『if〜アカリ狩り〜』  


「天 が 呼 ぶ! 地 が 呼 ぶ!
 悪を倒せと人が呼ぶ!!
 その名も正義忍者戦隊『ジャスティスファイブ』、ご期待通り、大参上ーッ!!」

鮮やかな忍び装束に身を包んだ少女が『プランバーズエリア』を行き交う巨大な配管の上に仁王立ちして、大音声。
眼下では、力尽きた女冒険者達を陵辱しようとしていた配管工達が、どこからともなく轟いた声にうろたえて、周囲を見回している。



「アカリさん、アカリさん。なぜ私達はこのような所から現れなければならないのでしょうか……?」
「そりゃあ、正義の味方たる者、登場シーンには人一倍気を使わなきゃ!」

魔法戦士マウリー・レイアの小声の突っ込みに、決めのポーズを崩さずニコッと笑って答える忍者戦隊『ジャスティスファイブ』の自称リーダーのアカリ。
感受性豊かな眼差しが忍者という隠密職に似合わず、とても愛らしい。

「はあ、全くこの娘は……」

無邪気というか屈託ない笑顔に、神官戦士のレヴィエルが横手で呆れたように小さくため息を付いた。
戦斧を片手に、立派な鎧を纏った一見堅物そうな戦士だが、一緒になって高い配管の上に立っているところを見ると、案外ノリはいいのかもしれない。

「……あ、気付いたみたい」

ずっと眼下の様子を見ていた爆乳ボンテージの軽戦士リオが、地上の様子の変化を感じ取って、三人に声を掛ける。
見ると、配管工達はいきり立った様子で、配管上の少女達を指差していた。
無理もない。
"怪盗"と"傭兵殺し"、錚々たる異名を持つ女冒険者二人を捕縛し、陵辱しようとしていた矢先に、『忍者戦隊』を名乗る訳の分からぬ(しかも馬鹿っぽい)娘達の横槍が入ったのだ。
でっぷり太ったユーモラスな外見が、ゆでだこのように顔を真っ赤にして叫んでいる。

「こらー、降りてこんかー。阿呆女どもー!」
「ア ホ 女ぁ? くうー、よりにもよってこんな可憐な乙女を掴まえて、なんていい草よ。……許せない!」
「……あ、こら、お待ちなさい!」

マウリー・レイアが止める間もなく、子供の喧嘩レベルの挑発にプチっと切れたアカリは配管の上から、悪漢の巣窟に自ら飛び込んでいってしまった。

「とうっ!」

元気な掛け声と共に、高らかと跳躍。
腰のリボンが蝶のように舞って、小柄な身体が空中で軽やかに三回転。
猫のように音もなく、幼いくの一は迷宮の床に降り立った。

鮮やかな忍び装束の胸に燦然と輝くのは、猫の顔をしたキュートなバッジ。
正義感と好奇心に包まれた瞳は、少女の人なりの表れか。

「忍者戦隊、アカリレッド、参上!!」
「おいおいおい、マジで降りてきちゃったぜ。どうするよ、おい」
「やっぱ阿呆だな。この状況、分かってんのかあ?」

突拍子もないダイビングに、一瞬呆気に取られた配管工達だったが、すぐに爆笑に変わった。
なにしろ、数十人の強姦魔の真っ只中に飛び込んできたのだ。
自殺行為でなければ、状況認識能力が欠けている馬鹿だ。

だが、目の前の忍者戦隊少女が取った行動は、決して自殺行為でも、状況認識を欠いた馬鹿な行動でもない。
確固たる確信を持った行動だ。
その証拠に、圧倒的に体格で勝る大人たちに囲まれていながら、アカリは大胆不敵に笑っていた。

「アナタ達も運がないわよね。でも、正義の忍者戦隊が見つけた以上、悪は決して見逃さない!
 さ、掛かってきなさい。このアカリレッドが天に代わって悪を絶つ!!!」

背中の忍者刀を抜き放ち、包囲のど真ん中で、挑発的としか言いようがない決めポーズ。

「へっ、へへ……馬鹿にしやがって。こんな生意気なガキは初めてだぜ。キツ〜〜い、お仕置きくれてやんねえとな」
「おおともよ、兄貴。裸にひん剥いて、突っ込んでヒイヒイ言わせてやろうぜ!」

たかだが15〜6の小娘の、大人を馬鹿にしてるとしか思えない態度に、配管工達は一様にこめかみを引く付かせ、忍者戦隊少女に襲い掛かった。
人並み外れた跳躍力を生かした、全方向からの立体的な同時波状攻撃だ。
太っちょな集団の割に、意外なほど連携が取れている。

一流の冒険者でも防ぎきることが困難な攻撃を、だが、アカリは飽くまで余裕な態度を崩さない。
忍者刀を逆手に持ち直し、迷宮の床に向かって打ち下ろし――

「……忍法、火走りの術!!」

刃と床の摩擦で発生した火花が火種となって、業火が巻き起こった。
素人目には分かりにくいが、いつの間にか、迷宮の足元には黒色火薬が蜘蛛の巣状に、空中には油を染み込ませた鋼糸が、導火線のように幾重にも張り巡らされていた。

「ぎゃあああああっちいいいいいいい!!!!!」

瞬く間に炎に包まれ、絶叫を上げてのた打ち回る配管工A、B、C、D……以下略。

「く、くそう! よくも兄貴を〜!!」

運良く難を逃れた配管工の何人かはいきり立って飛びかかったが、アカリは余裕の表情で、腰に下げた投げクナイで迎撃し、手にした忍者刀で斬り返した。

「ま、ざっとこんなもんよね。……ブルー!!」
「……了解」

忍者刀を背中の鞘に収め、見上げたアカリの掛け声で、配管上のレヴィエルが気だるそうに戦斧を振るった。
すると配管に亀裂が入り、噴出した生活用水が火だるまの配管工に降り注ぎ、迷宮に移った炎ごと鎮火していく。

「お次はイエロー!!」
「オーケー――って、誰がイエローですのッ!!?」

そして時期を見計らって、マウリー・レイアが凍結魔法で配管の亀裂を応急処置すると、後に残ったのはかすり傷一つない忍者戦隊少女と、陵辱寸前の二人の女冒険者、そして床に転がる配管工達だった。
驚くべき事に、配管工達は誰一人死んでいない。
皆急所を外されており、火だるまになった者達も大火傷こそ負っているが、一様に一命を取り留めている。

真の正義とは誰の命も奪うことなく、その道を全うするもの――それが、忍者戦隊を夢見る少女の信念だ。

「さーて、この人達連れて、早いとこ、街に戻りましょう。ブルー、イエロー、ブラック!」
「って、だから誰がイエローですのー!!?」
「私、ピンクがいいなあ……」

些細なことで笑い合うアカリとその仲間達。
だが、アカリはまだ知る由もなかった。
この一件が、後に、最悪とも言える結末に繋がっていく事に――





「ええい! このっ、しつっこいーッ!!」
「げあっ!?」

渾身の力でクナイを投げ付け、迫り来る戦闘員――もとい、ならず者の右肘を貫く。
続けざま、斬り掛かるならず者BとC。

「甘いって言ってるでしょ!!」

左手の忍者刀で打ち払いつつ、一閃。
腰のリボンを華麗に翻して、もう一太刀。
それぞれのわき腹を、致命傷にならない深さで傷つけ、戦力を奪う。

「はっ、はあ……。これでやっと一段落」

アカリは小刻みに息をつき、肩を撫で下ろした。
だが、状況は最悪だ。
地底湖が広がる階層を探索中だったはずが、所構わず無節操に設置されていた拡散テレポーターのせいで、仲間と逸れて一人旅。
おまけに深い階層に飛ばされてしまったらしく、ギルドアラームを踏んだかのようにならず者が次から次へと湧いてくる。
手持ちの忍具はほとんど使い果たしてしまい、手投げクナイも底を着き始めていた。

「いたぞー! あそこだー!!」
「絶対逃がすんじゃねえぞー!」
「うわっ、ヤバ……もう!?」

休む間もなく、またならず者の集団が押し寄せてきた。
まるで、ハイウェイマンズギルドのターゲットランキングに指定された勢いだ。
正義の忍者戦隊としては、悪の手先に屈して逃げるようなマネはプライドが許さないが、人海戦術で山狩りのように執拗に責め立てられてはジリ貧だ。
忍者一族の頭領の孫娘として、忍術だけでなく戦術も仕込まれているため、夢見る年頃といえど、最低限の状況判断と分別はできた。

「くう……。こうなったら、仕方ない。三十六計、逃げるが勝ちよ!!」

悔しかろうが、勝ち目がない時は逃げる他ない。
逃げてこそ、いずれ果たせる正義がある。
煙玉の最後の一個を、ならず者が押し寄せてくる通路に向かって投げ付けると、アカリは踵を返して奥の通路に走っていった。




T字路に差し掛かった時、頭上に一筋の影が入った。

――殺気ッ!!?

くの一として積んだ修練の成果が、寸でのところで我が身を救った。
とっさに横に飛び退いた直後、轟音と衝撃が叩き付けられた。
条件反射的に、バク転を繰り返して間合いを広げるアカリ。

「ちっ、勘のいいメスガキだ。一発でカタ付きゃあ、手っ取り早かったんだがよ!」

2メートルはあろうかという巨躯の男が舌打ちしながら、身の丈近いバスターソードを振り上げた。

「けどあの女、弾切れのようですぜ。チャンスじゃねえですか、ヴァルガーさん?」
「んなこたあ、分かってんだよ! テメェは黙ってな!」

ヴァルガーと呼ばれた男は取り巻きらしい男に一喝すると、ぶ厚い唇の端を歪めて、舐め回すような視線でアカリを見る。
おぞましいほどねちっこい視線に、アカリはえも言えぬ悪寒を感じた。
それはくの一として修練を積んだ肉体が発する警鐘か、それとも、女としての身が感じる危機感か。

だが、間の悪い事に、アカリが飛び退いた通路の先は、袋小路になっている小部屋で行き止まりだった。
もたもたしているとならず者の集団に追いつかれてしまうが、逃げ道はヴァルガーが立ち塞がる通路の奥しかない。

「……そこを退きなさいよ! 退かないと正義の裁きを喰らわすよ!」

心の奥底から込み上げて仕方ない焦燥の念を必死に抑えながら、戦隊少女は眼前の筋肉質の巨漢に毅然と叱咤するが、ヴァルガーは平然と受け流した。

「ソイツはできねえなあ。裁きとやらは喰らいたくねえが、狙った獲物を前にしてみすみす見逃すような真似もできねえ!
 なんせ苦労して大量にテレポーター仕込んで、ようやくここまで追い詰めたんだからな!」
「テレポーター……って、まさか、全部アナタの仕業!?」
「ん? まあな。最近、ギルドボの奴はセニティ王女様にご執心でな。
 トラップ係に言って、忍者戦隊とか抜かす舐めたメスガキの行く先々に、特定個人だけ転送させるテレポーターを設置させたのさ!」

……信じられない。
まさか、あの無節操なまでの拡散テレポーターの山が、あたしを隔離する為だけに設置されたものだったなんて。
それも、こんな初対面の男が――なんで!!?

「何故かって? へへ、そりゃ決まってるだろ。テメぇを犯りたいからさ!!!
 糞生意気なじゃじゃ馬を一匹飼ってるんだが、そろそろ新しいペットが欲しくなってきてな。冒険者リストから一番生意気そうなテメぇに目を付けたってわけよ!!」

舌なめずりしながら語るヴァルガーの言葉に、アカリは愕然とした。
これじゃほとんどストーカー同然じゃない。
それも相当悪質な、変質狂の類だ。
最悪最低の卑劣漢に付け狙われた事を知って、アカリは思わず眩暈がした。

忍者戦隊として世に知られる活躍をすれば、当然、この手の手合いが現れるのは想像に難くないのだが、ワイズマン騒動から連なる今回の事件は少女にとってデビュー戦だ。
まして、正義を夢見る幼いくの一には、そんな"現実"は想像できるはずもなかった。

「……でも、という事は、ここでアナタを倒しちゃえば、この状況を打破出来るってことよね!」

だが、物事を常に前向きに考えられるのは、アカリの長所である。
そして、目の前のヴァルガーを倒してしまえばいいのだと分かると、急にアカリの中の忍者戦隊としての功名心が首をもたげてきた。
すなわち、悪の大幹部(?)ヴァルガーを倒す大チャンス、と。

うん、大丈夫。
見た感じ、ただの力自慢だもん。
武器は残り少ないけど、こんな相手なんかに負けるはずない。

くの一少女は自分にそう言い聞かせて、心の中に蟠る正体不明の恐怖心を振り払う。

「へ、生意気な小娘だな。まあ、その勝気な面を無様な泣きっ面に変えてやるのが一番楽しいんだがよっ!」
「あっそ。やれるもんなら、やってみなさいよ!」

吼えるヴァルガーに、幼い眼差しに正義の炎を宿らせるアカリ。
右腕にガントレットを填めた筋肉の塊が、猛然と忍者戦隊少女に襲い掛かる。
残る武器は忍者刀一本と、クナイ三本。それと――

アカリは腰に下げたクナイを掴み取ると、猛然と押し寄せる巨漢に向かって投げ付けた。
ヴァルガーは鼻で笑い飛ばし、ガントレットで弾き飛ばす。

――でも、そこが狙い目!
不敵に笑うと、"残る"一本のクナイを投げ付けた。
最初の二投は囮。
弾き飛ばして油断した隙を狙うのが本命――

アカリの余裕の表情が崩れたのは、次の瞬間だった。

「――えッ!?」

見透かされたように、ガントレットの対角線上で死角に隠れていたはずのクナイが叩き落される。
動揺で、戦隊少女の身体が一瞬硬直する。
それが致命的だった。

「あぐッ!!!?」

慌てて抜いた忍者刀を弾き飛ばされ、遠心力で振りぬいたバスターソードの腹を鳩尾に受けて、吹き飛ばされた。
背中を叩き付ける衝撃。
圧倒的なパワーが、小柄な少女の身体を壁際に吹き飛ばした。

頭の中が目を回したようにクラクラする。
どうやら脳震盪を起こしてしまったらしい。

「へ、勝負あったようだな」

大振りのバスターソードを床に刺して、ヴァルガーが勝ち誇った足取りで近寄ってくる。
睨みつけてやりたいが、顔が上がらない。

遠くの方から無数の足音が聞こえてきた。
アカリを追っていたならず者達が追いついたのだ。

「お、もう捕えたんですか? ヴァルガーさん」
「流石はヴァルガーさんだ。黒騎士娘の時といい、やっぱ頼りになりますや!」
「まあな。不殺がカッコいいとか抜かす舐めたメスガキだから、狙いを読むのは楽勝だったぜ!」

十人余りの声がヴァルガーを取り巻いて、壁の前でうずくまるアカリに近づいてきた。

「よう」

と、前髪を掴まれて、顔を上げさせられた。
目の前には、嫌味なほど勝ち誇ったヴァルガーの顔があった。
好色な笑みが、着衣が乱れた胸元を覗き込んでいる。

ま、まだよ……。
ヴァルガーの邪な考えを理解して、肩がゾクッと震えたが、まだ終わりじゃない。
アカリは左手を握り締めて、その感触を確認した。

大丈夫、まだ動く……。
くの一たるもの、切り札は常に隠し持っている。
髪の中と左の具足の裏に、隠し武器を潜ませているのだ。
油断したその背中に素早く叩き込んでやれば……。

それこそ奥の手だったが、目の前のヴァルガーという大幹部さえどうにかできれば、動揺に乗じて強行突破は不可能じゃない。
アカリは固唾を呑んだ。

チャンスは一度きり。タイミングが勝負。
引き倒そうと腕が掛かる、その瞬間を狙わないと……。
もう一度、位置を確認するように、アカリは暗器を忍ばせた左足の具足に目を落とした。

薄ら笑いを浮かべるヴァルガーの筋肉に包まれた腕がゆっくりと伸びてきた。
もう少し……あと、ほんの少し……。
慎重にタイミングを推し量り、アカリは髪の中の暗器を――

「っと、そこだな!」
「ぇ?」

ヴァルガーの手はアカリの左腕を掴んでいた。

「髪の中に隠してるってわけか。ま、忍者戦隊とか抜かしてるから、何か隠してるとは思ったがな」

と、ヴァルガーは反対の手でアカリの髪の中をまさぐると、潜ませていた暗器を取り出して投げ捨てた。

「ぁ……」

本当に最後だった切り札を見透かされて、アカリの顔面が蒼白になる。

「それから、ここにも隠してるよなあ?」

動揺を隠せないアカリを余所に、ヴァルガーは左足の具足に隠していた暗器まで抜き取った。
僅かに落とした目の動きも、しっかり見張られていたらしい。

「う、嘘……」

今度こそ、アカリの自信が完全に崩れ去った。

「これで、もう隠してるモンはねえよなあ?」
「ちっ、違ッ……まだある! まだ隠してる!!」

取り乱した口調でいくら言い繕っても無駄だった。
ハッタリはあっさり見破られ、鮮やかな忍び装束に手が掛けられる。
そして――
しなやかな身体を包む衣装は、力任せに引き裂かれた。

「やあああああッ!!?」

忍者戦隊少女の悲鳴が迷宮内にこだました――


引き裂かれた薄布が千切れ飛ぶ。
着込んでいた黒いシャツも乱暴に脱ぎ捨てられ、幼いくの一は泣き叫んだ。

「嫌あッ! やめなさいよ!! まだホントに隠してるんだからッ!!」
「だったらさっさと使いやいいだろが!! んなモンが本当にあんならなッ!!!」

拙いハッタリにしがみ付く少女を押し倒して、ヴァルガーが吼える。
取り巻きのならず者が、具足と指先を露出させた手袋だけを残した裸となったアカリの手足を押さえ付けると、ヴァルガーは初心な少女の目の前でズボンを脱ぎ捨て、極太の肉棒を露出させる。

「ひっ!?」

余りにもグロテスクで、凶悪的なほどに太い凶器を目の当たりにしたアカリが小さく悲鳴を上げる。

「ヴァルガーさん、ヴァルガーさん」
「ああん?」
「女にはもう一つ隠し場所があるの、忘れてやせんか。もしかして、そこに何か隠してるとか?」
「おっ? おおー、そうだなあ。確かに、男と違って、女にはもう一つ隠し場所があったなよあ。俺様とした事がうっかりしてたぜ!」

ペシャリと頭を叩き、ヴァルガーはわざとらしく言う。
熟練のくの一なら、女の隠し場所に暗器を忍ばせる離れ業もありえようが、感受性が強い思春期の少女にそんな発想があるはずない事はヴァルガーも百も承知だ。
だが、少女を追い詰めるために「チェックしとかなきゃなあ!」と白々しく言うと、剛直を蜜口にあてがった。

「隠してない!! もう何も隠してないから!! 認めるから!! お願いッ、止めてええええッ!!!!」

あっさり白状するが、ヴァルガーの腰の動きは止まらない。
ズブズブと秘密の花園を掻き分けて、灼熱の塊が入り込んでいく。
剛直の先が処女膜に突き当たった。

「嫌だあああああああああああああああッ!!!!!!」

忍者戦隊少女の絶叫と同時に、破瓜の血が花を咲かせた。

禍々しいほどの灼熱の圧迫感が、膣の内側を突き破らんばかりに制圧する。
生まれて初めて感じる獣圧に、アカリの心は絶望に苛まれる。
いつか将来、好きな人ができて、その人だけが制圧すると思っていたもっとも大切な場所を、理不尽な暴力が蹂躙していくのだ。
戦い敗れた"正義"がどのように踏み躙られるか、アカリは何も知らなかった。

「おらっ、どうだ? これが初めての体験って奴だぜ?」

分かりきっている事を、ハッキリ認識させるように耳元で囁く。

「もう止めて……」
「見ろっつってんだよ! 俺様と繋がってんのを、しっかり確認しろ!!」

頬を引っ叩き、前髪を掴んで頭を引っ張って、アカリとヴァルガーの結合部分を見せ付ける。
太すぎる剛直が抉るように、幼い花弁を貫いてねじ込まれていた。
誰が見ても、アカリの処女は完全に奪われている。

「やだぁ、こんなの、やだよぉ……!」

泣きじゃくるアカリを押し倒し、体重をかけた。
極太の肉棒が更に奥に押し込まれ、少女の発育途上の膣が軋みをあげる。
数分前まで、忍者戦隊を名乗り、不敵な眼差しを湛えていた少女の姿はもうどこにもない。

「うっ、出るぞ!!」

ヴァルガーの宣言に、くの一は狂乱して暴れるが、ならず者に両腕を抑えられている為、どうする事もできない。
いかに身のこなしで勝っていようと、腕力勝負に持ち込まれてはどうしようもなかった。

生暖かいドロっとした感触が、膣の奥に大量に注ぎ込まれていくのを感じた。
子種、赤ちゃんの素――いくつもの言葉と共に、幼い身に、妊娠の恐怖が駆け巡る。
幼いとはいえ、アカリはもう充分、子を宿すことが出来る年頃だった。

一滴余さず注ぎ込んだのに、ヴァルガーはまだ放さない。
剛直で、子宮の奥を制圧し続けていた。
犯したままのマウントポジションで、ゆっくりと顔を近づけてくる。

「やぁっ……」

アカリは恐怖心を感じて、顔を横に向けた。唇を守るように、口をぎゅっと引き締める。

「お、その反応、キスはまだだな?」

愉悦の浮かんだヴァルガーの声が降り掛かる。

「おらっ、ヴァルガーさんがキスはまだかって聞いてるだろッ!?」

取り巻きのならず者達は、高圧的にアカリに詰問する。
アカリは閉じた目に涙を滲ませながら、小さく頷いた。

「まだした事ないです……。だから、それだけは勘弁してください……」
「ほー、そうかそうか。ならアカリちゃんには選択肢をくれてやるかあ!」

サド心剥き出しの声が、絶望と恐怖に震える少女に投げ掛けられた。

「時に俺様は女をアジトに連行するのに、四つん這いの態勢で、代わる代わる犯しながら引き立てるのが趣味なんだが……。
 一つ、ファーストキスを自ら捧げて、バックで犯しながらの連行は無しにするか。
 一つ、ファーストキスを無理矢理奪われて、アジトまでバックで犯されながら連行されるか。
 ……さあ、どっちを選ぶ?」

最悪の二択だった。
こんな卑劣な男に自らファーストキスを捧げるなんて死んでも嫌だったが、迷宮を犯されながら四つん這いで歩かされるなんて、想像するだけで絶望的だ。
それも、どっちにしてもファーストキス喪失は確定で。

でも、いくら機転を働かせても、この状態から脱出する術なんて有り得なかった。
武器も忍具も全て失い、裸で押し倒されながら犯されて、両腕まで抑え付けられた状態で、十人以上のならず者が取り囲んでいる。
選択の余地なんか無かった。嫌でもどちらか選ぶしか無かった。

「……捧げるから……」

アカリは観念して呟いた。

「ファーストキス、捧げるから、四つん這いで連行だけは止めて……」
「よし、なら俺様の頭の後ろに両手を回しな」

ならず者に抑えられていた両腕を解放されたアカリは、震えながらヴァルガーの頭の後ろに両手を回した。
大木のように太い首が圧倒的な力の差を感じさせられる。
降伏の証とばかりに、具足を付けた両足も腰の後ろに絡めさせられた。

「言っとくが、許可があるまで勝手に放しやがったら、容赦なく四つん這いで連行させるからな」

そう脅し付けて、くの一少女にファーストキスを強要する。
本気の脅しである事は疑いようがない。
アカリはすすり泣きながら、ゆっくりと、目の前の強姦魔の厚い唇に、自らの唇を押し当てた。

息の詰まるような臭い息が鼻腔を貫いた。
最低のファーストキス。
押し付けた唇を掻き分けて、熱い舌が入り込んできて、口の中をナメクジのようにのた打ち回る。
舌先を絡め、歯の裏側を残らず舐め、涎を流し込んで、口内全てを蹂躙する。

今すぐ唇を離したい衝動に駆られたが、ここで離してしまったら、何のためにしたくもないファーストキスを捧げたのか分からなくなる。
少女は堪えて、目の前の男に唇を押し付け続けた。

卑劣な事に、ヴァルガーは自分から頭を抑えたりは一切していない。
飽くまで、アカリが自分からキスをしているという形式を崩さない。
せめて、自分の後頭部を押さえつけてくれていたなら、無理矢理キスされていると自分に言い聞かせる事もできるのに。
奪われているという言い訳を微塵も許さぬまま、悠々、大切な乙女のファーストキスを貪り食っている。

あろう事か、その状態で、腰まで動かしてきた。
膣内に押し込んだままのペニスを挿入し始めたのだ。
抉り取られるような乱暴な突き立てに、アカリは思わず唇を離しそうになる。
辛うじて唇の先が触れたまま残った。
薄皮一枚の状態から、再び熱い口付けを交わす。
余りにも惨めな姿に、涙が零れてきた。

ヴァルガーの突き立ては容赦ない。
杭のように太いペニスを絶え間なく叩き込まれて、女の防御反応から、少女の膣は淫らな水音を叩くようになってしまった。
膨らみかけの胸もまさぐられ、尖った乳首の先を指先で摘まれる。
もう頭の中が真っ白で、意識が飛びそうだ。

でも、気をやるわけにはいかない。
ふとした拍子で唇を放してしまわないように、とうとうアカリは自分の舌をヴァルガーの口の中に押し込んだ。
のた打ち回るヴァルガーの舌を、自らの舌で絡め取った。
もうそれしか意識を保つ術が無い。
ねちっこすぎる口内責めと、膣内挿入で、幼い精神は限界だった。

早く終って……!!
そう祈りながら、首の後ろに回した両腕に力を入れ、卑劣すぎる強姦魔にしがみ付いた。

口内と膣内で奏でられるハーモニー。
いつ果てるともない淫らな宴に、スパークが飛んだ。

「んむううううううううッ!!!?」

くぐもった絶叫が口の中で上がり、熱い奔流を叩き付けられる。
最初の一発より遥かに大量の熱い精。
決定的な制圧感が、幼いくの一の全身を蝕んだ。


そして、少女は屈強のならず者に力強く唇を押し当てたまま、意識を白濁の海に飛ばすのだった。


「おらっ、とっとと起きろ!」

頬を叩く強い衝撃。

戦隊少女は再び、悪夢に引き戻された。
続けざま、十人以上のならず者に犯されて、再び気をやった後に連れて来られたのは『プランパーズエリア』。配管工の巣窟だった。

でっぷり太った配管工の集団が視界を埋め尽くしている。
一様に浮かんでいるのは、嫌らしい笑みと狂気の光。
何を考えているのかは一目瞭然だ。

「本当に俺達が犯っちゃっていいんですか、ヴァルガーさん」
「ああ、勿論だぜ。このメスガキに恨みがあんだろ?」

横目で少女を見下ろし、唇の端を歪めるヴァルガー。

「ひっ、嫌!!?」

アカリは立ち上がって、逃げ出そうとしたが、足首に力が入らずに倒れ込んだ。
意識を失っている間に、足の健を切られたのだ。
具足を付けた両足首に包帯が巻かれ、止血が施されていた。

「嫌、止めて、許して!」

立ち上がる事もできず、恐怖に震えるしかない戦隊少女に、配管工の無数の手が伸びてくる。
だんご鼻にひげを蓄えたユーモラスな姿が、悪魔か何かのようだった。

「奴隷宣言するまで、一時も休ませるんじゃねえぞ!」

そう言い置いて、ヴァルガーは配管工の巣窟を後にしていく。
後に残るのは、強姦魔と化した配管工の嫌らしい顔、顔、顔、顔、顔。

「嫌ああああああああああああッ!!!!!」

少女の悲鳴が人気のない配管工の巣窟に反響した。




「おい、アカリ、ケツ穴こっち向けろや!」
「兄貴も好きだね〜、ケツ穴責め!」
「抜かせ。ル○ジ、お前がサンドイッチ好きだからやってんじゃねえか」

嗤いながら、配管工の毒々しい肉棒が菊門を掻き分けて、強引にお尻の穴に入り込んでくる。
でっぷり太った二段腹が幼い少女の胸と背中を挟み込んで、ボディプレスで締め付ける。
二つの穴を同時に制圧されて、破裂しそうな圧迫感で、アカリは苦痛の声を上げた。

「あッ……やあっ…………あぁ…………」

両手にも、肉棒の熱い感触。
ほんの半日前まで感じた事もなかったグロテスクな肉の感触が、全身を容赦なく責め立てている。

「おらっ、さっさとしゃぶらんか!!」

配管工の一人が異臭を発する肉の塊を口の中に押し込んだ。

「もがっ、うぶぅ、うぅーッ!!?」

腐った生ゴミのような臭いに鼻が詰まり、反射的に歯を立てるアカリ。

「ってーッ!! なにしやがんだ、このアマッ!!!」

配管工は怒り狂って、アカリの頬を力任せに引っ叩いた。

「おいおい、アカリちゃん、怯えてるぜ。もっと優しくしてやれよ」
「はっ、次に歯ぁ立てやがったら、その歯全部引っこ抜くからなッ!!! いいなッ!!?」
「は、はい……。もう歯を立てたりしないから、許してぇ……」

高圧的に脅されたアカリは泣きながら、配管工の腐れペニスを奉仕する。

「気ィつけろよ? 忍者ってのは、装備をなくした時に真価を発揮するらしいからな。油断してたらグサ、だぜ?」

別の配管工が、アカリにペニスを握らせて擦りながら茶化すが、勿論、そんな真価を発揮する余地などどこにも残っていない。
足の健を切られてしまっては、卓越した運動能力のほとんどは何の用もなさない。
力比べでは絶対に勝てないのに、真価を発揮もくそもない。
アカリはもう、嬲られるだけの精処理道具だった。

肉を叩く音がお尻の前と後ろで高らかと鳴り、やがてアカリの両穴に、配管工の欲望の塊が吐き出された。
そして、空いた穴に新しいペニスが即座に押し寄せる。

「やっ、もうヤメッ……もがっ!?」
「誰が勝手に吐き出して言いっつった、コラ!!!」

反論の隙も与えられず、口という口、穴という穴、手の平から、髪の先まで、あらゆる場所に、休む間もなく、配管工のペニスが押し寄せてくる。

「しかし、まさかこいつを本当に犯せるとは思わなかったぜ」
「全く、ヴァルガー様様だ」
「忍者戦隊だかなんだかしらねえが、散々俺らをコケにしやがって。こういう糞生意気なガキには、大人がキツ〜〜いお仕置きをくれてやんねえとなッ!」

いつぞやの女冒険者救出の一件を言っているのだろう。
だが、それは冒険者を襲っていた配管工達に非がある事であって、ただの逆恨みだ。
まして、少女は例え悪人であっても、決して命を奪う事がないように配慮していた。

しかし、そんな理屈、狂気と化した集団に通用するはずもない。
配管工達にとって、目の前のくの一の戦隊少女は
『正義を気取って調子付いた、不殺とか、舐めた事を口にする糞生意気なメスガキ』でしかないのだから。

それはある意味では、自業自得であったが、正義を志す夢見る少女にとっては、余りにも残酷すぎる結末だった。

「……するからッ!! 奴隷宣言するからッ!! あたし、アナタ達の……ただの性奴隷だって認めるから、もう許してよぉッ!!!」

射精され、口が解放された瞬間に、精液を零しながらそう叫んだが、無論、奴隷宣言したところで、許されるはずない。

「へへ、兄貴、奴隷宣言したぜ。どうするよ?」
「決まってるだろ。アカリちゃん性奴隷化記念、乱交パーティーだ!」
「……そんなッ!!?」
「さすが、長兄、そう来なくっちゃ!」

四つん這いの態勢で、腰を引き上げられた元忍者戦隊、性奴隷アカリ。
手と頭を抑え付けられた状態で、配管工の長兄格が背後から、元くの一のお尻を撫で回す。
複数人の腕力で上半身を抑え付けられては、足の健を切られた少女はどうする事もできない。

「フォーホイールプランバーだー!!」

雄叫びを上げながら、配管工の長兄は、無防備に晒し出されたアカリの秘処地に黒ずんだ剛直を叩き込んだ。
四つん這いのドッグスタイルが配管工の四輪車両を見立てられてか、配管工達のボルテージは最高潮に達している。

「やだぁッ!! こんなの、嫌だよぉーッ!!!」
「おらっ、どうした!? さっさと走らんかあ!!」

狂乱気味で、髪を振り乱す元戦隊のくの一に激しく突き入れ、取り囲む配管の集団は恫喝するように罵声を浴びせながら、目の前の床に鉄工具を叩き付ける。
ここまでいくと、正義忍者戦隊を名乗っていた少女に対する私刑だ。

「歩くから、許してよぉー!!」

発狂するように叫んで、アカリは手と膝を動かし始めた。

惨めな姿に、囃し立てるような冷やかしの声が方々から降り掛かる。
喧々轟々の罵声が乱れ飛ぶ中、アカリは配管工の性奴隷として、他に人が来る事のないエリアを、馬車馬のように代わる代わる犯されながら引き回されていく。
その精神は既に破綻し始めていた。

なんで……こんな事に…………。
なんで、こんな目に遭わなくちゃいけないの!?

二度と歩く事も、立つ事も、できない身。
男達の玩具にされるしかない、己の人生。
夢と希望に満ち溢れていた少女の心は、光の差すことのない暗闇に飲まれていった。




翌日、少女の一生の飼い主となる最悪の強姦魔が訪れるまで、狂乱の宴は延々と続くのだった――


アカリ陵辱SS、相変わらずな展開ですが、どうにか完成しました。

最初は流れ良く書けると安易に考えていたのですが、
一風変わったノリの娘なので、陵辱展開とのギャップが大きくて、悪戦苦闘でした。
シーンの繋がりをあーでもない、こーでもないと推敲して作り直し、
色んな事を学ばせていただいた作品でした。

余り自信はないですが、自然なテンポで読めるようでしたら、幸いです。

色々と意見を下さったチャットの皆様、
鬼畜な展開にキャラを使わせてくださったK6様、
そして読んでくださった方々、どうも有り難うございます。