虎追い笛

by MORIGUMA

ピヨオオオオオ
甲高い音が、夜風を突き抜けていく。
虎追い笛だ。
赤いキセルが、ゆっくりと紫煙をくゆらす。
金髪と見まごうような、明るい茶の髪が、ほっそりとした指で、かきあげられる。
形のよい耳が、セクシーな肌色を見せ、妖艶な美貌が、ぼんやりと窓の外を見た。
身体にぴったりとしたセクシーなドレスが、夜の一部を切り取ったように、きらめく。
ウェインはふけていく夜に、思いをはせた。
 
『あの夜も、こんな虎追い笛が鳴る夜だったわね・・。』



「うっ、うっ、ぐううっ、いっ、いや・・あっ!」
澱みの町とよばれ、悪徳と退廃と耽美が絡まりあったそこは、この声の途切れる事が無い。
 
か弱い、女性の、うめきと、叫び。
 
特に『マーベラス・メイガス』と呼ばれる、悪夢のごとき祭典のさなかは。
 
メイガスにて、全ての敗者は、例外なくその場で、人間とも怪物ともつかぬ者たちに凌辱され、輪姦される。
 衆人環視の中、打ち倒された身体を容赦なく剥ぎ尽し、敗北者の屈辱と悲哀を、失神するまで身体に教えさせる。
 
だが、身を焼かれる屈辱も、全てを絶望で失う暴行も、本当の恐怖ではない。
本当の恐怖は、その後にやってくる。

敗北者は、激しい暴行の後、ゴミのように追い出される。
どのように力にあふれ、魔力を研ぎ澄ませた参加者も、その時は力の大半を失っている。
そして、それを知り尽くしている町の住人や、情報通たち。
そこには、もはや人間としての世界は無い。


気丈に立ち上がろうとした少女に、容赦ない平手打ちがかまされ、打ちふしたところを、手際よく縛り上げていく。
「へへへ、こいつのマジック・ハンマーだけは、要注意だからな。」
「なんでえ、まるでガキじゃねえか、毛もねえし、こんなんでものになるのかヨ。」

「あっ、いやあっ、やあああっ!」
いきなり指を突っ込まれ、強引にかき回される。
「おめえは、何にもしらねえな。こんなんがたまんねえって変態オヤジも多いんだよ。おう、こいつは中々上物だ。」

激しく収縮を繰り返し、指を締上げる感触に、ぐふぐふと笑いながら、太った大男が、何度もうなずく。
「いっ、いや、やめ・・、あがああっ!」
この男も、そういう性癖があるのだろう。
凶悪にいきり立たせたペニスを、強引にグリエルの下腹に打ち込んだ。
愛らしい金髪が逆立ち、まだ痛みと恐怖の残る感触が、きしみを上げて、身体の中を驀進してくる。
「あぐっ!、あぐっ!、ひっ、いたっ、痛いっ!、いやっ、いやああっ!」
助けを求め、潤んだ青い目をめぐらせども、回りは無情に笑い、にやつく、薄汚い男たちばかり。
引きずり込まれた路地の、ほんの向こうが通りだというのに、誰一人のぞく事すらしない。

少し太めの、真っ白い脚を、強引に広げ、担ぎ上げる。
股関節がはずれそうに痛み、それを上回る苦痛が、下腹いっぱいに押し込まれていく。
「痛い・・、やあ・・!、痛い・・い・・。」
教会の穏やかな日々が、姉のミリッツアの笑顔が、ぐるぐると渦巻く。
こすれる石の痛みが、身体中を傷つけていく。
それ以上に、突き入れられる痛みが、思い出にひび割れを入れ、突き砕いていく。

「へへへ、出てるとこも出てるし、中々いいぜ、ぐいぐい締め付けらあ。」

無惨に広げられた秘所が、赤く腫れ、黒光りする男根に、引き裂かれるように貫かれる。激しく注挿のスピードが上がり、女の本能が、グリエルの恐怖をあおった。
「あ・・、いや!、いや・・あ・・!、」
「おら、おら!、だっ、出すぞ!、出すぞ!、おりゃあああっ!」
「いやああああっ!!」
どくっ、どくっ、どくっ、
中に染み付くような、異様な感触が、身体を汚している。
それが、グリエルに分かる。
この醜い男の、汚らわしい物が、粘りつき、中に入ってくる。
嫌悪が、苦痛が、何倍も膨れ上がり、胎内に入ってくる。


「へへへ、中々いいもんだ。これなら高く売れるぜ。」
「じゃあ、俺たちもちと味見をしてみるか。」
後ろ手に縛られた体が、豚のように転がされ、殴られ、おぞましい痛みが、身体を貫いた。
ふっと、正気が途切れた。


「あ・・、あれ・・?」
身体の下に布がしかれていた。
あちこち、ぐるぐると布が巻かれ、傷が手当てされていた。
「気がついたかい?。」
ハスキーで、魅力的な声だった。
女性がしゃがみこんで、グリエルの様子を見ていた。

『わあ、素敵な人・・』
同性のグリエルから見ても、その女性はとても魅力的だった。
金と茶を混ぜ込んだような艶やかで豊かな髪、
妖艶だが、強い意志を秘めた目。
すっと通った鼻筋から、ふっくらとした美しい唇が、微妙なラインを描き、見事に結び合っていた。
左肩は頑丈そうな肩当、
右肩は繊細な鎖かたびら、
美しい紋章を打ち出した金属と皮の鎧。

「グリエル・ラビアスちゃんね?」
その女性はウェインと名乗った。

グリエルを育ててくれた神父様が、心配のあまり、昔馴染みの彼女にたのんだのだという。
路地の出口には、あと二人、ウェインの連れが見張っていた。
「もうちょっと早くこれれば、良かったんだけどね。」
「いいえ、助けていただいて、ありがとうございます。」
ウェインは奇妙な顔をした。
「あたしは何もしていないよ。あんたのあとを追ってきたら、この路地に倒れていたんだ。」
どんな様子だったかは、あえて言うまでもあるまい。ウェインは、そのときの様子は省いた。
グリエルも、世情に疎いこの娘にとって、どれほど奇妙な事が起こったのかは、理解の外にあった。

もし、この時、ウェインがもう少しあたりを探っていたら、気がついたかもしれない。
薄暗く、臭い路地の突き当たり、ゴミのように転がっているかじりかけの頭に。

とにかくも、安堵がグリエルの胸を満たした。
「ところで、本当はここを引き払いたいんだけど、あれがちょっとね。」
神器バルディオスハンマーは、大人数人がかりでも動かせないほど重い。
あれを簡単に動かせるのは、正当な「所有者」だけなのだ。


ウェインとグリエル、そしてウェインの傭兵仲間、グローシスとマサイは、澱みの町の大通りを走り抜ける。
『しっかし、まいったわね・・』
グリエルがまるで、ホウキでもかついでいるかのように、軽々とかついでいるのは、恐ろしく巨大で派手なバルディオスハンマー。
でかいわ、光るわ、目立つ事この上ない。
路地から路地へ行きたくても、あの図体で曲がれるかどうか不安だ。
何より、あれにぶつかったら、ただでは済まないことが、ついさっき分かった。

急に角から荷馬車が走り出し、ウェインがひかれかけたのだ。

もちろん、そんな物にひかれるほどトロくはないが、
「あ、危ないですよ」
グリエルがひょいと、ホウキを突き出すように、ハンマーを突き出し、全力疾走で激突した荷馬車は横転し、ハンマーはこゆるぎもしなかった。

あんな物を狭い路地に持ち込んだら、壁だろうが、建物だろうが、間違いなくぶち抜く。
通行人に当たったら、目も当てられない。

「どいたどいたぁ、あぶないよおっ!」
ひどく派手な道行きだが、ウェインは半分ヤケで怒鳴りながら走った。
傭兵の直感が、急いでこの町を出るよう、告げていた。


キュンッ
『弩弓(ドキュウ)っ!』
特徴的な音で、ウェインは直感した。
金属製の弓に、台座と引き金を組み合わせたこの武器は、石ころから専用弾まで、様々なバリエーションがあるが、大型の物だと、射程距離60〜100メートル、20メートル以内なら、レンガでもぶち抜くほどの威力がある。
横っ飛びに身をかわすと同時に、グリエルのハンマーがブンツと音を立てて動いた。
ギイイインッ
耳が痛くなるような、金属的な音がし、驚異的な速さで振り回されたハンマーが、飛んできた弾を打ち返した。
打ち返された弾丸が、屋根の上で呆然としている射手の顔面を打ち抜いた。
まるで神業だ。

「す、すごい。すごいじゃない。」
「え、えっ、何ですか?。」
まるで夢から覚めたように、目の視点が合った。
彼女は自分のしたことを、全く気づいていなかった。

だが、それを問いただす間もなかった。
わらわらと、角や路地から、何人もの男が飛び出してきた。

「命が惜しかったら、そのハリボテと、女は置いてってもらおうか。」
さすがに澱みの町、こういうチンピラには事欠かないらしい。
10人あまりの、みずぼらしい格好をした男が、やたら刃物をちらつかせながら、回りを取り巻いた。

だが、チンピラはチンピラにすぎない。人数頼みで、すきだらけだ。
だっとウェインが飛び出す、グローシスとマサイも。
ねらいは膝と手。
街中で膝やすねを守っている事はまず無く、指を切られれば、武器は持てない。
ウェインの剣先が、すばやく波を描き、すねが血を吹き、指がバラバラと落ちた。


「ひいい、ひいいいっ、ゆッ、指がああっ!」
10人とも指や膝を抑え、ぶざまに転げまわった。
グローシスもマサイも、ケガ一つしていない。
ウェインは無表情なまま、リーダー格の男の鼻を浅く切った。
「たっ、助けて、助けて、」
無様なまでに、哀願する男に、ウェインは吐き気を覚えた。

ボダッ
耳が落ちた。
グリエルが、目を閉じ、顔をそむけた。
「いひいいいいっ!、すんません、すんません、助けて、殺さないでえぇぇ!」
ずいとウェインが前に出た。無表情な美貌の中で、目だけが、怒りに底光りしている。
「おっ、俺らは、頼まれただけなんです、酒場で、メルトンの寝床って店で、ヴルノスの印章を持ってるやつが、金をいくらでも出すからって、ほんとです、本当なんですうっ!。」

「姐御、ヴルノスの印章って言うと『救いの手の教団』ですかね。」
「ああ、何しろいかがわしい連中だから、他教団の神器が外に出たなら、どんな事をしても手に入れようとするだろうね。」

「いやはや、なんとも口の軽い連中だな。」

その声とともに、あたりの土がもぞりと動いた。
濃い、土の匂いと、吐き気をもよおすような、異臭。
そして、腐りかかった人の姿をした物が、わらわらとはいだした。

「うっ、うぎゃああああっ!」
「おっ、お助けええっ!」

白いフードをかぶった男が、ゆらりと姿をあらわし、おびただしい屍者が、次々と立ち上がっていく。
チンピラたちも、そのおぞましい群れに呑まれ、悲鳴とともにおぞましい音がガリゴリと響き、真新しい屍者となっていく。

「ねっ、死霊術士(ネクロマンサー)?!」
男はそれには応えず
「さあ、神器を渡していただく。」
「あんた、何考えてるのよ!、町の真ん中で、真っ昼間に死霊術を使うなんてっ!」
混乱は見る見る広がっていき、町じゅうがパニックに陥っていく。

クカカカカカ
異様な笑い声とともに、男は手を振った。
「我が同志たちが、この町に呪文結界を張っているのだよ。ここは、もう夜なのだ。」
屍者たちは、ゆらゆらとこちらへ歩き出した。

マサイが聖なる火を呼び、足止めを図るが、気休めにもならない。
「逃げるわよ!」
傭兵は逃げ足が身上。
だが、ほんの一瞬、気が浮いたその時、ごそりと突き出した手が、グローシスのすねを掴んだ。転倒したグローシスを掴んだまま、屍者は錆びた槍を突き出した。

ぐうぇぇぇぇぇぇぇ

尻から串刺しにされ、グローシスは絶命した。

キ、キ、キ、
サルのような笑い声を立て、骨ばった指が一指しすると、グローシスは槍を尻尾のように引きずりながら立ち上がり、屍者の一員と化した。

「グローシスうううううっ!」
マサイが、最大級の炎を発し、グローシスと数体の屍者を焼き滅ぼした。
だが、分厚い群れに阻まれ、フードの男には届かない。

「ちくしょおおっ、ちくしょおおおおっ!」
ウェインが修羅と化して、屍者を叩き伏せていくが、戦場では有効な「突き技」が全く役に立たない。
「グリエル、逃げてええっ!」

「きさまらは、我が教団の礎となるが良いわ。グリエルとやらは、我が教団のしもべとして、人形として飼ってやろう、ん?。」
冷酷な笑いが、いぶかしげに歪んだ。

グリエルは、ぴくりとも動かなかった。

目に瞳が無く、肌が青白く、死者のように血の気を失い、その回りがひんやりとした闇と冷気に覆われていく。

思考など無いはずの屍者たちが、グリエルを恐れるように避け、近寄ろうともしない。

『ゴ・・ウ・・ン・・』

ハンマーがうなった。
薄暗い町が、一層暗く寒くなり、ウェインの肌が、ざわりと鳥肌を立てる。

『ゴ・・ウ・・ン・・』

さらにハンマーがうなりを上げた。
ウェインは2度だけ聞いたことがある、あのうなり声を思い出した。
それは、ドラゴンのうなり声を10倍にもしたような音だ。

内臓が震え、心臓がおかしくなる。

回りを覆う屍者たちが、がたがた震えだす。

かあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
グリエルが血を吐きながら、口が裂けるほど開き、背筋が寒くなるような声を上げた。

ハンマーを両手で振り回し、2度、3度、回転しながら小さく縮んだかと思うと、人間には考えられないほど高く、高く、飛び上がった。
雷鳴が鳴り、ハンマーが白熱と光を放った。

ハンマーはそのまま、大地をぶち抜いた。

光と音が、強烈な圧力となって、広がる。

爆圧と光の中、屍者たちは砂のように崩れ、周囲の建物は崩壊し、瓦礫すら砂のように砕けていく。

「う・・ぐ・・」
ウェインが起き上がる、マサイも無事だ。
あの白フードの男すら、よろよろと立ち上がった。
屍者は全て消え、半径10メートルはあろうかという、半球状のクレーターの底で、ハンマーを持ったままグリエルがうずくまっている。

「グリエル?!」
ウェインが駆け寄ると、白フードの男は、必死で印を組み、何かを唱えたが、明るく雲ひとつ無い陽射しの下では、何も起きなかった。

グリエルはうずくまったまま、静かな寝息を立てていた。
「あっ、姐さん、あいつが逃げますぜ。」
男は、あたふたとクレーターを這い上がり、町のほうへ駆け出した。
しかし、戦場で鍛えたウェインの大声を、嘗めてはいけない。

「ヴルノスの印章を持った、白フードの男が、犯人の死霊術師だよおおおっ!」

驚くほどよく通る声に、男がぎくりと止まった。

しかも、回りには被害を免れたり、手当てを受けている人が大勢いた。
「白フード・・?」
「ヴルノスの印章!」
殺気が男に集中する。
「ひっ・・、ひっ・・、」
引きつった声を上げ、逃げようとする男の周りは、血走った目が人垣を作っていた。
必死に印を組み、もこりと突き出した手も、カサリと音を立てて崩れた。
結界はすでに壊れ、今は、本当の昼日中だった。
「こいつだ、間違いねえ!」

人垣の中で、悲鳴が上がり、次第にかすれて、ぷっつりと消えた。


ウェイン達は、町を脱出すると、丸一日馬を走らせ、湖の渡し場へたどり着いた。
対岸へ渡れば、彼女の故郷はさほど遠くない。
今夜はこの町に止まり、明日の朝一番で、彼女を送り返すことになった。

夕食の後、マサイは飲みに出かけ、ウェインとグリエルは部屋で休息していた

ふっと寂しげな視線を窓に送るウェインに、グリエルはたまらなくなった。

「あ、あの・・、すみません・・、あたしのために。」
グリエルは消え入りそうな声で、目に涙を溜めて謝った。
「ああん、いいの、いいのよ、気にするんじゃないの。」
ウェインは金髪の綺麗な頭を抱き、優しくなでてやった。


コン、コン、
「すいません、俺です。」
マサイの声に、ウェインは何の疑問も無く、扉を開けた。
思えば、この時気づくべきだったかもしれない。マサイは必ず3度ノックしていた。

「なんだい?。」
「ちょっと、変なやつがうろついてます。窓の外を、こっそり見てもらえますか?。」
ウェインが窓の横で、首を出そうとした瞬間、首筋に強烈なチョップが飛んだ。
「あぐ・・っ!」
「ウッ、ウェインさんっ!」


気がつくと、ベッドの上にいた。
両手、両足を縛られ、後ろ手にされている。
「ほう、もう気がついたが、さすがに早いな、キ、キ、キ、」
声はマサイだが、笑い方が別人だ。
そちらでは、グリエルが同じように縛られ、転がされていた。
「あんた・・、まさか教団の?!」

「そうさ、名乗るのが遅れたな。『救いの手の教団』筆頭司教の、メドラスというのさ。」
ケタケタと笑ったかと思うと、目をギラリと光らせる。
「よくも殺してくれたな。」
ウェインの頬を、気が遠くなるほど叩いた。
「ウェインさあんっ!」
マサイの顔が、首だけぐるりと後ろを向いた。
「ひ・・っ!」
「女、声をあげたいなら、好きなだけ叫べ、そのかわり二人とも喉をかっさばいてやるからな。」

「こっ、こいつ、怨霊(スペクター)よ。マサイの身体を乗っ取ったんだわ。」
死霊術士は、怨霊になりやすいとは聞いていたが、こうも早く現れるとは、思いもよらなかった。強烈な負のエネルギーがわだかまる、澱みの町だからこそだろう。

「ケッケッケッ、おかげで若くてイキのいい身体が、手に入ったわ。」
平然と服を脱ぎ、そりかえるペニスを指で弾いた。
「おお、このような猛々しさ、40年ぶりだ。若い女が二人もいるのだ、久しぶりに楽しませてもらおうか。」


「そうだ、丹念にしゃぶれよ。でないと、相手の乳房を削ぎとられるぞ。」
メドラスは、二人に同時にしゃぶらせた。
ウェインの微妙な舌使いも、グリエルのたどたどしい舌先も、どちらもよだれが出るほど気持ちがいい。
鋭利なナイフを、二人の服に走らせ、わずかずつ、わずかずつ、剥いでいく。
ウェインのもみ応えのある、乳房をわしづかみに、ぐいとひねりあげる。
「う、うぐっ、」
グリエルの若い乳房の柔らかさを楽しみ、小さな乳首をむしりとるように引っ張る。
「いっ、いたあっ!」
嬲りながら、二人を見比べていたが、グリエルの小さな唇に、膨張した亀頭を押し込んだ。
むせるのも構わず、喉深く押し込み、あふれる精を撒き散らした。
「飲め、飲むんだ!」
グリエルは必死に耐えながら、喉に流し込まれる精を飲み干した。
ようやく引き抜かれた残渣が、愛くるしい顔を汚した。

わずかに萎えたペニスを、ウェインに再びしゃぶらせる。
マサイの体液を、巧みに嘗め取り、根元の付け根から、こすりあげて、巧妙に高ぶらせる。
『チャンスは、必ずあるはず。』
ウェインはむしろ積極的に、マサイのペニスを責め、興奮させた。自分が興奮するのも構わず、激しく頭を振り、舌を絡みつかせた。
たちまちに勃起したペニスを任せ、ウェインの花芯に中指を突き刺す。
「うーっ!」
おびただしい雫を滴らせ、中指が根元まで濡れる。
それをぐりぐりとかき回し、ぐいとひっかいた。
がくがくと、しなやかな腰が崩れる。
「キ、キ、キ、やる気満点じゃないか、こいつも、いつかはきさまとやりたい、と思ってたみたいだぜ。」

涙を堪えた目が、ぎっとメドラスを睨みつけた。
「おお、怖い、怖い。そんな目でにらまれては、たまらんな。」
ナイフがグリエルの乳首に当てられた。
「ひっ!」
「それでは、こちらの女と遊ぶとするか。乳首の無い女というのも、面白かろう。」
「やっ、やめなさい!。」
「立場がわかっとらんな。人に頼むときは、どういうんだ、ええ?。」
ぐっとナイフが押し付けられる。
グリエルは、観念の目を閉じ、動かなかった。
「お、お願いします、止めてください。」
「ふん、止めてやってもいいが、お前のような淫売女と遊んでやるのだ、感謝してもらわねば、割りが合わん。」
ウェインが怒りで赤くなり、グリエルは青くなった。
「あ、あなたはなんて事を・・、姐様、私のことは構わないで下さい!。」
「きさまは黙ってろ、あいつのあそこに、こいつを突っ込んでやるぞ。」
ギラリとナイフをかざされ、グリエルは怒りに唇を噛み切った。

ウェインは力なく頭を下げた。
「お願いいたします、この淫売と、お遊びください。」
屈辱も、怒りも、全てを心の闇に押し隠した。
はるか昔の、ひきつれた傷口が、おびただしい血を流して開いていた。

「ふうん、どうしてほしいと言うのだ。」
「あなたのたくましい陰茎で・・、この淫売を・・、存分に犯してください・・。あなた様の、精液で・・、わたくしめの胎を、思うままに・・、汚して、くださ・・い・・。」
かすれ、ひび割れた声で、何の感情も無く、ウェインは言葉をつむいだ。

外では、虎追い笛が鳴っていた。
ウェインの心の奥で、はるかな記憶が、虎追い笛を鳴らしていた。

グリエルが涙を流し、ウェインは言われるままに、もう一度マサイの、いやメドラスのペニスを咥え、高ぶらせた。
足を広げ、よく熟れたザクロのように、赤く息づいている秘所に、そそり立つペニスを迎え入れた。
「あっ、あふうっ!、くっ、ふっ、うっ、ぐっ!」
マサイのペニスのゴツゴツが、激しくウェインの内側をこすり、そり返った亀頭が、内側をえぐるようにしごく。
広がったカリが、ウェインの内側の粒をひっかけ、びりびりとした快感を送りつける。
メドラスはニヤつきながら、ウェインの放心寸前の顔を眺め、しなやかに動く腰を見、絡み合うような感触と、粘膜の甘美を味わっていく。
粒々がペニスをこすり、巻きつくような温かい粘膜が、密着し、ざわめく。
次第に深くもぐりこむと、その快感が一層激しく蠢いた。
ウェインも、不本意ながら深くのめり込んでくる快感に、逆らうすべも無く、ほとばしるように吹き出す潮に、濡れ尽くし、次第に腰を激しく振っていく。

ずこっ、ずこっ、ぐりゅっ、ずぶっ、
「あうっ!、あっ!、あぐっ!、ぐっ!、」
滴りを零し、激しく身体をゆすり、波打つように胸が跳ねる。
固くたくましい物が、深く身体を突き上げ、子宮を小突き、こねあげる。
よく熟れた身体の奥から、淫蕩な火が燃える。

たくましいマサイの肉体は、分厚い胸板が、強靭な腰が、すばらしい力を生み出し、ウェインを身体ごと、突き上げ、ゆさぶってくる。

さからいようの無い、次第に理性も意識も細かく砕かれ、千切れていく。
肌が熱く、身体が蕩け、次第に一体と化していく感触が、下から狂うように突き上げ、犯し、嬲った。

猛々しい快感が、ウェインの深奥を貫いた。
「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁぁ!!」
 どびゅううううっ、どびゅううううっ、どびゅうううっ、
しなやかな腰が、力いっぱい引き寄せられ、最奥に大量の精液がぶちまけられる。
一滴のこらず注ぎこむまで、何度も腰を突き上げ、彼女を痙攣させた。
突き上げる度に、奥に流れ込み、細い腰がのけぞり、わななく。

長い髪が、力なくうち広がり、放心した美貌はただ喘いだ。
広がった長く美しい太腿の間から、詰め込まれた精液があふれ滴っていく。

グリエルも逆らうことなく、体液に濡れたペニスを嘗めていく。
このけなげな娘は、ともに堕ちる以外、ウェインにわびるすべが無かった。

グリエルのふっくらとした尻に、痛いほど指が食い込む。
広がるだけ広げられ、犬のように後ろから犯されていく。

「おら、おら、雌犬が、雌犬が、鳴きやがれ、犬のように鳴きやがれ!。」
「あっ、あぐっ、くっ、ぐうっ、うっ、ぐううっ、うっ、うぐうっ!」
必死に堪えても、まだ暴行しか受けた事の無い秘所は、苦痛にのたうつ。
異様に痛く、気持ち悪い形が、身体を刻み、汚していく。

舌を噛み、この苦しみを絶ってしまいたかった。
突き刺さる狂気にのけぞりながら、何もかも終わらせてしまいたかった。
『ねっ、姉さん・・っ!、ねえさんっ!』

赤く腫れた襞を、黒光りするペニスが引きずり出し、巻き込むように突き入れる。
男への恐怖と、暴行への嫌悪が、凝り固まったような物で、深く、どこまでも犯してくる。

姉への思いだけが、グリエルをむごたらしい現実につなぎ止めていた。

「くはああああっ!!」
どっ、どっ、どっ、どっ、
「いやあああぁぁぁぁぁ・・」
何度受けても、これ以上は無い嫌悪と、吐き気すらもよおす感触が、己の中に広がっていく。壊れたはずの貞節が、汚れ、ただれていく。

のたうつ若い身体に、メドラスは歓喜にわななきながら、その胎の奥まで届けと放ち、こねくる。
真っ白な足が震え、若い膨らみが激しく喘ぐ。
金髪が乱れ、放心していくグリエルを、堪能した。

「ケッケッケッ、この身体はいいぞお。まだまだ余裕じゃないか。」
メドラスは、二人を絡み合わせた。
「キスをしろ、嘗め合え、乳房をこすり合わせて、気分を出してみろ。」
明るい茶の髪が広がり、鮮やかな金髪が震えた。
赤とピンクの唇が絡み、激しく吸いあう。
豊満な美しい乳房と、若く初々しい膨らみが、こすりあって乳首を立てていく。

激しく絡む腰が、滴りを零し、濡れた淫花が潤み、広がる。
それを後ろから交互に犯し、味わいたいのだ。

「はぐうっ!」
そそり立つペニスが、まずウェインの花芯を貫く。
肉がぶつかり、粘膜が激しくこすり、奥の秘口を狂乱する亀頭がえぐり入る。
「あっ!、あう!、ぐっ!、うっ!、うっ!、あふっ!、あっ!、あああっ!」
のたうつ身体を突き上げ、こねると、引き抜き、上の震える淫花を貫く。
「ああーっ!」
ウェインの柔らかい身体の上で、白い身体が激しくのけぞる。
その声に刺激され、いきなり強烈な律動を送り込む。
「ひっ!、ひっ!、ひぐっ!、あっ!、いっ!、いたっ!、あっ!、だめっ!」
グリエルの悲鳴に、嗜虐的な悦びを煽られ、根元まで何度も突き入れ、かき回す。
再び、ウェインの熟れた果肉にかぶりつくように、深々と貫いた。
「はひいいっ!」
子宮を突き破らんばかりに、容赦なくやわらかな胎内を突き上げ、貪り尽くす。
「ひっ!、ひいっ!、ひいっ!、いく!、ああ!、いくうっ!、あうっ!」

繰り返し、繰り返し、若くしなやかな女体を貪り、ペニスは今にも爆発しそうだった。
グリエルの腰を掴み、その最後の高ぶりを、目いっぱい突き込む。
「ひいっ!、ひいっ!、いやあ、ああっ!、いやあっ!、」
言葉と裏腹に、そこは溶鉱炉のように熔け、わななき、貝のように締上げる。
カリを締め付ける口にこすり、ぶつけ、ねじ込んだ。
「ひいいいいいいっ!!」
どびゅうううううっ、どびゅううっ、どびゅうっ、
喘ぎ、痙攣する白い裸身。
陰嚢が収縮し、胎の奥まで、精液が噴出していく。
締めつける身体に、何度も脈動がほとばしる。
脳髄まで熔けでたような快感が、ペニスを突き抜けほとばしる。

何度も精を放ち、精力の枯渇が、メドラスの意識を混濁させた。
憑依していても、これだけは逃れられない。
その瞬間をウェインは狙っていた。

こっそりと緩めていたグリエルの縄が、一気に外れた。
だが、グリエルは襲い掛かるのではなく、自分の服のほうへ飛んだ。
はっと、メドラスの目が追った瞬間、ウェインは、メドラスの足元へスライディングをかました。
大きく開いた股間めがけて。
「マサイ、ごめんっ!」

ぐしゃっ!

ぎえええええっ!

伸び上がったヒザが、マサイの股間を直撃し、この世の物とも思えぬ悲鳴が上がる。

憑依している時は、肉体の影響は免れない。
メドラスは、今にも死にそうな痛みに耐えかね、マサイから飛び出した。
そこへ、グリエルが聖印(ホーリィシンボル)を持って飛びかかった。

ぐうわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

聖印は、魔を打ち払う。
まして、怨霊になりたてのメドラスは、もろかった。

灰が吹き払われるように、粉々に砕け、消えた。

「どうにか、助かったわね・・。」


さすがに疲労しきっていた二人は、2日休んだ。
マサイは重症で、分けも分からないうちに、股間が腫れあがり、疲労困憊。
精神的なダメージも大きいらしく、もうしばらくかかりそうである。


明日はグリエルが旅立つ晩、ウェインはこっそりと起き上がった。
今回の騒動で、一つだけ納得できない事があった。

3人は一部屋づつ借りていたが、グリエルはウェインの傍から離れず、グリエルの部屋は誰もいない。
そこに、ウェインが忍び込んだ。

闇の中でも、極彩色に光り、輝くバルディオスハンマー。

「あんた・・、いったい何なのよ・・。」

それを睨みつけながら、思わず、思っていた事を口にした。

グリエルはこいつの契約者のはず。
だのに、必ずしも彼女の危機には、反応しようとしない。
いや、それどころか、彼女が危機に合うように仕向けているとまで、思える節がある。

ただ、ウェインもそれに答えがあるとは思っていない。
だが、どうにも気になって来たのだ。

『さあ、何だろうな』

頭の中に、声がした。
ウェインの髪が逆立つ。
そこには、極彩色のハンマーは無かった。

足ががくがくと震えた。
真っ暗な空間に、恐ろしく巨大な物が、何層も何層も、とぐろを巻いて満たしていた。

上から、凶悪無惨な獣の顔が降りてくる。
あえて言うならば、年老い、醜悪になった、奸智に長けたドラゴンのような顔だ。

『あれを助けてくれて、感謝しよう。あれには、子を孕んでもらわねば、ならんでな。』

それは笑ったようだ。
だが、身体震えるような笑い声は、恐れと不安しか増大させない。

「あっ、あなたは、、、いったい・・、」
声が続かない。どんな戦場でも怯える事が無いウェインの、声が。

『ほお、みごとなものだ。わしを見て、声が出るか・・。』

暗闇の底のような目が、ウェインを見た。
ウェインの心臓が、一瞬止まる。

『グリエルを見、己を見たか。』

虎追い笛が、どこかで鳴ったような気がした。

『お願いします、姉さんが病気なんです!。』
『何でもします、どんな事でもします、姉さんを助けてください。』
『あたしは、どうなってもいいです、お願いです、助けてください・・』

必死に泣きじゃくる子供がいた。
ぼろぼろになり、ズタズタにされ、それでも必死に哀願を続ける少女。

『やめて!』

強い風、いやな音、虎追い笛。

泣きながら町を裸足で歩きつづける。

『いやだあああっ!』

己の手足を切り売りするように、言うも無惨な記憶。

それでも、ようやく得た金で薬を買い、駆け戻った時、すでに姉には薬を飲む力すらなかった。

血の涙が、ウェインの瞳からこぼれる。

『いいの、いいのよ、』
細い指が壁を示し、その割れ目から、何枚かの金貨が落ちた。
『これだけ、あれば、ゲホッ、この冬、あなただけは、生きられる、うっ、ぐふっ、』
死相が、姉の目を覆う。
『おねがい・・、私の・・分まで・・生きてね・・、愛して・・る・・わ・・』

優しい声は、二度と聞こえなかった。



泣きじゃくる、小さな子供、
ウェインは、同じ姿勢でしゃがんでいた。

『わしのことは、忘れよ』

それは、命令だった。

目の前に、一人の男が立った。
闇が凝縮したかのような、黒い髪、そして、月のように青白い、美の結晶のような顔。
ウェインは、彼に手をひかれ、立ち上がると、その口づけを受けた。
脳が真っ白に白熱し、全身が激しいエクスタシーに撃たれ、引き裂かれた。

『もう一度、礼を言おう。あれは、子をおろすまいからな。さらばだ。』





ウェインは、ベッドで目を覚ました。
なぜか全裸で、腰が抜けて立てなかった。
昨日、何があったのか、全く思い出せない。
グリエルとお休みを言って、眠ってから、何も思いつかないのだ。

右の二の腕に、鮮やかな蛇のイレズミが描かれ、美しく飾っていた。
それが、前からあったかのような気がして、気にも止めなかった。


湖上を渡る船の上で、グリエルは、自分が妊娠しているらしい事に気づいた。
「私は、この子を育ててあげたいんです。あなたが聞かせてくれた、お姉さまのこと。あなたが私にしてくださった、多くの事。この子に、伝えてあげたいんです。」

幸せそうな笑いの中に、ウェインはかすかな不安を覚えた。





あれから、何年もたった。
あの子は、グリエルはどうしているか。
ウェインは、何か大切な事を忘れたような気がして、虎追い笛を聞くと、不安にかられるのだった。

END