『2の一節。偽りの初夜』  


陽の当たらぬ地の底で、黒騎士少女の悪夢はなおも続いていた。

「あぁっ、あっ……うあぅっ! ああっ、あぁん!」

浴槽の中でも、小刻みに熱い息を吐きながら、嬌声を漏らしている。
湯にのぼせた顔はすっかり上気し、淫熱に浮かされた頭脳では、思考もままならない。
湯船に浸かりながら激しく膣を突き立てられる風呂責めは、地獄の一言である。

精液まみれの身体を洗い流すという名目で、監禁玄室に付属する浴室に連れてこられたアリスだったが、股間や乳房を弄繰り回されながら石鹸で洗われたり、犯されながら髪を洗われたりと、入浴とは名ばかりの陵辱が繰り広げられている。
竜神の迷宮は、中階層で地下水脈と繋がっているため、ハイウェイマンズギルドのアジトは水量が豊富で、規模の大きい監禁玄室の奥には、性奴隷を綺麗にして出荷するための浴室が用意されているのだ。

「おらっ、折角俺達が綺麗に洗ってやったんだ。お返しに奉仕の一つもしたらどうなんだ、ああっ?」

ならず者の一人が浴槽の手摺にしゃがみ、罵声を浴びせながら濡れた金髪を掴んで、肉棒を口の中にねじ込んでくる。

「んぶっ! んあぁっ!?」

乱暴な突き入れに、喉を詰まらせて吐き出そうとするアリスだが、男の腕力で股間に押し付けられては、悲鳴も上げられない。
口内を激しく責め立てられながら、くぐもった声を上げるだけだ。

「おいおい、テメエだけよがってんじゃねえよ。ちったあ、テメエからもサービスしたらどうなんだ?」
「んばあ! んああっ!!?」

立て続けに、今度は前を犯すならず者が、湯船の中でほのかなピンク色の双乳を鷲掴み、力強く揉み込んできた。
反射的にアリスは暴れるが、ならず者の手で湯船に押さえ付けられている為、浴槽内から出られない。
狂おしく悶える肢体は、浴槽の湯をかき乱して波立たせ、飛沫として、自分自身の髪やならず者に掛かるだけだ。

「へへ、また俺もサービスしてもらおっかな」

遠巻きに煙草を吹かしながら、湯当たりした身体を冷ましていたならず者が、好色な笑みを浮かべて寄って来て、アリスの背中側から湯船の中に身体を埋めてくる。
湯に濡れた背中のラインを嘗め回しながら腰を掴むと、一気に菊門の穴に突き入れる。

「んんッ!!? んむぅーッ!!!」
「おら、なに休めてんだ! 舌使えっつってんだろ!?」

悲鳴ならぬ悲鳴を上げるアリスを、口内を犯すならず者が高圧的に叱り付け、暴力的にストロークを叩き込む。

「腰もしっかり振れっつっただろ!!」

前を犯すならず者も、双乳の蕾を容赦なく握り潰す。

「んむうぅッ!!? んぶうぅッ!!!!」

更にバックから思いっきり突き立てられては、全身が性感帯と化した少女には、どうする事もできない。
何も考えられず、命じられるまま肉棒をしゃぶりながら、湯船の中で溺れるように腰を振りたくるだけだ。

そして、三点同時発射され、完全にのぼせたアリスは、その後も代わる代わる、各穴を五回ずつ犯されるのだった。


「なに……これ……?」

湯に当てられた頭では、ぼーっとして思考もままならない。
抗う気力もなく乳や股間を弄られながら身体を拭かれるアリスの眼前に、レースをふんだんに使った豪奢な純白のドレスが突き付けられた。
一揃えと思しき、シルクのショーツやガーター、長手袋まである。

心底から嫌な予感がした。
だが、ならず者達は薄ら笑いを浮かべるだけで、誰も答えようとしない。
どうせろくでもない事だろうとは思ったが、あまりにも不気味すぎる。
黒騎士の敗残姿といえる、黒いブーツと長手袋しか身に付けさせてもらっていないアリスからすれば、当然のことだ。
ならず者達が……ましてや、あのヴァルガーが、慈悲や憐憫の情から衣装を与えてくれるなど、絶対に有り得ない。

濡れた全身を拭い、金糸のような髪を乾かし終わると、ならず者は眼前の衣装をアリスに着せ付けていく。
ショーツ、ガーターと、順序よく。
着せ付けながら、さり気なくならず者の一人が股間を触ってきたが、別のならず者が
「止めとけ、汚すとヴァルガーさんにどやされるぞ」と、制止する。
それが、余計に不気味だ。

手際よく着せ付けられていくと、鏡に映る少女の姿は見違えていった。
外見にそぐわず器用なならず者の手で、唇に薄いルージュが引かれると、その様はまるでどこかの王宮に住む姫のようだ。
勝気な少女にしては意外だが、母は亡国の王女だから、その血を継ぐアリスにドレスアップした姿が似合っても不思議ではない。
生まれて始めてのドレスアップした自分の姿に、感心するアリスだったが、頭に被せられようとしたティアラ付きのヴェールを見た時、緩みかけた顔が引きつった。

この衣装――ひょっとして!?

「お、馬子にも衣装ったあ、この事だな。あのじゃじゃ馬が、見違えたじゃねえか!」

と、そこに上機嫌なヴァルガーがやってきた。
愉悦を浮かべた目が、ドレスアップされたアリスの全身を舐めるように視姦する。
この男はいつもと変わらず、肉体を誇示する半裸だ。

「あ、あの、ヴァルガー……」
「"様"だろ」
「ヴァルガー様、この服は一体……?」
「あん? ウェディングドレスに決まってんだろ」

あっさりと返すヴァルガーの言葉に、引きつったアリスの顔面が蒼白に凍りついた。

「――い、今なんて……?」
「だからウェディングドレスっつったろ。何度も言わせんな。こんな穴倉ん中じゃ、手に入れるのも一苦労だったぜ」

聞き違いであって欲しいというアリスの気持ちを踏みにじるように、ヴァルガーはさらりと言った。

「な、なんの為に……?」
「ウェディングドレスっつったら、やるこた一つしかねーだろ? 俺様と結婚式だ」
「――はあっ?」

わけがわからず、アリスの思考が一瞬でパンクする。

「おら、みんな待ち侘びてるぜ」

混乱するアリスをよそに、背と膝を掴んだヴァルガーはいきなりお姫様抱っこしてきた。
突拍子もない赤裸々な行動に、冗談ではなく正気だと悟ッたアリスは甲高い悲鳴を上げた。

「!? やっ、嫌あーッ!!」


玄室内では、ヴァルガーの取り巻きのならず者が、新郎新婦を迎える親族友人のようにバージンロードを作り、ウェディングドレス姿でヴァルガーに抱きかかえられるアリスを待ち受けていた。
照明を消し、蝋燭の火を疎らに立てた薄闇の中、花道の奥――玄室の中央に設置された巨大なツインベッドの上を、魔法の明かりがスポットライトのように照らしている。
それだけで、ヴァルガーが何をしようとしているか、完璧に想像がついた。

「やあッ!! ヤダ、ヤメてッ!!」

白いハイヒールとシルクのガーダーに包まれた足をバタつかせ、純白の長手袋に包まれた腕を押して、ヴァルガーの胸中から逃れようとするアリスだが、抱きかかえる力は圧倒的で、全く逃れられない。
じたばたするアリスを周囲のならず者が、口笛で冷やかし、それらしく祝福の花吹雪を投げかけてくる。

「待ってください、アタシ、こんなの……」

涙を浮かべて哀願しようとするアリスの口を、ヴァルガーがいきなりキスで塞いできた。
花道のならず者達が、おおーっと、大きなどよめきを上げる。

「へ、調教ばかりで可哀想だから、わざわざこんなイベントを設けてやったんだぜ。心優しい俺様に感謝したらどうだ?」

唇を離したヴァルガーは、ねっとりと舌なめずりし、キスの味を確かめながら、低く嗤った。

だが勿論、こんな事されて、嬉しい筈がない。
いくら勝気な少女といえ、アリスも16歳の少女だ。いっぱしの乙女心を持っている。
その乙女心を踏みにじるような、好きでもない男との擬似結婚式など、堪えられるわけがない。
まして、アリスには心に思う少年がいた。キスさえした事がない関係だが、ウェディングドレス姿でのプレイなど、少年への裏切りに等しい。

「放して! 放してよ!」

お姫様抱っこでバージンロードを進むアリスは、蜘蛛の巣に掛かった蝶のように暴れまくる。
だが、不意にヴァルガーが支える手の力を抜くと、不安定な姿勢での落下の不安から、とっさにヴァルガーの首に手を回してしまう。
途端、間髪入れず周囲のならず者が「お熱いねー、お二人さん!」と冷やかしの言葉を飛ばしてくる。

「ちがっ、そんなんじゃ……!!」

アリスは反論しようとするが、ヴァルガーがわざと手の力を抜くものだから、首に絡めた手を放せない。
結果、自分から抱きつく格好になってしまう。
ヴァルガーは狡猾だ。
こんな事をされては、端から見れば、お姫様抱っこされながら、アリス自身も積極的に抱きついているようにしか見えない。


バージンロードの端に着くと、ヴァルガーは抱きかかえた小柄な花嫁を放り投げた。
ライトアップされたツインのベッドに、ウェディングドレス姿の少女の肢体が投げ出される。

玄室内は、ベッドの上は明かりで眩しいほどだが、他は疎らな蝋燭の明かりだけで暗闇に近い。
自然、注目はベッドに集中する。
さしずめ、このツインベッドが結婚式場兼初夜の巣といったところか。最低の結婚式だ。

ズボンを脱ぎ捨てると、裸になったヴァルガーは極太のペニスを露出させてベッドに上がり、ウェディングドレスに身を包んだアリスに迫ってくる。

「ひっ、ヤダ……」

アリスは明らかに恐怖の色を浮かべ、ベッドシーツに背を着けた体勢で、後ずさりして逃れようとするが、亀のような動きでは、すぐ追いつかれてしまう。
起き上がって逃げるという事すら思いつかないほど、頭は混乱していた。
白いハイヒールに包まれた足首を掴まれ、広いツインベッドの中央まで引きずられていく。
これでもう、ベッドの上から逃げ出す事もできない。
そして、ヴァルガーは力いっぱい抱きつき、ドレスの胸元に顔を埋めてきた。

「いやああッ!! ヤダヤダヤダヤダぁッ!!!」

性奴隷に堕とされてから、おそらく一番の抵抗だろう。
純白の手袋に包まれた手で、ヴァルガーの頭を押し退けようと押さえたが、非力な少女の手では、可愛い抵抗にすらならない。
ドレスの上から両胸を揉みしだきながら、くんかくんか、と鼻の穴を広げるヴァルガーは、ドレスに包まれた胸の谷間を嗅ぎ込んでくる。

「やぁ! やぁめえッ! 嗅がないでッ!!」

一しきり胸の臭いを満喫したヴァルガーは、開いたドレスの胸元を引き下げた。
ぷるん、と白い乳房が露になり、少女の母性の証を、かぶれるような臭い涎を垂らしながら、むしゃぶりついてくる。

「うず、ひっ……うあぁ!?」

引き剥がそうと両手に全力を込めるアリスだが、ヴァルガーは全く意に介しない。
蛭のように吸い付き、存分にアリスの双乳の味を堪能する。

「お次は下の味見をさせてもらうかな」

ねちっこすぎる性技の前に、すすり泣きを始めたアリスを尻目に、今度はレースを散りばめた煌びやかなスカートに潜り込んできた。
足首まで丈があり、下半身を覆いつくすスカートの内部は、乙女にとってまさに秘密の領域だ。
ヴァルガーはその聖域さえ、容赦なく蹂躙してくる。
スカートの中を埋めた顔が、シルクのガーターで包まれた太股と太股の間の細道を、蛇のように這って進んでくるのだ。
太股を顔に挟み込みながら、最奥に隠された――少女のもっとも大切な場所を守る純白のショーツに、垢汚れた鼻先を擦り付けてくる。

「あぁん! あぁ、やああぁっ!?」

あまりの変態的所業に、アリスはベッドのシーツを掴んで身悶えるが、ヴァルガーは太股と股間のデルタ地帯を占領したまま、顔を擦り付けて放そうとしない。
そして、また思う存分堪能した後、秘部を覆い隠す純白のショーツを脱がしてくる。
シーツを握り締めるアリスには制止する気力もなく、全くの無抵抗で、つま先からショーツを脱ぎ取られた。

「お、なんだ、しっかり感じてるじゃねえか。見ろよ」

目ざとくショーツに染みを発見したヴァルガーが、染みの部分を広げて、アリスの顔面に押し当ててくる。

「うあぅ……」

シラの切りようがない位、ハッキリと確認させた上で、ヴァルガーは脱ぎ取ったショーツをベッドの外の暗闇に投げ捨てる。
これで、アリスの秘部を覆うものは完全に無くなってしまった。

「ギャラリーも待ち侘びてるようだし、そろそろ本番といくか」

ヴァルガーは抵抗する意気を無くしたアリスの腰を引き上げると、臀部をスカートから露出させて、両足をV字開脚させた。
もっとも厳重に隠していたはずの秘密の領域が、一瞬のうちに、ベッドを取り囲む観衆の目に晒し出されてしまう。
燦々と輝く魔法の明かりが、秘部から流れ出る光露の一滴まで、明確に照らし出す。
そこまでされてさえ、アリスはシーツを硬く握るだけで何もできなかった。
抵抗する術が、まるっきり思い付かないのだ。

「そらっ」
「ああぁッ!!?」

観衆にしっかりと見せ付けた上で、ヴァルガーは自慢のペニスを淫らに濡れた秘唇に叩き込んだ。
いかに受け入れ準備が整ったとはいえ、小柄な少女にヴァルガーの肉棒は太すぎる。
膣壁を突き破られるような圧迫感を受けて、アリスは苦痛の声を上げた。
だが、それも数度腰を打たれると、すぐ淫靡な水音が膣壁を叩くようになってしまう。

「へへ、何だよこの音はよ?」

嘲笑うように粘着音を聞かせると、ヴァルガーは腰を折り曲げ、華やかなウェディングドレスに身を包んだアリスに抱き付いてくる。
完全に制圧した体勢で、顔を近づけると、頭を覆うヴェールを骨太の指先でなぞり、反対の手で頬を撫でながら、親指と人差し指で、耳たぶとエメラルドのイヤリングを弄ぶ。
なすがままにされて、花嫁アリスはもう、すすり泣くしかできない。


「おーい、神父様、始めていいぜ!」

ヴァルガーが高らかに呼びかけると、観衆の輪の中から、一人のならず者が出てきた。
何の冗談か、その男は神父の格好をしていた。
もしもこんな状態でなければ、アリスは間違いなく笑い飛ばしていただろう。
知恵も教養もないならず者が扮する神父。これほど滑稽なものはない。

しかし、滑稽なのは姿だけで、その神父は悪魔の使者だった。
信じ難い神父の宣告に、アリスは泣き腫れた顔面を蒼白に凍りつかせた。

「――では、これより、新郎ヴァルガー、新婦アリスの結婚式を執り行う」

世界が暗転した。
一瞬、耳を疑った。何かの冗談だと思った。
ベッドの中で、しかも膣内にペニスを押し込まれた状態で、なんの結婚式だ。
だが、大真面目らしい。神父の格好をしたならず者は、強張ったアリスの表情を気にも留めず、つつがなく式を進めていく。

「――それでは指輪の交換を」

神父の差し出すエンゲージリングの一つを、ヴァルガーが手に取り、純白の絹手袋に包まれたアリスの薬指を填めていく。

「おら、次はお前の番だろ」

戸惑いを隠せないアリスの耳元で、ヴァルガーが囁いた。
まだ訳が分からなかった。
ぎこちなく見上げると、いきなりヴァルガーは膣を軽く一突きしてきた。

「はぅっ!?」

身体中に電流が走った。
もう一度、それも、軽くだ。膣奥を刺激しない程度に、軽く突いてくる。
触るように軽く突かれると、急に切なくなり、瞳が潤みだしてしまう。

「ぅ、ぅん……」

小刻みなビートが加えられると、次第に声が噛み殺せなくなってくる。
揺らすように膣内を擦るだけで、決して激しくは責めてこない。
中途半端すぎる快楽は、強烈な快楽なんかよりよっぽど苦痛だ。
思いっきり突き立てられれば、狂わんばかりの快楽に身を委ねる事もできるが、中途半端な快感しか与えられなければ、もどかしさは増すばかりだ。
何とか快楽を享受しようとしても、あまりにも弱々しくしか責めてくれないので、快楽を享受しようがない。

切なさに瞳を潤ませるアリスの眼前に、これ見よがしにエンゲージリングが突きつけられた。
止めて欲しければ、ヴァルガーの薬指に填めろ、という事か。
その行為の意味するところは理解できるのだが、こうも切ないとどうしようもない。
正常な判断力が、擦られる度にどんどん削り取られていく。
疼きを止めてもらう事しか考えられず、それだけの為に、アリスは絹手袋に包まれた指先でエンゲージリングを摘み、ヴァルガーの薬指に填めていく。

指輪の交換が終った事を見届けると、ようやくヴァルガーは小刻みなビートを止めてくれた。
だが、一度疼き出した膣の痒みは、ビートを止めてもらったところで一向に止まらない。
ヴァルガーに押さえ込まれた体勢のまま、アリスは落ち着かないように腰をもぞもぞさせる。
その反応を、ヴァルガーは気付いていないわけないのだが、あえて追求してこない。
そして、式は更に進められていく。

「新郎ヴァルガー、汝、この者を妻として愛し、永遠の愛を誓いますか?」
「おう、誓うぜ」

ヴァルガーが即答で応える。
有り有りと愉悦が浮かんだ声が、顔の上に降りかかる。

何の冗談でもなく、本気で本当に、こんな結婚式を行なう気だ。
事ここにいたっては、淫熱に浮かされた思考でも、ヴァルガー達の本気が理解できた。
おぞましさで、ヴァルガーやならず者達が空恐ろしくなってくる。

「では、新婦アリス。汝、この者を夫として愛し、永遠の愛を――」
「や、やめてもうお願い!」

神父の声を静止するように、アリスは泣き声を上げたが、神父は取り合わず、後の言葉を続けていく。

「この者に、永遠の愛を誓いますか?」
「やめてやめてやめてやめて」
「永遠の愛を誓いますか?」

神父は止めない。何度となく、執拗に繰り返す。
その声が悪魔の囁きのように、少女の脳内にこだまする。

「おい、なんだったら、こいつらの中に放り込んでもいいんだぜ」

余裕の表情を浮かべて、ヴァルガーが親指でベッドを外を示しながら、脅しつけてきた。

「俺様一人とやるか、こいつら全員の相手するか、二者択一だ」

いきなり究極の選択を突きつけられた。
横目でベッドの外を見ると、ヴェール越しに、ならず者の目が無数に浮かんでいるのが見える。
蝋燭の明かりで僅かに照らし出されるそれは、まるで闇夜の狼だ。
もしこれで飽くまで拒めば、ヴァルガーは容赦なくならず者の群れの中に放り出し、全員の相手をさせるだろう。

ヴァルガーに突っ込まれたまま放置され続けている膣は、疼いて疼いて堪らないけれど、それでも自ら望んで、ならず者と乱交する気にはなれない。
散々陵辱され、もう何人の男を咥え込んできたか分からないけど、心だけはまだ清いつもりだ。
ここで、自ら男を求めるような選択をすれば、最後に残された清らかな心まで失ってしまう。
それでは絶対に嫌だった。

「わ、分かったわよ……。ちか――」
「おっと、誓うなら、それなりの態度がいるだろ」

かすれる声で、屈辱的な誓いの言葉を口にしかけるアリスを、だが、ヴァルガーは制止した。
それなりの態度って――まるっきり意味が分からない。
こんな最低最悪の茶番に、誓う態度なんて……!

だが、ヴァルガーの次の言葉は、アリスの想像の域を遥かに超えていた。

「俺様はお前の中に突っ込んで愛を誓った。なら、それに応えるお前も当然、俺様の全てを受け入れて愛を誓うんだよなあ?」

低く嗤うヴァルガーが悪魔に思えてきた。
冗談じゃない。
ただでさえ、犯されたまま好きでもない男に愛の言葉を誓わせられるというのに、あろうことか、全てを受け入れた格好で愛の言葉を誓え、だなんて。
そんな事をしようものなら、心底からヴァルガーの伴侶になる事を誓うようなものだ。

「ほら、どうしたよ?」
「ぁっ!?」

だが、ヴァルガーはまた軽く一突きで、アリスを促してきた。
卑劣な事に、飽くまで、軽くしか突いてこない。
身も心も捧げた愛の誓い以外、認めない気だ。
切ないの分かってて、軽くしか突いてこないのが証拠だ。

今の一突きで膣はすっかり収縮し、咥え込んだヴァルガーの熱く太い塊を締め付けてしまった。
膣の疼きは臨界点に達してしまっている。
焦らされて、焦らされて、嬲られて、お預けを喰らいすぎで、気が狂いそうだ。

恥も外聞もなく言ってしまえば、思いっ切りかき乱して欲しかった。
淫らにヒクついてる肉壺を、ねじ込んだままの剛直で、力いっぱいかき回して欲しい。
さっきから、しきりに擦り付けるように腰をもぞもぞと動かしているのも、とっくにバレてしまっているだろう。
それが分かっているから、ヴァルガーは余裕なんだ。
持久戦を続けていれば、確実に敗北の言葉を引き出せる、と。

できれば今すぐ、犯してください、と叫び出したい気分だった。
けれど、考え付く限りの卑猥な言葉を並べ立てて、玄室中のならず者に聞こえる程大きな声で懇願したところで、ヴァルガーは決して犯してはくれないだろう。
ヴァルガーの望みは、身も心も完全に捧げた状態で、愛の言葉を誓う事なのだから。
それ以外の言葉では、犯してくれるなど有り得ない。
望み通りの体勢で永遠の愛を誓わない限り、この疼きはいつまでたっても止まない。

……もう、逃れようがなかった。

瞑目したアリスは観念して、とうとうシルクのガーターに包まれた長い足を、膣内を占拠するヴァルガーの腰に絡ませた。
絹手袋に包まれた両腕も、ヴァルガーの首の後ろに回し、全身でヴァルガーにしがみ付く。
こんな体勢で、愛の言葉を誓ったりすれば、誰が、どこから、どう見ても、心の底から愛の言葉を誓ってるようにしか見えない。
無理矢理脅されて、なんて言い訳がもう通用するレベルじゃない。

だが、アリスの精神は極限まで追い込まれていた。
こうなったら、早く敗北を認めて、楽にしてもらうしかない。

「……では、新婦アリス。汝、この男ヴァルガーを夫として愛し、永遠の愛を誓いますか?」

完全な服従を確認した神父が、わざとらしく咳払いして、再度アリスに問う。

「永遠の愛を誓いますか?」

念を押すように、耳元で囁いた。
しがみ付く両手足に力が入る。
緊張と、絶望で。

「はい……。誓います……」

その瞬間、親族友人役代わりのならず者が一斉に囃し立てた。

フィル、ごめん……。

愛する少年のために、最後まで守り抜こうと決めた心の清さまで無惨に打ち破られたアリスの心に、闇が広がっていく。

「では永遠の愛を誓う証として、口付けを」

神父が最後の儀式を宣告する。

「お前からやれよ?」

ヴァルガーがアリスの横顔を撫でながら囁いた。
穏やかな口調だが、勿論脅しだ。拒む言葉は許さない。

この上、自分から唇を重ねろというのか。
両足を腰に絡め、両腕を首に回した姿勢で自ら唇を重ねれば、どう見ても、自分から望んで誓いのキスをしてるようにしか見えないだろう。
ほんの僅かの言い訳さえ、許さない気か。

……だが、拒めるわけない。
再度持久戦を挑んだ所で、敗北は目に見えている。
抵抗するだけ、疼きに晒される時間が長くなるだけだ。

アリスはルージュを引いた唇を、ゆっくりとヴァルガーの唇に近づけていく。
絶望の鼓動が高鳴った。
人差し指一本分ほどの距離は、次第に縮まっていく。

関節二本分……一本分…………その半分……そして――

はっきりと唇が触れた瞬間、周囲の輪から熱い声援が飛び交った。
身も心も、全てを、完全にヴァルガーに捧げてしまった瞬間だ。

口付けを確認したヴァルガーは、ヴェールに包まれたアリスの後頭部を押さえ、ディープキスに変える。
臭い唾液と共にざらついた舌先を押し込んで、アリスの舌を絡め取った。

そして――ようやく、アリスが待ち望んでいた褒美が与えられた。

膣内を制圧したまま待機していた極太の浮沈艦が、ストロークを再開する。
誓いのキスをしながらの性交など、ましてや好きでもない男が相手では、本来潔癖な少女に堪えられるものではない。
だが、散々散々焦らされた今のアリスには、ヴァルガーの灼熱の突きはどうしようもなかった。
逆に、絡めた手足に力を込めて、より一層しがみ付いてしまう始末だ。
いつの間にか、挿入に合わせて腰を浮かせて、自ら振っていた。
心の底から嫌悪感を抱いている筈なのに、身体は堕ちてしまっていた。

膣壁を叩く淫靡な粘着音とツインベッドがきしむ音が玄室中に響き渡り、舌を絡める淫辱の音が脳髄に鳴り響く。
三層のハーモニーが奏でる淫辱に、アリスの思考はさざ波に飲まれていった。
黒騎士――いや、新婦アリスは完全に陥落した。

「うむむぅっ!! うむうぅーッ!!!」

トドメの一突きを受けた時、清楚な純白のウェディングドレスに身を包んだ少女は、男の背を掻き毟るように抱き締めた。
シルクのガーターと白いハイヒールに包んだ足も、精の一滴も余さぬよう、力の限り、しがみついた。
灼熱の精が、豪奢なスカートの最奥に隠されていた膣口の一番奥に注ぎ込まれる。

「はっ、はっ、はぁ……」

はだけたドレスから覗く形のいい白い乳房が小刻みに上下する。
ようやく解放されたルージュを引いた唇からは、涎が糸を引いていた。
見事な着こなしをしていた清純の証は、打ち破られた最後の心の砦の成れの果てを表すかのように、淫らに着崩れていた。

「これで、俺様達は晴れて夫婦って訳だな」

ヴァルガーは顎の先を押さえ、再び唇を押し当ててくる。
激しすぎる性交の余韻で、未だ正常な思考が戻らないアリスは、僅かだが、自らも唇を押し当てていた。


そして、偽りの初夜は始まった。
監禁玄室の中央に設えられたツインのダブルベッドの上で、親族友人代わりのならず者に見守られながら、着崩したウェディングドレス姿で、永遠の愛を誓ったヴァルガーに新妻として奉仕する。

「よし、その調子だ」

寝そべったヴァルガーはヴェールの上から、アリスの頭を優しく撫でる。

「んぷ……んぶっ、んぢゅぷ……」

ヴァルガーの股間に顔を埋め、絹手袋に包まれた手と口で、灼熱の塊を愛撫する新妻アリス。
取り囲むならず者達が、やんややんやと冷やかしまくる。
ドレスの背や裾は、ならず者達の祝福の精シャワーを浴びて、白濁にまみれていた。

「次は俺様の上に跨れや」

ヴァルガーは満足そうに薄ら笑うと、一心に奉仕する少女に新たな指示を下した。

先走りの液で濡れた肉棒から唇を離すと、少女は起き上がり、ヴァルガーの腰の上に歩み寄っていく。
下半身を覆い隠す長い丈に隠された秘密の場所を自ら開き、そそり立った一物に乗りかかった。
極太の塊に自ら差し貫かれたアリスは、狂おしいほどの熱い吐息を漏らした。

「はあっ、あっ、あん!」

スカートの裾に隠されているため、結合部分は周囲の目には映らないが、ベッドの軋みと共に、アリスの下半身が上下しているのが分かる。

「俺様も夫として、少しは手伝ってやらねえとなあ」

勝気で清純な少女を堕とし込んだヴァルガーは、愉悦の色を浮かべて、精に塗れたドレスを抱き寄せると、起き上がり、自らも責め立てる。

「あぁん! あぁっ!!」

強烈過ぎる快感に、嬌声を上げてアリスはヴァルガーの首にしがみ付いた。
互いに抱き合いながら腰を振るその様は恋人、いや、夫婦そのものだった。

「あっ、あっ、あん! あぁん!」

小刻みな嬌声と共に、自ら激しく腰を振りたくる。
連続して訪れる快楽の波の前に、眼前の男に対する嫌悪感など、消し飛んでいた。
自分がウェディングドレス姿で、好きでもない男に抱きついて腰を振っている事さえ、忘れてしまっている。

正常な思考を取り戻せば、また再び拒絶するのだろうが、その時間は、確かに性の虜になっていた。
少女が初めて、心の底からヴァルガーに屈した瞬間だ。

「ははははっ、なあおい、もっと周りに見せ付けてやろうぜ!」
「はっ、はいぃぃ!」

ヴァルガーのラストスパートに応え、アリスもラストスパートをかける。
響き渡る獣声と嬌声――

偽りの初夜の宴は続いていた……。





文屋様がデザインしてくださったアリスのウェディングドレス姿があまりに素敵だったもので、むらむらと構成してしまった阿呆な一作(おい)

タイトル通り、絶望の螺旋2のワンシーンをイメージ。
流れに任せてたらとんでもない事になってしまったので、堕ちすぎというツッコミは無しの方向で。
いつの間にか焦らしプレイになったのが悪い!

本心ではハッキリとヴァルガーを拒絶してるものの、身体はすっかり快楽を覚えてしまって、激しく責め立てられると、意識が飛んでしまうんですな。
そしてまた正気に返ると、激しく自己嫌悪する、と(外道)


あと、台詞が少なくて読みづらくてスミマセン〜。
勢いで書いてしまった駄作なので、すぐ消すかも。。