩かされていた。
その姿を、録晶に余さず記録されて。
生き地獄は、まだ一時間近く続く――
「おいおい、壊れちまったんじゃねーか?」
「例の薬打ちゃ、正気に返んだろ。ヴァルガーさんとこ行って、貰って来いや」
バタバタと足音が聞こえてくる。
――もう、いい加減壊れたいよ。
こんな人生だったら、生きていたくない……。
フィル……?
フィルには会いたいけど……もう、こんな…………地獄、続くん……だったら…………楽にさせて………………ほ……し……………………
「おせーぞ、ったく!」
「わりぃわりぃ、丁度ヴァルガーさん出ててよ、時間かかったわ」
「へっ、たまには俺様直々に打ってやるとするか!」
腕を掴まれ、冷たく尖った針を当てられる感触――
「あああああああああああああああああああああああッッ!!!!?」
「お、気が付いたか」
「へへっ、そう簡単に壊れられると思ったかよ?」
ならず者が、ヴァルガーが、凶悪な笑みを浮かべて見下ろしていた。
下半身は今もまた、ならず者の一人にしっかり犯されている。
「……も、ゆる、して……。認めるから……」
泣き腫らしながら、息も絶え絶えに、ヴァルガーや周りのならず者達に懇願する。
「認めるから……。あた……盛りの付いた……ただの雌豚だって、認めるから…………。
どうしようもない位……救いようがない、変態女って事も、認めるから…………。
お願いだから……いい加減、もう許して………………」
これ以上ない位、完璧な、心の底からの奴隷宣言に、男達は満足そうに嗤った。
「つまりなんだ、テメエは単なる精液便所って事だよな?」
念を押すように、ヴァルガーが下唇を歪めながら聞いてくる。
赤裸々な言い様に、アリスは一瞬躊躇したが、素直に頷いた。
「はい、ただの精液便所です……。男に使われるだけの、精液便所だって、認めるから、もう……」
自分で何を言っているか、分かっているが、分からない。
ただ、ひたすら許しを請うためだけの宣言だ。
これ以上の責め苦は、心が耐えられなかった。
どんな事でも認めるから、許して欲しい。
もうこれ以上ない位、ハッキリと敗北を認めてるのだから。
男の怖さも、心底から叩き込まれた。
男に楯突くような態度を取った事は、後悔してもし足りないほど、後悔してる。
もう一生、貞淑に生きると思う。
だから――
だが、アリスの望みと、ヴァルガー達の認識は決定的にズレていた。
埋まりようがないほどのギャップがあった。
「ならっ、しっかり書いといてやらねえとなあ! 精液便所、ってな!」
ヴァルガーが大笑いしながら、赤いペンキで、アリスの腹に卑猥な文字と矢印をペイントしていく。
「ついでだから背中にも書いといてやりましょうよ。第二便器ってさあ!」
「故障中の文字くらい入れてやれよ、ぎゃははは!」
ならず者達は寄って集って、アリスの身体を引っ繰り返すと、背中にも卑猥なペイントを施していく。
「ううぅうぅー!」
話が全く通っていなかった事に、アリスは号泣した。
「どーれ、さっそく精液便所のアリスちゃんを使ってやるとするかあ!」
ヴァルガーは再度仰向けに引っ繰り返すと、自慢の極太の肉棒を、アリスの膣に叩き込んだ。
腰を垂直に引き上げて、結合部分と共に腹の卑猥なペイントを、アリス本人に見せ付けるように、マンぐり返しの格好にする。
それは、かつて天才と謳われた少女にしては、あまりにも惨め過ぎる光景だった。
突き入れられるたびに、苦悶する嬌声が上がる。
腹に施された便所のラクガキのようなペイントが、揺れ動きながら視界に飛び込んできた。
アタシの人生って、なんだったんだろ……。
天才黒騎士なんて呼ばれて、いい気になって……。
その挙句が、人間以下の家畜にも劣る最低の性奴隷で……。
こんな、慰み者になるだけが、アタシの人生だったの……?
もう生きてたくない――
こんな人生だったら、こんな人生だったら――生まれてこなければ良かった!!!
「うああぁッ! うああぁうッ! 壊して! 壊してよぉ! もう、アタシの事ッ! 壊してよぉーッ!!!」
発狂したように、髪を振り乱して叫ぶ。
そんなアリスの姿に、ヴァルガーはこれまでにないほどの、喜悦の表情を浮かべていた。
まるで、アリス自身が自分の人生全てを否定し、生まれてきた事さえ、心の底から後悔する瞬間を待っていたように。
己を支える絶対の自信を打ち砕かれた時、こうなる運命は決まっていたのかも知れない。
「うおおおおおおおおおッ!!!!」
ヴァルガーは雄たけびを上げ、狂い泣くアリスに己の精をぶち込んだ。
灼熱の奔流が肉壺の中で、溢れ返えらんばかりに波打った。
引き上げられた腰が乱暴に床に落とされ、中から精液が大量に流れ出てきた。
「ぁ、ぅ……壊し、てぇ……も、壊してよぉ…………。生きて、たくない……これ、いじょ……………………」
歯車が壊れかけたように、アリスは切れ切れに言葉を紡ぐ。
それを見下ろし、愉悦で顔を歪めるヴァルガー。
アリスの精神は、いよいよ最期の瞬間が迫っていた――
オマケの解説
*三角木馬に乗せての市中引き回し
絶頂して放尿した後も、延々市中引き回しされた。
街のほとんどを二時間くらいかけて回らされて。
流石に最後は、ぐったりして気絶した。そこでお開き。
気絶するまで引き回されて、それからようやく迷宮に戻されたという方が正しいか。
*迷宮内で獣姦&お散歩
同じく徹底的に引き回された。
四つん這いで歩かされながら、犬に何度も出されて許しを請うが、ならず者は許さず。
四十分くらいのところでダウンして、鎖を引っ張られても動けなくなり、
残り二十分間はマウントポジションで、泣き叫びながら何度も何度も出されて、その姿を全部撮られた。