『絶望の螺旋 1』  


「ん、ぢゅぷ……んぷ…………んむ……」

精臭が立ちこもる雑多とした一室に、隠微な音がこだまする。
少女は、丸太のような肉棒を頬張りながら、一心に奉仕を続けていた。
跪き、填められた鉄首輪に繋がる鎖を握り締める男の命ずるままに。
涙はとっくに枯れ、かつては意志の強さを感じさせた鳶色の瞳も、輝きを失って久しい。

「ちゅぱ……ちゅぷ…………んむっ、むぅ?」

男の鎖を引く指示で、少女は奉仕を変える。
黒い長手袋に包んだ両の掌で、男の巨大な睾丸を覆い、挟み込むようにあやしながら、小さな舌で亀頭の横えらから根元まで、丁寧に舐めていく。
そして、隅々まで掃除し終えると、また肉棒を両手で握り、ゆっくりと口に含んでいく。
一連の従順な作業を、男は満足そうに眺めていた。

「んむっ、むっ、んむっ」

徐々に、少女の奉仕が激しくなっていく。
男が果てる時が近いのを察したためだ。
男のリズムに合わせて、口淫を激しくしなければならない事を、少女は執拗に教え込まれていた。
叛けば、より酷い仕置きが待っている事も、嫌というほど思い知らされている。
より硬く膨張していく灼熱の塊を、少女は一心不乱にしゃぶり続けた。

苛烈な男のリズムに、意識が飛びそうになる。
だが、意識を飛ばすわけにはいかない。
与えられた指示はまだ残っているのだ。後の仕置きを考えると、今、気をやるわけにはいかない。
でも、これ以上はもう……!
少女の意識に白いスパークが疾った時、口の中で、灼熱の塊が破裂した。

「うぶ……」

少女は零れ落ちそうになる白濁液を、必死に口に含んだ。
本当は吐き出したくて堪らないが、吐き出す事は決して許されない。
そして、許しが得られるまでは、飲み込む事も許されない。
今にも口内の器から溢れ出しそうな大量の精液を、少女は零さないように、飲み込まないように、残された僅かな精神を振り絞って堪え続ける。

「よし、飲んでいいぜ」

ややあって、満足げな男の声が掛かると、少女はホッとして、男の欲望の塊を飲み込んでいく。
だが、それは余りにも惨めだった。
惨めすぎる今の自分の姿に、天才と謳われた元黒騎士の少女の瞳から、枯れた筈の涙が零れ落ちる。

どうして……こんな事に…………。

囚われの身となったあの時の出来事が、繰り返し、繰り返し、頭に思い浮かぶ。
それは、慢心が招いた種と言って良かった。

何故、あの時、もっと慎重に行動できなかったのか。
己の浅慮さが口惜しい。
いくら後悔してもし足りない。
だが、今になってどれだけ後悔しようが、もう遅い。
繰り返し、繰り返し、リプレイした所で、現実は変わることはないのだから……。




「もう、危ないよ、アリスちゃん。一人で突出してー」
「平気平気。こんな力だけの馬鹿、何人掛かってきたって敵じゃないから! それより捕まってる娘の救出よろしく!」

天真爛漫な黒騎士少女アリスは、無鉄砲な行動を諌めるウィルカの言葉を取り合わず、手近のならず者に突っ込んでいく。

「この糞アマ! 舐めやがって、俺らギルドの恐ろしさを思い知らせてやる!」
「はいはいはい。いくらでも思い知らせて頂戴。アタシを捕らえられたらね」

ならず者は息巻いて、襲い掛かってくるが、アリスは挑発的な言動で受け流して、無駄のない太刀捌きで斬り捨てる。

「このやらァー!」
「引きずり倒してやる!」
「だから無駄だってば。アンタ達の動き、のろすぎ!」

興奮して、数人のならず者が猛然と仕掛けてくるが、アリスは余裕の表情を崩さない。
僅かな時間差をあっさり見切り、最小限の動きで切り返す。
小柄な体躯だが、その動きは稲妻のように鋭く、素早い。

「捕らえられた娘達は、あちらの奥に監禁されているようだぞ!」
「オッケー。じゃあフランム、ムーンストナ、そっちは任せたわ。アタシはこいつら足止めしとくから。……ほら、ウィルカも二人のサポートに回って! 人質なんか取られたら厄介よ!」
「わ、分かったわ。でもアリスちゃん、気をつけて!」

心配そうな声を上げるウィルカを尻目に、アリスはならず者の集団を単身迎え撃つ。

「さ、このアタシが相手よ! どっからでも掛かってきなさい!」

それは、龍神の迷宮に潜って、一週間が経過した日の事だった。
手持ちの食料も尽きかけて、今日一日の探索で引き返すことを決めていた矢先、探索役のウィルカがハイウェイマンズギルドの監禁玄室を発見したのがきっかけだった。
堅実派のウィルカは一度撤退し、装備を整えるか、他のパーティとの共同戦線を提案したのだが、パーティのリーダーであるアリスは強行突入を主張し、立ち回りが始まった。
そこは今までの監禁玄室より規模が大きく、何百人ものならず者が待ち受けていたが、黒騎士アリスも、他の仲間の三人、賢者ウィルカ、魔術師フランム、ハーフエルフの魔法戦士ムーンストナも、百戦錬磨のつわものである。
不意を付いた強襲で、圧倒的な戦力差を引っ繰り返し、監禁されていた冒険者達もどうにか救い出せそうだった。

――しかし、そこに大きな落とし穴があった。

「くっ、くそう、やっぱりヴァルガーさんの言った通りだ。まるで歯が立たねえ!」
「アレを使うしかねえのか!」

「ふふん、そんなんじゃ、このアタシは倒せないよ!」

まるで舞台上のヒロインか何かのように立ち回るアリス。水を得た魚のように、異国風の片刃剣『カタナ』を振るい、頭一つ分以上高い力自慢の男達を圧倒していく。
死屍累々――という表現はおかしいが、そこら中に、急所を外されたならず者が転がっていた。
疎らになってきた包囲網が、黒衣の少女に気圧されて、じりじりと広がっていく。

「どったの、もう掛かってこないわけ? それじゃあ、今度はこっちから行くわよ!」

仲間の救出作業を横目で確認したアリスが、一気に強行突破を図ろうと、足に力を入れたその時。
全身を強烈なスパークが貫いた。

「――かぁッ!?」

体中の細胞が沸騰する感覚がした。
よろめきかけた身体を支えようと、踏ん張りを入れようとした瞬間、今度は足元の床がパカっと大きく口を開いた。
ギルドスペシャル――ハイウェイマンズギルド自慢のトラップだ。
高圧の電流が走った後、仕掛けられた落とし穴が開き、監禁玄室に落とされるトラップだが、それが何故か、監禁玄室の中に仕掛けられていたのだ。




「ったたぁ……」

一つ下の階層に落とされたアリスは、尻餅をついた身体を起こそうとしたが、足首に鈍い痛みが走る。
どうやら、落下の衝撃で足首を捻ったらしい。
おまけに電流の衝撃で、全身が思うように動かない。
仲間とはぐれた上、全身はズタボロ。
うかつだった。
自信家で勝気なアリスも、この状況には、多少の危機感を覚えずにいられない。

「ウィルカ達との合流は難しいし、やっぱ、一人で戻るしかないかあ……」

元々、今日の探索で街に引き上げる予定だった。
ウィルカ達がアリスを捜索するにしろ、一旦引き上げるにしろ、最悪、街まで戻れば合流できるはずだ。
そう思い、節々が痛む膝に力を入れて、立ち上がった時、

「!?」

通路の奥から、集団の気配を感じた。
アリスが落とされた場所は丁度袋小路の突き当たりになる小部屋で、入り口も出口も一つしかなかった。
そのたった一つの通路の奥から、複数の気配が近づいてきたのだ。

他のパーティの人かな? それとも……。

アリスは固唾を呑んだ。
迷宮を探索する他の冒険者なら、救出してもらえるかもしれない。悪くても、放置されるだけだ。
だが、もしもハイウェイマンズギルドの手の者だったら……。
流石にこの状況で、多数のならず者を相手にするのは厳しい。
アリスは緊張した面持ちで、カタナを握る手に力を込めた。

大丈夫、数はそう多くない……。

心臓がバクンバクンと鳴りながらも、近づいてくる足音の数を、冷静に数えた。

現れたのは、大柄でガッシリとした筋肉質の男だった。右手には棍棒を握っており、右肩の大きな切り傷の跡が目に付く。
続いて、五人の男がやってきた。いずれも薄汚れた風体で、顔には嫌らしい笑みを浮かべていた。
どうみても、ギルドのならず者だ。

「よう、久しぶりだなあ、アリス」

リーダー格と思しき筋肉質の巨漢が、いかにも親しげな――だが嫌味ったらしい声で話しかけてきた。
見覚えがあるような、ないような。
ならず者の類は大概が力任せの馬鹿なので、顔などいちいち覚えていない。だが、2メートルを超そうかという巨躯となると、嫌でも印象に残る。
前に対峙したことあったっけ。

「久しぶりって言われても困るわね。アタシは力馬鹿のならず者に知り合いなんかいないけど?」

不利な状況でも、強気に振舞わずには入られないのは、アリスの性分だ。
思わず挑発的な言葉が入ってしまう。

目の前の大男はなかなか強い。まともなら敵じゃないけど、この状況だと、ちょっと手強いかもしれない。
後の五人は……大したことないわね。まあなんとかなるわ。
強がりながらも、頭の中では素早く計算を働かせる。

「けっ、相変わらず糞生意気な小娘だ。まっ、これからは一生忘れられなくなるだろうから、いいけどよ!」

げははっと笑う筋肉質の巨漢に追従して、取り巻きの男達が下卑た笑い声を上げる。
ホント、嫌な奴らだ。
アリスは力任せに無法を行なうならず者が一番嫌いだった。

「一応、自己紹介しといてやるぜ。俺様はヴァルガー。メルニス山で付けられたこの傷を見てもらえりゃあ、ちったぁ思い出してもらえるかな」
「メルニス山? ……ああ、思い出した。なんってったか……名前は忘れたけど、とにかくダサい名前の盗賊団の親玉だったっけ? んで、何の用? まさか、リベンジなんて言わないよねー。前にあれだけボコボコにやられといて」

挑発に乗って怒ってくれれば儲けもの。動きが単純になって読み易くなる。
だが、ヴァルガーは意外と冷静だった。

「まあリベンジっちゃあ、リベンジだな。あん時はひでえ目にあったからよぉ。今度は俺様がお礼する番だ」
「あっそ。やれるもんなら、やってみなさいよ」

アリスは捻って痛む右足のつま先を一、二度、力を入れてみる。

大丈夫。充分、疾れるわ。なら――

アリスは思いっ切り、迷宮の床を蹴った。

――先手必勝!

この負傷で長期戦は、はっきり言って不利。
なら、あのヴァルガーとかいう親玉を速攻で倒して、その勢いに乗じて一気に蹴散らす。
それは、アリスがもっとも得意とする強襲だった。
取り巻きのならず者には目をくれず、一直線にヴァルガーめがけて疾る。
だが、強襲に動揺すると思ったヴァルガーは、意外と動じない。余裕の笑みを崩さず、棍棒を握る手を持ち上げる。

でも、あの重量なら、連撃は防ぎきれないわよね!
――予定変更。奇襲の一太刀から、速攻の連撃に切り替える!

素早く再計算し、ヴァルガーの懐に一足飛び。大きく床を蹴ろうとした刹那、足元で、カチリと小さな音がした。

――しまっ、弩の罠!?

反射的に飛び退いたが、それは致命的な隙だった。
逆に間合いを詰めてきたヴァルガーは、棍棒を横薙ぎに、アリスの下腹部めがけて打ち放っていた。

「うぐっ!?」

容赦ない一撃に、胃液が逆流しそうになり、衝撃で、背中から倒れこむ。
次の瞬間、超重量が伸し掛かってきた。
ヴァルガーが馬乗りに、アリスを押し倒した。
アリスはとっさにカタナを握る手に力を込めたが、柄の感触が無い。今の衝撃で落としてしまったらしい。

「こんのぉ……」

黒い長手袋に包まれた両手を、ヴァルガーの胸にやって押し退けようとしたが、パワーが違いすぎる。
構わず伸びてきた骨太な手が、アリスの黒衣を掴み、一気に引き裂いた。

「ッ!!?」

体躯の割に大きめで、形のいい白い乳房が露になった。
ヴァルガーはその乳房を、力任せに揉みしだく。

「なあっ、ヤメッ……!!」

アリスは腕を掴んで引き剥がそうとしたが、そんなものは何の抵抗にもならない。そのまま、力任せに伸し掛かってくる体重に押し潰された。
そして、ヴァルガーのざらついた舌が、アリスの頬を変態的に舐め回した。

「やあぁッ!?」

圧倒的な腕力の前には抗えない。
それから先は、一方的な陵辱だった。




がしっと腰を掴まれ、尻を高く引き上げられる。

「おらっ、いつまでぐったりしてんだ!」

バシンッ、と尻を引っぱたく、ぶ厚い手の平の衝撃と、高圧的な男の声。

「この格好でアジトに連行するからな。さっさと身体起こせや」

そしてまた、バシンと腫れあがった尻を一叩き。
混沌とした意識を無理矢理呼び戻された黒騎士の少女が取らされていたのは、うつ伏せの体勢のまま、お尻だけ上げさせられた、いわゆるドッグスタイルだ。
そして背後では、下半身を露出させたヴァルガーが極太のペニスで持ち上げたアリスの尻をペチペチと叩いている。

「――え? やっ、やああッ!!!」

我に返り、自分が取らされている体勢に気付いたアリスは、暴れようとしたが、両腕もならず者に押さえられていて抵抗できない。

「ったく、ぎゃあぎゃあ五月蝿え……っとそらっ!」

処女膜を引き裂いた極太のペニスが、一気に膣内に突き入れられる。

「うああ、ああッ!!?」

あまりに太く熱い衝撃に、アリスは悲鳴を上げた。
ほんの小一時間前にも貫かれたばかりだが、小柄な体躯に、ヴァルガーの極太ペニスはキツすぎた。
灼熱の衝撃に、アリスの意識は飛びそうになる。
だが、ヴァルガーは杭のような肉塊を、容赦なく、アリスの中にズンズンと突き入れていく。

「歩くッ! 歩くわ!! 歩くからヤメてえッ!!!」

余りにも強烈すぎるストロークに、アリスは髪を振り乱して絶叫した。




「うぅ……」

リズミカルな挿入は続いていた。
ならず者に取り囲まれ、手足を床について、バックから犯されながら、迷宮内を連行される。
堪らなく惨めな姿だった。
手袋越しの手の平と、膝に伝わる石床の冷たさが、否応無く、自分の立場を思い知らされる。
黒い長手袋とブーツだけ残された格好は、全裸より淫靡で、惨めさを強調していた。

だが、膣に突き入れられる灼熱の圧迫感の前には、何も抵抗できない。
一突きされる度に、抵抗する気力を奪われ、思考も奪われる。
手足を休めようものなら、リズミカルな挿入は、即座に、容赦ない挿入に変えられてしまう。
本気でなす術がなくて、どうしようもなく惨めだったが、それでも大人しく屈辱のドッグスタイルの連行を受け入れざるを得ない。

こ、こんな姿、誰かに見られたら……。

淫熱に浮かされた思考に、最悪の想像が浮かんだ。
もしこんな姿を誰かに見られようものなら、言い訳の余地も無く、変態の烙印を押されてしまうに違いない。
今まで築きあげてきた、天才黒騎士としての名声など、即座に崩れ落ちてしまうだろう。
破滅のシナリオを思い、恐怖心で、少女黒騎士の膣がきゅっと引き締まる。

「お、なんだ? うっとりしてんのか」
「なっ、そんなわけッあ!」
「言い訳はいいんだぜ。俺様のチンポをぐいぐい締め付けてんのはバレてんだからよ!」

膣の収縮を目ざとく感じ取ったヴァルガーに反論するが、その声は強烈な挿入の悲鳴にかき消されてしまう。

「マジすっか、ヴァルガーさん?」
「おうよ、マジよマジ。おかげで俺様自慢のチンポが喰い千切られそうだぜ」
「こんな状況で感じてられんなんて、変態だな!」
「噂の黒騎士様が嬲られて感じるマゾ娘だったとは、知らなかったぜ」

好き勝手に囃し立てる雑言の前に、だが、何も言い返せない。
その代わり、心無い言葉の一つ一つに反応するように、膣がきゅうきゅう締まってしまう。

「っと、そろそろ出すぜ」
「うああッ、うあッ、うああッ!!?」

突然再開された強烈なストロークに、悲鳴を上げたアリスは、床に胸を押し付けて、手足の動きを止めた。
ベチベチと、淫靡な粘着音が腰を打つ。
そして、次の瞬間、大量の精がアリスの膣の最奥を散らしていく。

「あう……」

ペニスを引き抜かれ、肢体が崩れるアリス。
だが、ならず者達はぐったりとしたアリスを休ませない。
強制的に腰を上げさせられ、すぐ次のペニスが突き入れられた。

「うああッ!?」

ヴァルガーのものほどではないが、かなりの太さと硬さを持ったペニスが、アリスの膣を蹂躙する。

「おらっ、とっとと歩け!」

ならず者の高圧的な声が、頭上に降りかかり、アリスの腰を激しく打つ。

「ああッ、あッ!」

アリスには、ならず者の激しすぎるバック攻めを止めるため、床に付いた手と膝を動かすしかなかった。




代わる代わる交代でバックを犯されても、まだ、ならず者のアジトにはたどり着かなかった。
既に一回りが終わり、ヴァルガーの二週目が始まっていた。

それぞれの太い肉棒に膣を抉り続けられたアリスには、もう涙を浮かべて、熱い息を漏らすしかなかった。
抵抗する気力など丸っきり残っていないのに、なおバックから犯されたまま、四つん這いで迷宮を歩かされる。
身体中が淫熱に浮かされながらも、手の平と膝だけはヒンヤリと冷たかった。

「?」

人並み外れた感覚を持ったアリスが最初に気付いた。
膣内を責められながらも、察知する感覚はまだ誰よりも優れていた。

――音? なにかの…………床を叩くような……足、音――

「やあっ、誰か来る! 隠れさせて!」

音の正体に気付いたアリスが、狂乱して暴れだす。
だが、すぐにならず者達の手に取り押さえられてしまう。
いくら暴れても、力比べではならず者に勝てない。

「おらっ、なに暴れてんだ!」
「やああっ、やああああッ!」

ヴァルガーが本気のストロークを叩き込むが、アリスは絶叫して首を振る。
こんな姿を見られたら、本気で身の破滅だ。

「逃げたりしないから、お願い、隠れさせて!」

だが、ヴァルガーがそんな事を許すはずもない。
そうこうしている内に、足跡はどんどん迫ってきた。
間違いなく、こっちに向かってきている。

通路のすぐ先だ。目の前の角を曲がったすぐ先の――来る、来ちゃう!

アリスは長手袋に包まれた手で頭を抱え、顔を床に押し付けた。
顔だけは絶対に見られたくない!

「よう」
「なんだ、ヴァルガーかよ」

それは、ならず者の仲間だったようだ。頭を抱えて震えるアリスの頭上で、複数の新しい男の声が聞こえてきた。

「はっ、お前またそんな事やってんのか。好きだねえ、お前も」
「それで壊された女がどれだけいると思ってんだ。いい加減にしとかねえと、ギルドボさんのお目玉喰らっちまうぜ」
「へへ、そういうなって。生意気なメスガキを屈服させるにゃ、こいつが一番なんだ」
「お、なんだよ、随分上機嫌じゃねえか」
「まあな。ようやく狙ってた例の獲物を捕らえたからよ。鼻歌でも歌いてえ気分だぜ」

と、灼熱の突きを入れられ、小さく嬌声を上げさせられる。

「マジかよ? おい見せてみろよ」

トーンが上がったならず者の言葉に、アリスは引きつった。
突っ伏した体勢のままで、嫌嫌と頭を振った。
だが、そんな事でヴァルガーが許してくれるはずない。
すぐに髪を鷲掴みされ、顔を上げさせられてしまう。

「やあッ、いやああああッ!!」

顔を振りたくって隠そうとしても、髪を根元から掴まれていて、振りたくれない。
完全に、涙に腫れた無様な素顔を、ならず者達の前に晒されてしまった。

「うおっ、本当にアリスかよ」
「よく捕らえられたなあ。俺、前こいつにやられた事あるぜ」

ならず者達が興奮気味の眼差しで、アリスの顔をまじまじと見つめて口々に言う。

「で、やっぱ処女だったのかよ?」
「おうよ、バッチリ俺様がぶち抜いてやったぜ!」

と、ヴァルガーはアリスの太ももを掴むと、アリスの身体を持ち上げた。
ヴァルガーに刺し貫かれたままの秘唇が露にされた。
アリスはとっさに両手で隠そうとしたが、取り巻きのならず者に抑えられて、それすら許してもらえない。

「み、見ないで……」

涙声で呟いたが、哀願は聞き届けられず、ならず者の視線は極太のヴァルガーとの結合部分に集まっていく。
嗚咽するアリスを嬲るように、ヴァルガーがアリスの白い乳房の蕾を摘みあげた。

「へへっ、それにしてもいい様だな」
「処女奪ってやった時は、もっといい様だったぜ」
「誰がアンタみたいなのにー、とか抵抗しまくってたクセによ、ひん剥かれて、押さえ付けられて、ヴァルガーさんの肉棒を押し当てられた途端、狂乱して、お願い、それだけは許してえーっとか泣き叫ぶんだからよ」
「そうそう。……ま、そのままヴァルガーさんに処女ぶち抜かれたけどな。俺らも相伴に預からせてもらったし、最高だったぜ!」
「はは、そりゃあいい。ホント、いい様だ。ちくしょー、俺も是非生で見たかったぜ!」

ヴァルガーの取り巻きのならず者達が、嬉々として口々に、アリスの処女喪失シーンを説明していく。

「おおい、おい、俺らにも犯らせろよ!」
「悪いな。今はこいつの調教中だ。じゃじゃ馬娘は、最初の躾が肝心だからなぁ?」

乳首を弄びつつ、耳の穴を舐め穿りながら、耳元で、ヴァルガーは低く哂った。
『調教』という言葉が、アリスの心の中に重く響き渡る。
このままじゃ、本気で調教されてしまいそうだよ……。

「ちっ、しゃあねえなあ。その代わり、後でぜってー犯らせろよな!」
「わーってるよ。例の部屋に連れてったら、犯らせてやるよ」
「なら、早速振れ回っとくとするか」
「じゃあな、アリスちゃん。また後でな。た〜っぷり可愛がってやるから、楽しみにしとけよ?」

ならず者の一人がこれ見よがしに、臭い息を吐きながら、顔面を近づけてきた。
いつものアリスだったら、間違いなく、唾の一つを吐きつけていたところだろう。
だが、今のアリスにはそれができず、それどころか、ほんの数時間前まで立ち回りを繰り広げていた活発な少女とは思えないほど、気弱に、視線を逸らす事しかできなかった。
そんなアリスの様子を見て、ヴァルガー流の調教の成果が上がっている事を察したならず者は笑いながら、立ち去っていった。

そしてまたすぐ、四つん這いの体勢を取らされ、馬車馬に鞭を入れるように、膣内に肉棒を突き入れられて、恥辱の道を歩まされていく。




その夜の監禁玄室は、異常なまでのボルテージに包まれていた。
ターゲットランキング(オナペットランキングともいう)第1位のアリスを犯せる、と聞いて、200人以上のならず者が集まったためだ。
恥辱のドッグスタイルで玄室に連れてこられたアリスは、ならず者の冷やかしを受けながら、玄室の中央まで歩かされ、ならず者の群れの中に投げ込まれた。

「やああっ! やああああッ! まっ、待って……がっ!?」

少女の肉体に群がる、ペニス、ペニス、ペニス。
肉食動物が得物に群がるように、興奮したならず者のペニスが次々と迫ってくる。

両穴をぶち抜かれ、両手にも握らされ、口に突っ込まれ、密かな自慢の胸も使われた。
一人の少女を取り囲むならず者の輪は、二重三重どころか、玄室に収まりきらないほどだった。

「やあああッ、嫌あああああッ!!!」

いくら悲痛な叫びを上げようが、誰も手を休めない。
精を吐き出すたびに、次のペニスが穴の中に押し込まれ、手の平に出されるたびに、別のペニスを握らされる。

「一度、こいつを思いっ切り嬲ってやりたかったんだよな」
「天才だかなんだかしらねえが、調子こきやがって。大の大人をなんだと思ってやがる」
「俺なんか、いくらでも思い知らせて頂戴。アタシを捕らえられたらだけど。とか鼻で笑われたぜ」
「なら、お望みどおり、思い知らせてやろうじゃねえか」

「違うッ! そんなつもりじゃッ!!」

「はっ、どうせ、こうやって輪わされたかっただけだろ」
「違いねえ、違いねえ!」

乳首の責めに悲鳴を上げ、罵声を浴びせられながら、全身に精のシャワーが飛ばされる。

「うあああッ! ああああッ!!」
「大人を嘗めた罰だ」
「ちったあ反省しやがれ」

両穴にねじ込まれた肉棒が同時に、精を放つ。

「むうう、うああッ、あああッ、ああーッ!!」

背後からの突き入れに、金髪を振り乱して、悶え狂った。
自慢の胸が、次々と伸びる無骨な手で乱暴に揉みしだかれるが、全身の汗を飛ばすしかできない。
段々と、絶叫は鼻に掛かるような嬌声に変わっていったが、激しすぎる喘ぎ声は、悲鳴と変わりなかった。

だが、宴はまだ終らない。




やがて、異様な熱狂は収まっていったが、まだ十数人のならず者がアリスを取り囲んでいた。
その内の一人が、アリスに覆い被さっていた。

「お、気がついたのか、アリスちゃん」

虚ろに目を開いたアリスに気付いた眼前の男がにいっと笑い、やにに汚れた歯を見せた。
膣の奥に、熱い感触を感じる。
アリスは、今もまだ肉棒に制圧されていた。
小刻みに続く振動の中で、アリスは不意に――黒騎士の仲間として、共に任務をこなした少年の事を思い出した。

もし将来、自分の膣内を制圧する人間が現れるとしたら、それはその少年――フィルだろうと、漠然と思っていた。
少なくとも、こんな男であるはずはなかった。

だが、現実に、アリスを制圧しているのは、目の前の男だった。
膣内だけに飽き足らず、男は唇まで貪り食う。
生臭い臭いと共に、ナメクジのような気色悪い感触が、アリスの口の中を這いずり回った。

――一つだけ、僕と約束してくれ。

別れの夜のフィルの言葉が、思い返された。

――約束してくれ、必ず……無事に戻るって。

赤面して口ごもるアリスの唇に、ゆっくりとフィルの唇が迫る。

――えっ……と、その……。

唇と唇が触れ合う直前、だが、アリスは唇の間に人差し指を差し入れたのだ。

――あったり前でしょ。このアタシを誰だと思ってんのよ。

無性に、悔しくなってきた。
なんで、あんな意地を張ってしまったんだろう。
意地なんか張らず、キスしていれば、初キスだけでもフィルに捧げられたのに。

もっと、素直になればよかった。
自分の気持ちに素直になっていれば、処女だって、フィルに捧げることができたかもしれない。
ううん、フィルの忠告を聞いていれば、こんな事にもならなかった。
思うたびに、涙が溢れて止まらなくなってくる。

だが、いくら後悔しても、現実は、何一つとしてフィルに捧げられず、大切なものは全て、目の前の卑劣な男達の手に奪われてしまった。
その一人が、また、アリスの中に精を吐き出した。

「くっ、うぅぅ」

悔し涙が頬を伝う。
だが、いくら後悔しようと、過ぎ去った時は戻ってこない。

「よし、今度は俺様が可愛がってやるか」

玄室の片隅に陣取り、ずっと陵辱の宴を見守っていた巨躯が立ち上がり、すすり泣きするアリスの上に伸し掛かってきた。

「ヴァル、ガー……!」
「おうおう、ようやく俺様の名前を覚えたか。いい気分だぜへへっ」

押し込まれた肉棒の太さは、前の男の比ではなかった。
絶叫が、玄室に響き渡る。

それはヴァルガーの本気のストロークだった。
極太のピストン運動が、残るアリスの意識を削り取っていく。

「うあああッ!? ああッ、あんッ! ああッ!」

何かにしがみつかずにはいられず、堪らず、アリスはヴァルガーの巨躯にしがみついた。

「あんッ、ああッ!!」

突かれる度に、悲鳴に近い嬌声が上がった。
小柄な少女が巨躯の男に抱きつく様は、まるで恋人のようであったが、断じて恋人のそれではなかった。

「はははっ、どうだ! いい気分だろ、ああっ、おいッ!?」
「はあ、やあッ、ヤメえッ!!」
「ヤメてじゃねえだろ! ヤメないで、だろがああ!?」
「ヤメえッ……ヤメないでッ!!!!」

全身を貫く灼熱の衝撃の前に、自分が何を言っているか、もう分からなかった。

「よく言った! なら、もっとくれてやるぜ!」
「ああッ!! うあああッ!! ああッ、あん!!」

アリスを完全に堕とした事を悟ったヴァルガーは、更にそのストロークを増していった。
何も……考えられない。
理性の限界は、とっくに超えていた。

「うああああああッ!!!?」

灼熱のマグマが膣内噴火した瞬間、アリスの脳裏にこれまでにないスパークが疾った。
意識が……白濁に飲まれていく…………。

「うへへ、これからは俺様がペットとして可愛がってやるからな」
「ぁあ……はぃ…………」

それが、黒騎士アリスの奴隷宣言だった。