『絶望の螺旋 2』  


竜神の迷宮と呼ばれる迷宮の奥深く、一筋の光も差し込まない監禁玄室の中で、黒騎士の少女は、今日も蹂躙されていた。

「はっ、はあ……うぅん!」

腰を振るたびに、熱い吐息が漏れて止まらない。
熱く太い肉の塊が、抉るように膣内を占拠し続けていて、少女はただ身悶える事しかできない。

巨躯の男の肉棒に跨らされて、既に二時間以上が経過していた。
時折、膣の最奥に熱い精が撒き散らされるが、それでも陵辱の勢いは止む事がない。
すぐに尻を引っ叩かれ、休む間もなく、腰を振り続けさせられる。

黒い長手袋に包まれた両の手はペニスを握らされ、身体つきの割に大きめな白い乳房には、無数の手が伸びている。
ペニスを握らされた手はシュッシュと、掴んだ男の手によってしごかされ、形のいい乳房は、荒々しく揉みしだかれるたび、痛々しいほど形を変えていく。

「それにしても、さすがはヴァルガーさんだ。このじゃじゃ馬娘を、たった一晩で堕とすとはなあ」
「噂の黒騎士様も、ヴァルガーさんの肉棒には敵わないってか、はは!」

周囲を取り囲むならず者達に、四方からなじられるが、何も言い返せない。
言い返す気力も残っていない。
だが、ならず者は、そんな無反応な態度にも満足できず、騎乗位に苦しむ少女を容赦なく責め立てる。

「おらっ、なんとか言ったらどうなんだ!?」
「ああっ、ああん!」

乳首を思いっ切り責め立てられて、アリスは悲鳴を上げた。
尖りまくった乳首の先を押し潰されると、快楽の声を上げずにはいられない。
だが、いくら身体を振りたくって悶えたところで、腰はヴァルガーの手で縛り付けられているし、両腕もペニスを握らせるならず者の手で押さえられているので、どうする事もできない。
できるのは、杭のような肉棒に刺し貫かれたまま、腰を振る事だけだ。

相変わらず、黒騎士の象徴たる黒い長手袋と、黒のブーツ以外は、何も身に着けさせてもらえない。
全裸より惨めな、敗残の姿のままで、徹底的に嬲られ続けていた。

「ああっ、ああっ……!」

腰を振らされるアリスが、絶え絶えに、苦しそうな息を吐く。
小柄なアリスにとって、巨躯のヴァルガーの肉棒は、負担以外の何物でもない。
二時間を越える責め苦の末に、アリスの精神は限界に達していた。

「おらっ、どうなんだ!? ヴァルガーさんの肉棒には敵わないんだろ!?」

取り巻きのならず者の一人が、高圧的に、野次を飛ばした。
いかに少女が天才と謳われていようが、この状況では、もはやどうしようもない。

「は、はい……。ヴァルガー……」
「ヴァルガー"様"だろ!」

別のならず者が、アリスの乳房の蕾を容赦なく握り潰す。

「はうぅ!? はっ、はい、ヴァルガー様の、肉棒には、とても敵いません……!」

今日、10回目の敗北宣言。
何度も、何度も、敗北宣言を行なわせる事で、少女に、ヴァルガーには決して歯向かえない事を染み込ませていく。


アリスが性奴隷にされた後、パーティのリーダーは賢者の少女ウィルカが引き継いでいた。

少女黒騎士として知られていたアリスの性奴隷化は、冒険者の間で様々な衝撃が走ったが、その事は彼女の心境も変えていた。
アリスの捕縛直後、救出を主張したフランムとムーンストナに対し、ウィルカは一時撤退を主張し、その結果、アリスは性奴隷とされてしまったわけだが、その事に負い目を感じつつも、以前はなかった積極性も見せるようになっていた。

「ねえねえ、リーダーリーダー、この先に下に降りる階段があるんだけど、どうするぅ?」

舌っ足らずな声を上げて、新しくパーティに加わった獣人の少女のマリルが、跳ねるようにウィルカの元に寄ってきた。
いかにも幼い感じがするマリルだが、盗賊としての技量は一級で、今もトラップ発見を兼ねた探索を終えて戻ってきたところである。

「そう。ありがとう、マリルちゃん。……残りの食料は、後どれくらいだったかな?」
「まだ5、6日――充分な量はあるね」
「それなら、あともう一階層くらいは進めそうかな」
「だが、この先には、巨大な貯水湖があるというぞ。何が起こるかわからぬし、一度帰還してしっかりと準備を整えた方が良くはないか?」
「うーん……でもこの辺りには、他のパーティも多くいるみたいだし、いざという時は協力して越えればいいんじゃないかな」

ウィルカは口元に手を当てて考えつつ、控えめながらも、はっきりと自分の意見を口にする。

「ふむ、それもそうだな」
「それでね、リーダー、探索の途中でこんなものを拾ったんだけど……」

マリルがじゃれ付くように、ウィルカにキラキラ光るコインを見せた。

「あ、これはCコインね。これがあれば、転送装置が使えるようになるから、階層間の移動が楽になるはずよ。えらいわ、マリルちゃん」
「えへへ〜」

褒められたマリルは、嬉しそうにウィルカにまとわり付く。
新たなパーティは、リーダーを引き継いだウィルカを中心に、うまく回っていた。


「んっ、んぢゅ……んぷ、ぷ……」

アリスは、杭のように太い肉棒を愛撫させられていた。
ヴァルガーの身体に乗り、ヴァルガーの顔の前に小さく引き締まったお尻を向けた姿勢で。
両手に納まりきらないほどの極太を、手指と舌先を駆使して、拙い快楽を加えていく。
そして、その褒賞として、膣と菊門、二つの穴に、脳髄を灼くほどの快感が与えられる。

「ちゅ……ちゅぱ、んあああッ!!?」

骨太で荒々しい感触で、菊門の奥を穿られて、アリスは肉棒を吐き出して悲鳴を上げた。
だが、即座にヴァルガーに足で頭を小突かれて、泣きながら、ヴァルガーへの愛撫を再開する。

「うう、ぐすっ……ぢゅぷ、ぢゅぱ……んぷ……」

膣の入り口の、熱いむず痒さが止まらない。
本当は奥の奥を嬲って欲しいのに、ザラついた舌先では、決して奥の奥までは嬲ってもらえず、もどかしくてもどかしくて堪らない。
反対に、菊門は骨太の指先で、容赦なく穿られて、狂おしいほど心地よい。

余りの快感に、正常な判断ができなくなっていた。
こんな所を弄られて気持ちいいと感じれるなんて、自分は変態なんじゃないか。
淫熱に浮かされた思考の中で、そんな事だけが浮かんでくる。

自分がどんなに恥ずかしい格好で、どんなに恥ずかしい事をしているかすら、分からない。
ヴァルガーの顔にお尻を押し当てながら、段々と、目の前の肉棒を握り締めて、頬張ることしか、考えられなくなってくる。

「ぢゅ、ぢゅぷ……んぷ、うぅー!?」

快楽スポットを同時に責め立てられれば、ほんの数日前まで無垢な少女だったアリスには、ひとたまりもなかった。
悲鳴に近い嬌声が上がる。

だが、いかに狂おしくて、快感でも、ヴァルガーより先に果てるわけにはいかない。
もし、ヴァルガーを満足させる前に、自分だけ果てようものなら、その先には容赦ない仕置きが待っている。
必死に快楽に耐えながら、アリスは、ヴァルガーが満足するポイントを探っていく。

こうして、天真爛漫だったはずの少女は、少しずつ性技術を覚えさせられていく。


「くそ、数だけはやたら多いわね!」

ムーンストナが息を切らしながら剣を振る。
鍛え抜かれたしなやかな動きは、瞬く間に数体の人形兵を切り倒すが、その群れは一向に数を減らす様子がない。
恐れを知らない無機物の兵隊は、連携の取れた動きで、次々に襲い掛かってくる。

「うわあっ、わあ!?」

やたら可愛らしい声を上げながら、木偶人形の攻撃をかわしていくのは獣人の盗賊マリル。
彼女は戦闘専門ではないので、こうした場面では自分の身を守るので精一杯らしい。

「こら、マリル! かわすのならどちらか一方にしろ! ええい、狙いが付け難い!」

魔術師のフランムがいらついた声を上げる。
変幻自在に飛び跳ねるものだから、当たりそうで、援護の魔法を撃つ事もできない。
こうしている間にも人形兵はますます数を増していく。
ただでさえ、前衛が薄くなってしまったのだから、長丁場は不利になる。

「こうなったら、凰珠の力を使うか……!」
「待って、フランムちゃん! あそこ!」

右手に宿る外法の宝具の力を解放しかけたフランムに、パーティリーダーの賢者ウィルカの声が掛かる。
ウィルカが指差すその先には、岩の陰に隠れた人形兵がいた。

「うむ、そうか!」

フランムは念を集中し、得意の火の魔法を放った。
紅蓮の火線が迸り、岩陰に隠れた人形兵を焼く尽くす。
悲鳴のような断末魔の駆動音が上がり、人形兵は足元の岩に影だけを残して消えていった。
その直後、雲霞の如く埋め尽くしていた無機物の兵隊は一斉に、操り糸が切れたようにその場に倒れ伏すのだった。

「わあっ……って、あれ? どうなってるの、一体??」
「どうやら、指揮官を倒したようだね」

ムーンストナがふうっと大きく息をつく。
ブラムスタックアーミーと呼ばれるモンスターは、指揮官の魔力で動く操り人形の集団であり、指揮官を倒す事で魔力の流れが途絶えたため、動力を失い、一斉に停止したのだ。

「けど、よく指揮を取ってる個体が分かったね」
「えへへ、人形一体一体から微かな魔力の流れを感じたの。それで、もしかしたら本隊の人形の位置が分かるかも知れないって、探知してみたら……でも、たまたまだよー」
「リーダーえらい! やっぱり頼りになるよー」

獣人の少女が嬉しそうに跳ねながら駆け寄ってくる。

「うん、ありがとう。これもみんなが頑張ったおかげだよ。それに……」

にっこり笑ったウィルカは、ふと、腰に履いたお守り代わりの短刀に目を落とす。
自分にリーダーとしての勇気を与えてくれるのは、この短刀だ。
いつも明るく、自信に満ち溢れていた――自分に自信を与えてくれた、少女が残したこの――

……待ってて、アリスちゃん。
いつかきっと、助けるから……。


いくら勝気な娘とはいえ、アリスも16歳の少女である。
いっぱしの乙女心は持っていた。
それを傷つけられることほど、辛い事はない。

「嫌あああッ! こんな、やあああッ!! それは許してええッ!!!」

久しぶりの本気の抵抗だったが、腕力勝負で、ヴァルガーに敵うわけがない。
特注のウェイディングドレスを身に着けさせられて、好きでもない男の相手をさせられるのは、どんな調教よりも苦痛だ。

泣きながらドレスに着替えさせられ、玄室に仮設したベッドに投げ出されると、すぐさま巨体に押し倒される。
力づくでドレスの胸元をはだけさせられ、顔を出した乳房を、かぶれそうなくらい臭い口に吸い付かれる。
純白の手袋を履いた手で押し退けようとしても、抵抗にもならない。
スカートの下のショーツも引き下げられ、大切な女の証に、杭のような剛直を叩き込まれた。

「やああッ!! 嫌あああッ!!! フィルー!! 助けてええッ!!!」
「ははっ、残念だったなあ。相手が彼氏じゃなくて! ま、テメーの相手は俺様しかいないんだから、我慢しろや!」

ヴァルガーは嗤いながら、アリスの身体を抱きしめ、泣き叫ぶアリスの唇を貪り食っていく。

「はははッ、これが誓いのキスってやつかあ!!」
「ううう、やああ……も、許してえ……」

アリスは涙ながらに哀願するが、ヴァルガーは容赦なく乙女心を打ち砕いていく。


もう、とっくに心は折れていた。

何回、屈服の言葉を吐いただろうか。
何度となく口にしても、ヴァルガーは決して少女を許そうとしない。
最初に奴隷宣言をした後、本来であれば、性奴隷として見ず知らずの男へ売られるはずだったが、ヴァルガーは裏から手を回し、アリスを自分専用の性奴隷として買い取った。
そして、調教の名目の下、今もかつての恨みを晴らし続けている。

「お願いします。もう、アナタ様に逆らえない事は、良く分かりました……」

アリスは消え入るような声で、哀願する。

「あの時の事は心の底から謝ります。金輪際……二度と、男に歯向かう態度は取りません。誓います。……だから、もう許して。今回だけは、見逃してください……」

だが、ヴァルガーは愉悦の色を浮かべるだけで、決して解放しようとはしなかった。


その夜も、ヴァルガーがねぐらとする監禁玄室には、多くのならず者が集まっていた。

元々、シンパとも言える取り巻きを持っていたヴァルガーだが、アリスの捕獲以降、その人数はとみに膨れ上がっていた。
ギルドのターゲット第一位だった黒騎士少女の捕獲による評判もあるが、少女を自らの性奴隷としたことで、お零れに預かろうとするならず者が集まってきたのだ。
取り巻きの期待をヴァルガーも承知しているので、調教の時間外はもっぱら手下に引き渡し、好きに陵辱させていたのだが、その内、一人が変態的なプレイを提案した。
ブラックナイツとしてのアリスを犯したいと言い出したのだ。

密かに用意したブラックナイツの衣装をアリスに着せ付け、模造刀を握らせての一対一の勝負。
負けたら、ブラックナイツ姿で、対戦したならず者に犯される。
一種のキャットファイトだが、その結果は無惨なものだった。

「うああッ!?」

灼けるように熱い精が、膣の奥に注ぎ込まれた。
硬さを残しているペニスが引き抜かれ、残り汁を黒衣の胸元に振りかけられる。

「うう……」

放心にくれるアリスだが、休む間も与えられない。
熱狂する包囲の輪から、数人のならず者が出てきて、胸や股間をまさぐりながら、脱ぎ捨てられたショーツを履かせていく。
そして、脱力する右手に模造刀を握らせると、次の対戦者と対決させる。

ボルテージを増していくならず者の輪の中に、孤独に立たされる黒騎士少女。
まるで猛獣の檻の中に閉じ込められた、草食動物のようだった。
度重なる陵辱で足腰は立たず、足元もおぼつかない。
手にした模造刀を構えようにも、切っ先が肘から上にあがらない。
身構える事もできないのは、誰の目にも明らかなのに、それを承知で、ならず者達はアリスに次の戦いを強要する。

「さあ、ブラックナイツの天才少女に挑む、次なる対戦者は――」

ならず者の一人が司会者気取りで拳を振るうが、挑む、もなにもない。
これは試合の名を借りた、ただの陵辱劇だ。
怯えの色を見せるアリスの瞳に、大粒の涙が浮かぶ。

どっと湧き立つ包囲の輪から、38人目の挑戦者が現れた。
男は唇の端を歪めて、「俺のこと覚えてるかい?」と聞いてくるが、そんなの覚えてるわけない。
大体、これまで何人の男の相手をさせられたと思ってるんだ。

恐怖心で後ずさるアリスを、下卑た笑いを浮かべながら、獲物を狙う男の目でにじり寄ってくる。
ふらつく足を引っ掛けて、よろめいた時、開始の合図と共に飛び掛ってきたならず者に、模造刀を弾き飛ばされて、そのまま押し倒された。
38回目の敗北だ。

「やあ、待ってもう負けよ!」
「勝負は中出しするまでだったよなあ」

背を床につけた体勢で胸を抱えて丸くなる腰を引き上げて、ならず者は履かせたばかりのショーツを脱がしていく。
脱がすために、履かせたようなものだ。
勝者の権利を得たならず者は、露出した秘部を適当にかき回すと、早速、アリスに敗者の証を叩き込む。

「うあうっ!?」

エラの張った肉の塊を挿入されて、嬌声とも取れる悲鳴を上げながらも、押し返そうと、必死でならず者の胸に手をやるが、その抵抗は余りに非力すぎた。
儚い抵抗には構わず、ならず者は勢いよくでんぐり返ると、アリスを騎乗位の体勢に持ち込んでいく。
そして、黒いスカートに包まれた尻をペチペチ叩き、腰振りを強要した。

「ううっ、あうっ、あうっ、ああっ」

腰を振るたびに、小刻みな嬌声が止まらない。
黒衣の上に羽織った丈の短いマントが、敗残者の背を惨めに叩いていく。

「おいおいおいー、ちったあ手加減してやったらどうなんだー!」
「アリスちゃん、もうメロメロだぜー!」

ヒートアップする周囲の輪から、嘲るようなならず者の野次が飛んでくるが、淫熱に浮かされ出したアリスには反論する余力もない。

「ほらほら、アリスちゃーん、もっと腰激しく振らなきゃ駄目だろー!」

下劣な野次に反応して、逆に、激しく腰を振りたくってしまうほどだ。
度重なる調教の結果、いつしか、ならず者の言葉に反応するようになってしまっていた。
膣内の壁を抉るような肉厚の前に、淫熱に浮かされてしまったアリスは、熱い息を漏らしながら、喘ぐことしかできない。
黒衣に覆われた大き目の胸を、衣服の下から無骨な手で揉みこまれると、それだけで、どうしようもない快感に囚われてしまう。

颯爽としたブラックナイツの衣装を纏いながら、ならず者の上に跨り、腰を振る事しかできない。
偶像破壊にも似た背徳感が、玄室内のボルテージを更に熱く盛り上げていく。

「いい加減、トドメを差してやったらどうなんだー!」
「アリスちゃん、もう限界だって言ってるよー!」

冷やかすように乱れ飛ぶ野次の前にも、何も言い返せない。
実際、ホントに限界だった。
腰を振るので精一杯で、反応する余裕もない。

「へへ、言われなくたって、トドメを差してやるよ……っと!」

黒騎士少女の完全な敗北を悟ったならず者は、自らもアリスの腰を激しく責め立てる。
強烈すぎるストロークに、アリスは切なそうな声を上げて、より激しく腰を振りたってしまう。

「うあっ、あぁん! あぁ!」

敗者として陵辱されているはずなのに、突き上げを受ける度に、段々と、自ら望んで陵辱されているように思えてきてしまう。
膣が激しく擦れ合う粘着音と、背を叩くマントの音が、淫らなハーモニーを奏でる。
リズミカルなピストン連動に乗せられて、身体は熱く、熱く、止まらなくなっていく。

「うおっ!」
「あああぁあッ!!」

ならず者とアリスが、同時に咆哮を上げた。
噴水のように、熱い精のシャワーがアリスの中に降り注いだ。

「はっ、はっ……」

仰向けのならず者が、余韻に浸るアリスの背と頭を掴んで、抱き寄せた。
まだなお熱い息を吐くアリスの唇を、貪るように嬲っていく。
舌を絡められて、零れ落ちる涎が、少女の黒衣の端に流れ落ちていった。

冷やかすように連呼される口笛の中で、少しずつ正気を取り戻したアリスは、自分の行動を思い出して、胸の中が自己嫌悪で一杯になるのだった。




「へへへ、ようやく俺の番かあ」

待ちくたびれた様子で出てきたガタイのいいならず者の前で、アリスはまたも着衣を正され、しっとりと濡れそぼったショーツを履かされる。
あろうことか、男は端から、下半身を露出させていた。
ここまでいくともう、試合でもなんでもない。

こんなの、勝てるわけないよ……。

何度も激しく責め立てられて、足腰はまるっきり立たないし、心だって折れてしまっている。
それなのにならず者は、執拗に、アリスに剣を取らせて戦わせようとする。
ただ犯すより、黒騎士としてのアリスを剣で打ち負かした上で犯す方が、陵辱の価値が高まり、より一層燃え上がるからだ。

もうヤメ……。

口にする気力もないまま、39回目の敗北が確定した。

打ち合うこともなくそのまま押し倒され、ショーツを脱がされて、即座に敗者の証を叩き込まれた。
背中を床に押し付けた姿勢で、しがみ付くように抱擁されて、有無を言わさず膣内を蹂躙される。
完全に制圧された体勢で、顔面まで舐め回されると、とうとうアリスはぐすぐすと泣き出してしまった。

だが、傷心の少女に追い討ちをかけるのは、取り囲むならず者達だけではなかった。

「今、何勝何敗なんだ?」

ニヤニヤ笑いながら、ずっと様子を見ていたヴァルガーが近寄ってきて、わざとらしく聞いてくる。

「うぅ、ひっく……」
「何勝何敗か、ヴァルガーさんが聞いてるだろ!?」

アリスに覆い被さっているならず者が、恫喝的に、アリスの泣き濡れた頬をパチンと引っ叩く。

「さ、39連敗です……」

惨めさで涙が溢れてきた。
39連敗という事は、とりもなおさず、ブラックナイツとして、39回連続で膣内射精されたという事だ。
ただの下っ端のならず者にすら、全く歯が立たない。
ブラックナイツの衣装を纏おうが、ただ一人のならず者も制することができず、好き放題、陵辱される。

己の無力感に苛まれつつ、天才と謳われた黒騎士少女は、39人目の強姦魔にも欲望の種を流し込まれていた。


春だというのに、裸体に吹き付ける外気は、ひんやりと冷たかった。
そこら中から飛んでくる、蔑むような同情の視線と、好奇心が入り混じった卑猥な視線が、身を突き刺すように痛い。

「今日はクルルミク城下にお散歩だ」

ヴァルガーのこの一言で、アリスはクルルミク城下町まで連れてこられた。
勿論、服など着させてもらえるわけがない。
ほとんど裸のいつもの格好で、後ろ手に縛られ、鉄首輪を付けさせられて、ヴァルガーやならず者に引き立てられていく。
黒い長手袋とブーツだけ残された姿は、遠目からでも、黒騎士少女だと知られてしまう。
少女の立場も、この姿を見れば一目瞭然だろう。

集まってくる人だかりの中には、男ばかりではなく、同世代の女性や、小さな子供もいた。
無邪気な子供に指さされて、何か言われているのを見ると、今の自分がどうしようもなく惨めに思えてくる。
性奴隷に堕とされた事は、クルルミク市民にもとっくに知られてしまっている筈だが、それでも、これほど惨めな敗残の姿を晒されるのは、死にそうなほど辛かった。
本当なら、一歩たりとも歩きたくないが、さりげなく半透明のガラスの器具をチラつかされては、足を止める事もできない。
露出徘徊プレイなどされて、嬉しいわけないのに、好奇の視線を浴びると、身体の疼きはますます強くなってくる。
乳首は尖りを増すばかりで、すり合わせた太腿の間からにじみ出てくる愛液が止まらない。

「お、もしかして感じてるのか?」

太腿をすり合わせる動きを目ざとく察知したヴァルガーが、これ見よがしな大声で指摘してくる。
遠巻きの市民の輪から、ざわめきが上がった気がした。

「……めて」

泣きそうな声でアリスは俯いたが、すかさず、脇を囲むならず者が罵声を飛ばしてくる。

「ヴァルガーさんが、感じてるのか、って聞いてんだろ!」
「顔下げてんじゃねえよ!」

ざわめきは強くなる。
完全に、市民に聞かれてしまっている。

「黙ってちゃ分かんねーだろ! 感じてるのか、感じてないのか、どっちなんだ?」
「なんだったら、そこの誰かに確かめてもらってもいいんだぜ!」

やめて、もうやめて……。

だが、ならず者の野次は大きく、威圧的になっていく一方だ。
感じてる、と認めるまで、とても止みそうにない。
とうとう観念して、アリスはこくっと小さく頷いた。

「おおっ、認めました。黒騎士少女は裸で市中引き回しされて、感じているそうであります!」

即座にならず者の一人が、芝居がかった口調で、遠巻きの市民に向かって実況する。
ざわめきはどよめきに変わった。
卑猥な視線が、倍増しになった気がした。

これでも、アリスは他国からの派遣騎士だ。
いかにハイウェイマンズギルドの所業といえ、出向中の外国騎士が裸で市中引き回しされたりすれば、間違いなく国際問題である。
普通なら、即座に警備兵が飛んできて、アリスは救出されるはずだろう。
だが、遠方に見える王宮に立つ旗の色は、戦況悪化日である事を示している。
クルルミク軍の主力を形成する竜騎士のほとんどが戦場に出払ってしまっている現在、城下町に残っているのは、政治問題などとんと疎い下級の警備兵くらいだ。
王宮にさえ近づかなければ、街の警備兵レべル程度、どうとでも言い含められるだろう。
狡猾なヴァルガーなら、それくらいの手は打っていて不思議じゃない。




王宮近辺と冒険者の酒場付近一帯を除いた、街のほとんど全てを引き回された末に連れてこられたのは、街の中心にある噴水広場だった。
外に出た頃はそれほどでもなかった日の高さも、今はすっかり昇っている。
触れ回るように、散々引き回されたため、広場にはいつも以上の人だかりができていた。
好奇心や同情に満ちた様々な視線が、大切な部分を何一つ隠せないで身を竦める小柄な少女に集まっていく。

「お前達も、この娘のことは知ってるだろう?」

鉄首輪に繋がる鎖を引き寄せて、頭を掴んだヴァルガーは、囚われの黒騎士少女の裸体を、市民に突き出すように見せ付けた。
黒騎士アリスといえば、クルルミク市民の間でも名の知れた少女だ。
迷宮内ではハイウェイマンズギルドのならず者相手に立ち回りを繰り広げていたが、ここクルルミク城下町でも、無法なならず者を相手に何度も立ち回っており、その姿は市民も良く知っている。

「ご覧の通り、はねっ返りのじゃじゃ馬娘はこの俺様の手で捕らえられ、めでたく性奴隷になったわけだが……今日は、その調教の成果を、みんなに見せてやろうと思ってなあ」

頭上から降りかかる恐ろしい言葉に、アリスはびくっと肩を縮こませた。
こんな大勢集まった人前で、あんな痴態を晒せというのか。

「やれねえ、とは言わねえよなあ」

嗤いながら、ヴァルガーは薬液をたっぷり注入した浣腸器をチラつかせる。
大の大人でも使わないような特大サイズの浣腸器だ。
逆らうなら市民の前で、脱糞ショーを披露する。そう、いい含められていた。
正気の沙汰と思えないが、この男はやると言ったら必ずやる男だ。
衆人環視の排泄ショーもただの脅しじゃなく、本気でさせるつもりだろう。

後ろ手を解放されたアリスは、観念して跪き、ヴァルガーのズボンのチャックを引き下ろした。
馬のように太い肉棒が、アリスの目の前に突き出される。
何度見ても慣れない極太の剛直に、アリスは顔を引きつらせた。
黒い長手袋越しからも、異様なまでの熱気がムンムン伝わってくる。
灼熱の塊を手に取ったアリスは、ゆっくりと、口に含んでいく。

その瞬間、周囲のどよめきが増した。
背中に突き刺さる無数の視線が堪らなく痛い。

「んぶ……ぶぷ……」

隠微な音が、広場中に鳴り響いた。
決して大きな音ではなかったが、シンと静まり返った観衆の中では、何よりも大きな音として響き渡った。
ごくり、と背後で唾を飲むような音がして、周囲の視線が、裸の黒騎士少女に釘付けになる。
数瞬の静寂の後――これまで以上のざわめきが聞こえてきた。

「うわっ……。本当に咥えてるよ、あの娘」
「随分、手馴れた手つきだよな」
「ヤダぁ、幻滅ぅ。憧れてたのにぃ……」
「ありゃあ、相当仕込まれたと見たぜ。畜生、羨ましいぜ〜」

心無いざわめき声が、黒騎士少女の心を切り刻んでいく。
だが、そんな傷心とは裏腹に、身体は熱く燃え上がり、肉棒を愛撫する手と口の動きは、ますます激しくなってしまう。

「あのうっとりした表情、見ろよ。もう完全に肉棒の虜って感じだな」
「全くだ。よく人前で、あんなマネできるよな。羞恥心って言葉知らねえんじゃねえの?」

違うっ。こんなこと、ホントはしたくないのに……!

だが、そんな内心の叫びも、灼熱の塊を咥える隠微な音の前には、言い訳にすらならなかった。
そして、アリスの口内で、熱いマグマが破裂した。

「うぶ……」

ヴァルガーに頭を押さえられて、灼熱の精を余さず口の中に注ぎ込まれた。
もとより、吐き出すことなど許されていないが、頭を押さえられたままの口内射精は、自分の立場を再認識させられてしまう。
すすり泣きながら、アリスは口の中に溜まった白濁の液を、ゆっくりと飲み干していく。
すると、観衆のどよめきは更に大きくなった。




「さて、お次は腰振りダンスのお披露目だ。俺様のものに跨りな」
「な、まだ!?」

これほどの醜態を晒したというのに、まださせるつもりなのかこの男は。

「嫌だって言うなら、分かってるな?」
「うぅ……」

ならず者の一人がチラつかせる、特大の浣腸器が目に入る。
人前での性交など、それも自分から跨って腰を振るなど、死んでも嫌だった。
だが、衆人環視の排泄プレイと秤に掛けられたら、従わざるをえない。
もしそんなことされたら、本気で二度と立ち直れなくなる。

明らかにボルテージを増してきた観衆の目を横目に、アリスは鼻をすすりながら、仰向けになったヴァルガーの極太の上に、腰を下ろしていく。
すっかり淫らに蕩けてしまった膣が、くちゅり、と隠微な音を立てた。
灼熱の塊を膣内を貫き、膣の最奥に達すると、アリスは悲痛な表情で、だが、ほうっと熱い息を漏らした。

「うわ、マジでやっちゃったよ」
「信じらんねー。ありゃもうただの変態だろ。天才じゃなくて、変態!」
「つかさ、脅されたって、人並みの羞恥心あったら、普通、街中を素っ裸で歩くなんてできねーよな」
「ならず者とドンパチやってたのだって、捕まって調教されたかったからじゃねーの?」
「誰だよ、あの露出狂のマゾ女を、ヒロインみたいに言ってた奴?」

最初の頃は聞こえていたアリスを擁護する声も、今やほとんど聞こえなくなってしまった。
実際の所、観客に紛れて煽っているならず者の声が相当あったのだが、精神的にも追い詰められているアリスには、そこまで気付く余裕はなかった。
中出しされ、ぐたっとするアリスに、更に情け容赦ない言葉は掛けられる。




「お次は、いよいよお待ちかねの脱糞ショーだ」
「――えっ?」

アリスの顔面が蒼白になる。
信じ難い一言だった。
約束は……約束はどこにいったの?
大人しく従えば、それだけはしないって約束――

「約束、なんのことだ? んなもんしらねえよ!」
「そんなッ!?」

無情に言い放ったヴァルガーは、青ざめるアリスの身体を持ち上げる。
そして、取り巻きのならず者に引き渡すと、ならず者達は長手袋やブーツに覆われた手足を地面に押さえつけて、観客にお尻を突き出した、四つん這いの姿勢にさせていく。

名声や評判など、とっくに地に堕ちたようなものだが、排泄シーンまで披露されたら、今度こそ本気でオシマイだ。
ブラックナイツの天才。
颯爽とした黒騎士少女。
ヒロイン然としたスマートなイメージは跡形もなく崩れ去り、代わりに、決して消えない変態のレッテルが貼り付けられる。
それだけは、絶対に嫌だった。

「ヤメて!! お願いッ、それだけはヤメてえッッ!!!」

大観衆の前でお尻を突き出した格好で、ならず者に押さえつけられながら取り乱す少女の姿は、死刑台に乗せられた死刑囚のようだった。
いや、実際、死刑囚同然である。
だが、いくら必死に暴れようが、非力な少女ではどうすることもできない。
無慈悲にも、死刑執行の刃とも言える巨大な浣腸器の先が、ゆっくりと菊門に迫ってくる。

「ヤだぁ、ヤメてぇ……」

アリスは恐怖心でガチガチと歯を鳴らしていた。
冷たく無機質な感触が菊門に押し当てられた時、きゅうっと緊張で、お尻の穴が引き締まった。
また、変態だの、揶揄されたが、反応する暇もない。
ピストンを押す手の動きが止まらない。
ゆっくりと、少しずつ、腸内に薬液が注入されていく。

「やだああッ!!!」

浣腸器を振り払おうと、お尻を振ったが、すぐに伸びてきた手に押さえ込まれて、無駄な抵抗は終ってしまう。
泣き叫ぶ少女の声を尻目に、器具内の薬液は一滴余さず注入され、ついには腸の中に注ぎ込まれてしまった。

ああ、入れられてしまった……。

そんな絶望感が蟠るより先に、下腹部で猛烈な圧迫感が溢れ出した。
薬液が活性化し、腸内の便を急速に解きほぐし始めたのだ。

「くぁあ!?」

脂汗を浮かべて、肛門に力を入れたが、膨れ上がる排泄感は、坂道から転げ落ちる勢いで止まらない。
止めようにも、手足は押さえられて動けないし、地面のひび割れを掴んで必死に堪えるアリスの耳元で、あろうことか、ならず者達は賭け事感覚で、肛門決壊までの時間をネタにするのだ。

「何分持つと思う?」
「5分ってとこだな」
「おいおい、相手はあの黒騎士少女だぜ。いくらなんでも10分は持つだろ」
「10分だぁ? 無理だろ、ケツ穴穿られて感じてるような淫乱じゃ、3分持たねーって」

もうやめて……。

「おら、いい加減に漏らしたらどうなんだ?」

嬲るように、ならず者の一人がアリスの尻をペチンと叩く。
その衝撃で、軟便が漏れかかった。
必死に肛門に力を入れて、最悪の瞬間だけは防いだが、尻を叩くならず者の手は一向に止まらない。
このままじゃ、漏らすのはもう時間の問題だった。

「何でもしますから……排泄だけは、排泄だけは勘弁してください! おトイレ行かせてえ!」

すすり泣くアリスを、ならず者は顔を見合って嗤うだけで、決して解放しようとしない。
突き出したお尻から噴き出す、肛門決壊の瞬間は、刻一刻と迫っていた。

「苦しそうだなあ、アリス。俺様が栓をしてやろうかあ」

眼前の地面に影が落ち、ヴァルガーがサド気に満ちた愉悦の声で、背後から腰を掴んできた。
全身全霊を振り絞って堪えるアリスの菊門に、剛直を押し込んでくる。

「うあうッ!!?」

絶体絶命とも言えるストロークを受けて、アリスが絶叫を上げた。
便意に堪えるアリスを嘲笑うかのように、ヴァルガーは容赦なく、腸内をかき乱す。
本気のストロークでいいようにかき回されては、もう堪えようがない。
すぐに排泄感は、最後の一線を越えてしまった。
すなわち、抜かれた瞬間が最期の瞬間だ。

「おっし、そろそろ抜いてるか!」
「やぁっ、抜かないで! 抜いちゃダメえ!!」

極限まで追い詰められた少女は、破廉恥極まりない言葉を発して取り乱した。
もうなりふり構ってなんかいられない。
肛門決壊を阻止する事しか考えられない。

「なんだ、気持ちいいのかよ?」
「そ、そんなんじゃ……」
「なら、抜くぜ?」
「ああッ、気持ち良いです! 気持ち良いですから、抜かないでええええッ!!!」

羞恥心の欠片もない絶叫が、冷たく澄み渡った青空に響き渡った。

「はっ、ならお言葉に甘えて、もうちょい遊んでやるかあ!」

アリスからトドメの言葉を引き出したヴァルガーは、満悦して、腰を引き上げると、肛門に差し込んだままの体勢で、小さな身体を背中から抱きかかえる。
裸体から、泣き濡れた表情まで、何から何もが、広場中の観衆に曝け出された。
だが、肛門決壊阻止しか頭が回らないアリスは、晒し者の自分に気付く余裕もない。
悲痛な表情で、小刻みに息を吐き出すだけだ。
取り巻きのならず者が、長手袋やブーツで覆われたアリスの手足を支えると、ヴァルガーは怒涛の突き上げを再開した。

「ああーッ!!!」

更に大きな絶叫が、広場にこだました。
とっくに排泄感を抑えられなくなった腸内を、縦横無尽に責め立てられる。

「はぅ、はぅ、はぅ」

激しく振動する視線の中に、遠巻きに見つめる市民の姿が映った。
いずれも釘付けになった目で、少女の痴態を見つめている。

完全に見られてる、あたし。

どれほどの醜態を晒しているか、少女が漠然と認識した時、とうとう最後の死刑執行の言葉が掛けられてしまった。

「抜くぞ、抜くぞ、抜くぞ!」
「やああッ、抜かないで! 抜いちゃダメ! 気持ち良いから! 気持ち良いですから、抜かないで! もっとしてくださいいいいッ!!!」

だが、既に一度引き出された言葉では、もはやヴァルガーを止める事はできなかった。
金髪を振り乱して、破廉恥な言葉を喚きたてる少女をよそに、勢いよく、肛門にした栓が引き抜かれる。


ぶしゃああああああああああああああっ!!!


肛門に力を入れる間もなく、盛大な音を立てて、茶色く濁った排泄物が噴き出した。
堰き止めていた異物を失い、堤防が決壊するような勢いで、肛門から流れていく。
満たされぬ排泄欲から解放されたアリスは、獣声を轟かせた。

今まで味わった事がない、快感の極み。
肛虐の果てにもたらされたそれは、至高とも言える快感だった。

だが、その至高の快感も一瞬の事。
排泄感という名の快感が過ぎ去ると、すぐに頭は冷え、自分がやらかした行状の数々に気付いてしまった。
視界に飛び込んでくる、蔑んだ市民の目。
足元に広がるのは、茶色く濁った排泄物の水溜り。

「うっ、うっ、うっ……」

ならず者に手足を抱えられた揺り籠の中で、アリスは全てが終ってしまった事を悟っていた。


「うそー。どうしてー? ボク、こんなの知らないよー」

素っ頓狂な調子で、舌っ足らずな幼い少女の声が、細まった迷宮の通路にこだまする。

「いや、今のはマリルのせいではないと思うぞ。……多分」

ムーンストナが宥めるように、マリルに言う。
多分、というのは絶対に、というわけではないからだ。
盗賊の腕は非常に優秀なマリルだが、子供のような性格ゆえか、たまに大きな失敗をしてしまう。
それゆえ、絶対にマリルのせいではないとまでは言い切れないのだが、今回はムーンストナの言うとおり、マリルのせいではないだろう。
なにしろ、通路の先に、いきなり鉄格子が下りてきたのだから。
鉄格子のトラップは、パーティを分断するために使われるものだが、これはパーティを分断するというより、単に通路の先を遮断するものだろう。

「でも困ったよねえ……」

この辺は、通路が一本道で、迷路のように入り組んでいる場所だ。
気が滅入るほど折れ曲がっているのに分かれ道がなく、分かれ道に戻るには、かなり時間を喰ってしまう。

「いっそのこと、鉄格子を破壊するというのはどうだ?」
「無駄だよ。このダンジョンの鉄格子は魔法で破壊されないように、耐魔技術が施された特別製だからね」
「そうすると、やっぱり引き返すしかないかなー」

のほほんとウィルカが言いかけた時、鉄格子で遮断された通路の奥から、泣き叫ぶ声が聞こえてきた。




「やああああッ!! もう嫌あああああああッ!!」
「ぎゃあぎゃあ喚くな。往生際が悪い!」

泣いて暴れるアリスを肩に担ぎながら、ヴァルガーが迷宮の角を折れ曲がる。
あんまり喚くものだから、いらついたヴァルガーがぶ厚い手で、数度、尻を引っ叩いたが、一向に泣き止まない。

「俺様はよ、お前があんま悲しそうにしてるもんだから、友達に会わせようとしてやってるんだぜ。こんな慈悲深いご主人様はどこにもいねえぞ」

嘘だ嘘だ。この男にそんな慈悲深い気持ちなんてあるはずない。
辱めるためだけに会わせようとしてるんだ。

心中の叫びを証明するように、ヴァルガーはアリスを石床に投げ出すと、腰を引いて四つん這いにする。

「おら、こっからは自分の手と足で歩けるだろ」

反論の間も与えず、極太の肉棒を突き入れる。

最初からマトモな再会なんかさせる気ないくせに!

石床に突っ伏して、嫌嫌と首を振るアリス。
だが、執拗なまでに突き入れを繰り返されると、どうにもできない。
暴力的な調教の末、身も心もヴァルガーに逆らえなくなってしまっていた。

「うう、ヤメてください……それだけは許してください……」

手膝を動かしながら、哀願するが、ヴァルガーは許すはずもない。
手膝の運動を止めた瞬間に、灼熱の突きが叩き込まれる。

通路の先から、戸惑うようなざわめき声が聞こえてくる。
懐かしいけれど、今は絶対に会いたくない仲間の声。
曲がり角の一歩前で、上げかけた手を止めるが、強烈すぎるストロークの前には、最後の一歩も踏み出すしかなかった。




「アリス……ちゃん……?」

信じられないものを目にしたかのような、衝撃的なウィルカの顔が飛び込んでくる。

「見ないでウィルカ!!」

叫んで顔を突っ伏すが、ヴァルガーに髪を鷲掴みされて、即座に引き上げられた。

「おいおい、折角の感動の再会に、いきなり見ないで、はねえだろ?」
「うぐっ、うう……」

だって、こんな再会なんて……。
こんな惨めで情けない姿で再会なんて……。
仲間にだけは知られなくなかった。

離別の時となった、あの監禁玄室での三人の姿が思い起こされた。
あの頃は仲間として、パーティのリーダーとして見てくれたけれど、こんな今の姿を見たらもう……。

「本当に、アリスなのか……?」

四つん這いで犯されて泣き濡れた顔に、ムーンストナも茫然としていた。
一人、見覚えのない獣人の少女だけは、きょとんとした目で見つめていたが、無垢なだけにその視線は引き裂かれそうなほど痛い。

「貴様、よくもそのような外道な真似を! その薄汚い手を放さぬか!」

怒りに駆られたフランムが、火の魔法を放ったが、鉄格子に刻まれた刻印に弾かれて霧散する。

「外道? よく言うぜ。うちの奴隷がお友達に会いたそうにしてたから、こうして、わざわざ再会の機会を作ってやったってのによ」

両者を隔離するトラップの絶対的な優位性を確認したヴァルガーは、アリスの腰を持ち上げて、かつての仲間達に、極太の肉棒との結合部分をまざまざと見せつける。
その顔には、愉悦が浮かんでいた。

「どうだ。このじゃじゃ馬も、ちょっと見ねえ内に、随分しおらしくなっただろ? これも俺様の調教の成果ってやつだな」

髪を鷲掴みされ、顔を隠すこともできずに慟哭するアリスの頭を二、三度揺さぶって、ヴァルガーはあからさまな主従関係を見せ付ける。

「おいおい、目え背けてんじゃねえよ! 久しぶりの再会だってのに、お友達を見てやらねえのか?」

無惨すぎる少女を見かねて視線を逸らす仲間の姿に、ヴァルガーは少女の乳首の蕾を捻り潰して恫喝した。

「お前からも言ってやったらどうなんだ? 見てください、ってよ」

乳首を摘みながら、アリスにだけ聞こえる低い声で恫喝するヴァルガー。

「なんだったら、またクルルミクに連れ出してやってもいいんだぜ?」
「うぅ……見て、みんな……。目を逸らさないで、お願い……」

完全に堕とされてしまった事を証明するかすれた声に、鉄格子越しのウィルカ達が視線を上げた。
その視線がどこまでも痛い。

……ウィルカ達にも、完全に軽蔑されてる。
どうしようもない、露出狂の変態だって思われて……。

「折角、再会の機会を作ってやったんだ。お友達に、近況報告くらいしてやったらどうなんだ? どんな風に仕込まれて、性の虜になったか、とかよ」

悪魔だ、コイツ。
一体、どこまで辱めたら気が済むの?
この姿を見れば、近況報告なんかなくても、一目瞭然なのに……。
どうあっても、自分の口で言わせたいの。

アリスは下唇を噛んで、瞑目した。

……けど、この男には逆らえない。
いくら考えても、それしか浮かばなかった。
下手に機嫌を損ねたりすれば、もっと酷い仕打ちを架せられる。
どうせ、もう守るべき名誉や名声なんて、一つも残ってないもの……。

「わた――」

――心の糸が切れた。
口にしかけた時、ぶっつりと切れた。

「もうッ、いい加減にしてッ!! もう充分すぎるほど、辱めたでしょ!!」

今まで堪えてきた感情が突然、爆発した。
そこが、アリスという少女が常軌を保てる限界だった。

「ええッ、もうとっくに破滅したわよ!!! アナタのお陰でね!! それでアナタは満足なんでしょ!! だったらもう放っておいてよ!!」

少女は堰を切ったように叫び出す。

「あんな仕打ちをしてッ……もう、名声や評判なんて、何一つ残ってないわ!!! 代わりに残ったのは、アナタ達に無理矢理貼られた変態のレッテルだけ……ッ!!
 ……もう充分でしょ!! もう、アタシの負けよ!! 何度もそう言ってるでしょ!!!
 こんな事になるんだったらッ、初めて会った時に、降参しておけば良かったあッ!! うわあああああああああああんッ!!!!!」

言いたいだけ喚き散らした後は、床に顔を擦り付けて、火が付いたように泣き出してしまった。

「フィルぅ、会いたいよぉ……。会いたいよぉ、フィルぅ……」

子供に返ったように泣きじゃくり、少女は、黒騎士の同僚として親しかった少年の名を言霊のように呟いていた。
おっとりとして少し気弱だったけれど、誠実で、傍にいると心安らぐ少年の顔が、浮かんでは消えて、浮かんでは消えていく。

――帰りたい……。戻りたい……。

後悔と絶望が入り混じった嗚咽と号泣が、永遠とも思える時間、鉄格子を挟んだ迷宮の一角にこだまする。
だが、ヴァルガーはどこまでも非情だった。

「言いたい事は、それだけか?」

冷たく言い放って、ぐすぐすと泣きじゃくるアリスを、鉄格子越しの仲間の前に引きずっていく。
魂の抜け殻のようになった、少女の顔を鉄格子に押し付けて、底冷えするような低い声で言う。

「仲間に、何か言う事はねえのか?」

虚ろにすすり泣くアリスの視線の先には、悲壮なウィルカの顔があった。
哀れむような目で、黒騎士だった少女を見つめていた。
手を伸ばせば、触れられそうな距離なのに、鉄格子に分かたれた二人の距離はどこまでも遠い。
それは、性奴隷に堕とされた者と、そうでない者、二人の立場を分ける決定的な差だった。

「……ウィルカぁ…………助けてよぉ…………」

壊れた玩具のように、かつての仲間に、涙声で呟いていた。

「……助けてよぉ…………助けてぇ…………」

心の糸が完全に途切れた元黒騎士の少女は、力なく、助けを求める言葉を繰り返すだけだった。





……書いてる内に、流石にアリスが可哀想になってきました。
可哀想すぎるぞ、バカタレ!と思われる方もいるでしょう。

キャラの作成者ながらまことに勝手ですが、決して、このストーリーを公式のものとは思わないで下さい。
飽くまで、起こりえたかも知れない一つの可能性と受け取って頂ければと思います(平伏)。




それと、クルルミク城下での例のプレイですが、対外的には表沙汰にならなかったという方向で処理したいなと考えてます。
他国にまで噂が広がる結果になってしまっては、それこそ可哀想ですし、最後には、やはり笑顔を取り戻してあげたいと考えてるので。
普通に考えて国際問題なので、事の次第を知ったクルルミク王宮が慌てて戒厳令に走り、
本国もアリスの心情を慮った団長の強い意向で、ことさら騒ぎたてなかった事で、鎮火する感じで。
冒険者レベルでも、フリーデリケさん辺りの名前をお借りして、入れ違いに帰還したパーティが火消しに一役買ったというフォローを入れたいと考えてます。

今回の話は余りにも救いがなくて、可哀想すぎる事は重々承知しております。
ハッピー……とは言えないかも知れないですが(これだけの仕打ちを受ければ)、最後は、救いのある結末にしようと思います。

読んでくれた方、お気を悪くしたらゴメンナサイ。